戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない   作:imuka

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今回は魔法の仕組みについて。独自解釈です。


ではどうぞ。






ワールドカップと死喰い人

 シリウスの家の片付けが終わり数日後。

 ロンから、正確に言えばウィーズリー家の招待でクィディッチのワールドカップ、決勝戦。ブルガリア対アイルランドに行くことになったイーニア。アリシスも仕事の関係で行くらしく現地までは一緒に行くことになった。

 隠れ穴へ姿現しをし、扉をノックする。するとモリーが出迎えてくれた。

 

「いらっしゃい、イーニア。――そちらが話していた人?」

 

「お久しぶりです。モリーおばさん。――伯母のアリシス・コーランドです。」

 

 モリ―と抱きしめ合ったイーニアはアリシスを紹介する。

 

「イーニアの伯母のアリシスです。いつも姪がお世話になってます。」

 

「いえいえ。こちらこそ息子たちが迷惑かけてるようで、ごめんなさいね。――とりあえず中に入って。皆まだ準備してるから。」

 

「お邪魔します。」

 

 家に入ると皆が朝食を取っていた。ハリーやハーマイオニーもいる。

 

「皆、久しぶり。元気にしてた?」

 

「久しぶり。シリウスの件はありがとう。」

 

「ええ、元気にしてたわよ。」

 

「そこそこ元気にやってたよ。」

 

 ハリー、ハーマイオニー、ロンから返事を受け取り、食事のしていないハーマイオニーの隣に座る。

 

「ハーマイオニーは朝ごはん食べたの?」

 

「ええ、私もさっき着いたばっかりで、来る前に食べてきたわ。」

 

 モリ―に出されたお茶を飲みつつ、ハーマイオニーと談笑をする。

 のんびりと話をしているとハリーたちの準備が終わり出発することになる。

 

移動(ポート)キー使うんですよね?」

 

 アリシスがアーサーに聞くと肯く。

 

「ああ、大人数だしな。――あと2人も追加で来る。」

 

 先頭でアーサーと談笑しているアリシスを見て、ジョージとフレッドがイーニアに話しかけてくる。

 

「イーニアの伯母さん、すっげぇー美人だな。」

 

「ああ、あれは親父も鼻の下伸ばしてるぜ。」

 

「うん。とても美人だよ。でも、今年で――歳なんだよ………?――歳……。私たちの―――。………。」

 

「???」

 

「いったいどうした?」

 

 肝心な部分が喋れないイーニアに首を傾げるジョージとフレッド。しかも紙に書こうと思ったが書くこともできず、何かに気が付いたイーニアはアリシスに向かって叫ぶ。

 

「アリシス!!年齢喋れないように魔法かけたでしょ!!」

 

「あ、気が付いた?女性の年齢は言うもんじゃないわよー、たとえ親戚でも。」

 

「しかも細かく複雑に組んで、かけたことに気が付かないようになってる。えーと、……どこが起点になっているかを調べて…構成と……――。」

 

「頑張って解いてね~。」

 

 アリシスが笑いながらイーニアを応援する。しかし、すでにイーニアの耳には届いておらずぶつぶつと呟いていた。

 

「イーニアが構成がどうだの言ってますけど、どういう意味なんですか?」

 

 ハーマイオニーがイーニアの呟いている言葉について質問を投げる。

 

「西洋だと知られてないけど魔法って本来、構築式とか術式とかを使って組み立てるモノなのよ。でも西洋の魔女や魔法使いは優秀だからそれを無意識に組み立てて魔法を使ってる。そして、それができる人間をここでは魔女、魔法使いって呼んでるの。

ハーマイオニーはマグル出身だったわよね?マグルに、不思議な力を持った人ってテレビで出てたりしなかった?」

 

「はい。超能力とかそういう。」

 

「彼らはマグルの中でも私たちに近い存在。ただ彼らは無意識的に術式を組むことができないから理解するのに結構努力していると思うわ。

 近年わかったことなのだけれど、魔法はだれでも使えるものらしいの。それを認識、理解できるかできないか、才能に偏りはあるけれどね。――東洋では魔法…向こうでは魔術って言うみたいだけど、全部術式を組んで魔法を使うわ。その方が理解できるんですって。だから、あちらはこっちよりずっと多くの魔術師、魔法使いがいる。

純血が優秀って言われたりするのは遺伝子的に認識する力が備わるからよ。もちろん、必ずってわけじゃないわ。原始の魔法族のようにマグルの中で魔法使いが生まれることもあるし、純血でも魔法が使えない子がいてもおかしくわないわ。

 話を元に戻すわね。で、私がイーニアにかけた魔法は東洋寄りの、意識的に組んだ魔法で構成とか理解しないと解けないタイプ。呪文終了魔法は魔法の構成を破壊して解けさせるんだけど、私がかけたのはそれを弾くようになってるから一から解析してみなきゃならないのよ。イーニアは今それをやってる。」

 

「同じ魔法でも中身が違うってことですか?」

 

「ええ、そうよ。それだけで解くのがとても複雑になるの。」

 

 説明が終わり、皆が納得しているとアーサーがアリシスに聞く。

 

「私は魔法が誰でも使えるという話しは聞いたことないがそれは事実なのか?」

 

「ここ数年に知られた話です。魔法界でも、特に一部純血派には大きく影響を与えるので情報漏洩しないようにかなり規制をかけたと聞いてます。最近、マグルの受け入れをしてる純血が出始めたのはそれの情報が漏洩して立ち上げた人間がいる、と。」

 

「なるほどな。だがそんな情報を私たちが知ってしまっていいのかい?」

 

「それは大丈夫ですよ。東洋ではかなり知れ渡っている話ですし、一部の純血が認めたくないってだけで法に触れるようなことではないですから。」

 

 その言葉を聞き、アーサーがホッとしていると前からセドリック・ディゴリーとその父親、エイモス・ディゴリーがやってきた。挨拶をすませると丘の上にある移動(ポート)キーの所へ移動する。移動(ポート)キーはボロボロの靴で捨てられたように置かれていた。

 

「皆、しっかりと靴を掴むんだぞ。」

 

 エイモスの指示に従い、皆が靴を掴むと、くるくる回りだし、風景が加速していく。あっという間に周りの風景がわからなくなるとエイモスが手を放すように言う。ハリーたちは次々に手を放し、続くようにイーニアも手を放した。

 

「わ、っととと――、よっと。」

 

 回転しながら外に引っ張っていた力が急に下に変わり地面に叩きつけられそうになったところをイーニアは持ち前の運動能力で綺麗に着地する。周りを見ると皆倒れていた。

 

移動(ポート)キーは初めてだったのにちゃんと着地したのね。」

 

 イーニアがハリーたちに手を貸してるとアリシスたちが少し遅れてやってくる。皆が立ち上がり、少し歩くといくつもテントが並んでいた。アリシス、セドリックたちと別れ、ウィーズリー家のテントへと向かう。テントに着き、中で寛いでいると男性が1人顔を覗かせた。

 

「アーサーは居るかい?」

 

「ルード!!」

 

 ルドヴィック・バグマン。魔法省、魔法ゲーム・スポーツ部の部長で今回、ワールドカップのチケットをくれた人である。2人は抱き合うと、アーサーが子供たちを紹介する。紹介が終わるとバグマンはアーサーに賭けを持ちかけてきた。

 

「アーサー、賭けをしないか?」

 

 アーサーは運営側の人間が率先的に賭けを行う行為に渋い顔になる。

 

「んー、あー、じゃあ、ブルガリアに3ガリオンだ。それ以上は賭けん。」

 

「なんだ、それだけか。他には?」

 

 バグマンが子供たちを見る。アーサーはそれを止めようとしたがフレッドとジョージが賭けに乗った。

 

「僕らでアイルランドに37ガリオン6クヌート出す。」

 

「お、いいね。他にはいるかい?」

 

「2人がやるなら私もアイルランドに28ガリオン5シックル。」

 

「え!?イーニアもやるの!?」

 

 イーニアがそれに乗ったを見て驚くハリーたち。フレッドとジョージはノリノリでハイタッチしている。

 

「2人は賭け事強いよ?私はそこに便乗するだけ。―――ああ、もう。喜ぶのは勝ってからでしょ。」

 

 ハイタッチを求めてくる2人に少し呆れつつもちゃんと交わすイーニア。賭け事をやることにアーサーはいい顔をしなかったが、何も言わなかった。

 

 試合時間が近づき、会場に入る。中には既にすごい数の人が居り、大賑わいだった。イーニアたちは自分たちの席に着くと丁度司会が喋り出した。

 

「大変お待たせいたしました!!これより!!第431回!!クィディッチワールドカップ決勝戦を開催します!!」

 

 司会の言葉に会場中が歓声を上げ、揺れる。

 

「今回、30年ぶりにイギリスで行われるこの大会に魔法大臣のコーネリウス・ファッジ大臣はもちろんのこと、さらに素晴らしい来賓に来ていただいてます。

――――イギリス王室からジョー殿下にお越しいただいてます!!」

 

 会場のもっとも目立つ場所、高さ、横ともに中央の位置に客のいない空間があり、そこで1人の男性が手を振っていた。会場が歓声で湧く中、イーニアは殿下周辺にいるボディーガードや防御魔法に目がいった。明らかにわかるように配置されている。まるで暗殺できるものならやってみろと言わんばかりの布陣だ。

 

「あれが王室特務…。」

 

「何か言ったか?」

 

 隣に居たジョージが声をかけたがイーニアは何でもないとはぐらかす。

 試合が開始され、イーニアはホグワーツで行われるクィディッチとはまるで迫力が違いに先ほど気になったことなど忘れて試合を楽しんだ。結果は150対190でアイルランドの勝利。イーニアたちの賭けも大勝利を飾ることとなった。

 

 試合の熱が冷めず、どこのテントもお祭り状態で、もちろんハリーたちも興奮が収まらない様子だった。イーニアはアリシスにかけられた魔法を解くために、1人落ち着きながら賭け金を分け始めたとき。

 魔法の穴を見つけ解くことに成功したイーニアだったがそれよりも重大なことに気が付きフレッドとジョージのもとへ賭け金を持って近づいた。

 

「フレッド!!ジョージ!!これレプラ―――。」

 

「全員いるな!!?」

 

 入ってきたアーサーにイーニアの声はかき消される。中に居た全員が駆けこんできたアーサーを見た。

 

「どうしたのさ。そんなに慌てて。」

 

「避難するぞ!!荷物は持つな!!行け!!」

 

 突然のことに皆、戸惑いつつも外に出ると、あちらこちらで火の手が上がっていた。

 

「森に逃げるんだ!!私は魔法省に加勢に行く!!」

 

 アーサーはそういうと杖を持ち駈け出した。アーサーの指示に従い、駈け出すイーニアたち。森に向かっていると途中でこの騒ぎの原因が視界に入る。

 

「死喰い人…ッ!!」

 

 イーニアの言葉に全員が息を飲む。それでも足を止めることなく進んでいたイーニアたちだったが、女の子が1人座り込んでおり泣いているのが見えた。さらに死喰い人が女の子に近づいている。イーニアは強化魔法と浮遊魔法を自分にかけると人の波を飛び越え、女の子の元へと着く。

 

「大丈夫?立てる?」

 

 女の子は泣きじゃくりながら肯き、そのままイーニアに抱きついてきた。イーニアも女の子を抱きかかえ、立ち上がると死喰い人が愉快そうな声を上げながら近づいてきた。

 

「おーおー。ガキを襲おうと思ったらずいぶん良いのが釣れたぜ。」

 

 イーニアは特にそれに受け答えせず女の子を抱えたまま逃げる。しかし数歩動いたときに違和感を覚え振り返った。死喰い人との距離が離れていない。気が付けば動いたはずなのにさっきと同じ場所に立っていた。イーニアが死喰い人を睨みつけると笑い声をあげる。

 

「はっはっは……。なんでって顔だな。

――いいぜぇ。俺は気前のいい男だから教えてやる。何、簡単な話だ。俺を中心としてお前との距離を固定しただけのことだ。だからお前が走っても俺との距離が離れなかったんだ。」

 

 死喰い人はそこまで言い、言葉を区切ると杖を振った。イーニアがそれに警戒し構えた瞬間、男が真後ろに現れ、イーニアの腰と尻を触った。

 

「ひゃぅっ!?」

 

「良いケツしてんなぁ――――うおぉ!?あぶね!!」

 

 触られたイーニアは女の子を抱えている逆の手に刀を生成し、思いっきり振った。刀は死喰い人の仮面を切り裂き、さらに頬を切った。

 

「ちっ!!顔を切った。――あぶねぇことしやがる。」

 

 男は顔を隠すために深くフードを被る。イーニアは顔を少し赤くしながら男を強く睨みつけた。

 

「ま、強気の女の方がヤリがいがあるってもんだ。」

 

 男はもう一度杖を振る。

 瞬間、男は体が飛ばされる感覚に陥った。あっという間に違う場所に飛んで行った男にイーニアの声が聞こえる。

 

『案外、わかりやすい、簡単な魔法だったよ。変態。唱えた瞬間に私を中心に唱え直して距離を離れられるだけ離させてもらった。2度と――。』

 

 途中で声が途切れ、男はどこだかわからない場所に落ちた。

 

 イーニアは一息吐くと刀を消し、触られた場所を埃を落とすように掃う。

 

「もう、最悪。」

 

 そう呟き、その場から離れようとしたとき、緑色の光を放つ巨大な髑髏が夜空に放たれた。そして死喰い人が次々と姿現くらましでどこかへ飛んでいく。

 

「闇の印……。」

 

 

――――――――――――――――

 

 

 その後、逸れていたハリーたちと合流すると、魔法省の闇払いの魔法使いたちが訪れ、闇の印を作った犯人と疑わられたり、バーテミウス・クラウチの屋敷しもべ妖精のウィンキーが闇の印を作ったとされ、解雇されていたりと慌ただしかった。

 

 

 

 夏休みは終わり、イーニアたちの4年目が始まる。

 

 

 

 

 

 

 




魔法の構成、術式に関しては今回の話では鍵となるものなので、このタイミングで説明を入れました。


痴漢にあうイーニア。
前回、シリウスが言った通りイーニアは美少女の分類に入る上に女性としても成長しているので死喰い人さんもつい襲いたく……ry


年齢を言うのを防止する魔法
読んで字のごとく。紙に書くのも遠回しに言うことも不可。

距離変動魔法、スパチーム
中心となるモノとの距離を変化、固定させる。
死喰い人はこれでイーニアとの距離をとても遠くにされ、どこかへ行ってしまいました。



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