戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない 作:imuka
ではどうぞ。
クリスマスパーティーを満喫したイーニアは1人のんびりと校内を歩いていた。廊下は暖房が利いていなく寒く息が白い。適当に歩いていると知らない場所に出る。そこには姿鏡が一つだけ置かれていた。
「なんでこんなところに鏡が…?」
イーニアは疑問に感じつつ鏡に近づく。すると鏡に自分と、写真でしか見たことのない痩せている両親が写った。
「これは…。」
鏡に写ったものに少し驚きつつも鏡を触りどういうものか確認する。ふと後ろから気配を感じたイーニアが振り向くとそこにはダンブルドアとハリーが歩いてきた。
「ダンブルドア校長、ハリー。」
「こんなところにおったのか。」
「イーニア、それは?」
「よくわかんない。」
「それは"みぞの鏡"と言うものじゃ。」
「みぞの鏡?」
「ハリー近づいてごらん。なにが見える?」
「両親と…僕が見えます。」
「鏡が見せてくれるのは、心の一番底にある一番つよい"のぞみ"じゃ。それ以上でもそれ以下でもない。君は家族を知らないから、家族に囲まれた自分を見る。イーニアは恐らく痩せていた両親を見たのではないかな。
しかしこの鏡は知識や真実を示してくれるものではない。鏡が映すものが現実のものか、はたして可能なものなのかさえ判断できず、みんな鏡の前でヘトヘトになったり、鏡に映る姿に魅入られてしまったり、発狂したりするんじゃよ。
夢にふけったり、生きることを忘れてしまうのはよくない。それをよく覚えておきなさい。」
その言葉に2人はしっかりと肯き返事をした。
「でもなんでそんなものがこんなところに?」
「少し置く場所に困っていての。明日には違う場所に移すつもりじゃったんだが、その前にイーニアが見つけてしまったということじゃ。」
困った顔で見るダンブルドアをイーニアは笑ってごまかした。
* * *
年が明け休みも終わり、優勝がかかったハッフルパフ戦。グリフィンドールではスネイプが審判をするという話でもちきりだった。ロンなどは理不尽に減点されるのではないかと話していたがイーニアは審判をやる人間がそれは駄目だろうと思いつつも、そういう行動にでそうに見られているスネイプの日頃の行いにも問題はあるのではと考えていた。
しかしそれも杞憂に終わり、ハリーが前代未聞の速さでスニッチを掴み、即試合終了。減点されることもなくグリフィンドールは優勝を飾った。だがハリーは試合後、スネイプとクィレルが揉めているのを目撃し、恐らくあるであろう賢者の石が危ないのではと考えた。
4人はスネイプたちの動きをできるだけ見ていたが、その後2人に特に目立った動きはなかった。
月日が流れ、学年末試験が近づいてきたのでスネイプたちを見ていることができず勉強の方へ力を入れなければならなくなる。イーニアとハーマイオニーは日頃から勉強しているので、2人はハリーとロンの苦手科目を教えることした。
勉強結果が実り、ハリーもロンも苦手科目の対策がとれるようになったころ。勉強の休憩していた4人にハグリッドが声をかけ小屋へ来るように言う。
小屋に入ると中は真夏ように暑く暖房がすごい勢いで燃え、前に訪れたときになかった卵がゆでられている。イーニアがフラッフィーのところはどうなったかと聞くとあそこにはやはり賢者の石が存在し、何人もの先生方の罠が仕掛けられ、フラッフィーに関してはダンブルドアとハグリッドしかあやし方は知らないという。
「でもさ。疑うわけじゃないんだけど、ハグリッド本当に誰にもしゃべってない?」
「話すわけがなかろう。」
「うーん。ま、今はいいか。誰が協力してるかわかっただけでも十分収穫はあったよ。―――ところでハグリッド、なんでこんなにここ暑くしてるの?」
イーニアが聞くのをやめたので3人もこれ以上ハグリッドを問い詰めるのをやめた。そして普通の話題として小屋が暑い理由を聞くとハグリッドは卵の方を見る。
「それのせい?なんの卵なの?」
「賭けに勝ったんだ。知らん奴とトランプでな。そいつは厄介払いができたと喜んでおった。」
「食べるわけじゃないんだよね?鍋で茹でてて大丈夫なの?」
「さっき図書館で本を借りたんだ。『趣味と実益を兼ねたドラゴンの育て方』っちゅー本だがな、なかなか面白いぞ、こいつぁ。」
「「「「ドラゴン!?」」」」
「まって!!ドラゴンって法律で禁止されてるよね!?アズカバンに入りたいの!?ハグリッド!!」
すごい形相でハグリッドに詰め寄るイーニア。その勢いにさすがのハグリッドも体を後ろにやる。ハリーが"そんなにまずいこと?"と聞いてくるとハーマイオニーが説明する。
「ワーロック法っていって1709年に作られた法律があるのよ。一般人のドラゴンの飼育を禁じるって内容の。許可を得るのもかなり難しいって聞いたことがあるわ。」
「賭けで渡してきた奴も相当危ない奴かもしれない…。うーん…。どうしよ。」
イーニアは立ち上がり小屋をうろうろしながら考える。4人はその様子を見ていたが卵から割れるような音が聞こえ、全員が見る。
「おおっ、そろそろ孵るぞ!」
ハグリッドが卵を鍋からだしテーブルの上のタオルの上に置く。卵に亀裂がどんどん入っていき爆散した。
「ノルウェー・リッジバッグ種だ。すっげー…。」
ロンの感嘆した感想にイーニアは余計に頭を抱えた。ノルウェー・リッジバッグ種。ドラゴンの中でも桁外れに攻撃的なドラゴンでとても貴重な種である。事態が余計に悪化したことに嘆くイーニアに対し割と能天気な元凶と男たち。
「ダンブルドア校長のところへ行こう。ハグリッドすべてをそこで話して。」
「だ、だがこいつは――。」
「ホグワーツの人間がこんなもの飼ってたなんて話になったらダンブルドアの立場も悪くなるよ。それはハグリッドだって望んでないでしょ?問題はこの子をどうするかだけど――。」
「それなら僕の兄貴がドラゴンキーパーとしてドラゴンの研究をしているからそこに預けれないかな?」
「それはいいアイディア。それで行きましょう。この子は私と――。」
「僕も見てるよ!ドラゴンの子供なんてそうそう見れるもんじゃないからね!」
「じゃあハリーとハーマイオニーはハグリッドと一緒に校長室へお願い。」
2人はイーニアの指示に肯き、ハグリッドを連れて小屋を出た。3人が出ていくの見送ると深く椅子に腰かけるイーニア。ふとドラゴンの方を見るとロンが触ろうとしていた。
「ロン!駄目!!」
イーニアの制止は虚しくも間に合わず、ロンはドラゴンに噛まれてしまう。
「いったああああああ!!!」
「馬鹿!種類知ってるなら攻撃的だってわかってるはずでしょ!?」
血が出ている部分にハンカチを当て止血すると治療呪文を唱え応急処置をする。
「いたたた、ありがとう。イーニア。」
「どういたしまして。でもマダム・ポンフリーに診てもらわなきゃだめね。」
「どうして?痛み結構ひいたけど。」
「ノルウェー・リッジバッグ種は牙には毒があるの。それの治療は私じゃできない。」
「ええ!?毒!?大丈夫だよね!?僕死なないよね!?」
「大丈夫だよ。死にはしないから。ただ死ぬほど痛いかもね。」
イーニアはロンにいじわるを言い、ニヤっと笑う。ロンを脅し、反省させるとイーニアは噛まれないように気を付けながら生まれたばかりのせいでぬるぬるしているドラゴンの体を拭いていた。ドラゴンの体を拭き終わり、何故か膝の上で大人しくしているドラゴンに疑問を抱いていると3人がダンブルドアを連れて戻ってきた。
「ほっほ。ずいぶんと立派なドラゴンじゃの。」
「こんにちは、ダンブルドア校長。――ああ、そうだ。ロンの兄への手紙を出してもらっていいですか?ロンさっきこの子に噛まれちゃって。」
膝の上で大人しくしているドラゴンの喉をカリカリ掻いてやりながらダンブルドアに言う。
「ロンの手、明日にはパンパンに張れちゃうと思うんです。――それに校長からなら面倒事も減りそうですし。」
「よかろう。ウィーズリーは今すぐ医務室に行きなさい。」
「じゃあ私が連れて行きます。」
ハーマイオニーに連れられ小屋を後にするロン。その後、少しドラゴンの相手をしたイーニアとハリーは夕食の時間が近づいたので大広間へと向かった。大広間に着くとハーマイオニーが1人で食事をしており聞くとロンは入院することになったとか。
数日後、ドラゴンのノーバートを受け渡すことになりロン以外の3人はそれに立ち会うことにした。イーニアはドラゴンに何故か懐かれていたので毎日ハグリッドの小屋を訪れ世話を手伝っていた。それも今日で終わりである。
「数日とはいえ世話をしてると愛着が湧いちゃうもんだね。」
ノーバートに餌をあげながらしみじみ言うイーニア。
「世話してわかったことだけどドラゴンって頭いいわよね。私たちの言葉をしっかり理解するし。」
ハーマイオニーもノーバートを見ながら言う。
「でも読んだ本じゃ結構気性が激しくて大変って書いてあったからノーバードが賢いんじゃない?」
ハリーは読んだ本を見せながら言う。
ノーバートを引き取るチャーリーの同僚、サーベイが訪れノーバートを引き渡す。ハグリッドは大泣きしている。
「ノーバートをお願いします。賢くていい子なんです。――ノーバートいい子にね?機会があったら会いに行くね。」
イーニアがサーベイに渡そうとするとノーバートはイーニアに引っ付いて離れようとしなかった。強化魔法をかけ、力任せに離そうとしてもすごい力で掴んで来る。
「いたたた。ノーバート、言うこと聞いて?」
生まれて数日しかたっていないがノーバートはイーニアの言うことを聞かなかったことはなかったゆえにイーニアは完全に困った顔をした。ダンブルドアがそれを見てサーベイに話しかける。
「ここに君たちの仲間を駐在させることは可能かね?」
「費用さえあれば可能ですが…お恥ずかしい話我々の研究もあまり進んではいません。正直ギリギリなんです。」
サーベイが申し訳なさそうにいうとダンブルドアは何かを決断する。
「費用はこちらで持とう。幸い餌になる動物や育てる土地はある。――イーニア、君はドラゴン研究会としてノーバートを育てなさい。」
「えええええええ!!?!」
「ノーバートが離れん以上仕方ないじゃろ。無理に剥がせば君の身体かノーバートの体が千切れる。魔法省へは儂から話しておこう。」
「我々としては願ってもない申し出ですが本当によろしいのですか?」
「なに、ホグワーツには様々なモノがおる。ドラゴンが居ても問題なじゃろ。」
サーベイが少し戸惑い気味に聞くとダンブルドアは笑いながら答え"さっそく交渉してくるかの"とその場を去って行った。あまりにも衝撃が大きくイーニアは呆然としていたがハリーとハーマイオニーはハグリッドに"お別れじゃなくてよかったね"と慰めていた。
その後、ダンブルドアは魔法省から飼育許可を持ったものを2人以上置くことでホグワーツで飼うこと許可することを承諾させ、しばらくはハグリットの小屋で、大きくなったらグレイプニルの鎖を使い飼うことが決まった。その話は瞬く間にホグワーツ中を駆け巡り、イーニアはしばらくの間、質問攻めに合うはめになった。
* * *
ドラゴン騒動も沈静化し、学年末試験間近。イーニアは勉強の休憩にハグリッドの小屋を訪れ、ノーバートの世話をいていた。
「君に懐きすぎているもので、俺たちがノーバートにすることがほとんどないんだ。これじゃ給料泥棒だよ。」
駐在しているドラゴンキーパーのサーベイとロイは大笑いしながら言う。もちろん冗談でイーニアの手伝いのおかげでドラゴン研究はかなり進んでいるらしい。
「そういえばハリーたちはどうした?」
「もう少しやってから来るって言ってたからそろそろ――ほら来た。」
ノックが聞こえハグリッドがドアを開けるとハリーたちが入ってくる。
「こんにちは、サーベイ、ロイ。」
「ああ、こんにちは、3人とも。」
2人に挨拶するとハリーたちはノーバートに近づき遊ぶ。遊びとしては特殊な切れない布を引っ張りあったり、物を投げて取りにいかせたり、とまるで犬だった。ただドラゴンキーパーの2人によると引っ張り合いは顎と腕の筋肉を使うのでいい運動になるし、物投げはノーバートが飛んで取りに行くので飛行訓練にも適していると話していた。しかしここまで人の言うことを聞くドラゴンは初めて見るらしい。
「そうだハグリッド。禁じられた森ってやっぱり入るのまずい?」
「そりゃそうだが…。なんでだ?」
「いや、ノーバートもそろそろここの風景に飽きてきてるんじゃないかなって思って。基本サーベイとロイ、私が踏み入れる場所しか連れてってないから。」
「うーむ、どうしても連れて行きたいなら夜ここにこい。俺も少し確認したいことがあるからあそこに入るしな。」
「わかった。こっそりと抜け出してくるね。3人も来る?」
その言葉にハリーたちは即答した。
ドラゴン関係を変更しました。
ノーバートはちょくちょく出しストーリーに関わらせようと思います。
次回はドラコが出ます!お楽しみに!
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