過去の愚行に、ただ泣き叫ぶ
帝side
帝「よし、魔界に行こう。」
全員『へ?」
なにちょっとコンビニ行ってくるみたいな感じで言ってんだろ。俺でもわからん。
今は夏休みの1日目。本来なら、リアスの実家に眷属共々帰る予定らしかった。
アザゼル「でもいいのか帝。俺らも俺らで予定があるんだが。」
帝「心配するなアザゼル。こっちと魔界とじゃ時間軸がまるっきり違うからな。」
アザゼル「具体的には?」
帝「こっちの1日は、魔界じゃ1年なんだ。詳しい説明は後々する。」
あの一件以来、俺のアザゼルへの信用がダダ下がりした。それ以来、俺は尊敬もせず、アザゼルと呼び捨てで呼び始めた。あと、こっちと魔界の時間軸の違いは、ちょっと面倒くさいので割愛。
木場「でも、どうやって行くんだい?」
帝「ん?生き方なら簡単だ。部屋の隅の壁と壁が交わる場所で十字を切ってそこに突撃するだけだ。もっと簡単な方法もあるが、ただあれは……な、マルタ。」
マルタ「そうね。あれは……ね。」
一誠「あれって?」
帝「いや、俺、一定の空間に魔力を押し留めて無理矢理次元の狭間への穴開けれるんだ。ただ魔力の消費がヤバくてね。前使った時はぶっ倒れたのよ。今は体がふらつく程度だけど。つー訳で行くぞ。」
一誠「理由の筋が通ってないんだけど!?」
知るかそんなもの!
帝「開け、次元の扉!」
そう言うと、俺の数歩前の空間が縦に割れた。
帝「あの、皆!?ぼけっとしてないで行くなら行くでさっさと通ってくんない!?維持してる間も魔力食うから!じゃ、取り敢えずお先!」
そう言って、割れた空間へと入った。
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一誠「おおおおお!!」
始めて見る景色なのか、イッセーや一部のやつらが驚いていた。
帝「ようこそ!人と魔物が共存共栄し合う世界、魔界へぇぇぇ………イェェェェェ!?」
マルタ「え、えーっと……。」
リアス「エミル?マルタ?どうしたの?」
帝・マルタ「「ここどこ!!??」」
全員『……え?』
いやおかしいって!前見たメルトキオと違ってなんか高層マンションとか建ってるんだけど!?城下町とかも無かったよ!?どうしてこうなった!?いや、確かにこっちの時間軸に合わせたら90年くらい来てないけど!来てないけど!どんだけ文明が発達してんだよ!?もう意味わかんねぇ!
帝「…………………………………開け境界の扉ぁぁぁ!」
全員『なぁぁぁぁ!?」
現実逃避したくなり、全員を巻き込んでアルタミラまで境界の扉を開いて転移した。皆からすれば理不尽だと思う。だが今は少し俺の現実逃避に付き合って欲しいで候。
そして着いたのはアルタミラ。青い海、白い砂浜、入ってすぐに見える大きなホテルにモノレール。最後に見たアルタミラと同じだった。
帝「良かった……!ここまでは侵食されてなかった……!」
マルタ「良かった……!最後に見たアルタミラと同じだよ……!」
リアス「えっと……エミル、状況を説明してくれる?状況の把握がイマイチできないわ。」
皆の方を見ると、皆が揃ってうんうんと頷いていた。
帝「至って簡単。すっごくシンプル。単にさっきの場所が最後に見た姿とまるで違っててテンパっただけ。」
一誠「ごめんよくわかんない。」
ごめん俺もよくわかんない。ってかもうわからない奴に詳しい説明はしません!俺も少し脳内の整理したいです!
マルタ「エミル、この後どうする?」
帝「あー……取り敢えずはレザレノカンパニーに行ってリーガルさんに会いに行くか?」
そんなわけでレザレノカンパニー行きのモノレールに乗ることになったが……
ギャスパー「ひゃぁぁ!僕の紙袋が!」
帝「ここに来てまで被る必要ないだろお前。」
定員が7人までなので、男子メンバー+α、女子メンバーとで分けてレザレノカンパニーへ行くことに。
あ、女子メンバーも来たみたいだ。
「レザレノカンパニー本社へようこそ。本日はどういったご用件でしょうか?」
帝「すまない、エミル・キャスタニエというものだがリーガル・ブライアン社長はいらっしゃるか?できればお会いしたいのだが。」
「エ、エミル・キャスタニエ様……というとあの……!?」
帝「ん?何のことかわからないが……。それよりもーー」
「し、少々お待ちください!」
なぜそこまで慌てる必要がある?まさか一緒に旅してたやつか?いや、ないな。あいつらの面影が微塵も感じられなかった辺り、やっぱ初対面だろうかな?
「お、お待たせしました!どどどどどどどうぞこちらのエレベーターへ!リーガル社長は社長室にておおおおお待ちです!」
帝「あ、あぁ。すまない、助かったよ。ありがとう。」
終始わからず仕舞いでエレベーターで社長室へと向かった。
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帝「ども、リーガルさん。お久しぶりです。」
リーガル「こんにちわ、エミル。久しぶりだな。」
俺の目の前にいる、水色の髪、渋い?顔立ち、ガタイがよく筋肉質な大柄の男性は、リーガル・ブライアン。ここ、レザレノカンパニーの社長だ。
リーガル「おや、そこにいるお嬢さん方と少年達は?」
帝「あぁ、紹介するよ。こちらの紅髪の女性はリアス・グレモリーだ。」
リアス「初めまして。リアス・グレモリーと申します。」
リーガル「ふむ……エミル、君はいい女性に恵まれたな。」
帝「えぇ、本当に俺には勿体無いくらいのいい彼女でして……………………リーガルさん、何故それを……?」
俺がリーガルさんにそう聞くと、やっぱりなというような表情になった。
リーガル「いや何、少し鎌をかけたつもりだったのだが、まさか当たるとはな。リアス殿、エミルは少しばかり自分で何でも背負い込む癖があるのでな。できるだけ支えてやって欲しいんだ。どうかよろしく頼む。」
帝「リーガルさん、あんた俺の親じゃないんだから……。」
リアス「はい、精一杯私ができる限りで支えて頂きます。」
帝「だぁ……リアスまで……。」
もうホント何?揶揄ってんの?やめて!?俺案外豆腐メンタルなんだから!
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あの後、一人一人紹介して、暫くは皆で自由行動となった。俺はというと、ハイマと呼ばれる山の隣にある山の頂上に来ていた。
帝「……よう……久しぶり……だな。ゼフィ、ルアン、シエル……。」
そして俺の目の前にあるのは、3つの墓石。それぞれに、
ゼフィリム・ヴェルデヴェルデュ、ここに眠る
ルアン・エスターニャ、ここに眠る
シエル・エスターニャ、ここに眠る
と記されていた。
ここは俺達4人の思い出の場所だった。180度どこを向いても、雲の上にあるため、必ず晴れた空を見ることができる。いつもここで皆と話した。いつもここで皆と笑った。いつもここで皆と同じ空を見た。
帝「…………………………………………」
だが今はそれが2度とできない。空を見上げながら寝て、皆と他愛ない話をして……それができないと今一度、強く思ってしまい、自然と目の前が何かに阻まれて霞んでしまう。頬を何かが伝う。ポタポタと顎から何かが離れる感じがする。
帝「な”んで……な”んで……お”れ”……は……!」
声に出してもまともに聞こえない。心の中を何かに搔きむしられて、心の中を何かに抉られて、心に大きな穴が穿たれて。
たった3人も守る事が出来なくて、何が勇者の一族だ!憎い!憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い憎い!!!!何が勇者だ!何が守るだ!何がヴェルフリートだ!俺がいなければ!あんなやつがいなければ!あいつらは!あいつらは!!!!
帝「あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”あ”!!!!!!!!!!!!」」
泣いた。ただただ泣き叫んだ。過ぎた事がもう戻らないとわかっていても、失われた命が戻らないとわかっていても、泣いた。玩具を買って貰えなくて駄々をこねる子供のように、我儘な自分の感情に、心に従って、ただ泣き叫んだ。
To be continued.