戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない 作:imuka
ではどうぞ。
イーニアがリーマスを連れてシリウスの家に戻るとモリーが朝食の準備をしていた。
「おはようございます。モリーおばさん。――手伝いますね。」
「おはよう。イーニア。――それなら直に朝食ができるから皆を起こしてきてくれる?」
モリーの言葉にイーニアは肯くと男性陣をリーマスに任せ、ハーマイオニーたちを起こしに部屋へと向かった。
部屋に着くとハーマイオニーとジニーはすでに起きており、再会を喜び抱きついてくる。
「イーニア!荷物が増えていたからいるんだろうと思っていたけど――いつ着いたの?」
「昨日の夜中。2人はもう寝てたけどね。――朝食ができるって、下に行こう。」
2人と共にリビングへと向かうと眠そうに顔をこすっているロン、そしてフレッドとジョージ、シリウス、アーサー、ムーディ、そして昨日であったキングズリー、トンクスがすでに席に着いていた。
「皆、おはよう。」
イーニアが声をかけると皆、返事をして食事を始める。ロンやフレッド、ジョージにハーマイオニーから聞かれたことと同じようなことを聞かれたり、宿題はちゃんとやっているかなど他愛もない会話をしつつ食事を取った。
食事を終えるとイーニアは他にばれない様にムーディに声をかけ、召喚呪文の精度が問題ないことを告げた。するとムーディ満足そうに肯き、空き家が見つかり次第にでも行うことを打診すると家を後にした。
部屋に戻ると2人でヒソヒソと話している所を見られたのか、騎士団に参加していない未成年組が待ち構えていた。
「イーニアは騎士団に参加しているの?」
険しい顔をしているハーマイオニーに少し驚きつつも隠さずその言葉を肯定する。
「ダンブルドアは未成年の魔法使いには参加させないってッ…!!」
「それはイーニアに実力があるからよ。」
肯定した瞬間、皆が立ち上がり抗議に向かおうとしたが部屋の扉が開きトンクスが入ってくる。
「貴方達がハリーのためを思って、そして自分たちの状況を知りたがるのもわからなくもないわ。でも、もしもの時、貴方達は自分の身を守ることができる?」
「それは……。」
「ましてや開心術を使われて貴方達は秘密を守っていられる?――イーニアはそれを証明したわ。」
トンクスの言葉に皆、下を向き言葉を失う。
「わかったらイーニアを問い詰めるのはやめなさい。」
誰もが理解はしているが納得はしてないような顔をしたその時、リーマスが部屋に駆け込んで来た。慌てた様子に少し驚きつつもイーニアとトンクスはリーマスに連れられ部屋を出る。
「ハリーが吸魂鬼に襲われた。」
「「ッ!」」
リーマスの言葉に緊張が走る。
「だが問題はそこじゃない。吸魂鬼自体はハリーが自分で撃退した。問題なのは魔法省がそれをパフォーマンスとして判断し、ホグワーツを退学及び杖を破壊すると言い出したことだ。」
「は?いったい何をわけのわからないことを…。」
トンクスは思わず舌打ちをする。イーニアはそこまで魔法省が危ない状況になっていることに頭を抱える。
「子供たちには私から話しておこう。イーニアとトンクスは一応迎えに行ける準備をしてくれ。」
2人は肯くとイーニアはリーマスと一緒に部屋に戻り、出かける準備を始める。トランクから全身が隠れるほどの大きな黒いフードコートと大きめのゴーグルを取り出す。
コートを手に持つと説明を終えたリーマスと共に部屋を出てリビングに向かった。
「吸魂鬼の出自がわからん以上は早くにこちらに連れてきたほうが良いだろう。」
「ああ。幸い、今回は目撃人が居るから大事にはならないはずだ。」
「ハリーには家に居るように手紙を出しておいた。」
リビングではいつの間にか戻ってきたムーディ、アーサー、シリウスが慌ただしく会話をしている。そんな中、イーニアとリーマスに気が付いたムーディが声をかけた。
「イーニア。今日の夕方、少し予定が変わるが召喚呪文でハリーを連れてくる。空き家がないから経由がひとつ減るが今は考慮できん。ダドリー家からお前の家に飛ばすことになる。」
「わかりました。――向こうに着いたらハリーにこれを付けてください。」
「召喚用のマーキングか。ダンブルドアには俺から伝えておこう。向こうで準備ができたら連絡をする。――急な事だ。メンバーはこちらに固まってしまうが構わないな?」
「はい。自宅に居る分はある程度私の安全は保障されてますから場合によってはそのまま自宅に残ります。」
その言葉にムーディが肯いたのを確認すると、こちらに呼ぶための構築式を書くためにチョークを取り出し、家具を退け始める。アーサーがそれを手伝いながら声をかけてきた。
「最年少の君に多くの負担をかけてしまうことになって申し訳ない。」
「これくらい大丈夫ですよ。――アーサーおじさんは囮の方ですよね?気を付けて行ってください。」
イーニアのそう言い微笑むとアーサーは思わずイーニアを抱きしめた。自分の子供にように心配してくれることに感謝しつつ、イーニアも抱きしめ返す。軽い抱擁が終わり、家具が退け終わるとアーサーたちダドリー家に行く準備をするためにリビングを出て行った。
構築式が書いたり、いなくなった大人たちの代わりに昼食を作ったり、と色々準備している間に予定の時間が近づきイーニアは自宅へと向おうと杖を構えた。しかし飛ぼうと意識を集中したと同時にダンブルドアがリビングに入ってくる。
「イーニア、準備は万全かの?」
声をかけられたイーニアは杖を下し、ダンブルドアに返事をする。
「はい。問題ありません。――ハリーに付けるマーキングはこのようなものです。」
「うむ。聞いておる。」
「召喚呪文について特に話しておく必要はないですよね?こちらが完了したら……そういえばムーディ、どうやって連絡するつもりなんだろ?」
「電話すると言っておった。君の家の電話番号も聞いて行った。」
「電話使えるんだ、ムーディ。――シリウス、ここにも電話繋がってるよね?」
「ああ、言われた通りにマグルの家にあるものは一通り揃えた。」
「ん、わかった。――ハリーの召喚が終わり次第、電話します。」
「うむ。その手筈で頼む。」
「では、行ってきます。」
椅子に掛けてあったコートを手に取り、イーニアは杖を構えるとそのまま自宅へと飛んだ。
自宅に着き、リビングの明かりを点けカーテンを閉めて、電話が来るのを待つ。すぐ連絡が来るとは思っていないイーニアは電話機の前に椅子を置き、本を1冊取り出して読み始める。
10分、15分ほどした時、電話機が鳴りイーニアは本を閉じるとすぐにでる。
「イーニアだな?こちらは予定通り着いた。マーキングを付けたが、外がどうも騒がしい。お前も十分気を付けろ。」
ムーディは早口でそう告げると返事も聞かず、電話を切った。一言も喋っていないイーニアは返事のない受話器を見ながら苦笑いする。受話器を置くと、構築式の前に行き召喚呪文を唱え始める。
「
朝、リーマスを呼んだときと同じように荷物を持ったハリーが召喚される。
「ハリー、久しぶり。」
少し戸惑った顔をしているハリーに抱きつき再会を喜ぶイーニア。
「大丈夫?どこも怪我とかない?」
「う、うん。大丈夫だよ。えっと…。」
抱きつかれたことや状況を上手く理解していないのかハリーは戸惑いながら返事をする。
「今度はダンブルドア校長が召喚呪文を使うわ。向こうに着いたらシリウスもいる。色々聞きたいかもしれないけど向こうについてからね。」
ハリーから離れると少し早口でそう告げ、電話をかける。電話に出たのはシリウスだった。
「こっちはOKだよ。」
「了解した。」
電話を切るとハリーを見る。
「向こうで会おう。」
ハリーは何処の事を指しているのかわからなかったがしっかりと肯き、その瞬間消えた。ハリーの姿が消えたことを確認するとゴーグルを首にかけ、コートを着るとフードを被る。
「さて、私も行かなきゃ。」
イーニアは家から出ると鍵を閉め、辺りを見渡す。
「誰もいない、ね。」
ゆっくりと空へと上がり、暗闇でもよく見えるように目に魔法をかける。月が隠れていて視界は暗いが密かに空を飛ぶのには適している。
イーニアは深呼吸をすると勢いよく加速し、空を飛んだ。
自宅を出て15分ほど経ち、残り半分といったところで誰にもばれない様に慎重に飛んでいたイーニアのすぐ近くに失神呪文が飛んできた。
「っ!?」
思わず息を飲む。暗闇で全身を黒いコートで覆っているイーニアは魔法を使うまでもなく見えない。魔力に関してもコートが隠しているため、飛行に使っている魔法の魔力漏れもない。
イーニアは辺りを見渡すが相手の姿は確認できない。失神呪文が飛んだ経路に魔力の痕跡が残っているがそこには誰もいない。
さらに上空に移動しつつ、蛇の目に切り替える。熱が見えるようになったイーニアが当たりを見渡すと5m真下に人間の熱を見つける。次の瞬間、魔力の増大を感じ、イーニアは横へ避けたが斬撃魔法が肩を掠めた。
それに驚き逃げるようにどんどん上空へと上がっていくイーニア。少し振り返れば相手も追いかけてくるのがわかった。
イーニアは目を元に戻し、ゴーグルを付けると雲の中へと飛び込んだ。
雲の中の天気は悪く、雷が鳴り、視界が悪い。それもでも、位置を把握しているかのような魔法の攻撃にイーニアは困惑していた。
当たるほど的確でないにしろ相手は自分の位置を把握している。その相手は自分には見えていないという事実がイーニアを焦らせる。
速度をさらに上げ、何度も曲がり相手をかく乱する。
加速するあまり、雲の上へと飛び出したイーニアは攻撃が飛んでこない事とあたりに人がいないことを確認しすると、慌てていた頭を落ち着かせるために深呼吸した。
「今のはなんなの…?」
思わず呟き冷静になると寒いことに気が付く。
「さすがにこの高さまで来ると寒いわ。」
苦笑いしつつ、自分に寒さ対策の魔法を唱えると、このまま雲の上で移動してシリウスの家に向かうことを決めたその時、イーニアは闇に包まれたような感覚に襲われ反射的に炎を纏った。
「
イーニアの炎に何かが当たり、生き物の焼ける匂いと断末魔が聞こえる。焼けたのは鳥のような何かでそのまま雲の中へと落ちていく。
鳥肌が立った左腕を押さえながら、辺りを見渡すが何も見えない。何かに追われている以上はシリウスの家へと向かうわけにはいかない為イーニアはじっとその場で次の動きを待った。
だが10分、20分と時間が経っても何も動きはなかった。イーニアはひとまず地上へと下りようと雲の中へと戻ろうとしたその時。
雲に映った自分の影から大量の手が出てきたと思うと一斉にイーニアの身体を掴んだ。イーニアはもう一度炎を纏い、手を焼こうとしたが手は焼けることなくイーニアを掴み、そしてそのまま影の中へと引きずり込もうとする。
「このっ…!?」
手が焼けないことに驚きつつも飛行魔法に力を入れ、引きずり込まれない様に対抗する。しかし手は放すどころかさらに握る力を入れイーニアは苦痛に顔を歪める。
身体強化、硬化魔法をかけていても痛みを感じるほどの強い力にイーニアの体力はどんどん消耗していく。
「はっ…はぁ…くぅ…。」
酸素が薄く呼吸もうまくできない中、イーニアは擦れた声で魔法を唱える。
「
影に向けて結晶でできた太槍が射出された。
「アアあああゝアァアァァアアあああああ―――。」
槍が中に入ると男か女かわからない悲鳴が聞こえ、イーニアを掴んでいた手が消える。拘束から解放され、ふらふらながらも後ろに下がるとまだそこにある影に向けて追撃をかける。
「ムプチットヴァランチ!!」
影を中心に周りに魔方陣ができると次第に圧縮していき、爆発を起こした。
爆発の煙が晴れ、影が完全になくなったことを確認するとイーニアは守護霊の呪文を唱え、狼の背中に乗るとそのまま意識を手放した。
手が触手のように絡まって……はッ!?私は何を想像して…(笑)
でもそんなことを想像しながら書きました(笑)
誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
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