とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社 作:怠惰ご都合
前回宣言した通り今回で回想は終わりです。
・・・・ちなみに回想を書き始めてから今、この瞬間まで2年近く経過してました。もうこの時点で自分の投稿が如何に遅いかわかってしまうぅ(遠い目)
「・・・助かった、よね?」
結構な距離を走っただろう。
二人して息を切らしながら足を止め、ゆっくりと、今走ってきた方向を向く。
「えぇ・・・運が、良かったわね。まぁ・・・・・もっとも、
「そっか、あの人がそうなんだ」
「流石に実物は初めて、よね」
「そうだね。あとなんかよくわかんない虫もいたけど」
「多分、“ガストレア”ってやつよね。ほらいつかの大蜘蛛みたいな」
「うヘぇ、あれ系かぁ。あんなのがうじゃうじゃいるの〜?」
足を止めて、休憩のために座る。
「当分は、安全なとこを見つけるしかない・・・・・きゃっ!?」
「ん、どうしたの・・・・がっ!?」
「邪魔だ、ガキども!?こんなとこでボサッとしてんじゃねぇ!?」
しかし、突如、後ろから何かにぶつかって蹴飛ばされた。
一体何が、そんな気持ちで振り向くと、自分よりも大きな男が怒鳴って、何処かへ言ってしまった。
それ以降も人はどんどん出てくる。
察するにココもガストレアが出たのだろう。
更にビルが音を立てて崩れ落ちる。
「・・・・うっうう、ぐすっ!?」
「レイ、今は泣いてる暇ないの。そんなならここも離れましょ!」
やっと落ち着いた、そう思っていても安全ではなく寧ろ危険が増したといっていいだろう。
故に、ライの反応は正しいと言えるだろう。
しかし、だからといってレイが間違っている訳ではない。
寧ろ、この状況であれば当然の反応だろう。
だが、現実は変わらない。
逃げ惑う人めがけて、建物はどんどん崩れ落ちていく。
煙が晴れた頃には、さっきまで逃げ惑っていた人たちは倒れ、中には埋もれたであろう人も見える。
「で、でも・・・・・うぅ」
「・・・・・」
今まで安全だったのは、良くも悪くも研究所で全てを管理されていたからだ。
だから、研究所内での事しかわからない二人の目には、大きな虫や我先に逃げ惑う大人は初めて目にするものばかりで、さぞ恐ろしく写っていることだろう。
「ぐすっ・・・・・ひぐっ」
「・・・・誰か、助けて」
再び離れたところで建物が崩れていくのが確認できる。
「ちょっと・・・・・・あなた達、・・・・・ねぇ大丈夫!?」
煙の中から誰かが走り寄ってくる。
初めて耳にするのに、どこか安心するその声はこれからも耳にするんじゃないか、そう考えて私は返事をした。
「・・・・・お願い、です。助けて」
「こういうこと。その後のことはいつか話したね。その時に助けてくれた人が
話し終えたレイさんは悲しそうにそう告げた。
「結構なボリュームの内容で戸惑うんですけど・・・・・この内容って、ひょっとしてお二人は」
「その通り、今まさに夏世と会話してるこの身体ってさ、実は本来の持ち主は違うんだよ。本来の持ち主は、あの時生き延びるはずだったあの二人。僕と姉ちゃんは身体を借りてるだけ。それも僕達の身体が見つかるまでの間」
「今も何処で保存されてるのか知らないけど、管理してる人の検討はついてる」
「だって本体が無事じゃなかったら、僕達はこうして話せてないから」
「あの時の男、名前は・・・・・・『木原○○』、恐らくさっき来た二人が言ってたのもアイツ」
ライさんも同じような顔をしている。
「それともう一つ。元々僕らと
「そもそも【暗闇の五月計画】自体は、各能力者の自分だけの現実(パーソナルリアリティ)を最適化して、能力者の性能を向上させるっていうやつ。具体的には“一方通行の精神性・演算方法の一部を意図的に植え付ける”って方法らしいよ」
「で、
「だからそもそも、僕ら二人も血の繋がりのある姉弟じゃないの。元々は別々の施設で
「・・・・で、生き残った二人は“兄妹”として扱われる事になって、その上実験体として過ごすようになった」
教えてほしいと頼んだ筈なのに、二人にどう話しかけたらいいのか、私にはわかりませんでした。
きっと、何を言っても支えになれないから。
お二人にしか理解できないソレが、たった今聞いたばかりの私に共感できるはずがないと、そう思ってしまったから。
・・・・それでも、いつかは受け止めて、支えられる存在になりたいと思うのは、私の傲慢なのでしょうか。
夏世が姉弟の話を聞き終えたのとほぼ同時刻。
「・・・・能力とは関係ないってどういう事?じゃあアレは何のために?それに“犠牲”って?」
責任者の部屋では、一人の少女が立ち尽くしていた。
「嫌だ嫌だ‼怪物になんてなりたくない‼くそっ、なんでよ!?なんでこんな目に・・・・た、助けて◯◯‼お願い‼」
「・・・・・」
少女叫びは目の前で立つ男には響かない。
「い、嫌よ!だってワタ、シ・・・まダ外に出てなiの、ニ。やっとジユウになれルって信じてタのに」
「そうかい。それは残念だったね。その楽しみは次の機会に取っておきなよ・・・・・バイバイ」
少女は、いやかつて少女だったソレは既に人の形をしていなかった。
「・・・・あ、アaaaaa」
試しにイニシエーターに憑依させていつかの
「また失敗・・・・・か。なかなか上手くいかないってのは、挑み甲斐があると言えば聞こえはいいけど、言い方を変えれば“つまらない”な」
部屋の中にいる男が、そう愚痴をこぼした時だった。
「たっだいまぁ・・・・ってまた失敗してんじゃん」
「あらホント。っとに処理だって楽じゃないってわかってんの?」
「やぁおかえり。帰りが遅いから心配したよ?」
「うっそだぁ。だったら走り回って探してくれるでしょ」
「そうそう。思ってもないこと、口にされても迷惑だっての」
「酷いなぁ心配したのはホントだって。・・・・で、どうだったの、無事に会えた?あ、処理よろしく」
その一言を告げただけで二人の瞳は赤く染まる。
「はいよメイ、パース」
「いい加減、マトモに成功する目処を立ててから実験しなさいよっと。あ、ゴメン。ちょっと力んで右に寄った」
「うわホントじゃん。しかも思ったより丸くなってないし
「だから謝ったじゃないの・・・・・・って高く上げすぎ」
「ちょっと君たち、毎回思うんだけど引くほど器用だよね」
そう、リフとメイはイニシエーターであり、男は二人を実験した張本人。
つまり、彼の言う“処理”と二人の“遊び”が示すのは
「・・・・それで、どうだったあの
「えぇ、知ってるのに態々聞くの?・・・・・うわヤバ、ちょっと縮んで蹴りにくくなった」
蹴り上げて面倒くさそうに顔を歪めるリフ。
「ダルいわね。どうせ地下の水槽でチェックしてんだから聞かなくてもわかるじゃない・・・・・・げ、ホントに縮んでるじゃない。ねぇ
ため息をつきながら降ってきたソレをいなすメイ。
「ウンウン。いつも通りもっと小さくしちゃって。知りたいのは君たち自身の感想さ。一応は先輩になるんだから・・・・あ、そうそう追加注文なんだけど、今回はいつもより1.5割増しで頭と尻尾潰しといて」
そんな二人を眺めて平然としている男。
誰が見ても異様としか言い表せない状況である。
「感想も何も“がっかり”の一言しかないよアレ」
「そうそう、あまりにも甘い考えで思わず、って今更追加とか巫山戯んじゃないわよ!」
「なぁんだ、そんなに変わってないんだ安心した・・・・・・うわちょっと待って待って、こっちに蹴り飛ばそうとしないで!?」
「つまんないぃ。『木原』名乗るんなら弾き返す位の芸当やってみせなさいっての」
「・・・・・君たち『木原』を便利屋か何かと勘違いしてやいないかい?・・・・・あ、そろそろそんなところで切り上げていいから」
「えぇっ、まだ遊び足りないってのに?それにもうちょい小さい方が運びやすいでしょ」
「あぁ、今日は外に運び出す訳じゃないんだよ。このままここで使うの」
それを聞いた二人は、今まで動かしていたソレから離れる。
「へぇ珍しい」
「ホントだぁ」
「まぁコレで新しい
「はぁ、つまんな」
「うわぁ、くだらない」
「あぁなんかもういいや、“君たちから聞いてきたのに”とか思ってないから、別に気にしないでいいから・・・・ウン」
べ、別にいじけてなんかないし、こんぐらいの対応
「それで?どうやって誘き寄せるつもりなのか教えなさいよ」
「モノリス外からこの施設までの道にソレの欠片を置いて、辿らせる。と言ってもいきなり仕掛けても警戒されるとか最悪無視されて終わるだろうから、まずは似たガストレアを探して、襲わせる。なに、実験体に使うのはどれでも構わないよ。どうせ全て試すからね」
男は笑顔でそう口にする。
まるで悪びれる様子もなく。
さも息をするかの如く当然のように。
「でもそれって動くのは私たちよね?」
「そうそう。ただ従って動くのはつまらないっての」
「まぁまぁ、そんな風に言わないでよ。途中で
それを聞いたリフとメイは突然笑顔になった。
「やったぁ!また外で遊べるよ!」
「いいわね!最近はずっと仕事続きで楽しむのは二の次だったから。その上好きに動いていいとか最高じゃない!」
「・・・・いやでも、これも一応仕事なんだけど」
しかし、そんな声も二人の耳には届かない。
いやまあ、この二人が素直に指示に従ったことなんて数えるほどしかないんだけど。
割と普段から好き勝手に行動してる気がするんだけど。
「動いてもらうのは○○日後、この日はどっかの誰かが聖天子を暗殺しようと動くから。気づかれることはないと思う」
「でも聖天子を狙うってことは、察知されてる訳でしょ?」
「それなら警備は厳重になるはずじゃないの?」
「大丈夫、というのもその日には極秘で行われる会合があるそうなんだ。でもあくまで“極秘”だ。つまり、警備は必然的に少数になる。結局のところ、この会合自体が暗殺計画の為に仕組まれたと考えても不思議はない」
「まぁいっか!」
「ちなみにその計画を知ってて、『助けて恩を売る』とかはしないの?」
二人は、はしゃぎながらも聞いてくる。
器用だな。・・・・・いやまぁ、あの姉弟《ふたり》もこれぐらいは平気でやってたし慣れたものか。
「なんで?実験に必要になるなら、それもなくはないけど。今回はその必要も全然ないし、寧ろそれで騒いで警備が手薄になるっていうなら、利用するのは当然でしょう?」
そう、男は自分と実験体以外に対する興味はない。
例えそれが聖天子であろうとも例外ではないのだ。
聖天子が斃れようとも、この街には科学の証明たる能力者がいるし、魔族や攻魔士も存在する。仮にガストレアや他のエリアが攻めてこようと『木原』には対して手出し出来ないだろう。
ただ少しこの街を取り囲む力関係が入れ替わるだけだ。
「ということだから、よろしく頼んだよ」
「ないとは思うけど、絶対にとは言い切れないから一応聞くんだけどさ・・・・」
「仮に誰かに見つかったらどうすんの?」
「ふむ、確かにないとは言えないよね。・・・・・そうだね、仮にそうなった場合はその人も連れてきて遊んでもらおう。実験体は多くても困らないから」
「うっわぁ、聞くんじゃなかった」
「あんた、絶対良い終わり方出来ないと思うわ」
いや酷いなこの子たち。
聞かれたことに答えただけでここまで言われるとは思ってなかった。
幸か不幸か、この手の扱いには慣れてしまったが、一方でそんな自分も散々なものだと、思わざるを得ない。
ちなみに今の流れのまま話を『ブラック・ブレット』に合流するつもりでいます(つまり、約2年前に投稿した話に合わせていくということですねわかります)
・・・・・ひえええぇ(自業自得)