とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社   作:怠惰ご都合

21 / 46
 しばらく、ジャッジメントとしての話になります。


出会い

 まだ未明のころ、二人の学生が話をしていた。

 

 「however本当にお願いしていいのかしら?」

 

 「はい。私たちも無関係ではありませんので」

 

 「分かったわ。それじゃあ、頼むわね」

 

 二人の学生は何かの確認を終えると、それぞれの学生寮へと戻って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただいま、戻りました~」

 

 蓮太郎と別れたレイは『風紀委員(ジャッジメント)活動一七七支部』の扉を開け、そう言った。

 だが、すぐに挨拶してしまった事を後悔した。

 なぜなら、そこには好奇心旺盛な中学生が集まっていたからである。

 

 「レイ先輩、聖天子様ってどんな人でしたか?」

 

 「やっぱり美人でしたか?」

 

 真っ先に聞いてきたのは、初春と佐天だ。

 しかし、答えなければ彼女たちの心は満たされないだろうと考えたレイは、答えても別に良いだろうと思った。

 

 「うん。実際に見たのは初めてだったからはっきりとは言えないけど、綺麗だったよ」

 

 答えた瞬間、左手に痛みを感じて振り向くと、さっきまで機嫌が良かったはずの夏世が何故か不機嫌な顔で手の甲をつねっていた。

 

 「夏世~、どうしたの?」

 

 「なんでもありませんよ」

 

 聞いても詳しく言ってはくれない。不機嫌なのは明白なのに。

 

 そんな時、夏世に気付いた固法がレイに尋ねる。

 

 「あら、迷子?随分懐かれているわね」

 

 「いいえ、違います」

 

 どうやら迷子扱いされるのが嫌らしく夏世は即答する。

 レイは説明する前に夏世に聞くことにした。

 

 「夏世、いいかな?」

 

 「はい、構いません」

 

 夏世の返事を聞き、説明を始める。

 

 「夏世はイニシエーターですよ。数日前にステージⅤのガストレアが現れましたよね?」

 

 「ええ、確か蛭子影胤が呼んだのよね」

 

 そして、固法が答えた為、説明を続ける。

 

 「そうです。その時に夏世のプロモーターが亡くなってしまったので、引き継いだんですよ」

 

 「そうだったの。じゃあ、風紀委員(ジャッジメント)をやりながら民警をやるのね?」

 

 「はい、姉ちゃんと交代で」

 

 「分かったわ」

 

 固法は納得してくれた。だが、それはレイからすれば意外なことだった。

 

 「怒らないんですか?」

 

 「どうして私が怒るのよ?」 

 

 「勝手に民警をやるって言ったんですよ?」

 

 「確かに勝手だけど、あなたたちが決めた事でしょう?」

 

 「はい」

 

 「なら、いいじゃない。人数も増えたんだし」

 

 「そうですが・・・・」

 

 「まだ何かあるの?」

 

 「いえ、別に」

 

 「そう。少し夏世ちゃんを借りるわよ。そこの四人も来なさい。さ、ちょっと話しましょうか夏世ちゃん」

 

 怒られると思っていたのに、むしろ賛成された。

 そして、固法たちは夏世を連れて廊下に出て行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 「何でしょうか?」

 

 「そうねえ。まあ、聞く事は一つよ」

 

 夏世の疑問を答えたのは固法だった。

 

 「あなた、彼のことが好きなんでしょ」

 

 「!?」

 

 「違う?」

 

 「ホントに~?」

 

 「はい」

 

 「だそうよ、佐天さん」

 

 「なら、あたしが・・・・」

 

 「駄目です!」

 

 「まだ何も言ってないけど?」

 

 そこで夏世はハッとして、顔を赤くしてしまった。

 最初は図星を突かれた為に否定していたが、彼女たちにはお見通しだったようだ。

 

 「どうして分かったんですか?」

 

 夏世は理由を尋ねるが

 

 「あの反応を見れば誰だって分かりますわ」

 

 白井があっさり言ってしまう。どうやら最初からばれていたようだ。

 

 「まあ、それは後で聞かせてもらいましょう」

 

 「固法先輩、あんまり遅いとレイさんが怪しみますよ」

 

 初春と美琴がこの場を締める。

 

 「そうね、戻りましょうか」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 レイは固法たちと戻って来た、夏世の顔を見て質問した。

 

 「何を話してたんですか?」

 

 「秘密よ」

 

 しかし、固法は答えてくれなかった。

 無理して聞くことでもないと思ったレイは、夏世に別の事を尋ねた。

 

 「何か聞きたい事はある?」

 

 「はい」

 

 夏世の返事を聞いて、話してみるように促す。

 

 「いいよ、言ってみて」

 

 「では」

 

 そして夏世は疑問に思っている事を尋ねる。

 

 「私はまだレイさんとライさん以外の方の事を知りません。なので、お二人が初めてこの方たちと会った時の事を聞かせてくれませんか?」

 

 レイは頷くと、話し始めた

 

 「じゃあまず、僕と姉ちゃんが初めて御坂さんと佐天さんに会ったのは・・・・・・」

 

 

 

 

 

 

 

 

 「ちょっとレイ、パトロールのたびにどこかに寄ろうとするのやめなさいよね。私まで怒られるじゃない」

 

 「え~?この暑いのに真面目すぎても駄目でしょ~?」

 

 「そういう問題じゃないわよ。だいたい・・・・」

 

 パトロールをさぼろうとするレイに注意をするが、本人は聞こうとしない。

 説教をしようとするが、レイの声に遮られてしまう。

 

 「じゃあ、あの二人はどうなのさ~?」

 

 「ちょっと、ちゃんと聞きなさ・・・・い?」

 

 話を聞かないレイを咎めようとするが、うっかりレイの視線の先にあるクレープの屋台を覗いてしまう。

 そこには、彼ら双子の後輩であるはずの白井と初春がいた。風紀委員(ジャッジメント)の腕章をつけながら、知り合いと一緒に仲良くクレープを食べている。しかも、超能力者(レベル5)の第三位までいる。

 だが、パトロール中のライには関係ないのだ。例えクレープを食べていようが、支部の掃除をしていようが、パトロール中であればライは許さない。そして、ライと同じ年数を生きてきたレイはパトロール中のライの恐ろしさを知っていて、彼女たちの事を教えた。

 

 そしてレイの思った通り、ライはクレープを食べている二人へ歩み寄って行く。

 

 

 

 「?どうしましたの、初春?」

 

 隣に座っている初春が突然、周辺を見回したことを不思議に思った白井は理由を尋ねる。

 

 「いえ、寒気がしたものですから」

 

 「?」

 

 初春が答えると、今度は白井が震えだした。

 

 次の瞬間、二人は思い出した。

 自分たちが腕章をつけている事を。現時刻のパトロールをしているメンバーを。その人が怒ると誰にも手がつけられないことを。

 

 二人は壊れたロボットのように後ろを振り向いた。

 

 「あなたたち、何してるのかしら?」

 

 そこで見たのは、仁王立ちで立っているライだった。

 笑顔だが、目が笑っていない。

 

 「ひッ!」

 

 初春は悲鳴を上げ、白井に関しては異常な量の冷や汗を流している。

 

 「もう一度聞くわよ。何してるのかしら?」

 

 「初春、どうしたの?」

 

 今度こそ終わりだと覚悟した瞬間、佐天が助けてくれた。

 

 「な、なんでもないですよッ?」

 

 「どうして疑問形?」

 

 佐天が初春の様子に?を浮かべていると、両手にクレープを持ったレイが歩いてくる。 

 

 「姉ちゃん、いつまで怒ってるの~?」

 

 「あなたまで、何買ってきてるのよ!」

 

 当然怒られる。だが、レイは気にしない。

 

 「まあまあ、息抜きも必要だよ。はい、姉ちゃんの分」

 

 「仕方ないわね」

 

 ライは渡されたクレープを食べ始める。

 その瞬間、初春と白井は安堵した。

 

 

 

 

 

 

 「佐天さん、そちらの二人は?」

 

 ライがクレープを食べ終えると同時に御坂が歩いてくる。

 

 「初春と白井さんの知り合いみたいです」

 

 レイとライは佐天と御坂に自己紹介をする。

 

 「僕は風紀委員(ジャッジメント)のレイ」

 

 「私はライ。同じく風紀委員(ジャッジメント)よ」

 

 「御坂美琴です」

 

 「佐天涙子です」

 

 佐天も御坂も同じように自己紹介をする。

 

 「ねえ、黒子」

 

 御坂は白井に尋ねる。

 

 「なんですの、お姉さま?」

 

 「風紀委員(ジャッジメント)ってことは、アンタと初春さんの先輩?」

 

 「そうですの」

 

「どうしてここにいるんですか?」

 

 御坂の問いに答えた白井を見て、佐天はライに聞いてみた。

 

 「パトロール中にレイがクレープを食べようとしたものだから注意したんだけどね。白井さん達の姿が見えたから、ちょっと『お話』をしようと思ったのよ」

 

 「はあ」

 

 ライが答えた途端、白井と初春は揃ってレイの方を見る。

 だが、レイは白井と初春が自分に対して思っている事を知りながら、別の事を言い出す。

 

 

 「あそこの銀行って、なんで昼間から防犯シャッター下ろしてるのかな~?」

 

 「え?」

 

 ライが反応するよりも先に、防犯シャッターが内側から破られ中から三人の男が出てくる。

 

 「遅かったか。仕方ないわね。初春さん、警備員(アンチスキル)への連絡と怪我人の有無の確認」

 

 「はい!」

 

 「白井さんは行きなさい」

 

 「了解ですの!」

 

 「姉ちゃん、僕は~?」

 

 「・・・・・」

 

 自分に指示がこなかった為、レイは聞いてみるが、ライからの返事はない。

 

 「姉ちゃ~ん?」

 

 「ああもう!分かったわよ、行きなさい」

 

 再び尋ねると、ライは何かを諦めたように指示を出す。

 レイはすぐに向かって行った。

 

 

 

 

 

 

 レイが行くと、白井が強能力者(レベル3)発火能力者(パイロキネシスト)を捕まえていた。

 

 「ああ?なんだテメエ、離せよ!」

 

 「だめぇ!」

 

 レイが振り向くと、佐天が男の子をかばって、男に蹴られていた。

 急いで向かおうとしたが、男は車に乗り込み、佐天を轢こうとしていた。

 

 「間に合えよ」

 

 レイがそう言って走ろうとするが、白井に止められる。

 

 「レイ先輩、あそこにはお姉さまがおりますのよ」

 

 白井が言い終えると同時に、御坂が佐天の前に立ち、ポケットからゲームセンターのコインを取り出し、向かってくる車に撃ち込んだ。

 飛んできたコインに当たった車は吹き飛んだ。

 

 これで終わったと誰もが思った時、レイの雰囲気が変わった。

 それに気付いた白井は、レイの視線の先を見た。

 そこには、先程白井が気絶させたはずの男が拳銃をライに向けていた。

 

 誰も気付いていない。そんな中、レイは走り出す。

 初春は急に走り出したレイの視線をたどった。

 自分が一番近いのに反応できず、男が引き金を引こうとする。

 

 「ふざけやがって」

 

 レイの言葉を初春が聞いた途端、レイはライを突き飛ばし、銃弾を跳ね返した。

 銃弾は拳銃を弾く。

 男は手を押さえてうめく。

 レイが男に近寄ると、男が逃げようとする。

 レイは小声で男に一言告げると一瞬で男の意識を刈り取った。

 

 

 

 

 

 

 

 「そんなことがあったんですか」

 

 レイの話は終わったが夏世はそれしか言えなかった。

 

 「ええ。あの時、白井さん達を見かけていなかったら、御坂さんと佐天さんには会えなかったのよ。感謝しないとね」

 

 ライは笑顔でそう言うが、目が笑っていないことを白井と初春は当然分かっている。

 

 「感謝されるのは嬉しいのですが、”オーラ”をしまってほしいですの」

 

 「やっぱり、まだ怒ってますよね?」

 

 白井と初春にはライから出てるものが見えるらしい。

 

 「何のことかしら?」

 

 「まあ、それはいいとして。次は「虚空爆破(グラビトン)」について話そうか」

 

 白井達のやり取りを見ながら、レイは話を続ける。

 

 

 

 

 




 レイは鈍いですね。白井達は分かっているのに・・・
 セリフだけですが、あの人を出しました。 

 次回に続きます。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。