戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない 作:imuka
ではどうぞ。
大掃除と昔話
「汚い…。これは住めたもんじゃないね。」
「ああ、だから手伝ってほしい…。」
「さすがに12年もほっとけばこうもなるか。むしろよく家が潰されなかったな。」
イーニアが玄関で呟くと絶望したように返すシリウス。リーマスも家の状態にため息が出た。
夏休みの初め、ハリーがシリウスの家の片付けを手伝いに行けないという知らせを受け、代わりに手伝いに来たイーニア。もちろん世間では犯罪者であるシリウスの家に行くことはアリシスにどう伝えるか悩んでいたイーニアだったが、素直にあったこと、知っていることを言うと"裏は取れてるから行っていいわよ"と簡単に承諾を得た。
シリウスの家に着くと外はボロボロ、中もボロボロと立て直したほうがいいのではないかと考えるほどだった。ある程度は魔法でどうにかなるようだったが一部は人の手でやらなければならなかった。建物の補強をシリウスたちが行い、中の掃除をイーニアが行う。いつもなら自分の手で掃除するイーニアだが今回ばかりは汚い個所が多すぎた為、魔法を使い次々と掃除していく。
「シリウスー、家具とかはどうする?結構、木腐ってるよ。」
「直せそうにないものは捨ててくれ。」
訪れた当初はブラックさんにルーピンさんだったが2人とも名前で呼ぶことを要求し、敬語もいらないと言われたのでフランクに話すイーニア。
夕方頃には1階の片付け終わり、唯一使えそうな椅子に座りると一息つく。魔法を使用してこれほど時間がかかるとはどれだけ汚かったのだろう。シリウスたちは建物の補強をある程度で切り上げ家具を買いに出かけた。
「あー、疲れた。」
綺麗になった床や天井を見て達成感を感じるイーニア。掃除中に蜘蛛が出たりと大変だったが何とか人が居られる状態になった。机や椅子などはイーニアが座っているもの以外は腐ってしまって全滅。食器などもほとんど使えモノにならずゴミが大量に出た。
椅子に座りながらボーっとしていると部屋の空いたスペースに歪みが見えたのでイーニアは部屋の端へ移動する。ボンッ!と音が鳴るとそこにシリウスたちが家具とともに現れた。
「久しぶりにやったからうまくできるか不安だったがなんとかなったな。」
「ああ、大荷物だったからな。」
「おかえりなさい。」
「あ、ああ。た、ただいま。」
椅子から立ち上がったイーニアが声をかけるとシリウスは少し戸惑ったように返す。リーマスはそれを見て少し笑う。
「12年ぶりに【おかえりなさい】って言われた気分はどうだ?」
「悪くない、が緊張するな。」
「12年もアズカバンに居れば日常挨拶でも嬉しいんじゃないかなっと思って。悪くないならよかった。」
「14歳の美少女にそういう風に言われるなんて役得だな。」
「美少女なんて、おだてても何も出ないよ?」
リーマスが少しふざけて言うとイーニアは真面目な顔をして言う。その言葉に少し固まる2人。
「いや、イーニア。君は十分美少女だろ?」
「そうかな?ハーマイオニーの方が可愛いと思う。――それに伯母―アリシスは年齢に合ってないくらい美人だし…。」
「アリシス?――アリシス・コーランドか?」
「知ってるの?アリシス・コーランドは私の伯母だよ。」
「「イーニアは
「私を呼んだかしら?
シリウスとリーマスが声を揃えて言うとその後ろに姿現しで現れたアリシス。2人はカクカクしながら振り向く。
「ど、どうも。ご、ご機嫌麗しゅう。コーランドさん。」
「あら。コーランドさん、なんて他人行儀にならなくていいわよ?昔みたいに呼び捨てやアリシス先輩で構わないわ。」
「で、ではアリシス先輩。いったいどのようなご用件で?」
「姪を1人で大人の男2人の所へ行かせて様子を見に来ないわけいかないでしょう。」
「そ、それもそうですね。」
少しびくびくしている2人に首を傾げるイーニア。それを見てアリシスが説明をする。
「2人は私の後輩なのよ。組は違ったけどね。よく悪戯をしては監督生を困らせてたわ。―――それでグリフィンドールの監督生が一度泣きついたことがあってね。抑えきれないって、あまりにもどうしようもなかったから代わりに私が叱りに行ったのよ。それが縁でちょくちょく叱ることがあって。」
「あの説教はかなり恐ろしかった。というか躊躇なく攻撃魔法を使ってくるのが一番恐ろしいかった。」
「1回は警告したわよ?逃げる貴方たちがいけないんじゃない。――あれ、ジェームズは愉しそうだったわね。」
リーマスが少し、恐怖を思い出したように震えると笑顔で返すアリシス。普通の笑顔だったためホッとしていたリーマスだったが、その笑顔が恐怖に変わる。
「そうそう。イーニアから話を聞いたわ。――少しお話しましょうか?リーマス。」
「え、えっと?いったい何の話を――?」
「ボガートのことや杖を向けたこと。」
固まったリーマスをずるずると運び隣の部屋へと連行する。シリウスは両手を揃えて合掌していた。イーニアはアリシスに叱られて事はなかったのでそんなに恐ろしモノなのかと首を傾げていた。
少し時間が経ち、ひたすらイーニアに謝るリーマスが出来上がると夕食を取ることになった。
「すまない。本当にすまない。イーニア。」
「いいってば。もーアリシス、これじゃご飯にならないよ。」
「はー。もういいわよ、リーマス。」
困ったイーニアに仕方ないと言わんばかりに返すアリシス。するとようやくリーマスも食事を始める。食事が終わると明日の予定を話し始める。
「明日も同じ時間に迎えに行っても問題ないか?」
「うん。構わないよ。明日は2階の掃除だね。」
「ああ。イーニアのおかげでかなり片付いた。助かる。―――そういえばアリシスはどうやってここを知ったんだ?イーニアは私たちが迎えに行ったのに。」
「んー、秘密。―――シリウスが犯罪者でないことの裏が取れてたからイーニアに行く許可を出したって言えば場所くらい知っていてもおかしくないでしょ?」
「昔からそうだがいったい情報をどこから仕入れてくるんだ…。」
「だから秘密よ。女の秘密をあんまり詮索するものじゃないわ。」
「わかりましたよ。先輩。」
シリウスがやれやれといった感じで返すとアリシスは微笑む。
「まあ、でも残念ながらそんな私でも貴方の無実を証明することはできないわ。裏が取れている私でも、ね。―――仲の良かった後輩たちの間に溝が生まれたことは悲しいことだけど…――シリウスはピーターが捕まるまで大人しくしていることね。たとえジェームズの仇でも。」
「――――アリシスは……どこまで知っているんだ?」
「色々知ったのは貴方が捕まってからよ、シリウス。今でこそすぐに耳に入るけど、あの時は私もアリスとずっとイーニアの事見てたから。知ったのは全部終わった後。」
「そうか…。」
「シリウスが裏切ったって言うのは何処か腑に落ちないところだったけれどね。」
「何故だ?」
「ジェームズの仇を取るのに半狂乱になってたってイーニアから聞いたわ。まるで狂人だったって。―――貴方はそういう男よ。兄弟同然の存在にそこまでなる奴。」
部屋に沈黙が訪れる。
暗い空気が漂っていたが、ふと、イーニアは疑問が頭に浮かびアリシスに聞く。
「そういえばハリーにあった時、職業柄知っているって言ってたけど、事件前からハリーを知ってたの?」
「そうね。会ったことはなかったけれど生まれたっていう知らせはもらってたから。彼の姿を見たのはここ数年の話よ。」
「なるほど。――あれ?でもそれだと2人はなんで私のこと知らないの?」
「アリシスの妹、アリスとはそこまで関わりがなくてね。姪が生まれたってことぐらいで名前を聞いてなかったんだ。」
「アリスは俺たちの1つ年下だったしな。アリシスに説教されてからはすっかり下級生に悪戯せずに上級生対象にしてた。」
「セブルスに対してはやめなかったのに……どう考えてもやりすぎでしょ。あの子、今ホグワーツで教鞭執ってるんだっけ?リーマス、どんな様子だった?」
「変わらず…かな。」
「そ。まあ、あんまり捻くれてなければそれでいいわ。――ああ、そうそう。ホグワーツで思い出したわ。今年、ホグワーツで三大魔法学校対抗試合が行われるわ。イーニアも頑張ってね。」
「それは出ろってこと?」
「選ばれなければ関係ないし、やりたくなかったら出なくても構わないわ。――でも、たぶん、もしかしたら、可能性的に、ハリーが選ばれるかもしれない。そしてそれはきっと大嵐になる。」
その言葉にシリウスが反応した。
「ハリーが選ばれるかもしれない、というのはどういうことだ。」
「あの子は物語の主人公なのよ。ハリーが動けばその分何かが起きる。もちろん、主人公っていうのは比喩よ?―――ただこの3年間、何もない年があった?」
アリシスに聞かれ首を振るイーニア。
「そ、だから今年のイベント、三大魔法学校対抗試合も何かが起こるわ。その可能性は高い。」
「今年も騒がしくなるんだね。」
少しげんなりした風に言うイーニアに笑いながら"刺激がないよりはいいと思うわよ"とアリシスが言う。
「あくまでも私の予想ってだけだからそこまで気にしなくていいわよ。あ、三大魔法学校対抗試合は本当にあるからね?」
ハリーの危機に駆けつけれるように、などと言っているシリウスを放っておいてイーニアたちはリーマスに別れを告げ帰宅する。
自宅に着くとアリシスがイーニアに十字に小さいライオンがかかれてたイヤリングを渡してきた。
「お守りみたいなものよ。仮に選手に選ばれて試合に出ることになったら試合の時は着けてること。いいわね?」
「わかったわ。ありがと。」
イーニアはイヤリングを受け取ると仕事に出かけるアリシスを見送り、シャワーを浴び眠りについた。
メタメタ、アリシス。ですが主人公はイーニアです。
アリシスはシリウスたちの2つ年上です。
シリウスたちはアリシスにとって手のかかる後輩たちってところでしょうか。
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