ハイスクールD×D 光と闇のラタトスク   作:カルパン

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世界の理を塗り替える禁手

帝side

 

時間は過ぎて今は夜、とは言っても深夜だが。

 

帝「あー寒っ!!」ガタガタブルブル

 

それもそうか。だって俺がいるとこ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

“犬小屋”だもん!!

 

あのあと、木をある程度集め、錬金術を使える魔物を呼び、小屋6つ、犬小屋1つ作ってもらった。部屋決めは簡単にジャンケンだった。そう、ただのジャンケンだったのだ。勝った人は小屋、ビリの人は犬小屋。言わば罰ゲーム。だが、1つの失態を犯したからだ。実は俺、生まれてこの方ジャンケンで一回も勝ったことがない。最近ジャンケンしていなかったとは言え、かなり致命的なことを忘れたことに反省。

 

まぁもう少し奥に入ったら亜空間に入れるんだけど。というよりもともとそうしてたし。別に狙ってないもん。

 

帝「……そうだ……!」

 

俺は犬小屋を出て、少し歩いたところに薪を置き、ソーサラーリングに魔力を込めて火をつけた。

 

帝「あぁぁ〜〜ええわぁ〜〜……!」

 

暫く温まっていると、少し瞼が重くなってきた。体が温まって、眠くなるのは仕方ないことだ。俺は強烈な睡眠欲に誘われて、意識を落としーー

 

ジャンヌ「あれ?マスターではありませんか。」

 

ちょっとぉ!今すんごい気持ちよく寝れそうだったのに!

 

帝「お、おぉう、ジャンヌか。どうした?」

 

ジャンヌ「いえ、外から明かりが見えたものですから。」

 

帝「ダメだぞジャンヌ。夜更かしは美容の大敵だぜ?」

 

冗談交じりにそう言ってみた。とは言っても実際、リアスや美優も寝る時は寝る時で早く寝てたし。

 

ジャンヌ「そう……なんでしょうか?今まで戦場を駆けてきた所為か、そういうことには疎いと言いますか何と言いますか……。」

 

帝「そ、そりゃすまねぇ。」

 

そしてジャンヌは俺の横に腰を下ろした。

 

ジャンヌ「マスター、何故マスターは私達サーヴァントを人と同じようにして接するのですか?」

 

帝「えっ、いや、急にそんなこと言われてもな……。」

 

ジャンヌ「私が知っているサーヴァントの使役者は皆、サーヴァントを道具のように、己の願望を叶えるための道具にしか使っていませんでした。でも、貴方は違う。今日会ったばかりですが、私達に接するところからは、愛情ーー優しさが見えました。それは一体、何故なのかと。」

 

成る程、今までの使役者と違う対応に少し戸惑ってると。

 

帝「ジャンヌ、お前は……お前達は、俺の過去を知っているだろう?」

 

ジャンヌ「はい、ここに来る前に大体のことを。」

 

帝「つまりはそういうことだ。大切な人を失いたくないから戦う。大切な人を傷付けたくないからそう接する。そしてそれでいてその人のことをよく知れるようにする……。もう復讐なんてする気はないが、どうもまだそのことだけは引きずってんだ。多分、心の何処かで。一度、いや、二度闇に堕ちてしまった俺だからできること……なのかな。はは、なんか笑えねぇよ。まだ仲間を失う恐怖が、手に、脳に、心に残ってる。仲間を殺してしまった自分への怨恨が、まだ心の何処かにこびり付いている。いつか、自分がその恐怖に、怨恨に呑まれてしまうかもしれないって思うと……その時の狂気に体を奪われ、仲間を殺してしまった、なんてことがあったりすれば……。」

 

どんどん気分が沈む。それはジャンヌも同じようで、表情を沈ませている。

 

帝「……まぁその……なんだ……。ジャンヌ、お前は碌な人生を送らなかったろ?だからよ、今お前には、救国の聖処女ジャンヌ・ダルクではなくて、ただの女の子のジャンヌ・ダルクとして生きて欲しいんだ。お前が幸せそうにしてくれると、俺も嬉しいからさ。」

 

思うことはいろいろあるが、今は過去と向き合いながら生きたい。復讐はしない。ヴェルフリートは殺す。俺のケジメをつけるため、俺と同じ過去を辿る人を無くならせるため、ヴェルフリートによって散る必要の無かった人達のため、そして、またリアス達の前で、笑顔でただいまと言えるように。

 

ジャンヌに微笑むと、ジャンヌは、驚いたように眼を大きく開いた。そしてすぐ後に、ジャンヌは俺と同じように微笑んだ。

 

ジャンヌ「辛かったでしょうね。」

 

帝「辛かったよ、本当に。でも、その代わり、今の俺がこうしていられるのもそれのおかげかもしれない。皮肉なもんだな。一番忌み嫌う記憶、経験が、今の自分を形作ってるんだから。」

 

ジャンヌ「もし今、耐えられないなら、私の胸に飛び込んでもいいですよ?」

 

帝「大丈夫、耐えられる。女に縋り付いてピーピー泣くほど俺も落ちぶれちゃいないさ。」

 

ジャンヌ「マスターは本当に……本当に強い心をお持ちですね。闇に生きたからこそでしょうか?」

 

帝「かもな。ってかジャンヌ、いい加減マスター呼びはやめてくれないか?なんかスゲーむず痒いんだよ。」

 

ジャンヌ「マスターがダメなら、エミルくん、はどうでしょう?」

 

帝「うん、くん付けはまぁあれだがマスター呼びよりかは何倍もマシだ。」

 

それから、俺とジャンヌはいろいろなことを話した。俺はリアスやイッセー達のことを。ジャンヌは、祖国と共に戦った人のことを。そして今は趣味とかになってしまっている。

 

ジャンヌ「ふふふ、エミルくんってやっぱり年相応の男の子ですね。とても暗い過去を経験した人とは思えません。」

 

帝「そう言うジャンヌこそ、しっかりと女の子してたよ。可愛らしかった。」

 

ジャンヌ「そうでしょうか?あ、そう言えば確かさっきエミルくんは私に救国の聖処女ジャンヌではなくただのジャンヌとして生きて欲しいって言ってましたけど、どういう意味ですか?」

 

帝「ん?そのままの意味だけど?まぁあれだよ。戦場を駆けてただ祖国のために戦った聖女様が火炙りで殺されるというなんとも悲しい最後に少し思うところがあってな。真っ当な人として生きれなかった分、幸せになって欲しい。ただそれだけだよ。」

 

ジャンヌ「えぇっ、あっ、え、えっとその……ありがとう……ございます……///」

 

帝「?ま、どういたしまして。……ふぁぁ……。」

 

ジャンヌに笑顔を向けると、ジャンヌは顔を赤くした。

 

熱でもあるのか?ってかマジで眠い。

 

ジャンヌ「もしかしてもう眠たいのですか?なら寝ても大丈夫ですよ。エミルくんが寝るまで、私が付いていてあげますから。」

 

帝「おう……じゃ……そうさせてもらうわ……。」

 

そして俺は、そのまま瞼を落とした。

 

ジャンヌ「エミルくん、もしかしたら私、エミルくんのこと、好きなのかもしれませんね。」

 

ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー

 

-一ヶ月-

 

あれから一ヶ月が経った。龍神帝王の籠手の調整も終わり、神器も再び使えるようになっていた。

 

帝「はぁあ!」

 

そう叫びながら切るのは魔族。目的は2つ。1つはいつ眼を覚ますかわからないヴェルフリートに、対抗するため。2つは、禁手を超えた禁手に目覚めるために現在修行に日々に明け暮れている。とはいえ、禁手を超えた禁手は、所有者ーー俺次第らしく、今まで神器の最終形態は禁手だけ。つまり神器の限界の壁を越えなければならない。これまでの修行で、確かに力はついてきてる。だが、神器に成長が見られない。つまり俺もまだ成長しきっていない。

 

帝「っ……。このままじゃ、いつか覇煌龍(ジャガーノート・エーテル・ドライブ)を使わなきゃなんねぇな……!」

 

あの時の覇龍はただの覇龍じゃなかった。全てを護り、全てを救済することができるはずの力、覇煌龍、ドライグの覇龍を超えた覇龍であり覇龍でない力。もしかすれば、神器自体が変化して、もう使えない。

 

帝「……くそが……!これじゃ……足りないんだよ……!これじゃ……届かないんだよ……!もっと……もっと必要なんだよ……!応えろよ……!神器は、所有者の想いに応えるんだろ!なら応えろよ!」

 

ちっとも成長しない自分に焦りを覚える。もっと力が欲しい。例えこの身に何があろうと、今はただ力が欲しかった。そんな時、声が聞こえた。

 

?【ーー■■■■■■■■?】

 

帝「ああ、欲しい、欲しいよ!このままじゃ、あいつに勝てねぇ!あいつの存在は、世界を滅ぼしかねない、俺がやらなきゃ、この世界は終わるんだよ!」

 

?【ーー■■■■■■■■■■?】

 

帝「自分の為だ!過去と向き合って、過去を受け入れて、過去を受け止める。その力が俺は欲しい!」

 

?【ーー■■■■■■■■■■■■!■■■■■!■■■■■■■■■■■!」

 

帝「あぁ、行くぞ、その力を俺にくれ!〈零滅刃・神威〉!!!!」

 

瞬間、俺の体を黒い雷と白い炎が駆け巡った。零の極致をも滅ぼす刃、始りも終ももはやこの刃を前にすればその全てが無意味となる。

 

帝「禁手第二段階(バランス・ブレイカー・セカンド・ドライブ)……!至った。やっと、至ったぞ……!さあ、待ってろ、ヴェルフリート!次会う時は、テメェの最後だ!!!!」

 

再び俺は、眼前の魔族の群れへと駆け出した。

 

To be continued.


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