大森林〜くさタイプヘイトの俺がくさタイプ一筋になった訳〜 作:ディア
もりのようかんを抜け、無事にハクタイジムに戻るとそこには不機嫌なミカンの姿があった。
「おかえり……」
「ミカンさん、そんなにもりのようかんに行けなかったことが残念ですの?」
おい止めて差し上げろ。日本語がおかしくなってしまう程度に俺はミカンの機嫌を取ろうとしていた。それだけ怒ったミカンが怖かった。
「そうであってそうでないわ」
「ミカン、今度一緒に行こうよ」
その言葉を聞いた瞬間、ミカンの雰囲気が柔らかくなるがその一方でエリカの雰囲気が黒く染まる。いや俺だってあんなホラー極まりない所に二度と行きたくないからな。
「そ、それよりもコスモ君。ジム戦をやってみない? あのリーフィアを見た感じとっても育てられていると感じたんだけど、ポケモンバトルしてその実力試してみない?」
ナイスフォロー、ナタネ。俺はくさタイプアンチでくさタイプなんぞチートの影響がなければ真っ先に切り捨てて他のタイプに切り替える人間だがナタネに免じて今だけくさタイプをヘイトするのを止めよう。
「やりましょう」
「それじゃコスモ君いこうか」
ナタネの柔らかい手が俺の手を包み込み、手を引いてバトルフィールドに案内する。
「……ボットちゃんの刑」
「……後でオシオキしないとね」
その間、エリカとミカン──特にミカンが殺意を込めすぎて声が怨霊染みていたのを聞き逃せなかった。
「コスモ君、そのリーフィアを見る限りじゃバッチ6個か7個あたり集めたんでしょ?」
「いえ、カントー地方で二つ、シンオウ地方で二つの合計四つです」
「嘘でしょ?」
即座に目を丸くし、俺にそう尋ねるナタネ。なんというか──ミカンが目を半月どころか三日月にしているからこれ以上ナタネについて考えるのを止めよう。
「確認しますか?」
「コスモ君、他に所持ポケモンを見せて貰えない?」
「わかりました」
そして俺が捕まえたポケモンを見せる──もちろんセレビィは除く──と真顔になり一言放った。
「もしかしてコスモ君はくさタイプのエキスパートを目指しているの?」
「そうですね。偶々捕まえたタイプのほとんどがくさタイプなんですが愛着が湧きましてくさタイプのエキスパートになりたいと思います」
面接みたいに答えてしまったがそう答えないとエリカが怖い。最初にフシギダネを貰ったのが運の尽き……いやあの神がふざけたチート*1を持ち込んだのが運の尽きかもしれないな。
「コスモ、貴方はやはり……」
エリカが感動している。これが最善の手だったんだ。そうに違いない。違うと言う自分がいるのは気のせいなんだ。
「それならくさタイプのエキスパートの一人として挑ませて貰うわよ。そのフシギバナを見ている限りじゃかなりのくさタイプ好きみたいだからね」
「それでは挑戦者コスモVSジムリーダーナタネのジムバトルを開始します」
「さあコスモ君、貴方の強さ試させて貰うわ!」
ナタネが出してきたポケモン、それはシンオウ地方の御三家の一頭の最終進化形であり、唯一じめんタイプを混合させたくさタイプのポケモン、ドダイトス。
このドダイトスはじめんタイプを複合しているだけあって御三家の中でほのおタイプに弱点をつけるがこおりタイプが4倍弱点な為にドラゴン対策ついでにやられてしまう。くさタイプの弱点の多さが招いた悲しき運命とはいえ、れいとうビームを覚えやすいみずタイプに圧倒的に不利な奴なんだよな。
そのドダイトスをくさタイプのポケモンで倒すにはどうするかというとユキノオーといったれいとうビーム等のこおりタイプの技を搭載出来るポケモン、あるいはキノガッサくらいしか思い付かない。
しかし残念ながらその二択は不可能。何故なら俺の手持ちにその条件を満たすポケモンはいない。
「リーフィア、とっしん」
「フィアー!」
リーフィアのとっしんがドダイトスに炸裂すると、ドダイトスが大ダメージを負ってふらつく。
「ドダイトス、ウッドハンマー!」
「ダァァァ!」
ドダイトスがウッドハンマーをリーフィアに喰らわせると同時に振動と轟音がその場に響き渡る。
「フィア?」
凄まじい轟音が響き渡ったのに関わらずほぼ無傷のリーフィアがドダイトスを挑発するように声を上げそこに君臨していた。
ほぼ無傷でいられたのはドダイトスの出した技がくさタイプの物理技であるウッドハンマーとリーフィアの種族値にある。
リーフィアの種族値は攻撃と防御に特化していて、ウッドハンマーが如何に強力な技だとしてもくさタイプしかも物理技である以上リーフィアには対して効かない。
それに加え、俺のチートという名前の呪いはくさタイプの能力を上げるものでありリーフィアもその恩恵を受けている。そんなリーフィアにウッドハンマーが効くはずもない。
「リーフィア、とっしん」
そしてもう一度とっしんを繰り出させるとドダイトスが倒れた。
「嘘でしょ……? いくらリーフィアの物理攻撃が強いとはいってもとっしん二回で私のドダイトスを仕留めるなんて……」
「そりゃ僕のリーフィアですからね」
「フィア!」
リーフィアが元気よく返事するとナタネが溜息を吐いて口を開く。
「降参するわ。そのリーフィアがいる限り今の私に勝ち目はないもの」
「またですか」
「またですわね?」
オイコラ、そこの二人。こそこそ批判するように声を上げるんじゃない。ナタネが降参したのは別におかしなことじゃない。むしろ対策してなきゃ負けるのは当たり前だ。それにエリカはブーメランだろうが。
「コスモ君、これがこのハクタイジムのバッチ、フォレストバッチよ。それと技マシンとは別に受け取って貰いたいのがあるの」
「受け取って貰いたいものですか?」
はて? 普通なら技マシンのみのはずだが一体何が──
「このタマゴよ」
ナタネが取り出したもの、それはポケモンのタマゴだった。おそらくくさタイプのポケモンのタマゴだろう。
「このタマゴは私のナエトルが持っていたものなの。私の下で育てようと考えていたんだけど、くさタイプ使いのコスモ君なら信頼出来るから君に託したいの。そういうことだから受け取って貰える?」
「まあそういうことなら。ただナタネさん。連絡先を教えてくれませんか?」
「もちろん。こっちが教えて欲しいくらいよ。そのタマゴが孵ったら私もナエトルも様子を知りたいからね」
そして互いに連絡先を交換するとミカンからゴーストタイプのような威圧感を醸し出していたが無視した。……無視でもしないとやってられないからだ。ヘタレで結構!
「それでコスモ君、次のジムはどのジムに行くつもり? 普通ならクロガネジムを勧めるんだけど、コスモ君ならキッサキジムに挑んでも大丈夫そうね」
「何故普段はキッサキジムを勧めないのですか?」
エリカがそう言って尋ねる。
「あのジムはジムリーダーが強すぎて、ほとんどのトレーナーが相手になれないの。ナギサジムとキッサキジムのバッチが取れなくて挫折したトレーナーはいくらでもいるわ。もしかしたらコスモ君ならそれが出来るかもしれない……期待しているわ」
さらっとナギサジムを出すあたり、認められているんだな。だからと言ってエリカは許す気は更々なさそうだけど。
「それ程の相手なら尚更対策してから行きますよ。何せキッサキシティはこおりタイプのジムですからね」
「流石、私が見込んだトレーナー。いつか君はくさタイプ最強のポケモントレーナーになるよ」
ナットレイとかこおりタイプに強いポケモンが欲しいが、シンオウにそんなポケモンは存在しない。
だがこおりにもほのおにも等倍で済ませられるポケモンは世の中に存在していて、それがクロガネシティにいるかもしれない。だからこそ、俺はキッサキシティよりもクロガネシティを目的地に定めた。
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