戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない 作:imuka
ではどうぞ。
9月1日。ドタバタと準備をしている皆を横目にイーニアは荷物の最終確認をすると紅茶を飲み干し、ムーディに先に行くことを告げて1人シリウスの家を出た。
時間には余裕があるのでゆっくりと歩くイーニア。キングズ・クロス駅まで遠くはないが用心に越したことはないので辺りを見渡しながら歩く。
ふと、イーニアは課外授業に出ているドラコの事を思い出し、足を止めた。
「なんの連絡もないけど大丈夫かなぁ。」
どこにいるかもわからないドラコを想い空を見上げていると、後ろからイーニアを呼ぶ声が聞こえ振り返る。そこにはハリーたちが走って追いかけてきてる姿が目に入りイーニアは薄く笑った。
”心配してても仕方ない、か。―――大丈夫、そうだよね?”
心の中でそうつぶやくと、追いついてきたハリーたちと並びキングズ・クロス駅へと向かった。
汽車に乗り、監督生となったハーマイオニーとロンと別れるとイーニアはハリーとジニーを連れて座れる席を探した。しかしどこも開いておらず最後尾まで来たところでネビルと会う。
「こんにちは、ネビル。――ネビルも座れるところ探してるの?」
「イーニア、ハリー。――どこも一杯だ。」
困った顔のネビルの近くのコンパートメントを覗くと、そこには1人の少女が座っていた。
「ここ空いてる。入れてもらおう。」
イーニアを先頭に入ると中に居た少女の姿を確認したジニーが声をかけた。
「ルーナじゃない。――ルーナ相席いい?」
ルーナと呼ばれた少女は”どうぞ”といって場所を空けてくれた。ルーナの隣にジニーが座りその隣にイーニアが座る。対面にハリーとネビルが座るとルーナが話しかけてきた。
「あなた、ハリー・ポッターだ。」
突然呼ばれどう反応していいかわからなかったハリーは”うん”とだけ返事をした。
「で、イーニア・シュツベル。―――あなたがわからない。」
ルーナがネビルに指を指しつつ聞くとネビルは戸惑った顔をし、オロオロする。
「ルーナ、まず自分から名乗るのが礼儀。」
「あ、ごめんなさい。私ルーナ・ラブグッド。」
「ネビル・ロングボトム。」
イーニアはジニーとルーナのやり取りを聞きながら”変わった子”という印象をルーナに抱いた。ルーナは特にこちらを気にすることなく話しかけてくるので最初は黙っていたハリーやネビルも会話に加わり、談笑する。
「――誕生日に貴重なものをもらったんだ。」
「貴重なもの?」
ネビルはそういうと灰色のサボテンを出した。
「ミンビュラス・ミンブルトニア!!」
イーニアはとても貴重な植物を前に思わず感動の声を上げる。
ミンビュラス・ミンブルトニアは非常に貴重な植物でアッシリア原産の植物。灰色のサボテンのような見た目をしているが針ではなく【おでき】の様なもので表面を覆っており僅かに脈を打っている。
また、この植物は防衛機構を持ち、表面をつつくと【おでき】からドロリとした暗緑色の液体を周りに噴出する。【臭液】と呼ばれるこの液体は、毒性はないが腐った堆肥のような臭いがある。
「イーニアはやっぱり知ってるんだ。」
「これを誕生日に?――ホグワーツの温室にもないよ、これ。」
「うん。だからスプラウト先生に見せてあげたくて。――あと繁殖できないかやってみたいんだ。」
「図鑑とかでは見たことあるけど実物見れるなんて――成長してから触ると小声で歌うような奇妙な声を出すっていうからぜひ聞かせてね。」
ネビルは”もちろん!”と返事をするとイーニアと、どう繁殖させるかの話で大いに盛り上がった。
学校に着くと例年通りに組み分け帽子の歌を聞き、とはいかなかった。組み分け帽子は今までと違う内容の歌を歌い、それはどこか警告しているかの内容だった。
皆、食事中の会話はそれで持ちきりとなった。ハリーやハーマイオニーの考察を聞きつつ、食事をしているといつものタイミングでダンブルドアが立ち上がり、皆もそれに注目する。
いつもの注意事項、連絡事項、”別の仕事”でいないハグリッドに変わり前任のプランク先生が魔法生物飼育学の授業をすること、闇の魔術に対する防衛術はハリーの裁判の時に居たアンブリッジが担当することが告げられた。
そしてクィディッチの話をダンブルドアが始めたとき”エヘン、エヘン”とアンブリッジが声を出し、遮った。ダンブルドアはゆっくりと席に着く。その光景に多くの生徒が唖然とする。
「校長先生、歓迎の言葉感謝いたします。」
イーニアが裁判所でも聞いた、もはや耳障りのレベルの声が生徒たちの耳に入り皆、顔を顰める。
「さて、ホグワーツに戻ってこられて、本当に嬉しいですわ!そして、皆さんの幸せそうな可愛い顔がわたくしを見上げているのは素敵ですわ!」
アンブリッジの演説はとてもためになるものではなく皆どうでもよさそうに聞いていた。
* * *
「この授業は呪われてる。」
アンブリッジの授業を終え、イーニアが一番最初に抱いた感想だった。
「リーマスは仕方なかったにしてもこの授業を受け持つ教師はまともな人間がいないよ。なんだあれ。」
授業の内容は幼稚なレベルで15歳の人間に対するものではなかった。返事の仕方を強要し、読む本はとても役に立つものではなく、挙句に杖を使わずに進む。
完全に馬鹿にしてるとイーニアは感じ取り、アンブリッジに魔法を唱えようとした。もちろん左右に座っていたロンとハーマイオニーに止められたが。
「まさかこの歳であんな風に返事すら強要されるとは思わなかったわ。」
「ロンもハーマイオニーもなんで止めたのよ。ああいうのは一発痛い目にあわせないと――。」
「「あわせるわけないでしょ!」だろ!」
「イーニアが怒るのはもっともだけどあれでも教師よ。手を上げちゃダメ。――でもこのままは良くないわね。」
「ばれない様にヤルワヨ。―――ホグワーツ生のほとんどが
授業中、皆襲われる可能性があるから実技も必要だと肯き、そして襲われる原因はヴォルデモートにあるとハリーが言った途端、癇癪を起こした様にアンブリッジがわめき散らしたのでイーニアはあえてヴォルデモートをアレと称した。
「だろうな。完全に団結はできないにしても僕たちが入学した時よりはずっと各寮の溝は埋まってきてる。おかげでハリーやイーニア、セドリックの言葉を疑ってない。」
「いい傾向だと思う。帽子も団結しろって言ってたし。」
新学期のはじまりに組み分け帽子が言っていた言葉を思い出す。
ああ、願わくば聞きたまえ
歴史の示す警告を
ホグワーツ校は危機なるぞ
外なる敵は恐ろしや
我らが内にて固めねば
崩れ落ちなん、内部より
すでに告げたり警告を
私は告げたり警告を・・・
「でもこのままじゃいけないわ。はっきり言って今期の闇の魔術に対する防衛術の授業は役に立たないわ。――こうなったら自分たちで学ばないと。」
「どうやって?」
ロンがハーマイオニーに聞くとイーニアとハリーに視線を集める。
「先生は飛びっきり良い2人が居るじゃない。」
「いいけど……そんなことしたらそれこそアンブリッジの反感を買う気がするけど。」
ハリーが少し戸惑ったように言うとハーマイオニーは”少し考えてみるわ”といい考え込むように顎に手を当てる。ハーマイオニーが考え始めたので3人は違う話題を持ち出そうとした時、後ろからやってきたネビルにアンブリッジが夕食前にイーニアを呼んでいることを伝えられ、イーニアはとても嫌がった顔をした。
* * *
全ての授業が終わり、アンブリッジとの約束の時間。イーニアは眉間に皺を寄せながらアンブリッジが居る部屋の前に立っていた。
”一応、色々対策は取ったけど…。まさかイキナリ仕掛けてくるほどじゃないよね…?”
イーニアは深呼吸をし、決意をすると扉をノックする。すると中から入るように促され、それに従った。
「座って。――紅茶をどうぞ。」
やけに丁寧に喋ろうとしているアンブリッジにイーニアは違和感を覚えつつも椅子に座り、出された紅茶に口を付けた。紅茶が体内に入った瞬間、衝撃が走る。
”!?!?!?――紅茶に薬を入れたわね!!”
味は紅茶だったがイーニアが身体の中に仕込んだ魔法が魔法薬が混ざっていることを知らせた。そしてすぐに魔法薬に対し、解析、分解が始まる。
真実薬ではないがそれに近しい薬だと判断したイーニアは大急ぎで分解を進める。アンブリッジはどこかニヤニヤしたような顔を浮かべながらゆっくりと自分の紅茶を飲み、イーニアを見た。
「味はどうかしら?」
「…お、いしいですね。高いモノなんですか?」
「そうね。一般で飲むモノよりは高価なものかしら。」
意識を分解に持って行ってるので少し口調が固くなってしまったがアンブリッジは特に気にした様子ではなかった。
「さて、本題に入りましょうか。」
アンブリッジはニヤニヤ顔を一層強めるとイーニアに質問を投げかけてきた。
「ダンブルドアは何を企んでるのか教えなさい。」
「し、つもん、の意味がわかりませんが?」
完全に分解が終わっていないため、少しでも気を抜くと喋ってしまいそうになり、イーニアは焦る。
「あら?そう?――ああ、紅茶のおかわりはいる?」
アンブリッジは少しだけ目を見開くとイーニアの返事も聞かず紅茶のおかわり注いだ。
それと同時にイーニアの分解が終わり、一息ついでに紅茶を飲み干す。
一度分解が終了している薬なので再度飲んだところですぐに分解され、ただの紅茶と化す。しかしアンブリッジはイーニアが飲み干したのを見て、まるで勝ちを確信したような顔をした。
「もう一度質問するわ。ダンブルドアは何を企んでいるの?」
「もう一度言いますが、質問の意味がわかりません。」
今度ははっきりと告げアンブリッジの顔を見る。イーニアの様子にアンブリッジは眉を顰めると空になったカップに再びお茶を注ぎ、質問してくる。
「じゃあ質問を変えるわ。ダンブルドアについて知っていることを教えてちょうだい。」
「んー、長年ここで教師をやっていて、結構もうおじいちゃんで、意外と変な食べ物が好きで――。」
イーニアは何処かわざとらしく指を折りながら誰でも知っているようなことを喋っていく。最初は聞いていたアンブリッジだったが、目的の内容を話さないことにイライラし始め”もういいわ!”と少し強めの声でイーニアの言葉を遮った。
「質問が悪かったわ。――シュツベルさん、貴女だけが知ってる秘密とかってあるかしら?」
「私だけが知ってる秘密ですか?――――実はスネイプ先生はハリーの事が嫌いじゃない、とか?」
「え?」
「後は――実はスネイプ先生はあの髪型を結構気に入ってる、とか?」
「え?え?え?」
イーニアがあまりにも斜め上の回答をしたのでアンブリッジは完全に混乱した顔をした。
その後も嘘のような本当のような内容を繰り返し、混乱したアンブリッジはイーニアを帰した。
アンブリッジはもっとねっちゃりとした感じで書ければな、と思いますがどうでしょう?
誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
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