とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社   作:怠惰ご都合

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盛大に遅れて申し訳ありません!
最後に投稿してから一年が経過しそうだったので慌てて出しました。
これからも今回のような事が起きるとは思います(なるべくならないようにします)。
それでは、どうぞ!


家にて待つのは”話し合い”

 「・・・・・・って姉ちゃんに大きく言ってみたはいいものの、状況がね~」

 

 ライと別れ、布束の後を追ったレイはSプロセッサ脳神経応用分析所に来ていた。

 そして現在、扉の前で地下室内の様子を確認している。

 

 「布束さんはピンチだし、相手も3人だし~。男二人はどうとでもなるけど、あの大能力者(レベル4)は能力が面倒なんだよね~」

 

 レイは既に今回遭遇する組織、『アイテム』のメンバーと各能力をすべて把握していた。

 今、レイの目に映っているのは絹旗最愛という中学生。

 能力の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』は大気中の窒素を自由に操る事ができるそうだ。

 しかも、彼女の意識とは無意識に常時360度自動展開されているらしいが、射程距離は彼女の体から数センチ程度だとか。

 

 「まぁ面倒くさいのは姉ちゃんの方かな~。『アイテム』って4人だから3人を相手にするのか~。いくら御坂さんがいるとはいえ、嫌だろうな~」

 

 レイが嫌な顔をしているライを想像していると、室内では布束が絹旗に対してサングラスをかけた男から奪った拳銃を向けているところだった。

 勿論、銃弾は『窒素装甲(オフェンスアーマー)』に阻まれ、布束はもう一人の男に担がれていた。

 

 「・・・・・っと、そろそろ行かないと布束さんが連れて行かれちゃう」

 

 そして、布束がどこかに連行されるのだろうと考えたレイは室内へと歩き出し、絹旗に声をかける。

 

 「そのくらいにしといてくれないかな~?」

 

 「・・・・・あなたが誰であろうとそれには超賛成できません」

 

 そして、返事はレイが予想した通りとなった。 

 

 それは、絹旗が暗部組織に属しているからであり、レイ自身も暗部としてその事を知っているからだった。

 

 「え~?」

 

 「超仕方ありませんが、消えてもらいますよ」

 

 絹旗がそう告げると、奥にいた男二人が拳銃を構え、発砲した。

 しかし発射された弾はレイに当たるとすぐに、それぞれの拳銃へと跳ね返された。

 衝撃により、二人の男は拳銃を床へと落とした。

 

 「能力者・・・ですか。能力については分かりませんが、強能力者(レベル3)以上であることは間違いないでしょう。超厄介ですね」

 

 「そう思うならその人を解放して、帰ってほしいな~」

 

 「残念ですが、超聞けませんね」

 

 「え~」

 

 そう言いながら、レイは絹旗を殴ろうとする。

 しかし『窒素装甲(オフェンスアーマー)』がそれを阻む。

 

 「超無駄です。あなたの攻撃では私に攻撃が通る事はありませんよ」

 

 絹旗の拳が向かってくる。

 

 「わ~。怖~い」

 

 口では怖いと言いつつもレイの表情は怖がっているようには見えない。

 

 

 

 

 そして絹旗の拳は確実にヒットした。

 絹旗自身、右手に走る感触とともにそれを実感した。

 ・・・・・しかし、実際に吹き飛んだのは絹旗だった。

 

 「ツ・・・・どうして!?あなたの攻撃なんて無意味なはず!なぜ私の攻撃が!?」

 

 絹旗の混乱は誰が見ても明らかだった。

 確かに攻撃をした自分が吹き飛ぶ。相手の攻撃など効かないはずの自分が何故・・・・。

 

 

 

 

 

 レイは目の前で混乱している少女を見ながら、普段と同じように話し出す。

 

 「僕は別に何もしてないよ~。君が自分の攻撃で吹き飛んだんでしょ?」

 

 「適当な事を言うな!」

 

 「信じる、信じないは君の勝手だけどね~」

 

 それに、と混乱している絹旗前に言葉を続ける。

 

 「君の『窒素装甲(オフェンスアーマー)』を見て思ったけど、君って『アレ』の被検体でしょ?」

 

 その一言を聞いた瞬間、絹旗は撤退を決意した。

 相手はこちらの能力を知っている。

 そしてそれは長い年月を暗部で過ごしているという事を示している。

 しかも、それなりの場数を踏んでいる事も伺える。

 自分の後ろにいる男二人は最初の銃弾で気圧されている。

 今は脱出するのが得策だ。

 

 

 

 

 

 「そろそろ退いてくれると助かるな~」

 

 そんな絹旗の心情を読んだのか、レイは脱出を進めてくる。

 

 「超仕方ありませんね。従うとしましょう」

 

 絹旗は部屋を出る直前に立ち止り、再び口を開いた。

 

 「あなたの事、忘れませんよ」

 

 一言だけ言い残し、絹旗は男二人とともに部屋を出て行った。

 そして気絶している布束を壁に背を付け座らせ、呟いた。

 

 「姉ちゃん、大丈夫かなぁ~?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイが絹旗と対峙する少し前、ライは目的地である研究所の陰で溜め息と悪態を吐いていた。

 

 「・・・・ハァ、最悪ね」

 

 「相手が三人って、普通レイの担当でしょうに。運がいいのか悪いのかはともかくとして、悪意を感じるわね」

 

 愚痴を言いながらも手元の資料を確認している。

 

 「あの二人のコンビネーションには『体晶』が関わっているのね。けど、『体晶』は能力を一時的に暴走させる代物だから割に合わないでしょうね」

 

 ライが結論付けていると、丁度二人の少女が車に乗り込むところだった。

 そして、車が通り過ぎたのを確認し、立ち上がった。

 

 「これで相手は一人ね。さぁ、行くわよ!」

 

 気合を入れ、研究所へと入って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 ライが進んでいくと、奥の方から声が聞こえてきた。

 御坂の声ではないということに気付き、すぐに扉の陰に隠れる。

 

 「パリィ!パリィ!パリィ!てかァ?笑わせんじゃねえぞクソガキ!!お子様のケンカ程度でこの街の『闇』をどうにかできると思ってんのかァ!!?」

 

 「くっ!?」

 

 御坂は迫ってくるビームを防ぐが、徐々に押されていき、遂には吹き飛ばされてしまう。

 

 「まったく、こんな小娘が第三位だなんて呆れるわね」

 

 麦野の声は周囲に響き渡る。

 

 「確かにそうよね。この街の『闇』は根が深すぎるもの」

 

 「あぁん!?」

 

 「けどね、自分の行動に対する償いや、『闇』に抗う為に頑張っている人だっているのよ。そんな人たちを絶望させるのは誰であろうと感心しないわね」

 

 麦野の問いに答えたのは御坂ではなく、陰から姿を現したライだった。

 

 「ライさんッ!?」

 

 「誰かと思えばアンタか。同じ暗部で生きてる人に言われても説得力が足りないわよ?」

 

 御坂と麦野の反応はそれぞれ違った。

 御坂の驚きとは別に、麦野は冷静だった。

 

 「あら、貴女と会うのは初めてだと思うけど?」

 

 「『闇』での記録がそう簡単に消えるとでも思ってるのかにゃ~ん?」

 

 「そう、やっぱり思った通りにはならなかったのね。ねぇ、麦野沈利さん?」

 

 「なんだ。知ってるのはお互い様ってこと?」

 

 「勿論よ。貴女が第4位ってことも、能力が『原子崩し(メルトダウナー)』だってことも」

 

 ライの言葉は続く。

 

 「だから、対処しにくい能力を使う貴女には移動してもらうわね」

 

 「はぁ?どうやって私を動かすってのよ?あんたの能力は戦闘向きじゃないし、この小娘だってまともに能力を使えないのよ?是非ともその方法を教えてほしいね!」

 

 麦野が言い終えると、ライは微笑みを浮かべた。

 そして、麦野の足元を指さして口を開く。

 

 「えぇ!教えてあげるわその方法を!一瞬だからしっかり覚えておいてね!?」

 

 「あん?」

 

 麦野が足元を見ると、導火線にはすでに電気が走っていた。

 フレンダが撤去し忘れた導火線に御坂が流したのだ。

 次の瞬間、三人の足場が崩れた。

 御坂とライはそれぞれ反対の方向へと飛び移った。

 そして、二人に挟まれた位置にいた麦野は真下へと落ちていった。

 

 「さて、用も済んだしあたしは帰るわ。またね、御坂さん」

 

 「あ、ライさん!」

 

 御坂が呼んだ時にはすでに、ライの姿はなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「や、姉ちゃんおかえり~」

 

 ライが学生寮へ着くとレイが階段で座っていた。

 

 「・・・・ただいま」

 

 「どうしたの~?」

 

 「あんた、布束さんの方には能力者は一人しかいないって知ってたわね?」

 

 「まっさか~。こっちだって驚いたんだよ?まさ能力者は絹旗さんだけで、後の男二人は拳銃持ってたなんてさ~。さすがに焦ったよ」

 

 「・・・・・・まぁいいいわ。そういうことにしといてあげるわよ」

 

 「じゃ、戻ろう姉ちゃん」

 

 レイはそう言って立ち上がる。

 そしてすぐに歩き出す・・・・・かと思いきや動かない。

 そんな弟を見てライは不思議に思った。

 

 「どうしたのよ?行くんでしょ?」

 

 「あ~、その事なんだけどさ・・・・」

 

 言いながらレイはゆっくりと姉へと向き直る。

 

 「姉ちゃん、諦めよう」

 

 「何を諦めるってのよ?」

 

 レイはゆっくりと息を吐き出す。

 

 「多分、バレてる」

 

 「何が?」

 

 「夏世にね、黙って勝手に動いたでしょ?それがバレたんだって」

 

 「・・・・・・・」

 

 「・・・・・・・なんか、ごめんね?」

 

 ライが話の内容を理解をするのに少しの時間を要した。

 果たして、自分たちを待つのは”説教”の二文字だということを悟った。

 

 「・・・・・・諦めるしかないのね?」

 

 「・・・・・・・うん」

 

 二人は同時に溜め息を吐き静かに夏世(説教)の待つ我が家へと帰って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そして、帰宅した二人を待っていたのは・・・・・・・・やはり説教だった。

 

 

 

 




一年近く待ってて下さりありがとうございます。
次回は三人の兄弟喧嘩を書こうと思います。
早めに投稿でする・・・・・予定ですのでどうぞお願いします。
それではまた次回!

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