長い間更新が止まっている三作品『今の私は盗賊のクリスだよっ!』『IS学園のマシンガンラバー』『『この女神にメイドが祝福を!「ずっと目覚めなければよかったのに」「やめてよね!?」』』を更新させることにしました。
最初の一作目は『クリス』です。
新章書いておきながら時間軸を原作に戻した『キャベツ回』を出してしまって申し訳ございません。
前々回で申しあげました通り、自分と原作者様の作風の違い(お互いに変なところで個性が強い気がしています)により原作の流れを意識しすぎると書けなくなるので思い切って自分なりの勝手な介入の方へと舵を切ってた元々の案で書かせて頂きました。
『お尻大陸編』は辞めるつもりはありませんが、元々あれ自体が独立したオリジナル作品として企画していた作品でしたので完全版を別作品として別けさせていただくつもりでおります。
我が侭に振り回してしまって申し訳ございませんが、正直やり辛かったので・・・。
ーー拝啓。お父さん、お母さん。僕が亡くなっちゃった後も夫婦二人、お元気にハッスルしてらっしゃいますか?
ボクは今、異世界にボク好みの美少女女神さま二人と一緒に来ています。
お父さんたちとは血の繋がらない赤の他人になっちゃう代わりに、銀髪巨乳の美少女に生まれ変われたので毎日がスゴくスゴく愉しいです!
家は賃貸で、仕事も日雇いの派遣しか見つかってませんけど、元気とやる気だけはオッパイいっぱい胸一杯に詰まりまくっていますから大丈夫です! 心配しないで良いですからね!
では、また近い内にお手紙書きます。届きませんし、出すこともできませんけど、こう言うのは気持ちが大事な問題です。文字は手で書く習慣はなるべく続けたいですよね! 敬具。
PS.
PSってなんかかっこいい感じで書きたくなるって言ってた坂本辰馬さんの気持ちが今わかったよ!
ウーーッ! ウーーーッ!! ウーーーッ!!! ウーーーーッ!!!!
「・・・ん? なんだろうねこの警報? なんだか聞き覚えがあるような?」
ボクは昼食を食べてる手を止めて、フォークを口にくわえながら警報を流してるアナウンスに耳を傾けるよ。
『緊急クエスト! 緊急クエスト! 街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください! 繰り返します。街の中にいる冒険者の各員は、至急冒険者ギルドに集まってください!』
・・・・・・季節は夏。
4月が終わって5月に入り、一般的には「そろそろ夏がくる季節よね~」なんて言われ始める時期・・・と言うことは!
「アクア様! エリス様!」
「クリス! ・・・遂に・・・遂に来たわねこの時が!」
「ええ、先輩! 待ちに待ったこの季節が! 一年に一度のお祭りの時間がやってきたのです!」
二人の女神さまたちも、殺る気満々だね! これは今年も荒れそうだぜぃっ!!
ジャキィィィッン!!!
緊急クエストを受領しました!
クエスト難度EX
《街に飛来したキャベツを全て収穫せよ》
内容
タイトル読めば解んだろ。読めよ。
報酬
品質次第ではあるが最低でも一玉1万エリスは保証されている。
物によっては品質の良い高価な物も混じっています。それらが穫れた場合には買い取り額も上乗せされますので、皆さんがんばって収穫してください。
注意事項
時折安いレタスが混じっている事があるので、間違えないように気を付けましょう。
ーーつまり!
「キャベツ狩りだぁぁぁぁぁ『『飛んでくるキャベツが食べ放題になる日が来たのね!(来たんですね!)』』ぁぁぁぁぁ・・・・・・・・・」
・・・うん、途中で遮られちゃったねボクの台詞。
お腹を年中空かせてる欠食貧乏女神さまのお二人に。
「マヨネーズ買って来るわよーーーーーーーーっ!!!!」
「先輩! 確かいま、裏街の盗品マーケット屋さんがバーゲンをしてました! 開始から3分過ぎちゃってるのは大きいですけどまだ行けます! 早く走って! 時間がありませんよ!」
年々スケールが小さくなってきている気がする女神様たち。
ちなみに今日の二人が食べてる昼御飯はメザシ一本です(二人で均等に分けてます)
いや~、貧乏って本当に怖いですよねー。
・・・一面のって程じゃないけど、かなり広い範囲をカバーしながら空を征くキャベツの兵団。
行く手を阻む一騎当十か当五くらいの冒険者たちを薙ぎ倒しながら、食べられないために、生きるために、死なないために、殺されて食卓に乗せられて美味しく「いただきます!」をされちゃわないために彼らは征く。
国を駆け抜け、町中をバウンドしながら飛んで走って女の子のスカートをめくり、誰にも食べてもらえないまま自分の命が腐ってキャベツから生ゴミにジョブチェンジするまでキャベツは走り続ける。
「・・・やがて土に還ったキャベツを栄養素にしてバクテリアや微生物たちが大地に命を芽吹かせて、広大な土地が土壌に富んだ良い土となっていくのであった。
キャベツに手を出してはならぬーー(ぱこん。バコンっ!)ーー冗談なのになぁ~」
「「オババ様の語りを変なネタに使わない! 大地が怒りに満ちたらどうするのっ!?(どうするんですかっ!?)」」
毎年毎年オタクなボクたち~♪
「なんじゃこりゃああああああああああああああっ!?」
「お? カズマは知らねぇのかよ、キャベツのことを。常識だぞ? 仕方ねぇなぁ、特別の俺様が教えてやるとするか。感謝しろよ?
いいか? キャベツってのはな。飛ぶんだよ。その理由はーー」
「・・・キャベツはね、カズマ。飛ぶ物なのよ。味を濃縮して収穫の時期が近づいてくると、「簡単に食べられて堪るか! ワタシ達だって生きていたんだ!」って思っているかのようにーー」
「ちょっ、リーンさん!? 今オレが説明してたよね? してましたよね新人さんに?
てめ、人が折角てにいれた数少ない目上相手にえばり散らせる絶好の機会を棒に振らせやがって・・・ゆるせねぇ!
見てやがれよ、今日こそお前の穿いてるミニスカートを脱がすことで衆目の眼前にクマさんパンツを晒させてやーーあっ、嘘です、ごめんなさいごめんなさい、リーンの隠れファンな男衆が寄ってたかってオレのズボンを脱がせようとしないでください! ごめんなさいごめんなさい! リーンのパンツをオレにも見せてください!」
「ダスト、お前・・・いくらなんでも正直すぎるだろ。もう少しオブラートに包んで言えよ、オブラートに。
あと、ついでに教えておくとリーンのパンツの柄はクマさんじゃなくて苺がーーあ、嘘です嘘ですごめんなさいリーンさん、昨日の晩に盗んだパンツを返しますので許してくださ・・・ぎゃあああああああああああああああっっ!!!!!!!!」
ーーおっ、カズマくんと愉快なテイラーさんたちの混合パーティーだ。来てたんだー。
・・・さっそく三人離脱しちゃったみたいだけども。
『皆さん、突然のお呼びだしすいません! もうすでに気づいてる方が何組もいらっしゃるようですが、キャベツです! 今年もキャベツの収穫時期がやって参りました!
今年のキャベツは特別な事情もあって出来がすこぶる良く、本来ならば一玉一万エリスの所を倍額で二万エリスでの買い取りを実施しております!
すでに街中の住人は家に避難して頂いておりますので皆さん、できるだけ多くのキャベツを捕まえて、ここに納めてください!
なお、冒険者は自己責任が基本ですので、くれぐれもキャベツに逆襲されて怪我をしない様にお願いいたします! クエスト中に起きた戦闘での負傷および戦闘不能に関して当冒険者ギルドはいっさい賠償責任を持ち合わせておりませんので、そのおつもりで!』
ーーうん? 今年のルナさんによるアナウンスは妙に具体的だった気がするなぁ~?
何かあったのかなぁ~? あったんだろうなぁ~。・・・よし、しばらくの間は様子見だけして見物していようっと。
『てりゃあああああああっ!!!!!』
む、冒険者軍団の第一陣が敵の先鋒と正面からぶつかり合ったみたいだね!
「無駄に走って死ぬしかない命なら、一玉でも多く捕まえて美味しく食べてあげるが我が使命! 見事討ち果たして見せようぞ!
食らえ! 今日この日のために編み出した究極の対キャベツ必殺剣!
《キャベンディッシュ・ブレー・・・》あばべばばばばっ!?」
『キャベーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッツ!?
・・・じゃなかった、キャベンディーーーーーーーーッシュ!?』
おお、さっそく一人目の犠牲者がでたね! 今年のキャベツも強いぜぃ!
・・・って、あれ? あの見た目ってキャベツはキャベツでもなんか違・・・そうか!わかったぞ! 謎はすべて解けた! 真実の鏡はいつのドラクエでもひとつしか出ないラーの鏡の事だ!
「クリス、ちょうど良い機会だ。会って間もないお前にも私のクルセイダーとしての実力、その目で確かめさせてやろう。見ているが良い・・・はぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!!!」
この前仲良くなったばかりのオッパイナイト・ダクネスさんが騎士らしく剣を抜いて、敵に向かって走って近づいていくんだけども。
・・・あのキャベツって通常のじゃないと思うんだよねぇ~。止めた方がいいのかなぁ~? でもダクネスさんドMだしなぁ~。むしろ悦んでもらえるかもだし、放っておいても構わないよね!
「たあああああああああああああっ!!!
はぁっ! てぇやぁぁぁっ!!! でりゃああああああああっ!!!!!」
う~ん、やっぱり当てられてないなぁ~。まぁ見た感じからして斬るよりも斬られる方を望んでそうだし求めてそうだしハァハァさせてして欲しかったみたいだし、ま、いいか。
「なんの! 正義の騎士は悪に決して屈しない! 次こそ本気で放つ全力の一撃!
食らえ! 我が神聖剣! セイクリッドぉぉぉぉぉぉぉーーーーー」
「あ、ダクネスさん。その敵相手にジッとしてたら危ないかも?」
「――ソォォォォォォォ(バギィッ!)ォォォおひぃん♪ ダメぇっ♪ やめてぇっ♪ これ以上はララティーナ、もう戦えなぁい♪
降参☆ 降参☆ 女神エリス様に仕える誇り高い聖騎士、キャベツに負けて無様にこうしゃぁぁぁぁっん♪」
・・・弱いっ! 神に仕える聖騎士ヨワすぎる!
必殺の突撃打ち破られて、あっさり鎧壊されてアーマーブレイクされた後で、自分からカッコ付けて前のめりに倒れたら、空飛ぶキャベツたちに交代交代でお尻ペンペン体当たりを食らわされ続けちゃってる! 負けた女ボスがお仕置きされちゃうシーンだ! ぜんぜん正義の味方じゃない姿だね! 羨ましいよ、どっちとも!
「はうっ! ほうっ! おうっ! き、騎士が戦いに負けて無様に敵からお尻ペンペン~・・・・・・ああ、ダメだ! 気持ちいいーっ! 堪らなぁっい! もっとーっ! もっとーぉん! もっと負け犬騎士のダクネスにお仕置きしてぇぇっん☆」
「・・・やだ、あの人もしかして、お尻叩かれて感じちゃってるの・・・?」
「穢らわしい・・・最低、気持ち悪い。反吐が出そうだわ・・・」
「同じ騎士職にある者として、恥ずかしい限りだな・・・」
「雌豚が・・・貴様ごとき牛乳が騎士を名乗るなど烏滸がましいにも程がある!
分際をわきまえよ!」
「早くやられちゃえデカパイ女ーーーーーーーっ!!!!」
冒険者のみんなから有らん限りの罵声が飛び交いまくっているね! キャベツに負けちゃった騎士様には当然の報いかもしれないけど、さすがに言葉がヒドすぎるぞ?
女の子を言葉責めするときには優しく罵倒してあげようね♪ 東京デン子ちゃん☆
「み、見られている! むくつけき男たちが、私の剥き出しになってしまったから先っぽだけでも見えないように草むらに押しつけて隠している、私のでっかいオッパイを見ようとして興奮している・・・なんという辱め!
け、穢らわしい! 破廉恥な! た、堪らんっ!!!」
「いや、誰よりも穢らわしくて破廉恥なのはお前じゃねぇか」
「あ。カズマ君、復帰してきてたんだ。包帯まみれのマミー状態だけど大丈夫?」
「ああ、そんな! 上級職であるクルセイダーの私が! たかだか最低辺に位置する基本職でしかない《冒険者》の、それも最近ギルドに登録したばっかりで鎧すら買う金もないまま変な服着て馬小屋で寝泊まりしている馬糞臭いブサイク男にまで見下されてしまうほど落ちぶれるだなんて!?
ヒドい! ヒドすぎる! あんまりだ! これほどの屈辱を受けてはもう、騎士として生きて行けなぁぁぁぁぁぁぁっっい☆」
「いや、お前の方がよっぽどヒドいだろ!? あと、一応は顔だけでもオレ好みな美人から顔について悪し様に罵られまくったオレの方が生きていけないほど辛く苦しいわっ!」
「ああああああぁぁぁぁぁっんんんん!!!
ま、まさか止めとして人生負け犬ロード一直線なダメ男から同類認定されてしまったぁぁぁっ☆ もう、もう、もう私ダメぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっん☆☆☆☆」
「人のトラウマをおかずに使って勝手にイくなーーーーーーっ!!!(`Д´)怒」
・・・・・・はい、うちのパーティーの壁役さん戦闘不能と。
次は誰が逝くのかな~? それともイかされちゃったりするのかなぁ~?
「我が必殺の爆裂魔法を前に於いて、何者も抗うことなど叶わず!」
おお! 期待のつるぺたロリ厨二ミニスカ魔道師のめぐみんちゃんだね! 期待してるよ! 見事に負けて散って無様な醜態晒しちゃってください最強の爆裂魔法使い様っ!
「ふっふっふっふ・・・あれほどの敵の大群を前にして爆裂魔法を放つ衝動を抑えられようか・・・? いや、ない!」
うん、悦に浸りたい気持ちは厨二としてスゴく良く解るんだけどさ。敵、近づいて来ちゃってるよ? 撃たなくていいの? 爆裂魔法。
カッコ付けることを優先して、爆裂魔法を放つ衝動を押さえ込んじゃってるよ?
「光に覆われし漆黒よ、夜を纏いし縛炎よ、紅魔の名の基に原初の崩壊を顕現せよ。
終焉の王国の地に、力の根元を陰徳せし者。我が前に統べーーあ、ちょっと、止めてください、私の真横を猛スピードで通り過ぎないで片足立ちしているせいでバランス悪いの倒れそうなの。
ちょっとでも余計な圧力かかるとバランス崩して崩壊せざるを得ないのが格好の良いポーズなんですから、私に魔法を撃たれる敵は私に気を使って呪文の詠唱が終わるまでは攻撃してこないと言う不文律なお約束というものがあってですね・・・・・・誰か! 助けてください! 私このままだとキャベツにお腹一杯お仕置きとして自分たちの身体をご馳走されてしまいそうなのですあぶぶぶぶぶぶっ!!!!」
おお・・・。見事に食べさせられちゃってるね、キャベツを。
マニアックな例えになるけど、ルパン三世パート2で不二子ちゃんがアフリカで穫れた生コンニャクをちっちゃくて可愛らしいお口に突っ込まれてヒッドイ不細工な顔にされちゃってたのを思い出すよ。
「ぐわっ!?」
「ぐぅおっ!?」
「ほげぇっ!?」
「ひでぶぅっ!?」
「こ、今年のキャベツはなんかいつもより強くなってねぇかぁっ!?」
ーーそうこうしている合間に次々とやれらちゃってく《駆け出し冒険者の街 アクセル》に住んでる冒険者たち。
でも、さすがにこれは強すぎるよね。何があったんだろう? ちょっとルナさんとこに聞きにいこっと。
「おーい、ルナさーん。ちょっと聞いてもいーい?」
「あら、クリスさん。収穫したキャベツの持ち込み・・・じゃ、ないみたいですね。手ぶらですし」
「え? ちゃんと服は着てきてるよ?」
「手のひらでオッパイを隠すという意味の隠語で言ったんじゃありません。
で? 捕まえたキャベツの持ち込みじゃないないなら、いったい何をしに本部まで戻ってこられたんですか? 他の方々はみなさんは最前線で無駄な努力とも知らずに足掻き続けているのに」
「うん、その言葉を聞いて前線に戻りたがるのは『味方がピンチに陥ってると知らされるまでぶーたれてた癖に、知ったとたん人格変わって良い人になる系統』のツンデレ味方キャラぐらいなものだよね。
で? ホントの裏事情とかって有るの? 有ったとしたら教えてくれちゃっても大丈夫なこと?」
ボクの質問にルナさんは少しだけ悩んでから「内緒ですからね?」と前置きした後で。
「実はあのキャベツは毎年うちの街へ押し寄せてきている物ではありません。もっと西の方から進軍し続けてきた歴戦のキャベツさんたちなんです」
「??? もしかして飛来された街の冒険者さんたちが取り逃し続けて来ちゃってたの?」
「はい。そもそも私たちの住む街アクセルは、魔王の城から一番遠い辺境に、しかも駆け出し冒険者しか住んでいない街です。
ここまで辿り着くためには途中でいくつもの難関を突破しなければならず、まして魔王軍と対峙している昨今の情勢下で、キャベツとは言えあれほどの数を備えた民間人に被害が及ぶかもしれない大軍をみすみす国内の奥深くまで侵入されてしまうバカな為政者などいるはずがありません」
まぁ、普通はそうだよね。
魔族と戦争してるから人手が足りなくて、民間人守るのに兵割く余裕がないから冒険者に任せちゃってるけど、さすがにこの数が空をビュンビュン飛び回りながら街や草原を疾走しまくり、大陸を渡って海まで越えられちゃってたら問題有りすぎだからねぇ、国防的にも民心の安定的にも。冒険者にばかり仕事やらせて兵士たちはなにやってるの?になっちゃうかもしれないかも。
兵士の仕事は、毎日歌って踊ること♪ 後の仕事は下層階級の庶民どもに! ・・・だなんて嫌すぎる世界観だからね。妄想でもやめておこう。
「基本的にキャベツを栽培する場所は、収穫する街ごとに決まっておりまして、現地で穫れた野菜を地元で消費する治産地消を統治基本に据えているのが我がベルゼルグ王国なのですが、こういった政治に関する知識というのは庶民の方々には知らされませんし、知ったところで理解できません。そう言ったことに関しての教育は法律で禁止されていますから」
あー、そう言えばここって王様が統治してる中世っぽい王国だったっけ。そりゃ、王様の一族による支配永続が一番重要な国策になるよね、当たり前だね当然だね基本だよね~。
「国が作った物を現地で採って現地で買い取る。私たち冒険者ギルドと国家権力が互いの領分には不介入なんて真っ赤な嘘っぱち。
だいたい国内外に敵対勢力がいる中で数千人規模の武力集団を民間に委託するなんてあり得ません。ナンセンスです」
う~ん、知りたくもない現実が群雄割拠の雨霰。さすがにボクも困惑中。
この話って、いったいどこに落ち着くのん?
「そんな中、とある街でヘマを仕出かしたギルド職員がおりまして。彼が情報を上司に伝え忘れていたせいでキャベツの対する備えが一日遅れてしまい、三割強の数に街を抜かれてしまうという大失態をやらかしてくれたのです。
最悪なことにその街は比較的最前線に近く、魔物も強力なのが出没する地域ですので住んでる冒険者の皆様方も高レベルなのが当たり前。1万エリス程度の端金では動いていただけませんので強力なキャベツを作って飛ばして討伐させて、レベルも上がり報酬は国家経済へと還元される。そう言う筋書きだったのが破綻してしまった末に、国内最奥部のアクセルにまで到達されてしまうという大惨事に相成りました次第です」
「はぁ」
「かくなる上は今年のキャベツ収穫祭はあきらめて来年分に計上し、今年の分は今回のこれだと言うことにして通り抜けさせることで地の果てで誰にも食べられないまま腐りは果て頂こうという、ギルドからの保身的な愛情に満ち満ちた緊急討伐クエストだった訳でして」
「鬼ですか、アンタらは」
それにしても疑問が残るよね。
いや、キャベツに関することじゃなくてボクのことで。
「でも、そんな危ないことをボクなんかに教えちゃっても大丈夫なの~? 自分で言うのもなんだけどボクって結構ノリと勢いで秘密を暴露しちゃうタイプだよ? ルナさん危ない立場にならないの?」
「あらあら、うふふふ・・・・・・クリスさん、“あなただからいったんですよ”?」
うわ~、殺し文句だー。正真正銘本物の、嘘ついたら針千本地獄の底にまで落とされちゃう殺す文句の殺し文句だ~。
「イエス・マム! ボクは御国のため民の平穏な暮らしを維持するため、政治の腐敗を許容できる物わかりの良い大人になりたいと常々思って生きております!」
「うふふ、やっぱりあなたは良い子ですねクリスさん。これからも私と仲良くしていきましょうね? よしよし」
「あんっあんっ♪」
人としての誇りや尊厳なんて家畜として生きていくのに必要ないね!
ボクはただ、かわいくて色っぽい巨乳なルナお姉さんのワンちゃんとして生きていけたらそれで良いのだ!
「・・・あ、でもそう言えば忘れてたんだけど、今回のキャベツは地の果てに着くまでには死に絶えちゃってると思うよ?」
「え? なぜですか? あれは通常の最弱キャベツである『春キャベツ』と違って、最前線での栽培用に品種改良が施されている最高レベルの『冬キャベツ』です。
いくら相手への殺害禁止コードを刻印で植え付けてあるとは言え、アクセルの街に住む冒険者程度のランクではどう足掻いたって勝ち目なんか・・・」
「いやー、実はさー」
悪戯を見つかっちゃった子供みたいにバツが悪い気持ちで最前線にいる二人の事を指さしながらボクは言う。
「アクア様とエリス様、今日のご飯が三日ぶりなんだよね」
『『ご飯! 私たちのご飯を逃げる前に置いて逝きなさい!
そのキャベツ置いてけーーーーーーっ!!!!!!(置いて逝きなさーい!)』』
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「生き延びるために何でもやるになった人たちって、本当スゴいものだよねっ♪」
クエスト達成。
飛来したキャベツを全て“食い終わりました”。
報酬額:二人の女神がお腹一杯。「「私たちは満足じゃ~(^o^)(です~(^o^))」」
つづく
残りの二作品も含めて全部をリニューアルし終わってから活動報告にて報告させて頂きたいと思っております。