大森林〜くさタイプヘイトの俺がくさタイプ一筋になった訳〜 作:ディア
マチスとのジム戦が終わり、クチバシティ。本来ならマチスに勝ったところを喜ぶところなんだが、素直に喜べない。その理由が俺のとなりで不機嫌になっているミカンだ。アルミカンじゃないぞ。
「……」
「み、ミカン……」
「ふんっ」
取りつく間もない。まるで冷凍ミカンのようだ。……なんてネタをかましている場合じゃない! このまま俺はミカンとの仲を悪くしたまま、シンオウに一緒にいきたくない。脳内シュミレーションをすると選択肢が現れた。
A.強引にキスして誤魔化す
B.ポケモンバトルをして友情を深める
C.誠心誠意込めて謝る
おい、A……何をどう考えたらそんな選択肢が現れるんだ? Aは言わずとも論外だ。こんなことをすれば真っ先に殺されるわ! それ以前に強引にキスしようにもこの世界でフィジカル最弱のスペックの俺がミカンにキス出来る訳がない。当然ながら却下DA!
だからと言ってBもない。強引にキスするのとほぼ変わらない。ミカンと俺の力の関係を逆転させたにしか過ぎない。渋々貰ったとはいえこんな事の為に俺のチートはあるわけではない。
ここは普通に考えてCだ。Cの誠心誠意込めて謝って機嫌を直して貰おう。
「ミカン、ごめんなさい! レディーファーストと言うくらいの用語があるのにほったらかしてごめんなさい!」
「ち、ちょっと!」
俺が土下座までするとミカンが慌てて、オロオロと周囲を見ながら顔を紅潮させる。土下座は嫌だがそれ以上にミカンとともに楽しく一緒に行けないのは嫌だ。だから誠心誠意、謝る。
「わ、わかったから頭を上げて……」
耳元で囁くミカンは先ほどの冷凍ミカンからゆでミカンに変わっていた。……かわいい。
「許してくれるのかい?」
「い、今はこの場を離れて後で話そう」
「うん……」
うん、なんて言っちまったよ。礼儀正しい少年から普通の少年まで成り下がったような気がする。情けねぇ。
そしてシンオウ行きの船に乗り、部屋を取った。
「ミカンごめんなさい!」
「だから、それはもういいわ」
「え……?」
「許すってことよコスモ」
「あ、ありがとう」
「その代わりマチスさんに貰ったロトム少し見せて貰えなかな? それが無理ならちょっと、その……」
ロトムね。そう言えばまだ見ていないな。臆病だっていっていたけど顔合わせの為にも皆出すか。
「ロトムだね。だけど皆を自己紹介させたいからちょっと待って」
「え、あ……うん」
何故かしょんぼりとするミカンが、視界の隅に入るがそれを無視してロトム以外のポケモンをボールから出した。
「フシッ」
「ブィ!」
「ビィ……」
順にフシギソウ、イーブイ、そしてタマネギの三匹が外に出た。
「これがコスモのポケモン達?」
「そうだよ。フシギソウ以外は見せていなかったから知らないのも当然だよ」
「でもこのタマネギみたいなポケモン見たことないわ……コスモ、このポケモンって一体?」
『話すな! 誤魔化せ!』
テレパシーでタマネギが俺だけに伝える。ミカンを信頼しているし、話すデメリットはほとんどないんだよな。
「このポケモンはセレビィ。ジョウト地方に住むミカンなら聞いたことあるでしょ?」
「この子が時渡りの?」
『ちょっ!?』
「そう。フシギソウがフシギダネの時に遭遇して捕まえたんだ。本来ならこういう風に見せびらかしたりせず、しまっておくべきなんだけれどもミカンなら信用出来るから……」
「……それじゃ早くボールにしまって。それがその子の為よ」
ミカンは一瞬、笑みを見せるとすぐに緊迫した顔つきになりそう指示する。
「それじゃタマネギ戻れ」
『後でどういうことか説明してもらうからね』
タマネギが怨念の声をテレパシーで伝え、ボールの中に入る姿はまるでヒロインのようだった。
「ミカン。ロトムを出すよ?」
「うん。出して」
そしてマチスから貰ったボールに手を触れる。するとカタカタと震えており拒否反応を示していた。
「……ロトム?」
「どうしたの?」
「ロトムが出たくないみたい」
「もしかしてコスモのポケモンがいるからじゃない?」
なるほど、確かにそれもそうか。だけどこのまま出ないってのは流石に問題があるし説得してみるか。
「ロトム、大丈夫だよ。ここにいる皆は君に危害を加えたりしないよ。だから大丈夫」
するとロトムが拒否反応を示さず震えも止まった。口調こそ気持ち悪くて仕方ないがもはや矯正しようがない。人間堕落するのは早いというが、これは堕落なのだろうか?
「よし、それじゃ出すよ」
その瞬間、電磁音が響く。ロトムの鳴き声だ。機械に入り込むだけあってそういう鳴き声を出すみたいだ。
「ロトム、ここにいるポケモン達が君と同じ仲間だよ」
「zi!」
物影にすぐさま隠れてしまい、姿を消す。するともう一つのボールが揺れ、タマネギが出る。タマネギが目を瞑り、テレパシーを送り説得しているようだった。
「ziーッ!!」
タマネギの説得により、ロトムが姿を表して俺やフシギソウ、そしてイーブイを見て恐る恐る俺に触れた。
「っ!」
静電気が流れ、思わず手を引っ込めてしまうがロトムは俺の反応に満足し、フシギソウやイーブイにも仕掛けた。
「ブイーッ!」
フシギソウは効果半減やステータス上昇していることもあってかびくともしていないがイーブイは等倍な上に弱体化している。その為ロトムの静電気がイーブイに大ダメージを与えるのは無理もなかった。
「イーブイ大丈夫!?」
「ィ~……」
ダメだこりゃ。気絶してやがる。モンスターボールの中に入れロトムの方に向く。
「ロトム。イーブイは繊細だから静電気はやめようね」
「Zi!」
ロトムが返事をして頷くとフシギソウの方に絡むのを見て三匹ともモンスターボールの中に入れた。
「これで良かったかい? ミカン。持ち主が変わってからボールから出すのがはじめてだから流石に長時間出すって訳にはいかないけど、ロトムは出したよ」
「……コスモは女心をもっと知るべきよ」
ミカンがまた拗ねてしまい、口を閉ざす。解せぬ……
「女心云々はともかくミカンは僕と同室で良かったの?」
「あのエセ箱入りお嬢様がここまで来た時の保障よ」
エセ箱入りお嬢様って。まあ確かにあの怪力は人間が出すレベルじゃないけども、三半規管が人間のそれではないミカンも大概だ。
「エセ箱入りお嬢様とは随分な言われようですわ」
そうそう。エリカが聞いたらこんな風に……風に?
「ごきげんよう。コスモ、ミカンさん」
「な、なっ、なっ何でここにいるんですかお姉様!?」
というかどこから現れたんだ!?
「コスモの武者修行の旅をこの目で見届けに」
「タマムシジムは?」
「しばらくの間休業ですわ。トキワジムのジムリーダーも武者修行の為に休業したと聞きます」
サカキはそうして誤魔化していたのか。てっきり俺は息子を育てているかと思っていた。
「そのジムリーダーさんは自分の為にやったことでしょう? お姉様の場合、僕の成長を見届けるだけですから理由としては不十分では?」
「コスモはポケモンに関する知識が誰よりも豊富で側にいるだけでも我々ポケモントレーナーにとって有益なものですわ。その事をポケモンリーグに三時間ほど説明し、説得致しましたので不十分とは言えませんわ」
「ミカン……」
「はぁ……仕方ないわ。諦めましょうコスモ」
諦めんなよ! お前がそれを言ったらアカンだろうが! ほら、エリカが笑みを浮かべて喜んでいるし……
こうしてバッチ二個ゲットした俺は姉であるエリカを仲間に加え、シンオウ地方へ向かうことになったとさ。続くし、めでたくもねえよ!
次回からシンオウ地方編始まります。次回もお楽しみに!
シンオウの次の地方はどの地方が良い?
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ジョウト
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ホウエン
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イッシュ
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カロス
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アローラ
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ガラル