戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない 作:imuka
毎回お久しぶりです、と書いている気がしますが
お久しぶりです。約五ヶ月ぶりです。
ではどうぞ。
アンブリッジの罰則を受けに行ったハリーをイーニアは談話室で読書をしながら1人待っていると手に血を滴らせながらハリーが戻ってきた。
イーニアは思わず駆け寄りハリーの手を取る。そこには『僕は嘘をついてはいけない』と手の甲に刻まれていた。
「何をされたの?」
少し強い口調で聞きつつイーニアはハリーの治療を始める。ハリーは黙っていたがアンブリッジがやったのは明白だった。
イーニアは傷跡が残らないように綺麗に治すと”一応、マクゴナガル先生には話しておくわ”とハリーに告げ、談話室を後にした。
イーニアはマクゴナガルの研究室の前に着くと扉をノックする。すると中からマクゴナガルが扉を開けて出てくる。
「Ms.シュツベル。こんな時間にどうしました?」
「すみません、先生。話しておきたいことがありまして。」
「―――中に入りなさい。」
イーニアの口調に何かを感じ取ったマクゴナガルはイーニアを部屋に入れた。
中に入りイーニアは部屋を少し見渡した後、マクゴナガルに話しかけた。
「ここって2階の割には景色がいいですね。」
イーニアが入って突然そう告げたことにマクゴナガルは少し首を傾げたがすぐに理解した。窓の外にとても小さいが使い魔がおり、恐らく盗聴をしているのだろう。
「ええ、ここからでも生徒たちの様子が見えるためにそういう間取りにしたんです。」
マクゴナガルも外の存在に気がついたのでイーニアは肯くとマクゴナガルに指された椅子に座った。
「それで話とは?」
「アンブリッジセンセイについてです。―――今日の夕食前、センセイに呼ばれて部屋に向かったのですがそこで変な質問をされました。校長が何を企んでいるのか、とか私だけの秘密はないか、とかです。」
イーニアはそう言いつつ外から死角となる場所に魔法で字を書いていく。
『アンブリッジに薬を盛られました。真実薬に近いものです。』
イーニアが書いた文字に驚きつつもマクゴナガルは平静を装いつつ返事を返す。
「それで、何と答えたのです?」
「質問の意味がわからなかったので、質問の意味がわかりません、と。
――校長がどうかは置いといて何か探られるような言葉はいい気がしませんのでマクゴナガル先生に話した次第です。」
『薬の分解が体内で行えたので何も喋ってはいません。』
「そうですか。―――他に何かありますか?」
「あと、ハリーが寮の入り口の扉に手を挟んで怪我をしてました。」
『ハリーはアンブリッジに罰則を受けていたのですが、どうやら罰則として呪いのようなものをかけられたみたいです。』
「…っ!!――それはいけませんね。ポッターの怪我は?」
思わず息を飲んだマクゴナガルだったがそれでも冷静に返事を返す。
「対して酷くもなかったので私が治療しました。」
『手の甲に深く、”僕は嘘はついてはいけない”と刻まれていました。恐らくヴォルデモード復活の話をハリーがしたせいだと思います。傷は治しました。』
「――――ポッターには今後、気を付けるように伝えてください。」
「はい。わかりました。」
マクゴナガルの言葉に肯くとイーニアは外に居る使い魔をチラッと見ると部屋を後にした。
* * *
朝、食事を終えたイーニアが日刊予言者新聞を読んでいると『ドローレス・アンブリッジ 初代高等尋問官』と言う記事を見つけ、内容に眉間に皺を寄せた。
それを見たハリーやロン、ハーマイオニーも横から覗き込み驚いた表情をする。
「これってつまりはアンブリッジが先生たちを見張る、いや監視か?ってことでしょ。」
「そうね。一部の先生方は大丈夫かしら…。」
「同僚の教育者、つまりは先生方を査察する権利を持ち、教師たちが然るべき基準を満たしているかどうかを確認する。あいつ自身が基準に満たしているとは思えないんだけど。」
ハリーたちの言葉を軽く聞きつつイーニアは顎に手を当て、考えていた。
”ずいぶんと動きが急な気がする。何をそんなに焦っているんだろう。話だと騎士団はまだまともに動いていないはずだし………。”
考え事をしていたイーニアだったがハリーに授業の時間が近いと言われ慌てて席を立った。
その日からアンブリッジは授業の視察に来ては色々口出しをしていたが、生徒の間では”お前の授業を先に直せよ”という共通認識であった。
そんな日々が続き、ホグズミード村行きのある日。以前話に出ていた防衛術について、数名の生徒がハーマイオニーに呼ばれホッグズ・ヘッドに集まっていた。
「ずいぶんと声をかけたんだね。」
「スリザリンの一部の生徒を除いてほとんどがアンブリッジに不満を抱いているわ。賛同してくれる生徒は多いのよ。」
イーニアは部屋に居る人間の顔を見ると数人知らない顔があるがほとんどが知り合いだった。ネビル、フレッドやジョージ、ジニー、リーにルーナ、シェーマス、セドリックなどなど。クィディッチの選手が多く集まっていた。
声をかけたメンバーが全員集まるとハーマイオニーがワザとらしく咳払いをし、注目を集める。
「皆、今日は集まってくれてありがとう。――詳細は説明する必要もないと思うから省くけど、今ここに居るメンバーは今のままじゃいけないと思ってここにいると思うの。
だから私たちは自ら技術を磨き協力していかなければならないわ。」
「具体的にはどうするつもりなんだ?」
「私たちには最高の教師がここにいるわ。」
フレッドの質問にハーマイオニーは隣に座っていたイーニアを見る。イーニアは注目されたのでわざとらしく隣に更に座っていたハリーを見た。
それにより視線を集められたハリーは少し困ったような顔をしつつ否定するように軽く手を振った。
「「イーニアってことには俺たちはまったく依存はないぜ。」」
「うん。去年、凄かったもんね。」
イーニアが教師をやることに反論は一つも出ず、皆肯く。
「イーニア一人では見きれないからハリーや…セドリック、手伝ってもらえる?」
「もちろん。できる限りのことをさせてもらうよ。」
セドリックが返事を返したところでハーマイオニーが再度イーニアを見る。
「場所はいい場所があるわ。8階に「「必要の部屋だな!!」」――うん。それ。」
フレッドとジョージがイーニアの言葉に被せ、声を上げる。
「授業はそこで行う。日時が決まったらこれで知らせるわ。」
イーニアがそう言うとハーマイオニーが金貨を出す。
「ここに日付と時間が浮かび上がるからそれを確認してね。―――ああ、来れない場合はコレつかって【遊ぶ予定だったけどいけない】とでも書いて送って。」
金貨を指した後、紙を一枚出すと手紙魔法でフレッドに飛ばした。
「具体的には次の集まりで教えるね。」
「参加する人は金貨を持っていてください。」
ハーマイオニーがそう締めるとそこに居た全員が金貨を持っていき、解散となった。
皆が部屋を後にしたのを確認すると残っていたフレッドがイーニアに質問をしてくる。
「このことを他に喋らないように何かしなくてよかったのか?」
「ん?ああ、そうね。それならこの金貨に細工がしてあるわ。」
そう言われるとフレッドは金貨にイーニアから習った解析魔法をかける。
「―――?何にもかかってないんじゃないのか?」
「条件満たさないと発動しない魔法だから解析魔法だけじゃわからないよ。」
首を傾げたフレッドを笑いながらイーニアは扉を開け、ホグワーツに戻るように促す。金貨も持ちながら一生懸命悩んでいるフレッドたちを横目に今後について考えているとある張り紙が目に入った。
『告示 ホグワーツ高等尋問官令
学生による組織、団体、チーム、グループ、クラブなどは、ここにすべて解散される。
組織、団体、チーム、グループ、クラブとは、定例的に三人以上の生徒が集まるものと、ここに定義する。
再結成の許可は、高等尋問官(アンブリッジ教授)に願い出ることができる。
学生による組織、団体、チーム、グループ、クラブは、高等尋問官への届出と承認なしに存在してはならない。
組織、団体、チーム、グループ、クラブで、高等尋問官の承認なきものを結成し、またはそれに属することが判明した生徒は退校処分とする。
以上は、教育令第二十四号に則ったものである。
高等尋問官 ドローレス・ジェーン・アンブリッジ』
イーニアは2度読み直して深く眉間に皺を寄せた。
「お、おい。これってクィディッチも含まれるんじゃ…。」
ジョージが文を読んで動揺したように言うとハーマイオニーも読み終わり肯く。
「そうね。―――まずいわね、誰かが喋った?」
「だとしても対応が早すぎるし、そもそも喋ったら魔法が作動するからそれはないと思う。」
「盗み聞きとかは?」
「ない。完全に遮断しといたから。」
イーニアとハーマイオニーの問答をハリーたちは半ば呆然と聞いていた。
「ま、私たちのモノはともかくクィディッチは申請に行かないといけないね。――これから集まるんじゃない?」
「そ、そうだな。おいハリー行こうぜ!!」
クィディッチチームのメンバーは各自に集まる為、走って各寮へと向かった。
「こっちからアレに会いには行きたくないけど――しょうがない。」
「アンブリッジに会いに行くの!?」
「うん、今回のことについて聞いておかなきゃいけないから。」
イーニアはため息を吐くと、ハーマイオニーに先に戻るように告げアンブリッジの研究室へと足を運んだ。
研究室の扉をノックすると返事があり扉が開く。
「あら、Ms.シュツベル。どうかしたのかしら?」
「センセの出した告知についてお話がしたいんです。」
「さっそく読んでくれたのね。いいわ、中に入って。」
アンブリッジに促され、中に入ると前回と同じ場所の椅子に座る。
「で、何を話したいのかしら?」
「今、私たちは週に一回くらい勉強会として集まってるんです。もちろんメンバーはその時都合が合う人間になりますが。―――それが今回の告知に当たると思いまして。」
「そうね。確かに当たるわ。」
しっかりと内容を確認してくることに好感を持ったのかアンブリッジは作った笑顔から本当の笑顔に変わる。
「はい。ですが先ほど言った通りメンバーの人数は不規則で、場所もその時開いている場所を使っています。今回の申請に不確定な場所、人数で行っているのは問題があるのか知りたいんです。」
イーニアが少し残念そうに喋るとアンブリッジは落ち込ませないように間髪入れずに答える。
「会を行う前にどこで行うか通知してくれば問題ないわよ?」
「本当ですか!?なら今許可をいただけますか?――ああ、もちろん一度参加したことのあるメンバーの名前は全員書きます。」
イーニアは喜ぶように少し声を上げ、そのまま許可をもらおうとする。
「ええ、いいわよ。この紙にメンバーと目的と団体名を書いて?」
「はい!ありがとうございます!!」
イーニアは紙を受け受け取るとアンブリッジに気づかれないようにこの活動において文句を言えない契約書に魔法で変え、さっき集まったメンバーの名前を全員分書き、団体名に【勉強会】と記載し、笑顔で紙を返した。
「あら、上級生の人もいるのね。」
「はい、自分たちの復習にもなると、色々教えてくれます。」
アンブリッジがメンバーを見ながら、ペンを取り許可と自分の名前をサインするとイーニアに渡した。
「これが許可証にもなるから無くさないようにね。」
受け取ったイーニアは契約書としての拘束力が発揮されているのを確認すると、深く頭を下げ、研究室を出た。
研究室を出たイーニアはそのまま校長室へと足を運び、扉をノックした。アンブリッジの機嫌が良く、そろそろクィディッチチームが訪れる事を踏まえれば、ダンブルドアと接触できるのはこのタイミングだけだった。
中から入るように声がするとイーニアは扉を開け、校長室の中へと足を運ぶ。
「どうかしたかの?イーニア。」
「はい、ここ数日の件についてお聞きしたくて。」
「よいよい、ここでならしっかり喋っても問題ない。」
イーニアがあえて肝心の部分を歯抜けにして言うとダンブルドアは微笑みながら返し、椅子に座るように促した。
「アンブリッジの動きが性急過ぎます。外で何か起きてるんですか?」
「いや、困ったことに何も起きてはおらん。――イーニアが知っての通り団員もあまり活動していない。」
「じゃあいったい何が目的で…。」
「手当たり次第にやっているだけかもしれん。」
「とりあえず全部叩いてみて埃が出ればってことですか?」
「うむ。――ここは事を荒げず静観している方がいいかもしれん。」
ダンブルドアのその言葉を聞き、イーニアは少し困った顔をした。ついさっき行動を起こしてしまったばかりだ。
「何かまずいことでもあるのかね?」
イーニアは苦笑いしながら防衛術、そして勉強会という形で許可を取ったこと、そして契約書として許可証に魔法をかけたことを話した。
「許可がもらえたのなら問題はないじゃろう。ただし慎重に行うのじゃぞ。――どうしても危ない状況になった場合は儂の名前を出して構わん。」
「分かりました。――すいません。」
「よいよい。形はどうあれ勉学に励むことは悪いことではない。」
ダンブルドアはそう言い笑顔になるとそろそろ戻るようにイーニアに促す。イーニアはそれに従い、校長室を後にした。
許可証をさらっと契約書に変え、保険を取っておくイーニア。
慎重に、かつ確実に事を成すべくイーニアはあの手この手と色々していきます。
次回は外伝、ドラコ編となるかもしれません。
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