帝side
緊張感が張り詰めた一室。ここ、駒王学園の会議室にて、今日、4つの勢力の命運がかかった会議が行われることとなった。
帝「さて、これで参加者は全員揃ったか。」
悪魔側の参加者は、サーゼクス・ルシファー、セラフォルー・レヴィアタン、リアス率いるグレモリー眷属、ソーナ会長率いるシトリー眷属。天使側の参加者は、天使長ミカエル、そして紫藤 イリナ。堕天使側の参加者は、堕天使総督のアザゼル、白龍皇のヴァーリ。そして我が人間側の参加者は俺、皇 帝。……そう、俺だけなのだ……。悲しくない……悲しくなんてない……。
サーゼクス「まず、この会議は聖書の神が不在と認知している上で行われる。勿論、参加者も含めだ。」
誰も声を出さない。この場合の沈黙は了解と見て良いだろう。
サーゼクス「では、会議を始める。」
その言葉を始めに、会議が始まった。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
リアス「……以上が、私、リアス・グレモリーと、その眷属が関与した事件です。」
サーゼクス「ご苦労、下がって結構。」
帝「さて、アザゼル殿。リアス・グレモリーの報告について、堕天使側の意見を聞きたい。」
俺の言葉に、この室内にいる人皆がアザゼル殿を注目する。
アザゼル「その件については、俺ら堕天使中枢組織〈神の子を見張る者〉の幹部、コカビエルが単独で起こしたものだ。やつの処理は、〈龍神帝王〉と、後からきた〈白龍皇〉が行った。とは言っても、コカビエルは〈龍神帝王〉によって、見るも無惨な姿になっていたがな。その辺りの説明は、この前送った資料に詳しく書いていただろ?それで全部だ。」
悪かったね!そん時は俺もどうにかしてたの!
ミカエル「説明としては最低の部類ですね。しかし、あなた自身は我々と面倒な事を起こしたくないのは知っています。本当にそうなのでしょう?」
アザゼル「あぁ、本当だ。俺はコカビエルみたいな戦争狂じゃない。寧ろ興味がない。」
アザゼル殿がきっぱりと断言した。
アザゼル「まどろっこしいな。面倒くさい話はやめだ。とっとと和平でも結ぼうじゃねえか。もともとお前らもそのつもりだったんだろう?」
全員「っ!?」
皆が驚いていた。ま、普段真面目に謝ったりしないからな、この人。そんな反応されても無理はない。
ミカエル「ええ、そうですね。原因となった神と魔王はいなくなったのですから。」
ミカエル殿の言葉に、アーシア、ゼノヴィア、イリナは表情を曇らせる。
サーゼクス「アザゼルの言う通り、我々の本来の目的は和平を結ぶ事であるからな。」
帝「俺も、その意見に賛成しよう。とは言っても、少し条件を出してしまうがな。」
そう言うと、今度は皆俺を見た。
やめろ!皆一斉に見んな!緊張すんだろうが!
アザゼル「そりゃ、どういう事だ?」
帝「まぁ聞け。まず、悪魔側に出す条件だ。人間を無闇矢鱈に悪魔へと転生させないで欲しい。身勝手な悪魔が神器持ちの人間を無理矢理転生悪魔にしている事が、俺の陣営の中で長く問題視されてきていたからな。そして2つ、他の種族に縋り付かなければ文明を築き続ける事が出来ないくせに転生悪魔を罵るな。」
俺の条件を聞き、サーゼクス殿がうっというような表情になった。
帝「そして堕天使側に出す条件。自分達の脅威になるかもしれないというだけで人間を殺すな。また、神器を抜き取ろうとする事も同様だ。実際、俺とアーシア・アルジェントは被害を被りかけた。」
続いてアザゼル殿もうっというような表情になった。
ミカエル「わ、私達には何もないのですか?」
帝「あぁ、何しろ俺らにしか使えない物を作って貰えていたんだ。それに、ミカエル殿の陣営は唯一人間に実質的な被害を出していないしな。それでお二方、条件を呑むか?」
サーゼクス「あぁ、これで和平を結べるなら安いものだ。早速冥界に帰ったら、喚起するようにしよう。」
アザゼル「右に同じくだ。」
よし、これで人への被害は今できる範囲ならば最大に抑えた。後ははぐれ悪魔による被害だな。
アザゼル「和平を結ぶ前に、俺達四竦みの外に居ながら、世界を動かせる力を持つ、〈赤龍帝〉、〈白龍皇〉、そして〈龍神帝王〉。お前らの意見を聞きたい。まずヴァーリ、お前の考えは?」
ヴァーリ「俺は強いやつと戦えればそれでいいさ。」
典型的なバトルジャンキーの言葉だな。和平については興味なしってところか。
アザゼル「なら皇 一誠、お前さんはどうしたい?」
アザゼル殿はイッセーに問う。
一誠「俺は……俺は……和平に賛成します。だって、俺はまたこのメンバーで戦争とかってなったら、もしかしたら、帝兄やみゆ姉、白音に、父さんや母さんや、他にも、俺の大切な人が死ぬかもしれないんです。もう俺は大切な人や家族を失いたくありません。これが、俺の理由です。」
イッセー……そこまで考えてたのか……。なんつーか、嬉しくて少し泣きそうになったじゃねえかよ。
アザゼル「成る程ね。じゃ、最後に帝、お前の考えはどういったものだ?」
帝「勿論賛成だ。もしまた戦争とかなっちまえば、俺は大切な人を失ってしまうかもしれない。俺はそれが怖いんだ。何も考えず、命を奪う事よりもな……。それに、また戦争起こしたら、今度こそあんたら三竦みの勢力は消えてなくなる。あんたらのことも自分のことも考えれば、和平を結ぶ以外の選択肢は出てこない。」
ミカエル「さて、話が大分纏まってきたところで、私もなすべき事をなさなければいけませんね。アーシア・アルジェント、ゼノヴィア。」
アーシア「は、はいっ!」
心なしかアーシアの声が緊張した感じになっている。いきなり呼ばれてびっくりしたのだろう。
ミカエル「私の力不足でお二人に辛い思いをさせてしまい、申し訳ありませんでした。」
ミカエル殿がアーシアとゼノヴィアの前に立つと、頭を下げた。そしてその行動に、イッセー以外の人が皆驚愕していた。きっとミカエル殿が謝っているのは、アーシアが魔女と呼ばれ、教会から追放してしまった事、ゼノヴィアが神の死を知り、それを隠すために異端者の烙印を押して教会から追放した事についてだろう。そう考えると、驚く必要もなかったかもしれない。
ゼノヴィア「頭をお上げください、ミカエル様。私は教会に長年育てられた身。多少の後悔はありましたが、今の生活を満足に感じています。他の信徒には申し訳ありませんが……。」
ゼノヴィアは微笑みながらそう言う。
アーシア「ミカエル様、私は今、幸せに感じています。確かに最初は辛かったですが、こんなにいい方達にたくさん出会えましたから。」
アーシアは、リアス達と俺を見てそう言った。その言葉を聞けただけで、リアスに黙って助けに行ってよかったと思う。欲を出せばそのままイッセーと付き合ってくれたらさらにそう強く思うけどね!
ミカエル「寛大なお心、感謝します。」
ミカエルさんがそう言った時だった。俺は不審な気配を感じ、自分の席を立っていた。
サーゼクス「帝君、どうしたんだい?」
帝「何かが……来る……!」
その瞬間、駒王学園の時が止まった。
To be continued.