今の私は盗賊のクリスだよっ!   作:ひきがやもとまち

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久し振りの投稿なのに申し訳ございません。エリス様とアクア様の出番が・・・ない!
本来の主人公カズマと原作サブキャラであるリーンのラブコメ書いてたら文字数を使いすぎました。必要があれば続きを書きますのでお許しください。

アニメ版3話目、カズマのスティール習得回が元ネタです。
一応は主人公同士の回ですので双方の視点を交代交代で表現してます。
文章同士の隙間に長い間が空いた時が目安となりますので、お気を付けください。


5話「本来の主人公が登場するよっ!」

「はぁ・・・変な疲れで昼まで寝てしまったぁー」

 

 ため息をつきながら俺、新米冒険者でクラスも『冒険者』の異世界転生者サトウカズマは冒険者ギルドの扉に手をかける。

 

 中からは今日も「いよっ! はいっ! どーもどーも!」などと言う調子良さげな声と、周囲ではやし立ててる野次馬たちの歓声が聞こえてくる。

 

「まーた、宴会芸披露してんのかよ、あの自称『駄女神』。たくっ、本当に自分が女神様だって言うなら俺の広告詐欺みたいな転生やり直させてくれよ。

 つくづく使えない残念美人だよな、あの借金アークプリースト」

 

 悪態をつきながら俺は、あの日から今日までの経緯を振り返る。

 

 

 

 思えば色々なことがった。

 

 普段は学校に行かず家に引き籠もっている俺が、その日は珍しくゲームを買うため町へと出て無事購入しての帰り道、道行く同じ学校の女の子が牽かれそうになっていたので助けた。

 で、結果として俺は死んで、気づいた時には真っ白な部屋にいた。そこまではいい。

 テンプレだが、よくある王道異世界転生モノの定番適展開だ。これから俺も未知の異世界で大冒険に挑まされるのかと、胸をハラハラドキドキさせながら期待しまくっていたのだが。

 

 部屋の中央に置かれた小さな事務机に『昼休み中です。しばらくお待ち下さい』の札が架かっているのを見たときには頬がヒクついたね。

 え、もしかしてここ『ドリフターズ』の異世界に通じてんの? 黒王様の世界滅ぼし軍相手に戦い抜くなんて絶対無理だよ!? て言うか、妖怪首置いてけに真っ先に首持って行かれそうじゃん現代日本人の俺!

 

 絶対にイヤだ!完全逃避だ!異世界の彼方まで逃げ延びて生き延びてやる!と、勢い込んで部屋を飛び出し制止の声にも耳を傾けずに走り続けてたら『駆け出し冒険者の街アクセル』の町中に迷い込んでいた。

 

 右も左も分からないなりにゲーム知識を総動員して冒険者ギルドの場所と情報を手に入れた俺だったが、行ってみたら登録料に1000エリス必要と言われ、冒険開始前の時点で借金しつつも無事に登録は完了。クラスが最弱職しか選べなかったのは不満だが、そのぶん幸運値が高いそうなので何とかなるだろうと軽く見て冒険に出たが甘すぎた。

 

 仲間がいない。単独でこなせそうな依頼もない。レベル1の新米冒険者な『冒険者』をパーティー加入させてくれるお人好しなどいるはずなーーいと思っていたのだが。

 いたのだ、奇特すぎることに。

 中級者パーティーで俺と同じ『冒険者』が仲間にいる物好きたちが。

 

 丁度、依頼を受けた直後にソイツが詐欺の罪で起訴されて留置所に入れられたから荷物持ちがほしいと言われ、俺は一も二もなく引き受けた。

 

 その後、依頼先の山道で初心者殺しにニアミスしたり、思わぬ活躍で先達パーティー一同から尊敬の視線を浴びせられたり、帰る途中で紅一点でウィザードの女の子と仲良くなったり色々あったが、無事にアクセルの街へと帰還してきた俺は彼らと専属契約を結んで臨時の補欠パーティーに加入することになり、今日まで比較的平穏な充実した毎日を過ごせていたのだが。

 

 今日は流石にテンションが低い。冒険者としてのポイントが貯まったから、ギルドカードで新たなスキルを拾得したいと思ったのに禄なスキルが選べなかったのである。

 

 

「あ、カズマ。やっと起きてきたんだ」

 

 悩みながらギルドの食堂に入ると、女の子の声で俺の名を呼ばれた。

 見るとポニーテールで、ミニスカートにマントという魔女っ子と言うよりかは魔法少女とかに居そうなタイプの可愛らしい少女が席に座って食事をしていた。

 

「リーンか。悪い、寝坊した。昨日の晩から悩みまくってて、あんまし眠れてないんだよ」

 

 どことなく『トトモノ』とかの冒険者育成学校が舞台のRPGに出てきそうなタイプの子だよなと思いつつ、俺は知り合いであり仲間でもあるかの女の名を呼んでから隣の席に向かう。

 

 彼女、クルセイダーの好青年テイラーをリーダーとする中級者パーティー(名前は猫的な意味合いではなく、まだ無いらしい)の紅一点。ウィザードのリーンは俺の言葉に眉をひそめる。

 

「寝不足なの? 生活が不規則になりがちな冒険者にとって職業病みたいなものだよ?

 甘く見てると怪我じゃすまない類の病気が生活習慣病なんだから気をつけなよ?」

「お、おう・・・」

 

 なぜか文明レベルが中世時代の異世界人に生活習慣病の危険性について説教されてしまった。

 この異世界、時々こうして世界観が分からなくなるイベントが起きたりするんだよな。俺の中で培ってきたファンタジーの世界観が崩れ去るような台詞は控えていただきたいのだが・・・。

 

「それでどうしたの? なにか悩み事? あたしでよかったら相談に乗るけど?」

 

 世話焼きで幼馴染み気質のリーンが、いつも通りに俺の世話を焼き始めてくれる。ホンとありがたいな幼馴染み属性。

 最近ではほとんど干され気味なダストがいつまで経ってもパーティー離れしようとしないのは、間違いなくリーン目当てだからだろうと俺は当たりをつけている。

 ダメだぞ、ゴミ。じゃなかった、ダスト。リーンを嫁に欲しいのなら、まず俺に持参金を十億エリス積み立ててからにしろ。その上でなら、嫁にやっても良いかどうか考えてやらんでもない。

 ケチな貧乏人の今のお前じゃ役者不足だ!一昨日きやがれ!バーカバーカ!

 

「・・・? カズマ?」

「おっと、いやいや何でもないんだ。心配かけてすまなかったな」

 

 いかんいかん、俺としたことが。ついつい妄想に夢中になりすぎて現実のリーンを、ほったらかしにしてしまったぜ。これでは保護者兼恋人候補失格だな。もっと励まなくては。

 そう! この世で一番の大金持ちになることこそが俺の夢!

 そして大豪邸に住んでリーンと左団扇して末永く幸せにすらすのだ!わははははっ!

 

「・・・なにを考えてるのかよく分かんないけど、程々にね?

 カズマって頭いいのに調子に乗りやすいから、後のことが心配で毎回目が離せないんだよ、あたし?」

「お、おう。なんかその・・・ごめん」

 

 誰かに心配してもらった事ってないから、こう言うときの俺はキョドりがちで気持ち悪くなる。ギルドに屯してる他の連中からも言われたことだが、彼女の反応を見るにそうでもないのかもしれないなと思えてくるから不思議だ。

 顔を俯かせて目線を逸らしながら、頬を赤くし小さな声でつぶやいてくる。

 

「あ、あたしは別にいいんだけどさ。ただその、えっと・・・そう! テイラーが!テイラーが心配すると思ったから気を使って上げてるだけだから!

 パーティーの一員が抱える厄介事は、パーティー全体にとっての大問題! パーティーが窮地に陥ったとき一番負担のかかる役職がリーダーなんだから、カズマもテイラーに余計な負担かけさせないためにも気になることがあったら、まずあたしに相談すること! わかった?わかったよね? 分かってくれてるんだよ・・・ね?」

 

 なに、このかわいい生き物。お持ち帰りしたい。んで、頂きますしたい。

 したいのだが、ここは我慢だ。まだ朝だし、ダストも近日中にまた出所してくるし。・・・今度は死刑か無期懲役にでもなってくれないかな、あのゴミ。

 

 

「いや、大したことじゃないんだけどさ。

 前にお前から、貯まったポイントでスキルが拾得できるって教えてもらってから『敵感知』と『潜伏スキル』『初級魔法』を覚えたんだけどさ。

 あれから結構経って、ポイントも貯まってきたじゃん? だから何か良いスキルをと思ったんだけども・・・」

「?? だけども?」

「何もなかった。いや、あるにはあるんだ欲しいのが。でも、貯まってるポイント数と数え合わせると不足してるし、他のは屑スキルばっかだし。手持ちの習得可能スキルに禄なのが見つからないんだよ」

「あー、そっか。確かにカズマの『冒険者』はスキルを覚えてなんぼの職業だもんね。

 アクセルの街にもあんまり多くない職業だから、あたしもうっかりしちゃってたわ・・・。ごめん・・・」

「いや、お前が謝る事じゃないんだけどさ」

 

 相変わらず真面目なリーンが、俺は大好きだ。子作りを前提に結婚してくれないだろうか? 俺はいつでもウェルカムなのだが。

 

「そういえばゴミ・・・じゃなかった、ダストの奴はスキルとかどうしてたんだ?

 アイツが覚えてるのを教えてくれた奴に弟子入りすれば、俺も結構強くなれると思うんだけど」

「アイツに教えてくれた人?

 成功率一桁以下のナンパ師と、マッチポンプでしか脅迫できないチンピラと、ゴミを商品と偽って露天商のフリしてる詐欺師と、あとそれから・・・」

「・・・ごめん、リーン。俺から聞いといてなんだけど、もう教えてくれなくていいわ。なんか夢が壊れてきた」

 

 ガラガラと。盛大に音を立てて崩れていく、俺のファンタジー感。フィクションのゲームが現実になると禄なモンにならないと言う事実が理解できた。

 

 ・・・て言うか、本気でアイツは何やってんだ? ゴミが社会の落伍者とつるんで、本物のゴミに成り下がりたいのか? 次に帰ってきたときには『例の店』で詳しく問いつめてやろうと心に決めながら、俺は最初の問題に戻って改めてリスタートする。

 

「なにかお手軽なスキルってないかな~。習得にあまりポイントを使わないで、お手軽な感じの」

「いや、そんなの有ったらみんな欲しがって、今頃『冒険者』が最人気職にまで成り上がってるんじゃ・・・」

 

 夢のある俺の愚痴に、夢のないリーンの正論が続く。

 

 はぁ~あ。やっぱり異世界とはいえ早々都合の良いスキルなんか手にはいるわけなーー

 

 

 

「あっはっはっは!

 キミ、役に立つスキルが欲しいみたいだね! 盗賊スキルなんてどうかな?

 習得にかかるポイントも少ないし、お得だよ?

 特に! ボクの一押し、女の子のパンツを盗むことに特化した窃盗スキル『おパンツスティール』を今ならシュワシュワ一杯で伝授しちゃう!!」

 

 

 

「親父さん! こっちの御大臣様にキンキンに冷やしまくったの一つと言わず何個でも!」

 

「・・・・・・・・・」

 

 

 

 

 ーーリーンのジト目に気付けないほど興奮しまくった俺は、性犯罪者になる危険性すらガン無視して巨乳の女盗賊に持ちかけられた誘いの手を取った。

 高い授業料だが惜しくはない。たかだか牢屋に入れられるかもしれない危険性なんて、女の子のパンツを盗めるスキルと比べたらカスにも劣る価値しか持たない!

 冒険者は、危ない橋を渡ってなんぼ! ゲームで散々に叩き込まされた廃人の本能が俺を突き動かす!

 

「あ、あなた様はいったい・・・!?」

 

 俺は目の前に降臨した真の女神様の眩しい姿に俺は拝むようにして縋りつき、真名を問う。

 

 

 彼女は眩しすぎるほど神々しい笑顔で己の真名を開陳する。

 

「今のボクは盗賊のクリスだよっ!!」

 

 

 ーーこれが異世界転生を夢見て放置された転生者な俺サトウカズマと、第二の人生を最後の最期まで振り回してくれる最大にして最悪のトラブルメーカー女盗賊クリスとの運命の出会いみたいなものだった。

 

 

 改めて思う。やり直したいと。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーとまぁ、先輩冒険者が後輩に技を伝授する場所として定番だから、酒場の裏手に来てみた訳なんだけども」

 

 キョロキョロと、ボクは右見て左見て上見あげて下見おろして、最後にカズマ君(って言うらしい。さっき聞いた)の隣で訝しんでるウィザードの女の子(リーンちゃんって言うんだって! 妖精女王様のお名前みたいだよね!かわいい!)のミニスカートから覗ける細くて白い絶対領域を視界と網膜に焼き付けて焼き印した後、改めてカズマ君に視線を戻す。

 

「広場って名前が付いてるのに全然広くないよね、この冒険者ギルドの裏手にある広場って。両隣の家の壁にロープ結んで洗濯物が干せちゃう程度の幅しかないし」

「ま、まぁそうですよね確かに・・・」

 

 なぜか戸惑われちゃった。不思議だね。

 

「とまぁ、そう言う細かいことはさておいて。

 カズマ君は今の時点で敵感知や潜伏は習得済みだから、教えるのはボクの一押し『おぱんつスティール』だけでいいのかな?」

「ウッス! クリスさん、よろしくお願いします!」

 

 体育会系のノリで返してくるカズマ君。

 う~ん、見た感じで如何にもなオタクゲーマーを連想してたんだけど・・・違うのかなぁ? ボクって昔から運動部との相性最悪なんだよなぁ。女子マネージャーの素晴らしさについて小一時間ぐらい語っただけで出禁くらわされちゃうぐらいには。

 

 ま、いっか。それもやってみれば分かることだしねぇ~。

 とりあえずは今を楽しもうぜぇ~♪

 

 

「それじゃあ今から見本を見せるね。

 『おぱんつーースティール』!!!」

「うおわっ!?」

 

 突如として光が弾けて世界に目眩ましをかける!

 絶対の理を一時的に阻害して、本来は指定できないスティールの窃盗対象を目の前の相手のぱんつに限定指定する!

 

「まぁ、光はボクが気付かれないように投げた、小型爆弾の爆発なんだけどね」

「俺の驚きと感動を、半分だけでいいから返せ!」

 

 怒鳴るカズマ君。ま、わかるけど。

 

「で、どうだった? おぱんつ脱げた?」

「え? ・・・いや、履いてますねまだ。もしかして失敗する確率とか高かったりする技なんですか?」

 

 訝しげな顔で自分のオマタの辺りをサスサスして履いてることを確認してるカズマ君。

 うん、ごめん。ぶっちゃけスゴく気持ち悪い。きめぇレベルかも。

 

 ・・・それにしても変なこと言いだす人だな~。

 

「いやいやカズマ君落ち着いて。冷静になってよく考えてみるんだ。

 普通に考えてーー男の子のぱんつなんか盗みたくなんかないでしょ?」

「正論だ!正論すぎる! 俺が間違っておりましたーーっ!!」

 

 うんうん。わかってもらえて嬉しいよカズマ君。

 それじゃあ正答は誰のおぱんつを盗んだのかはわっかるっかな~?

 

「・・・あれ? 俺のぱんつじゃないとすると、クリスさんは盗んだ本人で、ここには俺とクリスさんとリーンしかいな・・・はっ!? い、いや違う!違うぞリーン! 俺はなにも気付いてない! 気付いてなんかいないんだぁぁぁぁぁぁぐほぇはぁっ!?」

「バカーーーーーーーーーーッ!!!!!!!!!」

 

 ・・・う~ん。素晴らしきかな王道ラブコメ展開の風景。ボクはここにアヴァロンを見た。

 

「う、う、う・・・お、俺はもしかして、リーンに嫌われてしまったんじゃないのか? まさか「今夜から馬小屋で隣に寝るのはやめてね、キモいから」とか言われたりするんじゃ・・・ああ、俺はなんて不幸なんだーー」

「あっはっは! だいじょぶだいじょぶ!

 でも、どーしても心配だと思うんだったら、はいコレお守り。

 盗み取ったばかりの『さっきまでリーンちゃんが履いてた生パン』だよ」

「ヒャッハーーー! 当たりも当たりだ! 大当たりの大ラッキーだぁぁぁぁっ!!

 俺は世界で一番ついてる強運の持ち主なんだぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」

「うんうん。元気がよくて頭も軽いし調子もいい男の子は、お姉さんも大好きだぞ♪」

「ありがとうございまっス!クリスさん! これからもお宝の提供お願いしまっス!」

「ふっふっふ。任せておきたまへ~!ドヤァッ!」

 

 楽しそうな声が狭い広場に響きわたって洗濯物干してた家のおばちゃんに怒られて、ごめんなさいしてから改めて。

 

 

 

 

 

 

「さぁ、これで『おぱんつスティール』は、キミにも習得可能に! 覚えるも良し!覚えないも良し! 全てはキミの選択しだい!

 それでは選ぶがよい冒険者カズマよ! キミが進むべき道はキミだけが選べるんだっ!」

「おおおっ! なんかすっごく異世界っぽいですねソレ! 超俺好みかも!」

 

 よーし! 使うぞ!覚えるぞ『おぱんつスティール』を!

 これ使って女の子のパンツを盗みまくってやる! ギルドで受付してる巨乳お姉さんのパンツとか! 例の店で働いてる従業員さんたちのパンツとか!

 偶に見かける、いけ好かないイケメン剣士の取り巻き二人の履いてるパンツとかを!

 

 俺は新しく登録されたスキルを習得するため冒険者カードを取り出して中を確かめ、ふと気付いて手を止める。あれ? これって・・・・・・。

 

「あの、クリスさん。なんか新しく登録されたスキルがふたつあって、ひとつは『おぱんつスティール』って書いてありますけど、もうひとつは只の『スティール』って出てるんですが・・・」

 

 そうなのだ。今確認したカードに登録されたばかりで赤く表示されている“ふたつの”窃盗スキル。

 指で押すと習得に必要なポイント数と一緒に二つの違いが明確に分かたれる。

 

『窃盗』1ポイント。

 習得すれば現時点で使える『敵感知』『潜伏』にプラスされて『スティール』などの盗む系技術が使えるようになる。

 

『おぱんつスティール』3ポイント。

 女の子のパンツが盗める。女の子のパンツしか盗めない。それだけ。

 

 

「なにこの変な格差!?」

 

 なぜ普通に汎用性が高そうな『スティール』よりも、相手がめちゃくちゃ限定されまくる『おぱんつスティール』の方が二倍以上のポイント数なんだ!? レアか!レアだからなのか!?

 性能よりも希少価値の方に重点置くなんて、この世界の女神様とやらはコレクター精神の持ち主だな!

 

「ああ、それ? 単にスティール使ってパンツばっかり盗み続けてたら、気付いたときには新しく追加されてたんだよね。

 別に特許料とか取らないから、気にせずに習得しちゃって全然かまわないよ?」

「今の俺の驚き完全無価値にするつもりですか!?

 夢がないなぁ、本当に!」

「やってることは下着泥棒だからねぇ。夢だのロマンだのを語れるほどには、世間に認知されてはいないって。基本的にエロは個人的趣味趣向内に収めるべき変態行為です」

「今までの自分のことも完全無価値にして良かったんですか!?」

 

 夢のない異世界だな!今まで何度も思ってきたけど、ほんっとーに夢のない異世界だよな、ここって!

 

「たぶんだけど、どっちを選んでも大丈夫だと思うよ? 普通のスティール習得したってパンツばっかり盗んでたら名称が知らない間に『おぱんつスティール』になってるって。たぶんだけど」

「『たぶん』多くないですか・・・?」

「気付いたのがイベント発生からだいぶ経った後みたいだからねー。冒険者カードなんて普段から確認なんてしないし、ぜ~んぜん気付きませんでしたよー。って、受付のルナさんに報告したらぶっ飛ばされた」

「でしょうね! 管理職にしてみたら超重要案件ですもんねレアスキル発生イベントって! それ気付かずに放置してたら本部の人に相当怒られたでしょうねルナさん!」

 

 ラノベでは定番ネタだけど、問題児を抱えることになった冒険者ギルドの受付さんって大変だな! モモン様ぐらい超優良冒険者だったら楽なんだろうけどな! 別の意味で超大変そうだけども!

 

「ささっ! とりあえずはズズィッと取得しちゃって下さいな!

 オススメはもちろん『おぱんつスティール』だけど、普通のスティールとって自分好みに育てるのだって全然ありだよ! 冒険者は自由!」

「お、おおぅ。・・・さっきから言ってることだけは格好いいんだよな、この人。

 ーー内容がすさまじく格好悪いけど・・・」

「さぁっ! カズマ君! キミが決めろ!」

「言い方変わっただけで、なんか別の意味合いの言葉になっちゃってる!?

 あれ!? サトシとピカチュウの絆って実際にはこんなもんだったの!?」

 

 すげぇっ! 原文を二文字変えただけで全くの別物としか聞こえねぇ! ただの独裁者だコレ! ヒトラーだよ!あるいはギレン総帥! 異世界人のクリスさんには理解できないだろうけどな!

 

 

 

「・・・う~ん、しかし改めて選ぶとなると正直迷うな。どっちにするべきか・・・」

 

 『おぱんつスティール』には正直ロマンを感じる。女の子のパンツ限定で盗めるスキルって、キモヲタゲーマーにとっては永遠の夢だ。

 パンツから始まる恋もあるのがラブコメだから、もしかしたらパンツを盗むことで発生する恋だってあるのかもしれない。

 可能性は低い。だが、賭けてみる価値はある。・・・う~むむむむむ・・・・・・。

 

「あ、ちなみにだけど。ボクは毎日『おぱんつスティール』を同居してる女の子に使って脱がせてはセクハラして殴られてます。当たれば死ぬ必殺のゴッドブローで」

「なにしちゃってんですかアンタは!? それ聞いた後で一体誰が『おぱんつスティール』選ぶと思ってんですか!?」

「んでね、毎回殴り飛ばされながらボクの耳に届いてくるんだ。

 『・・・直接言ってさえくれたら手渡ししてあげるのに・・・クリスさんのバカ・・・』って」

「『おぱんつスティール』! キミに決めたーーっ!!!」

 

 しゅうぃぃぃぃぃぃっん!

 

 冒険者サトウカズマは、新たなスキルとして『おぱんつスティール』を習得した!

 

 よっし! 今日から俺たちは友達だ!一緒にがんばろうぜ『おぱんつスティール』!

 

 

 

 

「あ、でも後1ポイント余ってるんだし、折角だから普通のスティールも習得しとこっと。ほい、ポチっとな」

「ちゃっかりしてるね! さすがはカズマ君! ボクの選んだ漢だよ!」

 

 ふっ、照れるぜ。

 

 こうして俺は生涯の相棒である『スティール』と、永遠の朋友『おパンツスティール』をゲットしたのだった。

 

 ーーおパンツ、ゲット(予定)だぜ!

 

 

 

 

 

予想外に長くなったので一旦切って続きます。所謂ひとつの、引く(マンガ用語)


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