今の私は盗賊のクリスだよっ!   作:ひきがやもとまち

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原作通りだと書き辛く、完全に無視しようとすると罪悪感に縛られる。
どうすれば良いかで八方ふさがりの結果、コラボ展開始めました!『魔法陣グルグル』です。

基本的にストーリーはグルグルの方を踏襲して、特定の主要キャラだけ「このすば」から拝借してくるつもりでおります。

最初の時点では称号『勇者』で本職は盗賊の主人公『ニケ』の代わりをクリスが務め、
ミグミグ族の設定に一部変更を加えた一族の生き残りの魔法使い『ククリ』がエリス様と交代してます。原作の二人は出てきませんのであしからず!


この魔法陣「このすば」にコラボ作品を!

「○○○○さん、ようこそ死後の世界へ。あなたはつい先ほど不幸にも亡くなり、この世界での人生は終わってしまったのです」

 

 いきなり真っ白な部屋の中にいたボクは、目の前で椅子から立ち上がって手を合わせている綺麗な女の人から、そんなことを告げられた。

 

「私はあなたに新たな道を案内する女神、エリス。この様な不幸に心を痛めるあまり、せめてもの救いをあなたにもたらすため天界より降りてきた者です。

 悲しき偶然によって命を奪われた心優しき人・・・・・・せめて私の力で次は平和な時代の日本で裕福な家庭に生まれ、なに不自由なく暮らせるように転生させてあげましょう。

 あなたが望むなら、私はどんな願いでも叶えてあげたい・・・・・・」

 

 慈愛に満ちた心優しい微笑みとともに言い切る女神エリス様は、まさに女神様の理想型。男の夢の極地。この人を前にしてヤローが望むべき物は只一つのみ!

 

 

 

「はいっ! 転生とかどうでもいいので女神様の穿いてる生パンティ、おーくれっ!」

 

 

 

 

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

 

 

 

 ウーロンを彷彿とさせる(と思う)ボクの発言に、女神様は一瞬前まで浮かべていた笑顔を凍り付かせたまま停止してしまう。

 やがて再起動したときには、明らかに挙動不審になってしまってた。

 

「い、いえあの、私、そういう願いはちょっと・・・・・・あ、あれ~? お、おかしいなー・・・。アクア先輩がいなくなったから労せず手に入った生活の気楽さに心がダラケちゃってたのかな~・・・? こういう反応は想定外って言うか、マニュアルに記載されてないと言った方がいいのか・・・・・・あ、あれ? あれ? あれあれあれれ~?」

 

 なんだか混乱具合が著しいね! 混乱している女僧侶っぽい格好している美少女女神様ってかわいいよね! 大好き!

 

 でも! 今はそれより何よりパンツが欲しい! パンツ!パンツ!おパンツ!

 

「どうしたの女神様? 早くボクに穿いてるパンツを脱いで差し出して! 脱いだ直後の生パンツがボクはとっても欲しいんだよ! 第二の人生や転生よりもずぅっとね!」

「うっ・・・。そう言われてしまうと、女神としては非常に断りづらいんですけど・・・。

 悪魔だったら等価交換に見せかけた不平等契約が基本だし、人の魔術師だったら互いの求める物が別次元過ぎてますし、神様が人間に与えるときには何も対価を求めないのが基本・・・。

 求めるときには罰則つきでの強制執行以外はすべて特例認定されちゃうし・・・ああ、どうしよう!」

 

 大混乱♪ 大混乱♪ 大根を両手に持って踊りまくるよ! 大混乱♪

 

「う~~~~・・・・・・。わ、わかりました! 私も女神です! 一度言ってしまった神託を取り消すような女神失格行為は犯しません!

 ○○○○さん! 私はあなたにパンツを渡・・・・・・さない代わりとして、超優遇措置を施した天界規定違反のチート転生権をプレゼントして差し上げましょう!」

「ーーーあれ? 今さっき自分で一度言ったことは取り消さないって・・・・・・」

「さぁ、いきますよ! 遠慮なさらないでください!

 大丈夫、あっちの異世界には私ソックリの下品な胸をした先輩女神がいった後ですから『女神の穿いてたパンツ』を今無理して手に入れる必要性は0以下です! だから大丈夫!」

 

 うわ~。女神様、すっごくテンパってるぅ~。

 

「では、行きます! 転生の呪文詠唱開始!

《パ、パ、パンプキン、ポン。

 デンデケデンデン、デン。ハッ》!」

 

 うん、女神様。それって明らかに『ラストバイブルⅢ』のルディだよね? 

 

 

 何はともあれ、こんな訳分かんない呪文によってボクは異世界に飛ばされたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 かつて せかいは やみのまおうのきょうふに おおわれた

 

 ひとびとが あきらめかけた そのとき

 

 ふしぎなまほう 「このすば」をつかう いちぞくによって

 

 まおうは ふういんされ せかいは へいわを とりもどした

 

 

 やがて ひとびとから かれらのきおくは うしなわれ

 

 いまや 「このすば」のことを おぼえているものは ほとんどいない・・・

 

 

 

 

 

 

 

 

「ーーって、なんですか↑のプロローグは!? あれ? 私がもともと担当していた異世界って、こんな感じでしたっけ!?」

「呪文が適当すぎたみたいだね~。

 うーん、魔法の発動失敗して女神様も一緒に巻き込まれてるから、ルーラ唱えた人より下に位置する弱い人間はスカートの中のパンツを見上げ放題、ノゾキ放題だから気持ちがいいなぁー」

「ぎゃあああああああああっ!? 舞い上がって変な気起こしちゃうじゃなかったーーーっ!! うわーん! 私のバカバカ、おっぱい美乳ーーーっ!!(>ュ<。)ビェェン」

 

 泣いてるし慌ててるのに、小さいとは決して言わない意地っ張りな女神様モエ~ん。

 

 

 

 

 

 

 

 ーー都から遙か西、『ジミナ村』という小さな村に奇妙な幻獣の伝説があった。

 村人たちはそれを『このすば』と呼び、起こしてはならない神として恐れ、丁重に祀っていた・・・・・・。

 

 

 

 ある日の朝の『ジミナ村』で。

 

 

『勇者募集!!

 魔王を倒した者に金5万を与え、

 コーダイ国の王子とする。

          コーダイ国王』

 

 

 朝早くお城からきた兵士さんが立てていった看板に書いてある文字。

 それを見るため村の入り口付近に集まっていた村人たち数名が、なにやら世間話をし始めている。

 

「あやー、都の王様のおふれだ。ーーーでも、マオウって何だべ?」

「立派な木の立て札だべなぁ。風呂の薪にでもすべぇか」

「そりゃ待つべ。勇者マニアのバドさんが見たら喜ぶべよ」

 

 立て札の関しては『判断保留』と結論づけた村人たちは、魔王や勇者なんて言う非日常レベルの話題から実生活での仕事と収入という現実的な日常へと心を帰還させて話題の方向性を変える。

 

「さぁ、メケメケの世話に戻るべ。勇者よりオマンマだべよ」

 

 世界を滅ぼす魔王退治より、近く納品予定の家畜たちの世話。

 貧しい農民たちは、世界中から商品が集まってくるコーダイ城のウルガ13世よりも、お金に関してはシビアだった。

 

「なまけていると「このすば」様に祟られるべ」

「ハハハ! 「このすば」様は迷信だべ!」

 

 村人たちが楽しそうに笑い合って、仕事合間の息抜きをしていたところ。

 

 

 

 

『「このすば」は迷信ではないぞよ!!』

 

 

 

 

 空気を読まない魔法オババがあらわれた!

 

 

 ・・・・・・だけで何もせずに去っていった・・・・・・。

 

 

 

 

「「「・・・っくりしたー! 村はずれの魔法オババでねぇか。相変わらず変わり者だべなー」」」

 

「んだんだ。ーーそして、相変わらず空気読めてないべ」

 

「「んだんだ、まったく持ってその通りだ」」

 

 

 話していたら大声を上げて乱入してくる空気読めないバアサンの登場により、村人たちが団結力を高めていく。

 

「あ、バドさんが来たべ」

 

 いつもいつでも空気読めない魔法オババが立ち去った後、次にあらわれたのは『毎日じゃないけど趣味が絡むと空気読めなくなるマニア趣味の持ち主』の村人(男)バドだった。

 

「いい知らせだよバドさん。この立て札を見てみるといいべ」

「ん!? これは・・・・・・っ!!!」

 

 ズボッ! ずどどどどどどどっ!!!!!

 

 

「・・・やっぱ立て札ごと引っこ抜いて持って行っちまっただよ。

 薪にするために運んでる途中でなくて良かったべなー」

「んだんだ。ーーんだけど、こりゃあ奥さんのレナさんも災難だべなー。また『超勇者大戦』の調停役やらされるだべから」

「んだんだ、ほんに勇者なんてモンに関わり合うべきじゃねぇべ。オラたち農民は畑作ってメケメケ世話して売って、オマンマ食いあげられなきゃそれでいいべ」

「「まったくだぁ、まったくだぁ」」

 

 

 世界が変わり、時代や社会が如何に移ろおうとも、農民たちが逞しいという真理だけは変わりようがないらしい・・・・・・。

 

 

 

 

 

 

 

 

「おーい! クリス! クリスはいるかーーーーーーーーーーっ!!!」

 

 どかん! どたどたばたん!

 

 バドは自分が購入した自宅の扉を蹴り飛ばして開き、生まれたその日に勇者としての素質を見いだした愛しき娘の名を大声で叫ぶように呼んだ。

 

 

「勇者クリスよ! ついに旅たちの時が来たぞ! お前は今日から勇者になるのだ!」

 

「いやだ! ボクは勇者になんかならない! ボクがなりたいのは『盗賊』だから!」

 

 

 

 

 ・・・どかばかぼかすか、ズタボロバキン!

 

 

 

 

「・・・はぁ、はぁ・・・また腕を上げたな勇者よ・・・ワシはお前の父として誇らしい気持ちでいっぱいだぞ・・・」

「・・・ひぃ、ふぅ・・・お父さんもね・・・。銀髪の巨乳盗賊美少女の娘を持つ、勇者志望だった父親にしては少しぐらい出来るじゃないか・・・」

 

 

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「・・・」

「・・・」

 

 

 

「「やはりお前(キミ)とは今ここで決着をつけなくてはいけないようだな!(だね!)勇者よ!(盗賊の父親よ!)」」

 

 

 

 再び対決!! そして遂に決着!!!

 勇者(他称)VS銀髪の巨乳盗賊美少女(志願者)!!!

 

 相容れない正義を掲げる二人の対決! 決着は如何に!?

 

 

 

「やめなさいって、バカ父娘ども」

 

 どっかーーーーーーっん!!!

 

 勇者(盗賊)の母レナは爆裂魔法『エクスプロージョン』を唱えた。

 

 勇者(修行したことあるだけ)と、銀髪の巨乳盗賊美少女(生まれ変わる際に見た目だけ好み通りになった)は家の半分ごと吹っ飛ばされていった。

 

 

「まったく、何かというと勇者か巨乳盗賊がいいかで揉めまくるんだから。少しは私みたいに生活上の必要性から爆裂魔法を覚えられる魔法使いの修行でもしたらどうなの?」

「う、うう・・・見事なエクスプロージョンだった・・・腕を上げたな、我が永遠の宿敵にして世界征服をもくろむ悪の大魔法使いレナよ・・・」

 

 《エクスプロージョン》

 

「(どっかーーっん!)うおわぁぁっ!? 今度はワシだけなのかぁっ!!」

「人を悪人呼ばわりした罰よ」

 

 勇者の(盗賊の)父親(だけ)は空の彼方へ飛んで行かされてしまった。

 

 

 ・・・・・・そして全速力で走って帰ってきた!

 

「ぜぇ、はぁ・・・おーいクリス! ・・・げほっ、ごほっ。・・・クリスはいるかー!」

 

 勇者になりたかった親父は最初からやり直した!

 勇者マニアによる勇者への憧れは半端じゃなさそうだ!

 

「もー、お父さんはどうしていつも盗賊をバカにするのさ! 盗賊ってすごくイイじゃん! なんとなくだけど!」

「バカモノ! わしはな・・・若い頃、勇者になるつもりだった・・・修行もした・・・だが肝心の魔王がいなかったのだ! 今の世は魔王がいる! 幸せだーーーーっ!!!」

 

 勇者になりたかったのに村人になってしまった中年親父は夢やぶれた原因を他人のせいにした! さらには娘に叶わなかった自分の夢の代償行為をするよう求めだした!

 これでも彼は若い頃に勇者を目指して修行していた過去を持つ男である!

 

「何を言ってるんだい父さん!? はじめるのに遅いなんて事はないんだ! 昔叶えられなかった夢を今叶えたっていいじゃないか!?

 勇者になりたかったけどなれなかった親父が、年をとってから勇者を目指して旅に出て魔王を倒す勇者にまで成長する! 格好良すぎる展開だよ!」

「なっ!?」

 

 勇者(盗賊成分のほうが多め)は特技《口八丁手八丁》を使った! 勇者の親父は心揺さぶられそうになっている!

 

「わ、ワシが勇者・・・本当に・・・本当にワシが勇者として旅立つときが来たというのか!?」

「そうだよ父さん! 諦めなければいつかきっと夢は叶うんだ! そう信じて生きてさえいればね!」

 

 勇者(盗賊志望にしてTS転生者)は固有スキル《前世知識》を使った!

 魔王にして勇者でもある大日本帝国陸軍大尉の言葉は、効果抜群だ!

 

「だから止めなさいってバカ父娘。稼ぎ頭が勇者になるために旅立ったりしたら、我が家の家計はどうなるの」

 

 レナの魔法《エクスプロージョン》。

 家内最強の魔法使いの前に勇者父娘は全滅させられてしまった・・・・・・。

 

 

「ま、まぁ、そんなことよりもだ。ーー勇者よ、わしは空から流れ星が落ちてきた夜にお前を授かり確信したのだ。この子は将来、絶対に勇者として大成するから育成方針は勇者でいくべきなのだと・・・!!

 ーーそれなのに、お前はどうして盗賊などになろうとする!? なぜ勇者になろうとしない!? どうしてワシが制作した勇者の胴着を着てくれないのだっ!?」

「ダサすぎるから!」

 

 ・・・勇者(志願者だった落伍者親父)は即死攻撃を受けて死んでしまった・・・。

 

「ボクはやっぱり盗賊こそ最高職だと思うの♪

 だって、女の子のパンツ盗めまくるし♡」

「まぁ、クリス! 母さん、盗賊なんて許しませんよはしたない」

 

 レナお母さんも娘の夢には反対らしい。

 「パンツ盗みたいから盗賊になりたい」などと言い出す娘の夢を応援する母親がいたら最低すぎるので、良いことかもしれないけれど。

 

「冒険の主役はなんといっても勇者よ! 競争率は高いけど、勇者でカル~ク一発当てれば将来安心なんだから! 母さんの老後生活的にも一押しの最高職は勇者しかないわ!」

 

 家計を預かるお母さんの金銭感覚はシビアだった。

 しかし、自宅の屋根が吹き飛んでいるのはレナお母さんの使った魔法が原因だ!

 

「え~、ボク競争したくな~い。もっと楽した~い。

 じ~んせ~い、らーくー好ーきー、苦ーはいーやーだー♪」

「・・・もう、まったく。この子のこう言うところは誰に似たんだか・・・」

 

 

 

 

 ・・・その後、レナ母さんのヘソクリから400リンを前金として払ってもらい、ひとまずは勇者として旅立ってみることを承諾したクリスは昼食の後、旅立ちの昼を迎えていた。

 

「よかったわ、行く気になってくれて」

「・・・いや、あの、レナさん? 払ったお金がお前のヘソクリって事になってるけど、あれはワシの隠してたヘソクリ・・・ぶほぉっ!? つ、強くなったな我が愛しき人よ・・・ワシは伴侶として誇りに思・・・う・・・ぐふっ」

 

 バドさんは妻の肘鉄でたおされた。

 

「クリスや、まず魔法オババの家に寄りなさい。村を出るときは魔法オババの家にあいさつに行くのがしきたりなのよ。なんでかは誰も知らないんだけどね。

 所詮、古くから続いてるしきたりなんて惰性で守り続けるものだから意味なんて知らなくても守っておけば問題起きなくて楽でいいのよ」

「うん、わかったー。そうするー」

 

 勇者は、閉鎖的な価値基準を持つ村で生きていくためのコツを伝授されて旅だった。

 さぁ! まずは同じ村の中にある魔法オババの家に行くところからだ! 村から一歩も外に出てないけど、旅立つ決意をしたところから旅だったことになるものだからだ!

 

 ガンバレ勇者(盗賊かもしれないけど)! 負けるな勇者(盗賊以下略)!

 異世界がキミに救われる日を待っている!

 

 

 

 

 

 

 

 ・・・・・・そうこうしている間に到着していた。

 『魔法オババの家』の玄関ちかく。

 

 

 蔓草が生い茂り、お化けでも出て来そうなオドロオドロシい雰囲気が辺り一帯に漂っている・・・。

 

 

「ごめん下さーーーーーーーっい!!!

 遊びに来たのでお茶とお菓子でもてなしてもらいに来ましたーーーっ!!!」

「図々しすぎるガキじゃな!!」

 

 ・・・しかし、盗賊勇者(もう合体させちゃえ、面倒くさいから)には関係なかった!

 堂々と門を開け放ち、魔女っぽく驚かそうと隠れていた魔法オババがツッコミ入れるために出てこざるを得なくなるほど潔くて元気がある挨拶の仕方だった! しかし礼儀作法的には0ポイントである!

 

 

「ほぅ~~~、お前が勇者か!」

「銀髪の巨乳盗賊美少女です!」

「・・・・・・ほ、ほう。そうかぇ、そうかぇ。その歳で勇者か盗賊として旅立とうなんて、命が惜しくないのかぇ・・・ケッケッケ」

「あ! 忘れてたけど、ボクの一人称による地の文自己紹介は旅だった後の本番戦からね☆」

「誰にむかって宣伝しとるんじゃ!?」

 

 空気読まない魔法オババは、魔女らしい言動にはこだわりを持っていた。

 それをガン無視してくる盗賊勇者との相性は非常に悪いようだ!

 

「・・・まぁ、良いわ。使命が果たせて肩の荷を降ろせると言うのであるなら、この程度の無礼は大目に見てやるとしよう・・・。

 ーーさて、勇者よ。おぬしには、この村に伝わる「このすば」を授けよう!」

「??? なんで?」

 

 

 シーーーーーーーーーーーーーーッン・・・・・・。

 

 

 盗賊勇者の一言で時が止まってしまった・・・。

 

「い、いや「なんで」と聞かれると答えづらいのじゃが・・・・・・とにかく! この村が今日まで隠し通してきた古代の魔法「このすば」をお主に授ける!

 よいな!? わかったな!? いまさらイヤとか言って帰ろうにも扉は閉めてしまったから受け取るまで帰れんからな!?」

「あー、なるほどー。勢いで退路ふさいじゃったから、引き下がることが出来なくなっちゃったんですね~。わかりますー」

「・・・察しのいいガキは嫌いじゃよ・・・」

 

 盗賊勇者は皮肉られたが、誉められたと思っておくことにした。

 

「「このすば」って、魔法だったの?」

「さよう。「このすば」はその昔、天から降りてきて人と暮らすようになった古の民たちが使っていた古き魔法。

 己の体内に眠っている神の血を呼び覚まし、天から力を借りることで本来もっていた神としての力を一時的に回復することが出来るのじゃ。

 神の血を引く者たちにしか使えぬ魔法故にその威力はすさまじく、人々の欲望を刺激して多くの悪人たちから狙われる秘術として封印しなければならなくなるほどに。

 ・・・その古の一族最後の生き残りをワシは13年前に託されて、今日までこの家で育ててきたのじゃ。

 じゃが、託していった者の予言によれば13年後の今日この日にワシの家を勇者として訪ねてくる13歳の盗賊になりたい願望を持つ少女は世界を救う勇者じゃから、託された最後の生き残りを預けて楽隠居しちゃっても構わないとの事じゃったような、違っていたような内容じゃったから勇者として旅立つお主に預ける。よいな? わかったな?」

「うん。とりあえず、早いところ押しつけて楽になりたいって気持ちだけは、もの凄くよく分かったよお婆さん」

「ごほん。余計な言葉がめちゃくちゃ引っかかるが、わかって引き受けてくれるならそれでよい。今連れてくるから待っておれ」

 

 たったった・・・バタン。

 

 ーーーーきぃ~~~~~~~・・・・・・っ

 

 

「待たせたのぉ。この子が古の一族、最後の生き残りにして女神の血を受け継ぐ純血の巫女『エリス』じゃ」

 

 

 

 扉が開いて魔法おばあちゃんと共に出て来たのは、銀髪ロングヘアーに羽根飾りのついたシスター服。控えめだけど形のいいオッパイと、優しそうな青色のタレ目をしている女の子。

 

 遙かな昔、この異世界に転生させてもらった時に生き分かれたはずの女神エリス様がーーー手錠と鉄球付きの足枷で拘束されながら出て来てボクと目があった。

 

 

 

「うふ。うふふふふふ、うふふふふふふふふふふふふふひひひひひひひひひひひひひ」

 

 

 暗い暗い穴の底で長い間、くるべき人を待ち続けて狂気に走っちゃった人の重い想いが、その笑い声には込められてたんだ。

 

 

 

 

 

 

「・・・とまぁ、そういう理由によりあの子は人目に触れさせることなく育てねばならず、誰かに見られたらマズいので『倒すべき人を倒せば、私はいるべき場所に帰れるはずなんです!』と叫んで外に出たがるあの子を、ワシは13年間ずっと隔離し続けなければならなかった訳じゃ。

 ・・・大変だったんじゃぞ~? 毎日のように脱走しては誰かを倒しにいこうとするのを魔法使った全力戦闘で倒して地下牢へと戻さなくてはならない日々・・・。

 おまけにあの子は魔力がバカ高く、ワシ程度の魔法で拘束し続けるのも倒し続けるのも限界に達してきておる。

 温厚な性格故に攻撃魔法が得意ではなかったから良かったものの、それさえ使いこなせるようなってしまえばワシどころか魔王でさえも危うい少女など老い先短い年寄りに預け続けるものではない。

 ーーだから、頼む勇者よ。あの子を引き取ってワシを幸せにしてやってはもらえぬか・・・? この通りじゃ・・・」

 

「旅立つ時から一緒に過ごすヒロイン枠の美少女プリーストから命を狙われながらのスタートか~。うーん、斬新だなー」

 

 

 ボクと魔法オババさんの二人は瓦礫の山と化したオババさんちの屋根(だった物)に座って感慨深げに話してた。

 

 エリス様は久しぶりの再会でハシャぎ疲れたのか、ボクの足下でグルグル巻きになって「うー!うー!」言ってる。盗賊サイキョー!

 

 

「いや~、前途多難な旅のはじまりだー。どうなることやら不安と心配で押しつぶされそうだよね、うんうん」

「・・・そう言うのであれば、縛られて動けないエリスのスカートめくって尻を撫でるの止めてやったらどうなのじゃ・・・? 完全に恨み度MAX越えすぎとるじゃろ、エリスからお主への好感度・・・」

 

 う~ん、この手触り・・・イイねぇー♪

 

 

 

「うー!うー! ううううぅぅーーーっ!!(お尻の仇は必ず取りますからねーっ!)」


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