食事をした後、ドクターの招集によって守護英霊召喚システム「フェイト」の前に集合した。勿論、俺と
「さて、みんな集まったかな?早速だけどそろそろ次の特異点が特定できる」
緊張した空気が蔓延する。誰かのつばの飲む音が聞こえるほど静まり返った。
「今回は戦力増強が目的だね。冬木でも体験しただろうけど、サーヴァントを召喚してもらう」
『はーい。聞こえるかな?今から召喚に必要なものを配ろうと思う。ロマン!』
「はいはい…」
ドクターが配り始めたのは虹色の石三つと見覚えがある物だった。
「これは?」
「これは呼符と聖晶石さ。呼符は冬木でも使ったから省くけど、聖晶石は三つで呼符と同じ効果を発揮する魔力が籠った石ってところかな。大樹君もレイシフト先で見つけたら回収しておいてほしい」
「はい!」
「ははは、そこで気合は要らないさ。召喚時にとっといてくれ。触媒なんてないから召喚者と相性が良いサーヴァントが召喚されやすいが、万が一ってこともあるからね」
「触媒?」
「サーヴァントに所縁のある物のことです。それを捧げればそのサーヴァントが召喚されやすいそうです」
完全に運の戦いとなる。巷で人気なソーシャルゲームでは…ガチャっていうんだっけか?
「それ以上はいけない」
「ドクター?真顔になってどうしたんですか?」
「え?いや、なんでもないよ。石は藤代君が拾い、呼符はレオナルドがコールドスリープさせたマスター候補に持たせた残骸から急遽用意したからまだ二人で一回分ずつしかない。それじゃ大樹君からやってみようか」
「は、はい!」
大樹が召喚サークルに石を投げ入れる。そうすると光が召喚陣を作り出し、召喚陣から出てきた三つの光の輪が回りだす。さらに召喚陣の中央にできた光の柱が俺達の視界を閉じさせる。まばゆい光の中に出来た人影から声が聞こえる。
「問おう。貴方が私のマスターか」
それは冬木の黒き騎士王の声と同じだったが、青いドレスを身に包んだ清廉な姿。あれこそが正しき騎士の王の姿。
「は、はい。俺がマスター、です」
「ここに契約は成った。私の真名はアーサー王、アルトリア・ペンドラゴン。この契約が終わるまで、私は貴方の剣になりましょう」
「アーサー王…」
「冬木の時とは随分雰囲気が違うような…」
大樹とキリエライトは冬木との違いに戸惑っている。まあ、あの圧倒的な威圧感を身に感じれば困惑するのも当然だろう。
「あのマスター?何か不都合でもありましたか?」
「いや、不都合ってことでも…」
大樹は悩むがドクターに冬木の記録を見せるよう提案する。ドクターもそれを了承し、セイバーにそれを見せる。
「あれは私がもし暴君とふるまっていたとしたらというIFでしょう。心の内側を聖剣が物語っています。冷徹であり合理的であり、私はあそこまで割り切れなかった…まだまだ未熟ということです。だが…」
「…?」
「こんな私でも助けになれるでしょう」
「よろしく」
互いに握手する二人。その前にマシュの方を一瞥していたが…盾を見ていた?
「次は藤代君の番だね」
どういうことだと思ったがドクターに呼ばれ、召喚システムの前に立つ。俺は呼符を投げ入れ、召喚されるのを待つ。先程の光景を繰り返し、中から出てきたのは、
「えっと、イリヤって言います。小学五年生です。一応…魔法少女、やってます、はい。うぅ、私なんかが役に立つのか分からないけど…でも精一杯、頑張ります!」
「ルビーちゃんもいますよ!面白かわいくやっていきましょう、グランドマスター!」
「あ、ああ…よろしく頼む」
落ち着け俺。この
「小学五年生…魔法少女?現代のサーヴァントかな?しかし、あのステッキは…」
「ドクター?」
あー、アイドルオタが魔法少女に反応したよ…俺も前じゃあんな風だったのかねえ。
「あ、あのマスターさん?」
「召喚は終わりだし、カルデアを案内しようか」
「は、はい!」
ドクターはキリエライトに任せてここを出よう。そう思い、三人を連れて廊下に出た。
*
イリヤスフィール・フォン・アインツベルン、小学五年生です。後、魔法少女やっています。よく分からないけどカルデアに召喚されました。
「ここが修練場で…」
今はマスターさんにカルデアを案内してもらってます。見た目は怖いけど(パパと一緒で目が死んでるし)…ちょっと優しいかな?
後ろに着いてくるのは牛若丸さん。あの有名な源義経なんだって!…何であんな鎧なんだろう?
(しっかし、人類が滅亡しているなんてバイオレンスですねぇ)
(私達の世界の未来とはまた違うみたいだけど…)
(世界の命運はイリヤさん達の手にかかっている!)
(あう~、プレッシャーだよ~)
「どうした?」
「な、何でもないよ!あ、なんでもないです…」
「そうか。次はこっちだ」
突然の奇行にも反応せず案内を続けるマスターさん。うう、気使わせちゃったかなぁ?
(イリヤさんやっちゃいましたねぇ)
(ルビーが話しかけてくるからでしょ!)
「…」
(大体ルビーは…!)
「少し休憩しようか」
「え!は、はい…(うう…)」
(ぷーくすくす)
これは完全に気を使わせちゃったよぉ。ベンチに座るマスターさんの隣に座る。
「大丈夫か?」
「え?」
「俺は25歳、君は10歳位だろう。でも、俺は人間で君はサーヴァントだ。俺は君の背中を押さなければならない」
「…」
「この旅で理不尽を知るだろう、涙を見るだろう、猟奇性を感じるだろう。君はその時立てるか?」
マスターさんの顔を見る。真剣な眼差し…ミユみたいに同じ強固な意志を秘めた眼。その眼を見た時、私の返事は決まっていた。
「私はサーヴァント。マスターさんが望むなら私…頑張ります!」
「…良い返事だ」
「では、お近づきの印に秘蔵のイリヤさん寝顔写真のスライドショーでも…」
「今すぐ削除なさい!」
「ふむ…これは…」
「マスターさん!?」
…色んな意味で近づけた気がします。
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