戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない   作:imuka

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ではどうぞ。


アズカバンの囚人

 クィディッチ優勝と言う喜びの熱が冷めないうちに学年末試験がやって来る。すべての授業を取っているハーマイオニーは必然的に忙しくなったので今回はイーニア1人でハリーたちに勉強を教えている。

 とはいっても選択科目がすべて一緒のわけではないので教えらえるものは限られている。必須科目を重点的に教え、イーニア自身も今回は大丈夫だと思えるほどにはなり、試験に挑んだ。

 

 

 

 

 

「終わったわー。」

 

 珍しくハーマイオニーが脱力している。全教科のテストを行ったのだから当然と言えば当然だ。

 

「お疲れ様。」

 

 動く気力も無さそうなハーマイオニーに紅茶を出す。ハリーとロンにもいるかと聞くとほしいと言われたのでコップに注いで渡す。イーニアも自分の分を入れて椅子に座った。

 

「今年も色々騒がしい1年だったけど無事終わりを迎えられそうね。」

 

 一口紅茶を飲んだハーマイオニーがしみじみ言うと3人もそれに肯いた。

 

「試験終わったしノーバートのところ行こうかな。3人は来る?」

 

 紅茶を飲みほしたイーニアは立ち上がり聞くと3人とも行くと返事をした。バックビークより大きくなったノーバートに会いに行くと、ハグリッドが外に居り、ロンに話しかけてきた。

 

「ロン、この鼠はお前さんのじゃねぇか?」

 

「スキャバーズ!!」

 

 話によるとちょくちょく脱走し、行方を暗ましていたロンのペットはハグリッドが禁じられた森に入った時に見つけたらしい。

 

「こいつ、俺のところにいたときもそわそわして、どこかへ行こうとしてたからな。気を付けるんだぞ。」

 

 そういうとハグリッドは小屋へと戻っていった。

 ノーバートと遊んでいると日が暮れ夕食の時間が近くなる。城に戻ろうとするとスキャバーズがロンの手を噛み逃げ出した。ロンはそれを追いかける。イーニアたちもロンを追いかけた。スキャバーズは遠くまで逃げ、暴れ柳の近くでロンは捕まえることができた。

 

「ロン!!暴れ柳!!早くこっちに――。」

 

 ハリーが声を上げたがその瞬間、後ろから黒い大型犬がイーニアたちの間を抜け、ロンに向かって駈け出した。突然のことに思考が追い付かなかった3人だったがロンの足が噛まれ、木の根元の洞へと連れて行こうとするのを見て3人も駆けだした。犬はロンをあっという間に引きずり持って行ってしまう。イーニアたちも追いかけるために洞に入ろうとしたが暴れ柳が襲い掛かってくる。

 

「邪…魔…!!」

 

 イーニアは振られた枝を上手く避けたがハリーとハーマイオニーが当たってしまう。吹き飛び後ろに飛ばされる2人。

 

「大丈夫!?」

 

「いたた…大丈夫!!」

 

 暴れ柳は全体を使ってイーニアに襲い掛かってくる。転がりながらそれを避けると杖を構えた。

 

イモービラス(不動せよ)!」

 

 暴れ柳は動きを止める。

 

「急ごう!!」

 

 イーニアは2人の手を取り洞の中を進む。洞の中は整備がされており人が歩くには十分だった。ある程度進むと階段が現れ、上る。すると建物中に繋がっていた。

 

「方角的に……叫びの屋敷?」

 

 ハーマイオニーが呟いたがそれの回答は誰も持っておらず沈黙が流れる。上の階からロンの声が聞こえ駆けあがる。

 

「ロン!!」

 

 2階の階段からすぐの部屋にロンは居た。3人は駆け寄って様子を見る。

 

「3人とも駄目だ!!奴は!!ブラックは動物もどき(アニメーガス)だ!!」

 

 ロンが自分たちの後ろを指を指して言う。振り向くと1人の男が立っていた。ハーマイオニーがハリーを庇うように前に出て、イーニアは一気にブラックに接近した。

 杖を持っているのを確認したイーニアは身体強化をかけ、腹に一撃食らわせる。痛みで腹を抱えた瞬間、後ろに回り首を締め上げる。

 

「このまま気絶してもら―――。」

 

 扉の方から気配がし、咄嗟に盾の呪文を唱えようとするイーニア。

 

ステューピファイ(麻痺せよ)。」

 

「う…ぐぅ……ッ!!」

 

 失神呪文が当たり、盾の呪文で防ぎきれなかったイーニアはブラックを放してしまった。しかし力任せにブラックの服を掴み入ってきた男に投げた。倒れ込むようにハリーたちの前に行く。

 

「うぉお!?――気絶しないとは、驚いた。」

 

 ブラックを受け止め、入ってきた男はルーピンだった。

 

「ごほッ!!はっ…はぁ…はぁ…。リーマス…。」

 

「無事か?シリウス。」

 

「先生!?なんで!!信じてたのに!!裏切ったのね!!」

 

 ハーマイオニーが悲痛な声を上げる。

 

「それは違う。12年間、僕は彼が悪だとずっと思っていた。彼を裏切っていた。だが今は大切な友人だ。」

 

「もういいだろ!!我慢できん!!早く殺させろ!!」

 

「シリウス!!彼らには説明する必要がある!!」

 

 怒りを爆発させたブラックを宥めるルーピン。ブラックの狂気に緊張が走る。

 

「もう我慢はたくさんだ!!12年も!!アズカバンで!!ずっと!!」

 

「もう少し待ってくれ!!」

 

「2人が仲間であってもなくても、関係ないです。――――お前たち(・・・・)がやると言うならー。」

 

 その言葉の続きは発しなかった。イーニアは右腕を振り切り、斬撃魔法を唱える。

 

トルナ(断ち切れ)。」

 

 ルーピンはブラックの前に出ると盾の呪文を唱えて防ぐ。家具のあちらこちらが切り崩れる。

 

「イーニア!!話を聞いてくれ!!僕らは君たちの敵ではない!!本当の敵は――。」

 

「だったら杖を置いて。」

 

 ルーピンに接近し拳を振るう。しかし痺れからか踏ん張れず、軽くいなされてしまう。イーニアはルーピンから離れ武器を生成し、投擲する。

 

プロテゴ(護れ)!」

 

 投擲された槍を盾の呪文で防ぐルーピン。イーニアは立つのがつらく、ハーマイオニーに肩を借りている。

 

「限界だろう。もうやめるんだ。」

 

「杖を置くまではやめれません。」

 

 構えを取り続けるイーニアに、少しため息を吐きながらルーピンは再び失神呪文を唱えようとした瞬間だった。

 

ステュー(麻痺せ)エクスペリアームス(武器よ去れ)。」」

 

 スネイプが突然登場し、ルーピンの杖を取り上げるとイーニアたちの前に立った。

 

「ルーピン、何をしているのかね?生徒に向かって失神呪文を唱えるとは。」

 

「セルブスッ!?」

 

「ブラックもいるとは…。なるほど、そういうことでしたか。」

 

「まってくれ!!話を聞いてくれ!!」

 

「生徒に手を出すような輩の話など聞きたくありませんな。――シュツベル、ポッター、グレンジャー、ウィーズリー、無事かね?」

 

 チラッとハリーたちを見ながら聞いてくるスネイプに少し困惑しつつも4人は肯いた。

 

「先生…なんで…?」

 

 つい口に出してしまったイーニアに不機嫌そうな顔をしつつ、スネイプは答える。

 

「……グリフィンドールの生徒は嫌いだ。ましてやポッターは更に嫌いだ。だがお前たちはホグワーツの生徒だ。吾輩には護る義務がある。」

 

 護るように立つスネイプに4人は安心感を得た。

 

「ルーピン、ブラック。2人は吸魂鬼の前にでも突き出すとしよう。」

 

「ま、まってくれ!!シリウスは無実なんだ!!」

 

「なら、なぜシュツベルと戦っていた?最初からその話とやらをすればよかろう?」

 

「それは彼女が攻撃を――。」

 

「お前が杖を置けばそのようなことにはならなかったのではないのかね?」

 

「――っ!!」

 

「反論はないようだ。2人とも先頭を歩きたまえ。妙なマネをしたら――。」

 

「ピーター・ペティグリューが生きているんだ!!」

 

 その言葉にハリーが反応する。

 

「いい加減に――。」

 

「待ってください。先生。――話だけでも聞かせてください。」

 

「ポッター、自分を襲うような相手の話を聞くのかね?」

 

「……はい。吸魂鬼に突き出すのは話を聞いてからでも遅くないと思います。」

 

 スネイプは顔を歪めたが"面白い言い訳と見苦しい命乞いを聞いてやろう"といい、ブラックの杖を奪うと杖を構えたまま後ろに下がる。

 

「話して。2人が知っているすべてを。」

 

「口で言うより見せたほうが早いだろう。――セルブス、ロンのスキャバーズにスペシアリスをかけてくれ。」

 

「それに何の意味が……なるほど。ウィーズリー、渡したまえ。」

 

 何かに気が付いたスネイプはロンからスキャバーズを受け取ると空中に放り投げ、魔法をかけた。するとスキャバーズは小太りの人間になった。イーニアたちは息を飲む。

 

「これがこいつの正体さ。ピーター・ペティグリュー。――僕はハリーから没収した地図でお前の名前を見つけた。死んだはずの!!お前の名前を!!」

 

「おお、シ、シリウス……それにリーマスも。」

 

 まるで今気が付いたかのような言い方をするペティグリュー。

 それに怒りを露わにしてペティグリューに問答を始めるブラックとルーピン。イーニアはそれを聞きながらスネイプの方を見る。眉間にしわがよりとても不機嫌そうだった。問答が終わると命乞いをするペティグリュー。2人はそれ許すことなく今にも殺しそうな勢いだった。スネイプは殺るなら早く殺れと言わんばかりの顔をしていたが、ハリーがそれを止めた。

 

「甘いな。」

 

 スネイプはその行動を見てボソッと呟く。そしてペティグリューを連れて城へ行くことになる。ハリーとブラックでロンを担ぎ、ハーマイオニーとルーピンでペティグリューを連行。座り込んだイーニアを見てスネイプが失神呪文をうけたなら少し休ませる必要があるといい、休憩後、向かうことになった。

 

「お前たちが犯罪者でないことは理解しましたが、ブラック。お前はホグワーツに侵入し、備品を壊した。ルーピン、君は生徒に失神呪文を使った。その事は言わせてもらいますぞ。――グレンジャー、妙な動きをしたら3人とも容赦はしなくてよろしい。」

 

 部屋を出ていくルーピンたちに釘を刺すスネイプ。ルーピンは苦笑いしつつも、仕方ないと言う顔もしていた。残され静かになる2人だったがスネイプが口を開く。

 

「毎度毎度、お前たちは何故、面倒事の中心にいるのか。」

 

 呆れた顔でため息を吐くスネイプは何処か面倒見のいい父親のように見えイーニアはくすくすと笑いだした。

 

「なにがおかしい。」

 

「いえ何でもないです。――それよりスネイプ先生は何故ここに来れたのですか?」

 

「それは――。」

 

 答えようとし、何かを思い出したような顔をしたスネイプ。口を再度開こうとすると遠吠えが聞こえてくる。それを聞きスネイプは立ち上がる。

 

「シュツベル、ルーピンは人狼だ。吾輩はそれを抑える薬を奴に渡すために奴を探していた。奴は今夜薬を飲んでいない。お前は後から来い。」

 

 要点だけ伝えるとスネイプはすごい速さで駆けて行った。ルーピンが人狼。そうなるといくらスネイプでも大変だろうと判断したイーニアは痺れる体に鞭を打ちながらスネイプの後を追った。

 

 暴れ柳の洞から出るとスネイプが狼になったルーピンに吹き飛ばされていた。ルーピンはそのままハリーたちを襲おうとする。イーニアは物体加速魔法を自分にかけるとそのまま人狼に体当たりをした。ルーピンは怯み、後ろに下がる。スネイプを見ると頭から出血をし、気絶していた。

 

「ハーマイオニー!!スネイプ先生の治療を!!」

 

 出血量が多いと判断したイーニアはすぐに治療するようにハーマイオニーに指示する。再び接近するルーピン。イーニアは剣を生成すると、爪をそれで受け止めた。しかし押し倒される。

 

「い…ッ…んッ……!!」

 

 顔がすぐそこにあり今にも噛まれそうになるイーニア。ハリーが横から失神呪文をかけるがイーニアの上から退いただけだった。

 

「はっ……はっ…ハリー、ありがとう。」

 

 限界が近いイーニアだったがルーピンの後ろから、黒犬になったブラックが噛みつきルーピンがブラックを退かそうとする。ブラックはふり払われ、その隙を狙い懐に潜り込むとを拳に当てた。

 

 中国武術に発勁と言う技術が存在する。「発生させた運動量を的確に伝える」というもので、火事場の底力ではなく、自分の意志で打ち込む全力の一撃。しかし成長途中のイーニアでは運動量を正しく伝えることができてもそもそもの運動量が少ない。そこで身体強化魔法と物体加速魔法、加重魔法、ポンデサス(重量増加)を使い、運動量を増やす。

 

 体が痺れ、踏ん張り切れないイーニアだったが渾身の力を込めて打ち込んだ。

 バンッ!!と大きな音が鳴りルーピンが大きく仰け反った。しかし倒れるどころか膝を付く事すら無く、体勢を元に戻す。

 最後の一撃に力を出し切り、膝をついてしまったイーニアにルーピンが襲おうとすると、遠くから遠吠えが聞こえてきた。それにルーピンは反応し、森へ駆けて行く。ブラックもそれを追う。イーニアが制止する暇もなく、ハリーもそれを追いかけて行ってしまった。膝をついてしまっているイーニアにハリーを追いかける体力はない。それどころか立ち上がるのも辛かった。

 

 

―――――――――

 

 

 その後、ハーマイオニーが他の教師を呼び、スネイプとロンを運んだ。ルーピンは森を散歩していたノーバートに挑んだらしく、押さえつけられているところをサーベイとロイに見つけられ、満身創痍だったので簡単に捕まった。

 捕まえた後、大きな光が見え、吸魂鬼が逃げた始めたので光の方へと行くとハリーとブラックが倒れていたので、人を呼び、ハリーは医務室、ブラックは塔のてっぺんに幽閉され、ちょうど訪れていたファッジが連行していくこととなった。

 ハリーが目を覚まし、ブラックの無実を訴えたが誰も信じてくれなく、大人の2人は話ができる状態ではない。

 

「ペティグリューを逃がした今、あの人の無実を証明する方法は0に近い…。」

 

 ロンが寝かされているベットに腰を掛けているイーニアが言う。ハリーが悔しそうに、悲しそうに言う。

 

「ブラックは……、シリウスは、ぼくに名前を付けてくれた人なんだ。……ぼくの……家族なんだ。」

 

 重い空気が医務室に立ち込める。今は何もできない。それは4人がよくわかっていた。4人が何もできないことに絶望していると、医務室の扉が開きダンブルドアが入ってきた。

 

「今しがた、ブラックと話してきた。君たちと同じようなことを言っておったよ。――じゃがそれを証明するものがない。ルーピン先生やスネイプ先生が起きれば、それについて何か語ってくれるかもしれんがそこまで待ってくれはしないじゃろう。――つまり必要なのは時間じゃ。」

 

 ハーマイオニーが息を飲むのがわかった。

 

「規則はわかっておるな?見られてはならんぞ。――ああ、扉には鍵をかけておく。1回、まわすんじゃよ。」

 

 ハーマイオニー以外はダンブルドアの意味の分からない言葉に頭を捻らせていた。

 

「幸運を。」

 

 ダンブルドアがウインクをすると扉を閉めた。

 

「足を怪我してるからロンは置いていくわ。」

 

 ハーマイオニーがそういうと胸元からネックレスを取り出し、自分とハリー、イーニアの首にかける。

 

「逆転時計?」

 

 話しに聞いていたイーニアがハーマイオニー問うと肯く。逆転時計を設定し動かし始めると風景が巻き戻っていった。そして安定するとハーマイオニーはハリーたちの首から鎖を外す。

 

「1回まわしたから1時間前ね。――1時間前はどこにいたかしら?」

 

「叫びの屋敷から出てくるところじゃない?」

 

「急ぎましょう!」

 

「ちょっと、どういうこと!?」

 

 混乱したように言うハリーの手を取り2人は駈け出す。

 

「時間がないから移動しながら話すわ。」

 

 逆転時計の説明をしながら暴れ柳の近くに着くと、イーニアがルーピンに一撃を当て、しかし効果はなく襲われそうになっているところだった。咄嗟にハーマイオニーが狼の遠吠えのマネをする。するとルーピンはそれに反応し、こちらへ向かってきた。

 

「こっちきちゃったよ!?」

 

「これしかイーニアを助ける方法が浮かばなかったのよ!」

 

「とにかく逃げよう!!」

 

 3人は森の奥へ逃げだす。木の陰に隠れ息を潜める。近くにいるのを確認しつつ、ゆっくりと裏に回り逃げようとした瞬間、ハリーが枝を踏み音を立ててしまった。すごい勢いでこちらにやってくるルーピン。イーニアは出会い頭にルーピンの顎に棍棒を当てた。軽く目を回したルーピンに1時間前の自分がやったようにもう一度、拳を胸に当てる。

 

「今度は痺れとかもない、ちゃんとした技。1日に2回も受けるなんて災難だね。ルーピン先生。」

 

 ドンッ!!と大きな音が鳴りルーピンの身体が宙に浮いた。そしてそのまま受け身も取らず地面に倒れたがイーニアがハリーたちの元へ戻ろうとすると再度起き上がる。

 

「っ!!…ならもう一撃…――。」

 

 イーニアが再び接近し、攻撃しようとした瞬間、上からノーバートがすごい勢いで来た。

 

「ノーバート!?」

 

 ノーバートはルーピンを踏みつぶし、そのまま頭を食べようとする。

 

「駄目!!駄目だよ!!ノーバート!!」

 

 イーニアがそれを止めるとルーピンを押さえつけたままイーニアの方を見た。ルーピンは踏みつぶされ、気を失っている。

 

「危なかった…。これは食べちゃ駄目よ。ノーバート。」

 

 イーニアに撫でられ嬉しそうなノーバート。撫でていると少し遠くからサーベイとロイの声が聞こえてきた。

 

「ノーバート、そのまま押さえつけてて。ロイたちが来たらロイたちの指示に従ってね。」

 

 ノーバートにそう告げるとイーニアはハリーたちと駈け出した。

 

「ルーピン先生、今日は厄日ね。」

 

 同情したように言うハーマイオニーの言葉に2人は少し笑った。湖の近く着くと吸魂鬼からブラックを守ろうとしているハリーが見えた。ハリーは自分を助けてくれるモノが今に来ると言っていたがいつまでも訪れず、ハッとなり飛び出した。イーニアもそれに続く。ハリーは杖を構えるとイーニアと同時に守護霊の呪文を唱えた。

 

「「エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!!」」

 

 ハリーの杖からは牡鹿が現れ吸魂鬼を蹴散らしていく。そこに居た吸魂鬼を牡鹿と狼で蹴散らすと光を見たロイ達がやってきたので姿を隠す。ロイ達はノーバートにルーピンを連れて他の人を連れてくるように指示し、ノーバートはそれに従いルーピンを足で掴み空へと飛んで行った。恐らくハグリッドの元へ行ったのだろう。イーニアたちも人が集まる前にその場を後にした。

 ブラックが連れていかれ、塔に幽閉された。あらかじめ塔に潜んでいたイーニアたちはダンブルドアがいなくなったことを確認するとブラックを檻から出す。

 

「ハリー?!どうやってここに!?」

 

「話は後、今は逃げよう。」

 

 驚くブラックにヒソヒソと話すハリー。イーニアは全員に浮遊魔法をかけると速すぎない速度でホグワーツの外れまでブラックを送る。

 

「今は貴方の無実を証明する方法がありません。ルーピン先生やスネイプ先生が意識を取り戻してもそれは変わらないでしょう。ですから今は逃げてください。」

 

「君たちはいったい…。」

 

「もう時間がないわ。ハリー。挨拶は短くね。」

 

 イーニアとハーマイオニーはそういうと少し離れ、周りに人がいないか警戒する。ハリーがブラックとの別れを済ませると駆け足で医務室に戻った。医務室へ行くとちょうどダンブルドアが扉を閉めたところだった。おどけた顔で何も知らんと言うダンブルドアに中に入るように言われ、医務室へ入る3人。

 

「ダンブルドア校長。明日お時間いただけますか?」

 

「よかろう。明日の午後、わしのところへ来るといい。」

 

 イーニアはどうしても聞きたいことができた為、ダンブルドアと約束を取り付ける。ロンに近づくと消えた3人が突然外から入ってきて完全に混乱していた。そんなロンに3人は笑いながら後で説明してあげると言った。

 

 

―――――――――――

 

 

 次の日の午後。指定された時間に逆転時計を持ったイーニアが校長室にいた。

 

「して要件は何かの?」

 

「逆転時計をお返しします、とハーマイオニーから。」

 

「うむ、確かに受け取ったぞ。」

 

「後は私の要件です。―――いったいそれ(逆転時計)はなんですか?」

 

「なに、とはどういう意味かね?」

 

「過去に戻れる、と聞くだけでは簡単ですがとても簡単なことではないはずです。……過去に戻っている私たちが起こしたと思われる事象にその時の私たちはあっている。つまり――。」

 

「……そうじゃ。過去は変えられるものではない。」

 

「しかし過去に戻ることができる。そんな代物、彼ら(・・)が黙っていないと思うんですが。」

 

「…………過去を変えることはできぬ。それは絶対じゃ。――しかしこれには可能性を、未来を変える力がある。」

 

「今回の、ブラックの件ですね?」

 

「いかにも。彼は死んでもおらんし、彼があの後、アズカバンに戻るなり逃げるなりは可能性の中の一つでしかない。」

 

「……捕まっていた(・・・・・・)ブラックを私たちは逃がした。」

 

「うむ。起きたことは変えることはできぬ。しかしこれから起きるであろうことに干渉はできる。それはもちろん、コレを使わずとも同じことじゃ。」

 

「……これは、逆転時計はどうするつもりなんです?」

 

「壊そうかと考えておる。これもあまり良いものでない。」

 

「そうですか。―――今日はお時間いただきありがとうございました。」

 

 イーニアは出された紅茶を飲みほし席を立った。ダンブルドアはそれを笑顔で見送る。

 その後、イーニアは学年末パーティーに参加し、ルーピンが退職することを聞いた。意識を取り戻したスネイプが真っ先に失神呪文のことをいったらしい。もちろん、直接の原因はそれではない。人狼となった自分が他人を襲ってしまったことをひどく後悔し、辞職を申し出たとハリーが話していた。

 スネイプはその後、ペティグリューのことを話し、ペティグリューは指名手配と言うことで名があげられることとなった。しかし現時点ではブラックの無実を証明できないのでブラックも変わらず指名手配犯である。

 

 

 学年末パーティーが終わり、家に帰る日。

 一件落着とまではいかなかったが、波乱万丈な1年の終わりを感じつつ汽車に乗ったイーニア。来期は少しでも慌ただしくないように願いつつ家に帰ると、イーニアの3年生としての1年に幕を閉じた。

 

 

 

 




フラグを立てるハーマイオニー。そしてフラグ回収。

スネイプが4人を守る姿、映画で狼と化したルーピンから全力でハリーたちを隠そうとしているスネイプを見て思いつきました。こういうのもありかなと。

発勁は完全に妄想。詳しくはありません。よくわかりません。

今回、逆転時計をどう扱うか、これにとても悩みましたが勝手な解釈で無理やり収めました。結構矛盾しているかもしれません。




結局シリウスがあまり登場できませんでしたが、これにてアズカバンの囚人編は終了です。

誤字脱字などございましたら、遠慮なくご報告ください。
感想お待ちしています。



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