戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない 作:imuka
ではどうぞ。
第二の課題の日が訪れ、皆、湖にできた会場に集まっていた。
イーニアを除く3人は水着姿で、イーニアは第一の課題の時に着ていた格好をしている。違うところは少し大きめのゴーグルを首にかけていることだ。
「イーニア、それで水の中入るの?」
「流石にコートは脱ぐよ。」
ハリーはとても泳ぐ格好とは思えないイーニアに怪訝な顔をして聞いたがイーニアはケロっとした顔で答える。
会話はそれ以上はなく、それぞれに体を伸ばしながら開始の合図を待つ。
「それではそろそろ第二の課題を始めたいと思います!!」
今回の競技説明をしていたバグマンがホイッスルを手に持ちカウントダウンを始める。カウントダウンが0になる瞬間バグマンがホイッスルを鳴らし競技が始まった。
イーニアはコートを脱ぐとゴーグルを付け、衣服と体に魔法をかける。
「
魔法をかけるとそのまま水の中に入っていく。水の中に入るとハリーたちはすでに泳ぎ始めていた。イーニアは杖を仕舞い、首に指先を当てると次の呪文を唱える。
「
水中の酸素を取り入れることができるようになったイーニアは次に明かりを点ける。
「
作り出した光を分散させ、上下前後左右に展開させる。明るくなり視界がクリアになると、早くに泳ぐための呪文を唱えた。
「
魔法をかけるとイーニアは水を蹴るように泳ぎだす。湖の中はあまりきれいとは言えず明かりを灯していても見えるのはせいぜい5m先。視界の悪さに少し苛立ちを覚えつつも加速しつつ泳いでいく。
しばらく泳ぐと岩や水中植物の無い、開けた場所に出た。微かにだが歌が聞こえてくる。
しかし歌とは別に大きな生き物が動く音に気が付いたイーニアは音の方を見た。
音の方を見るとデラクールが何かに襲われている。
襲っていたモノの正体は、ワニのような口、大きな鰭を四足のように持つ、およそ全長11mの巨体。中生代ジュラ紀中期カロビアンからジュラ紀後期のヨーロッパに生息していたと言われる首長竜、リオプレウロドン。
その姿を確認したイーニアは水中に居ながらも舌打ちをする。
"邪魔をするにしても何も食物連鎖の頂点に居たとされる奴を呼ばなくても"
イーニアが助けるかどうか悩んでいるとデラクールは失神呪文で1匹倒す。しかし後ろからやってきたもう1匹に噛まれた、ように見えた。
噛まれたと思われたデラクールは口が閉じる瞬間に、姿を消した。イーニアは噛まれそうになった瞬間、思わず息を飲んだが、恐らく失格で退場されられたものだと判断する。
リオプレウロドンはデラクールが居なくなったことを認識するとイーニアの方へ勢いよく突っ込んでくる。
まっすぐに向かってくるリオプレウロドンをステップするかのように避けるとイーニアは透かさず解析魔法をかけた。
解析結果はすぐに出て、アレは魔法で生成されているものだということが分かる。
「なら、遠慮はいらない…ね!!」
自分の身の丈ほどの大剣を生成すると向かってきたリオプレウロドンの口に突き刺した。刺されたリオプレウロドンは泡のようになって消えていく。
だがリオプレウロドンが次々と出てきたので、イーニアは相手にするのを止め、盾の呪文を唱えながら歌の聞こえる方へと泳ぎだす。
水中植物に紛れながら少し泳ぐとリオプレウロドンは追って来なくなった。活動水域が決まっているようだ。
歌がよく聞こえる場所に到着するとそこに4人の人間が植物で結ばれていた。
ハーマイオニー、フレッド、あと女の子2人。
"ダンスパーティーの相手ってことか。"
あの時の内容に納得したイーニアは時間を見る。まだ半分ほど時間がある。誰も来ていないことはそれほど不思議ではなく、仮に時間が過ぎてもこのまま死ぬとは思わなかったが一応、4人の足についていた植物を切っておく。
更にフレッド以外に魔法でマーキングするとフレッドの脇を抱えて浮上する。
「げほっ…冷た!?」
「人質お疲れ様。もう少しジッとしてて。」
バグマンとリーの実況を適当に聞きながらイーニアは会場に上がり、フレッドを引っ張る。ずぶ濡れのフレッドに乾燥呪文をかけ、水を弾切れなかった自身にもかける。
「お、サンキュー。―――1位か、さすがイーニア。」
実況と周りに他の選手がいないことでイーニアが1位であることに気が付くフレッド。イーニアはフレッドの賞賛の言葉に微笑み返すと湖の方をジッと見た。
イーニアがフレッドを助けた10分ほど後、マーキングした1人が浮上してくるのを感じるとクラムが湖から顔を出した。
「ハリーこねぇな。」
タオルに身を包んだフレッドがイーニアの隣でそうつぶやく。
会場が再び静寂に包まれる。それからさらに5分が立ち、制限時間が近付いてくる。
「私より早くに泳いでいたから水中の移動に関しては問題ないはずなんだけど…。」
そうつぶやいた瞬間、2つのマーキングに動きがあった。どうやらハリーは2人を上にあげようとしているようだ。
すぐにハーマイオニーともう1人の女の子が浮上したが肝心のハリーが上がってこない。
イーニアはハーマイオニーたちに手を貸し、水から上げる。2人にタオルで包むとハリーがすごい勢いで水から飛び出した。こちらに落ちると判断したイーニアは身体強化魔法をかけハリーを受け止める。
「よっと…、お疲れ様、ハリー。」
「げほっげほ…ごほ――ありがとう、イーニア。」
フレッドが持ってきたタオルでハリーを包む。そんなハリーの元へデラクールが来て抱きついた。話を聞くと人質になっていたのは妹らしい。うまく英語がしゃべれないながらも妹を助けてくれた礼をハリーに言う。
「審査結果が出ました!まず1位でゴールしたイーニア・シュツベル!!制限時間以内1位通過なので、50点満点です!!」
バグマンの発表にホグワーツ生から歓声が上がりイーニアは手を振る。フレッドが肩を組んで来たりハリーやハーマイオニーからも賞賛の言葉をもらう。
次にクラム、デラクールと点数が発表される。クラムは2位通過のためイーニアとは5点差の45点。デラクールは失格だがリオプレウロドンを倒したことが評価され20点。
そしてハリー。3位通過だったがデラクールの妹を助けたことを評価され47点だった。
「やったぜ!!ハリー!!」
ロンが抱きつきハーマイオニーもハリーを讃える。イーニアもハリーに抱きつき、そこにフレッドやジョージなども来て揉みくちゃになる。
ハリーは少し疲れたような顔をしつつも嬉しそうに笑っていた。
寮へと戻ると第一の課題の時より大騒ぎだった。大騒ぎをして、またマクゴナガルに叱られた。さらには減点。しかしそれでもテンションが下がることなく、騒がしい日々が3日も続いた。
* * *
第三の課題は6月24日に行われ、事前情報は何もなし。代表選手は試験を免除されてはいるが、何もしないわけにはいかず、つまりは当日までは修練あるのみである。
イーニアは皆が試験勉強に費やしている時間を魔法の練習に当てるため、ハグリッドを隣に森で高位魔法の練習を行っていた。
「おめぇさんの魔法はすげぇな。」
一息ついたイーニアにハグリッドが話しかける。
「ハグリッドも構造とか理解すればできるようになるよ?」
「いやぁ、俺は難しいことはわかんねぇ。」
できると言われたハグリッドは困ったように頭をかく。
そんなハグリッドとは今年から武道の相手をしてもらっている。2年生の時は断られたが、4年生になりイーニアが成長したことを告げると半ば渋々だったが承諾してくれた。
魔法の練習が終わるとハグリッドと数回手合わせをし、学校へと戻る。
そんな日常を送っていた第三の課題、1ヶ月前のある日。バグマンに呼ばれクィディッチの競技場へと足を運ぶとそこには見慣れた競技場はなく、生垣が複雑に組まれ迷路のようなものができていた。
ハリーはその光景を見て、口が開いたままになっている。
「代表選手諸君。どうかね?」
バグマンが高らかに言う。
「生垣は後、1ヶ月もすれば6m以上に育つ。ああ、安心してくれ。終わった後はいつもの競技場に戻しておく。――我々がこの生垣で何を作っているかはわかるかな?」
「迷路?」
イーニアは一番最初に思ったことをそのまま口にした。バグマンはそれの言葉にその通りと肯き、第三の課題の説明を始めた。
内容としては簡単。迷路を潜り抜け、優勝杯を手に入れたものが優勝。
しかしそれには様々な困難を乗り越え、進まなければならない。迷路には同時に進めるのではなく、今までの順位が上の順に入っていく。イーニア、ハリー、クラム、デラクールの順番だ。
「今までの点数で負けているミス・デラクールにもチャンスはあるので諦めず挑んでほしい。――質問がなければ解散だ。1ヶ月後、楽しみにしている。」
そういうとバグマンはあっという間に姿を消した。第一、第二の課題の時もそうだったが、やはりイーニアを避けているようだ。
"第三の課題後が最後のチャンスになりそうね。フレッドとジョージに話しておかなきゃ"
イーニアは考えをまとめると競技場の変わり果てた姿に、まだ脳が理解していないハリーを連れて寮へと戻っていった。
恐竜登場、魔法がたくさん回でした。
水の中、というせいなのか台詞がかなり無い回となってしまいました。
次回はついに炎のゴブレット最終回。意外なあの人が再登場!!
水を弾く魔法、インパ―ビアス・ペルーツェ
完全防水ではなく撥水なので多少濡れます。
熱も帯、寒さ対策の魔法、アフェーカルン
日常的にも使える魔法。
水中呼吸の魔法、ウンディラ・スプリッツ
水中の酸素を取り込めるようにする。
水中歩行の魔法、カルキトラ
水を壁のように蹴ったりできるようになる。
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感想お待ちしています。