とある一方通行な3兄弟と吸血鬼の民間警備会社 作:怠惰ご都合
「おお、あれこそロタリンギアの聖堂より簒奪されし不朽体・・・この時をどれほど待ち望んだ事か!アスタルテ!今こそあの忌まわしき楔を引き抜くのです!」
歓喜に満ちた声で命令する。
「
だが少女の返事は期待したものではなかった為、周りを確認しようとする。
「悪いけど、今の命令は取り消させてもらうよ、おっさん」
要石によって固定されたアンカーの上に3人の立っていた。
「西欧教会の”神”に仕えた聖人の遺体・・・確か聖遺物って言うんだっけ」
「ええ、40年ほど前、アレイスターと絃神千羅はこの島の龍脈を制御しようとしましたが要石の強度だけは解決できなかった。ゆえに彼らは『供犠建材』と呼ばれる忌まわしき邪法に手を出した。その上、彼らが贄として選んだのは、我らの聖堂より簒奪した尊き聖人の遺体でした。我らの信仰を踏みにじる所業、決して許せるものではない。だから私は実力を持って我らの聖遺物を奪還する。これは我らとこの都市との聖戦なのです。あなたがたは立ち去るがいい」
「忘れてねえか、オッサン。俺はさっきあんたに胴体をぶった斬られた借りがあるんだぜ。決着をつけるまで立ち去るつもりはねえよ」
レイの問いにとオイスタッハが語っていると古城も加わってきた。
「良いでしょう、第四真祖の力を見せてもらいますよ。アスタルテ!」
「
「さあ、始めようか、オッサン。ここから先は、
「いいえ、先輩。
古城が吼えると、雪菜は銀の槍を構え悪戯っぽく微笑みながら言ったので、レイは2人の後ろで苦笑していた。
最初に動いたのはレイだったが仕掛けたのは雪菜だった。
銀の槍をアスタルテに向けて突き出すと眷獣を纏った少女は人型の巨体を操ってそれを迎撃する。
すると建物全体をも振動させる程の壮絶な拳撃が発生した。
アスタルテの眷獣は、人型ではあるが生物ではなく濃密な魔力の塊なのだろう。
そのまま二人の戦闘は膠着状態となり、古城はそれを見計らって
「ぬぅん!」
掛け声とともにオイスタッハは戦斧で攻撃してきたため古城は慌てて避けようとするが避けきれないと悟り身構えていたがその戦斧は2人の間に入っていたレイによって弾かれ、隙を見て古城は魔力で作り出した雷球を鋭いパスのような感覚で投げつけた。
「先程の言葉は撤回です。認めましょう、あなたは侮れぬ敵だと。故に相応の覚悟を持って相手をさせてもらいます!」
それを見たオイスタッハは顔を強張らせる。
「ロタリンギアの技術により作られし聖戦装備
宣教師は纏っている法衣を脱ぐと装甲強化服から放たれる黄金色を古城に向ける。
「汚ねェぞ、オッサン。そんな切り札をまだ隠し持ってやがっのかよ!」
非難の声を上げながらオイスタッハの攻撃を紙一重でかわしている。
「先輩・・・!?」
雪菜は叫ぶが彼女もアスタルテを抑えこむだけで精一杯となっており、助けに行けない自分を悔やんでいると、心配するな、というふうに雪菜に目配せして古城が異様な気配を放ちとオイスタッハはそれに気付き攻撃の手を止めた。
「そういうことならこっちも遠慮はしねえ。死ぬなよ、オッサン!」
古城が言うとオイスタッハは本能的に危険を察知して後方へ跳ぶと彼をめがけて突き出した古城の右腕が、鮮血を噴いた。
「”
その鮮血が、輝く雷光へと変わる。
さっきまでの雷球とは比較にならない膨大な光と熱量、そして衝撃。
まぎれもなく第四真祖の眷獣である。
しかも凝縮されて巨大な獣の姿を形作る。
それが本来の眷獣の形。古城が完全に掌握した、第四真祖の眷獣の真の姿だ。
「
出現したのは雷光の獅子、戦車ほどもある巨体は、荒れ狂う雷の魔力の塊。その前身は目がくらむような輝きを放ち、その方向は雷鳴のように大気を震わせる。
古城が、先代の第四真祖から受け継いだ眷獣は全部で十二体。
だが、雪菜の血を吸った古城を宿主と認めたのは、結局、この雷の眷獣だけだった。
「これが貴方の眷獣ですか・・・!これほどの力をこの密閉された空間で使うとは、無謀な!」
オイスタッハには、自分目がけて振り下ろしてくる雷の獅子の前足が見えた。
その攻撃は彼をかすめただけでオイスタッハの巨体を数メートルも跳ね飛ばした。
「アスタルテ!」
オイスタッハはついに従者を呼んだ。
爆発的な魔力、自然災害にも匹敵する暴威を振るう古城の眷獣に対抗できるのは、彼女の眷獣”
雪菜の攻撃を振り切って眷獣をまとうアスタルテが古城の眷獣の前に立ちはだかると”
次回、後編。