戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない   作:imuka

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この回で炎のゴブレット編を終わらせるつもりでしたが長かったため分割しました。


ではどうぞ。








あの男と私の伯母

 

 

「あの時の小娘か………ローブを着せろ。」

 

 ペティグリューにそう命令し、ローブを着る。そして杖を受け取るとペティグリューの腕に闇の印をつけていく。

 

「これで全員が気づいたはずだ。それを知り、戻るものが何人いるか。そして、離れようとする愚か者が何人いるのか。」

 

 ヴォルデモートは顔を上げるとクラウチ・ジュニアの方を向いた。

 

「全員が揃う前に、クラウチ、危険を顧みず俺様のためによくやってくれた。あとで褒美をやろう。」

 

「はっ!!ありがたき幸せ!!」

 

 ヴォルデモートの言葉にクラウチ・ジュニアは頭を下げる。

 

「あの時の小娘が居たりと予定とは多少違うが……――来たようだな。」

 

 そういった瞬間、ヴォルデモートの後ろに黒いローブを被った集団が姿現しをして来る。

 

「よく来た。よくぞ戻ってきた、死喰い人たちよ。――そしてよく顔を出せたものだ。この13年間、貴様らは何をしていたのだ? ん? 答えて見ろ。」

 

 ヴォルデモートの言葉に死喰い人たちは下を向くようにする。

 

「――まぁ、それは後でゆっくりと聞くとしよう。今はそれよりも――。」

 

ステューピ・トルニス(麻痺の稲妻)!!」

 

 イーニアが杖を上に構え唱えると立っていた人間に雷が落ちる。死喰い人たちの半数はそれを防ぐなり躱すなりしたがクラウチ・ジュニアが連れてきた生徒たちは当たり倒れる。

 そしてイーニアは高く飛びあがると大剣を生成し、ヴォルデモートに迫る。

 

「やれやれ、俺様の言葉を遮るとは…。お前はこいつらと遊んでいろ。」

 

 ヴォルデモートは生徒たちを無理やり立たせるとイーニアを阻む。

 生徒を壁にされたイーニアは大剣を消すと変わりに棍棒を出し、1人の生徒を吹き飛ばす。が、その生徒はすぐに立ち上がる。

 

「俺様ほどになると意識があるなし関係なく多人数を操ることができる。――そいつらはお前を殺すように言ってある。死ぬまで動くぞ?お前が死ぬか、お前がそいつらを殺すか、結果を楽しみにしておこう。」

 

 ヴォルデモートはそういうとハリーの方へと向いた。

一斉に意識の無い生徒たちがイーニアを襲う。棍棒で殴り、魔法で弾き、躱す。

 

「く…そぉ!!」

 

 彼らは自分の意志で戦っているわけではないのでイーニアが本気で戦うわけにはいかない。しかし飛ばしても飛ばしても何度でも向かってくる生徒たちにイーニアの体力はどんどん消耗してだけだった。

 

 

 

 

「はぁ…はぁ……はぁ……。」

 

 汗を垂らしながら囲まれたままのイーニア。その先ではハリーとヴォルデモートが戦っている。

 お互いの杖の先から光が放たれぶつかりあっている。

イーニアも助けに行ける状態ではないが徐々に押されているのがわかる。どうにか状況を打開しなければならない、そう考えているとセドリックとクラムが仕掛けてくる。

"これ以上殴ったりするのは…っ"

 腕を掴み投げ技をかけようとしたその時。

 

「……イーニア?」

 

 目を開いたセドリックがイーニアを呼び、イーニアは動きを一瞬止めてしまう。

 その一瞬は大きかった。セドリックの後ろにいたクラムが、いつの間にか持っていた槍をセドリックの腹ごとイーニアのわき腹に刺した。

 

「あ、が!?…ぐぅ…。」

 

 意識が戻ったのかセドリックは大きく目を見開き、引き抜かれ穴の開いた腹を押さえながら倒れる。イーニアも痛みに歯を食いしばりながらクラムを魔法で飛ばすと膝をついた。

 

「……っは……はっ……!」

 

 人体を一瞬で貫くほどの速さ、そしてその強さは硬化魔法すら貫くものだった。

 イーニアは自分に応急処置を施すとセドリックの傷を見る。完全に貫通しており、出血が激しい。

 コートを脱ぎセドリックの腹に巻く。

 

「イー…ニア…後ろ…。」

 

 セドリックの言葉にハッとなり、背後にいた生徒の攻撃を防ぐことに成功する。周りを見れば生徒たちがゆっくりだが接近して来ている。

 イーニアはじりじりと迫ってきている生徒たちを見ながらセドリックに話しかける。

 

「セドリック、意識をしっかり持って!!すぐにホグワーツに!」

 

 そういうとセドリックは弱弱しく笑う。

 イーニアは痛みを我慢しつつも覚悟を決めると右耳に着けているイヤリングを上空に投げ、魔法で打ち抜いた。

 その瞬間、打ち抜かれたイヤリングはイーニアと生徒たちを光で包む。

 イヤリングはアリシスがイーニアにお守りとしてプレゼントしたもの。これには魔法で施しがされており、イヤリングを壊し、そこから出る光を浴びると、対となるイヤリングを付けているもの以外のあらゆる魔法的効果を破壊する。

"光が出ているのは30秒!!それまでに…"

 

アクシオ(来い)!!」

 

 優勝杯を呼ぶ。光の中に入ったためポートキーとしての機能はなくなったが、情報はいくつか残っているので座標を読み取る。

 

コングリッド(集まれ)!!」

 

 疎らな生徒たちを集めると、優勝杯を地面に置き、一定領域ごとポートキーとして設定する。

 光が力を失い、イヤリングだけが落ちる。

 

「上手くいってよ…っ!アクシオ(来い)!!ハリー・ポッター!!」

 

 ヴォルデモートと衝突しているハリーを無理やり呼び、ポートキーを作動させる。

しかしハリーは、光に警戒し周りに集まっていた死喰い人たちに阻まれた。イーニアはそれを見て飛び出し、手を伸ばす。

 ハリーの手を取り、引っ張ろうとした瞬間、ポートキーは動きだし、領域に入っていたイーニアの右足の膝から下だけ(・・・・・・・・・)を持って飛んだ。

 

「ア"ァ"ァァアァアーーーーーーーー!?!?!!」

 

「イーニア!!?」

 

 右足を切断された激痛で叫ぶ。

 ハリーはイーニアの状態に青ざめつつも上着を脱ぎ、応急処置を施す。ヴォルデモートが近づいてくると庇うように立つ。

 

「はっはっは!焦るからそうなるのだ。――もっともあのタイミングを逃したら飛ぶことは2度とできなかっただろうが。」

 

 激しい痛みに耐えながらイーニアにヴォルデモートを睨む。

 戻る場所が確立しているので、距離の事など多少のリスクはあるものの、姿現しで帰ることができるが、イーニアは痛みで【どこへ】【どうしても】【どういう意図で】の3Dを上手く意識できずにいた。

 

「さて、どうしてやろうか。このまま嬲り殺しても構わないが――おっと?」

 

 ヴォルデモートが突然振り向き誰もいない方を見た。するとそこに1人の男が姿現ししてくる。

 イーニアは男の姿に見覚えがあった。

 フードを深く被った男(・・・・・・・・・)蜘蛛(・・)を引き連れヴォルデモートの元へと近づく。

 

「ずいぶんと遅い登場じゃないか。えぇ?」

 

 顔を少し歪めたヴォルデモートに対し、何も言わずただ見ている。

 

「それが我が君に対する態度か!!」

 

「構わん。こいつは昔からこうだ。」

 

 何も喋らない男に対し、死喰い人の1人が怒るがヴォルデモートはどうでもいいように言う。

 イーニアはそんな会話を聞きながら理解してしまった。この男があの時の男(・・・・・)であると。

 理解した瞬間、わき腹や足の痛みを忘れる位の吐き気がこみ上げ、イーニアは胃の中のものを外にぶちまけた。

 

「うヴぇ……っうぇろご…っ…ヴぇ…っ!!」

 

 その光景にヴォルデモート含め、死喰い人は思わず退く。

 

「なんだ…?」

 

 死喰い人の1人がそうつぶやくと蜘蛛を連れた男はハリーをすり抜けるように通り過ぎ、イーニアの頭を掴む。

 イーニアは焦点が合わないながらも男を睨みつける。この至近距離にも関わらず男の顔は見えない。

 

「イーニアから離れろ!!ステューピファイ(麻痺せよ)!!」

 

 ハリーが男に向けて失神呪文を唱えるがまたすり抜けるようにハリーの後ろに立ち、そのままヴォルデモートの元へ歩いていく。

 男はヴォルデモートの横に並ぶと、何かを喋るようにヴォルデモートの耳元に顔を近づけ、ヴォルデモートはそれに肯く。その後、ヴォルデモートが首を横に振ると、死喰い人が下がった。

 その瞬間、大量の蜘蛛がイーニアたち目がけて動き出す。

 ハリーは驚きつつもイーニアを抱きしめ、蜘蛛を撃退するために魔法を使う。

 

「イーニア!魔法使える!?」

 

「げほっ…。トルナ(断ち切れ)!――ぐぅー!?」

 

 肉体的苦痛や精神的苦痛に顔を歪めながらもイーニアは力を振り絞り、魔法を使う。

 しかし物量が多すぎるため対処できず、2人の目前まで蜘蛛が迫り襲い掛かってくる。

 飛びかかってきた蜘蛛に思わず目を瞑ったその瞬間

 

 

 

 2人を護るように炎が包み込む。炎に包まれた途端、イーニアは痛みが和らいでいく。

 痛みが和らいだことに驚いていると、上から光の柱が降り注ぎ蜘蛛たちを焼き払った。その光は数人の死喰い人にも当たり、その存在を消滅させる。

 突然の攻撃に死喰い人たちに動揺が走る中、2人の男女がイーニアたちの前に立つ。

 

「残り活動許可時間は?」

 

「3分。―――ずいぶんと無茶をしたわね。イーニア。」

 

 膝裏まである長い髪を揺らし、登場したのはイーニアの伯母である、アリシス・コーランド、その人だった。

 隣には赤いコートに赤い帽子をかぶった長身で腰くらいまである黒髪の男が立っている。

 

「アリ…シ…ス…?」

 

「そうよ、貴女の伯母のアリシスよ。」

 

 少し振り向き、イーニアたちに笑いかけるアリシス。辺りが光の柱で焼け落ちている中、ヴォルデモートが叫んだ。

 

「お前たちは何者だぁ!!」

 

「俺たちが何者かなんてどうでもいいだろう。」

 

 アリシスの隣の男はそういうと、凄まじい殺気と共に突然、手に拳銃と呼ぶにはふさわしくない大きさの、しかし拳銃の形をしたものを出現させた。

 

「アーガルド、そろそろ残り活動時間2分切るけどやるの?」

 

 アーガルドと呼ばれた男はアリシスに指摘されると殺気を引っ込めた。

 

「残念だ。実に残念だ。」

 

「撤収ね。」

 

「そのまま行かすと思うのか!!アバダ・ケダブラ!!」

 

 ヴォルデモートがアリシスに死の呪いを放つと、放った緑色の閃光が途中で消失した。

 

「なっ!?」

 

 これにはヴォルデモートも動揺を見せる。

 アリシスはそれまでヴォルデモートなど視界に入っていない風に見せていたが、突然、イーニアが見たこともない殺意の籠った雰囲気を纏ながらヴォルデモートを睨んだ。

 そんなアリシスを見て、アーガルドはとても愉しそうに笑う。

 

「ヴォルデモート、いや、トム・リドル。また会えることを俺は愉しみにしている。ぜひ、噛みついてきてくれ。」

 

 アリシスが手を軽く振ると4人はその場から姿を消した。

 

 

 

 

 





あの時の男が登場。
そしてアリシスが救出に。

アリシスたちはヴォルデモートやダンブルドアよりずっと強いです。
彼らについては次回語られます。


集束魔法、コングリッド
人を集めたり、ごみを集めたり、いろいろ応用が利く魔法。



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