戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない 作:imuka
ではどうぞ。
第三の課題の日、当日。
競技は夕方から始まり、代表選手の家族が観戦に来る。午前中は家族との顔合わせだがイーニアは事前にアリシスが仕事で来れないことを聞いていたので正直行く気はしなかったがそれはハリーも同じことのはずなので仕方なく向かうことにした。
呼ばれていた小部屋に入るとクラムやデラクールは両親と楽しそうに話していた。
イーニアとハリーがどうしようと顔を見合わせているとモリーが居ることに気が付く。
「ハリー!!それにイーニア!!」
2人はモリーの熱い抱擁を受け、驚く。どうやら家族が来れない2人のためにマクゴナガルが気を利かせたようだった。モリーの他にもウィーズリー家、長男のビルも居る。2人から激励の言葉をもらい、この後どうするか話していると、イーニアは後ろにアリシスの気配を感じ勢いよく振り向く。しかしそこにはアリシスは居なかったが手紙が床に刺さっていた。
中を見ると短く、"頑張ってくるように。あと必要なら助けを呼ぶこと"とだけ書かれていた。イーニアが読み終わると手紙は霧散する。
イーニアはアリシスからの手紙は嬉しくはあったが、あえて魔法で手紙を寄こしたことが気になった。特に最後の一文が不穏な感じを物語っている。
ため息が出たが気持ちを切り替えるとイーニアはハリーたちと共にホグワーツを回ることにした。
―――――――――
夕食を食べ、いつもと同じ服装に着替えると競技場へと向かう。
競技場に着くと、見事な迷路が作られていた。それを見てイーニアは"大きくなるものね"などとのんびりと見ながら思っていた。
そんな風にのんびりとしていると代表選手が全員集まり、マクゴナガルが数人の教師を連れて入場する。
「私たちが迷路の外側を巡回します。何か巻き込まれて助けを求めたいときは、空中に赤い火花を打ち上げなさい。私たちのうち誰かが救出します。」
皆が肯くとマクゴナガル達はそれぞれ違う方向へ歩いていく。
バグマンの解説が入り、会場が盛り上がるとついにスタートの時間となる。イーニアは現在総合1位なので一番最初に入ることになる。
深呼吸をして、心を落ち着かせるとハーマイオニーやロン、ジョージ、フレッド、ネビルたちの居る方を見て軽く手を振り、最後にハリーに振り向き微笑む。
準備が万端と読み取ったのかバグマンがホイッスルを鳴らした。
「
ホイッスルと同時に明かりを灯し、身体強化で一気に駆けていった。
長い一本道を走りきると四方に道が分かれていた。イーニアは特に何も考えず右から2番目の道へ入っていく。
恐らくここでは方角も距離感覚も通じない、一本道を凄い速さで駆けたイーニアにはそう感じていた。いくらクィディッチの競技場でもあれほどの長さの一本道だった場合半分は進んだことになってしまう。そう結論付けたイーニアは直感を頼りに加速し続けることに決めていた。
曲がり角をいくつも曲がったその先に、5~6mはありそうな尻尾爆発スクリュートが居た。それを見てイーニアは思わず苦笑い。
「ごめんね。――
一言だけ告げると丸太を大量に生成し、物体加速魔法で射出した。大量の丸太に当たった尻尾爆発スクリュートが動けなくなったのを確認すると飛び越え、先に進む。
「全然着く気配がないんだけど…どんだけ広いのよ。」
あれから蛇やグリフォン、トロール、まだ成長途中のドラゴンなどを相手にしたり、落とし穴や粘着する地面などを潜り抜けたイーニアだったが、まったくゴールが見えず、思わず独り言をつぶやいてしまった。
軽くため息を吐いていると十字路が見え、左の方からハリーが来た。
「え”。もう追いつかれたの。」
「あ、イーニア。そっちはどう?僕はずっと真っ直ぐで逆に不安だったんだけど。」
ハリーのずっと真っ直ぐと言う言葉を聞き、自分が外れの道を引いた事に気が付き、額に手を置く。
「私はくねくねしたり、色々と妨害があったよ。――私のは外れの道かぁ。」
「そうなの?こっちは何もなかったよ?」
「羨ましい――と、のんびり話している場合じゃないね。どっちに行く?」
イーニアは自分の手前と右側の道を指して聞く。するとハリーは真っ直ぐに進むことを選択し、イーニアも真っ直ぐに進むことにした。
ハリーに追いつかれたとなるとのんびりはしてもいられない為、さっきより早く走る。
曲がり角の先はきれいに一本道になっており、その先が開けているのがわかった。しかしその道の真ん中に1人、人間が立っている。
「クラム?」
イーニアはその姿を確認すると思わず呼んだ。
"なんであそこで止まってる?"と疑問に思った瞬間、クラムがイーニア目がけて魔法をかけてきた。
「
「
反射的に盾の呪文を唱え、身を守る。
異常事態、そう判断したイーニアは花火を上げるとクラムを止めるために立ち向かう。
許されざる呪文以外にも攻撃呪文を唱えてくるクラムだったがイーニアはプロテゴ・ウォレでそれを防ぎ、棒を生成すると、上に投げる。投げた棒はクラムを飛び越え、ちょうど真後ろに落ちた。
イーニアの読めない行動に表情は変わらないクラムだったが、どこか警戒するように杖を構え止まる。
「
次の瞬間、イーニアはクラムの後ろに現れ、クラムを背負い投げする。倒れ、仰向けになったクラムに横三角絞めを極め、落とした。
「ふぅ…。
気絶させたクラムから杖を奪い、ロープで動けない様に縛る。
「優勝杯も何かあると見るべきね。――急ごう。」
今日一番の速さで一本道を駆ける。すると開けた場所に優勝杯があり、ハリーがそれに触れようとしていた。
「ハリー!!だめ!!」
「え?」
ハリーを掴み制止するがイーニアの言葉は間に合わず、ハリーは優勝杯に触れる。
その瞬間、2人は飛ばされた。
「「痛っ!!」」
飛ばされた2人は尻餅を付き着地する。
そこは墓場だった。もう何年も人が訪れていない。古びた墓場だった。
「な、なんでこんなところに?」
「やっぱり、優勝杯にも仕掛けがあった。――ハリー杖を構えて。なにがあるかわからない。」
少し混乱しているハリーだったがイーニアに従い、杖を構える。
イーニアはポートキーになっているはずの優勝杯を呼び寄せようとしたが、後ろに気配を感じたイーニアは振り向きながら失神呪文を唱えた。
「ステュー「
しかし、後ろに居た人物に杖を払われる。
その姿を確認すると、あの時逃がした、ペティグリューがそこに居た。ハリーが額の傷を抑え苦しみ始めたのを横目に見つつも、イーニアはペティグリュー目がけて拳を振るう。
身体強化をかけた加減のない拳はペティグリューに当たることなく横からやってきた男に阻まれた。
「久しぶりだな!!イーニア・シュツベル!!」
そこにはアズカバンに居るはずのクィレルが居た。
「クィレル!?」
「そうだ!私だ!!私はお前に復讐するために!!そのためにここに来た!!」
受け止められた手を振り払い、距離を取る。クィレルは1年の時の姿は見る影もなく、かなりガタイが良くなっていた。
「くくくっ……私はあの日の屈辱を忘れたことは一度もない。そして、ついに、夢にも視た、お前への復讐をする日が来た!!」
凄まじい狂気に思わずイーニアはたじろぐ。その隙を逃さなかったペティグリューがハリーを石像に縛り付ける。
「ハリー!」
「おっと、よそ見とは余裕だな。シュツベル。」
ハリーの方へと顔を向けたイーニアにクィレルの蹴りが飛んでくる。イーニアはしっかりと防御したが重くもない体は宙へと浮いた。
「くぅ…!」
受け身を取り、2歩下がる。
「これから闇の帝王が復活する。――が今の私には興味がない。私を今突き動かしているのはお前への復讐のみだ!!あいつらは勝手にやっていればいい。」
クィレルはそこまで言うとイーニアに接近する。クィレルの体にはイーニアと同じ身体強化の紋様が浮かんでいる。この3年で鍛えた体と身体強化でイーニアを倒すつもりらしい。
突っ込んで来たクィレルを躱し、再び距離を取るイーニア。
"急がないと……。でも、さすがに正面からは厳しいかな…。"
ペティグリューが復活の準備をしているのが視界に入ると同時に、クィレルが飛ばしてきた失神呪文を弾きクィレルに向き合った。
「時間がない。すぐに終わらせる。」
「できるものならなぁ!!」
クィレルが斬撃魔法を飛ばし、イーニアはそれを姿勢を低くして避ける。すぐに迫ってきた拳を流し、肝臓を狙って殴る。
「無駄だぁ!!」
イーニアの拳は届いたが、クィレルは硬化魔法で防ぎ、そのまま頭突きをしてくる。イーニアはナイフを生成し、突き出してきた顔に向ける。
しかしナイフはクィレルの顔に当たると折れ、そのままの勢いの頭突きが肩に当たる。
「いっ…つ…!」
イーニアも硬化魔法を使うが防ぎきれず痛みを感じる。
怯んだイーニアにクィレルは回し蹴りをするが体を仰け反らせ、躱した。そのままイーニアは距離を取る。
「くくくっ…、どうした?お前の得意な接近戦だぞ?」
クィレルは愉快そうに笑い、今度はゆっくりと近づく。そんなクィレルを睨みながらイーニアは深呼吸すると槍を1本生成する。
「武器は通じないぞ?」
クィレルの言葉にイーニアは特に反応せず、接近し顔を集中的に狙いつつ槍を振う。クィレルはステップを効かせて槍を避けると一回転しながら裏拳でイーニアの後頭部を狙う。イーニアはその拳をしゃがんで避け、顎目がけて槍を刺す。
だがナイフと同じように槍も砕ける。物ともしなかったクィレルはしゃがんでいるイーニアに蹴りを出す。それをしっかりと防御するとまた距離を取った。
「それを繰り返すつもりか?」
「………これで終わりよ。」
イーニアはそう告げると着ていたコートを投げクィレルの視界を塞ぐ。
「それで――!?」
「
イーニアが呪文を唱えるとクィレルにかかっていた身体強化、硬化魔法が解ける。
「ば、馬鹿な。そう簡単に解けるわけが!?」
動揺したクィレルはそのままイーニアのコートを被ってしまう。
そのクィレルの顔に胴回し回転蹴りをする。
「ぐ…か……!?」
胴回し回転蹴りをモロに顎に受けたクィレルはよろけ頭を下げる。イーニアは下がった頭に向けて踵落としをお見舞いした。
クィレルは勢いよく倒れ、そのまま動かなくなる。
「簡単に解けなかったから時間を稼いでたんじゃない。――あと筋肉だけ付けても肝心な時に反応できなきゃ意味ないよ。――
イーニアは返事のできない相手にそういうと杖を呼び、コートを着るとクィレルを近くの岩に縛り付けた。
―――――――
縛り終わり少し離れたハリーの元へと向くと、ペティグリューが復活のための最後の呪文を唱えようとしていた。
「させるかぁあぁぁああ!!」
イーニアはペティグリューの近くにある鍋を爆破しようとした。
「そうはさせん。」
しかし横から突撃してくる男と2人と失神呪文が襲って来た為、盾の呪文で防ぐことになる。
そして向かってきた男、魔法を使ってきた男の姿を確認し、イーニアは息を飲んだ。
「セドリック…!?クラム…――ムーディ先生!?な…んで!?」
ムーディはセドリックたち以外にも生徒を数名引き連れ、そこに立っていた。
「俺はムーディなどではない!!」
ムーディはそういうと自身に杖を向けた。すると若い男へと姿を変える。
「俺の名はバーテミウス・クラウチ・ジュニア!!あのお方復活のためにムーディに成り代わりホグワーツに潜入していんだよ!!―――さあ!あのお方が復活したぞ!!」
そういわれイーニアは正面を向いた。
そこには鼻の無い、のっぺりとした蛇のような顔の男が居た。
男から、クィレルの頭に居たころとは全く別の異様さ、そして狂気を感じたイーニアは斬撃魔法を飛ばそうと腕を振る。
「
しかし、クラウチ・ジュニアの近くに居た、生徒たちが壁になり無理やり軌道を変える。
ヴォルデモートは体を障りながらハリー、ペティグリュー、クラウチ・ジュニア、そしてイーニアを見ると少し笑った。
「あの時の小娘か………ローブを着せろ。」
闇の帝王、ヴォルデモートが復活した。
巻き込まれたセドリック、クラム、そして、その他の生徒たち。
ヴォルデモートまで復活し、彼らに勝機はあるのか!?
クィレルは3年間アズカバンで筋トレを続けた結果、脳筋になりました(笑
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