戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない 作:imuka
独自解釈も存在しますがおかしなところはご指摘ください。
ではどうぞ。
3人は出会う
イーニア・シュツベルは今日も一人運動をしていた。
世界に存在する武術という武術を独学で学び、11歳の女の子では考えられない運動量を行っている。
そもそもなぜこんなにも運動しているのかというと今は亡き両親の影響である。
イーニアの両親、アリス・シュツベルとアイザック・シュツベルは若き頃はスリムで美男美女のカップルであったが結婚後、幸せ太りをした。それが不幸の始まりだった。
二人はお互いを愛しすぎていたため互いに太っていても相手のことを嫌いなることなく、その体型を認めていた。
結果二人はさらに太り、イーニアを生んでからも太っていった。
あまりにも太っていたため日常生活に支障をきたすと周りは心配したが二人は優秀な魔法使いだったためほとんどのことは魔法で片付いてしまっていた。
そんな魔法に頼り切った生活をしていたある日、不幸が訪れる。アリスとアイザックが脳卒中で倒れたのだ。原因はもちろん太りすぎ。
そしてそのまま二人仲良く帰らぬ人となった。小さい頃から頭の良かったイーニアは当時7歳にして両親の死因に嘆いていた。
もちろん悲しい気持ちも強くあった。しかし日頃からあれほど痩せろと言われていたにもかかわらず、痩せることのしなかった両親がそれを原因に亡くなるというのは悲しみを忘れさせるほど嘆かわしいものだった。
そして自分は絶対にならないと誓いその日から運動を欠かさない。
様々な本を世界中から集め、独学ではあるが学み行った。その中で武術というものに興味を持ち、今では部屋の半分が武術書で埋まっている。
稼ぎの良かった両親なので生活には困らないほどの財産はあったが7歳の子供がやっていけるわけもなく一週間に一回アリスの姉、イーニアにとって伯母にあたるアリシス・コーランドが面倒を見に来ていた。
現在はイーニアが一人でほとんどできるほどまで成長したため月に一回様子を見に来ている。
そんなイーニアが日課の運動+αを終え、最後の型を取って休憩に入ろうとするとパチパチと拍手をもらった。いつの間にかアリシスが煙草を吸いながらデッキに腰かけている。
アリシスは長身のモデル体型でアリス同様10人中9人が振り返るほどの美人だ。魔法使いとしてもとても優秀であるがアリシスは現在探偵をやっている。
「いつ見てもすばらしいわ。独学とは思えないほどに。」
「ありがと。そしていらっしゃい。」
「お邪魔してるわ。本当にそういうところはアリスそっくりよね。」
「そうかな?」
「そうよ。あの子も何でもできるタイプだったわ。小さい頃から。」
「そのお母さんがあの堕落か…人生なにがあるかわからないね。」
「堕落だったかはその人次第よ。少なくともあの子は幸せに生活していたし、死に顔も苦痛ではなかったわ。アリスが満足だったなら私はなにも言わない。」
「お祖母ちゃんもそうだったけどそう言うからお母さん痩せなかった気がする。」
プクーっと頬を膨らませ少女らしい仕草をするイーニアにアリシスは笑いながら頭を撫でてやった。
「そうむくれないで。子供を置いて逝ってしまったのは問題あることだけど別に貴女を蔑ろにしていたわけじゃないわよ?」
「それは十分わかってる。―――とシャワー浴びてくるね。」
自身が汗臭いことに気が付いたイーニアは少し早足で浴室へ向かった。
アリシスも煙草の火を消し家に入る。いつものように片付いているリビングに行きソファーに座った。
家族三人で暮らしていた家に今は一人のイーニア。本人は大丈夫だと言い張るが彼女はまだ11歳。本来ならアリシスが引き取ることもできたはずだったが自身の職業が職業である以上面倒が見きれないのは明白だった。
もちろんアリスやアイザックの友人たちも引き取っても構わないと言ってくれたが、イーニアが自らこの家に残ると言い、今に至る。
「もっと見てあげなきゃいけなかったはずなのにね―――。」
アリシスの独り言が静かなリビングに響いた。それに答えるものはいない。憂えているとパタパタと歩いてくる音が聞こえた。
「ふぃぃ。スッキリ――ん?どうかした?」
「いいえ。なんでもないわ。」
アリシスの様子をおかしく感じたイーニアは質問を投げかけるがアリシスはいつもの表情をする。
「そう?ならいいんだけど。――お昼食べてないよね?何食べたい?」
「たまには私が作るわ。イーニアは座ってていいわよ」
「やった!アリシスの久しぶりの手料理だね!楽しみ!」
イーニアは今日一番の笑顔を見せアリシスに抱きつく。
「こらこら、抱きつかれちゃ料理できないわ。」
そう言いつつもアリシスもイーニアをしっかりと抱きしめ返す。
"えへへ、ごめんごめん"と舌を出し笑いながらイーニアが離れるとキッチンに向かった。
アリシスが料理をしている間、読書をしようと決めたイーニアは自室からと父親が使っていた書斎から武術と魔法の本を複数持ってきてリビングで読み始める。
するとしばらくして、家の呼び鈴が鳴りイーニアが玄関へ向う。
「はーい。どちらさまですか?」
玄関の扉を開けるとそこには老人の姿があった。老人は微笑みながらイーニアを見る。
「ほっほっほ。大きくなったの。」
「……んー。どっかでお会いしたとは思いますがどちらさまです?」
どこか覚えのある顔に脳内検索をしたが思い出せず、失礼を承知で質問した。
「ダンブルドア!?ダンブルドア先生!?」
玄関から戻ってこないイーニアを心配し、様子を見に来たアリシスが後ろで驚きの声を上げる。
「アリシス、君も息災でなによりじゃ。」
「ダンブルドア…?―――――あ!ホグワーツの校長先生!?」
「うむ。ご両親の葬式以来じゃな。イーニア。」
突然の登場に驚いている二人を満足そうに笑うダンブルドア。二人は動揺しながらも家に招き入れた。
「ご飯時に押しかけて悪いの。」
「いえ。大丈夫です。なんなら食べていきますか?」
「うれしいお誘いじゃが次の予定もあるのでな。また今度ごちそうになろう」
「そうですか。――ご用件は?」
「なに、これを渡しにきたんじゃよ」
そう言ってイーニアに一つの手紙を渡す。中身を確認するとホグワーツの入学許可証だった。
「何かの手違いで送られていなくての。せっかくだったので用事ついでに様子を見に来たというわけじゃ。――?なんじゃ?二人とも変な顔をして。」
二人は入学許可証を見るまで今年入学だということを完全に忘れていた。
コーランド家には未成年が魔法使用時に出る臭いを出す魔法を消す魔法がある。もちろんそれは家の秘密とされていたが、どこでどうみつけたのかイーニアが発見してしまう。
もちろん並の魔法使いや熟練者でもわからない内容だったが、さすがというべきか優秀な両親を持つ子供。すぐに解読してしまい使用してしまった。
それ以来彼女は自分で研究をはじめた為ホグワーツのことをすっかり忘れていた。アリシスも普通に魔法を使うイーニアを見ていた為同様に失念していた。
二人には内心冷や汗をかきながら"筋トレが楽しくてすっかり忘れていました"などと適当に言い訳をした。
「ならば受けるということでよろしいかな?」
「はい。もちろん。」
「そうかそうか。入学式を楽しみしておるよ。その時また会おう。」
そういうとダンブルドアは立ち上がり帰っていた。
ダンブルドアを見送った後、二人は疲れたようにソファーに寄りかかる。
「危なかったー。すっかり忘れてた、ホグワーツ。」
「そうね。学校のこと忘れるなんて二人して呆けてるわね。」
「明日にでもダイゴアン横丁に行かなきゃ。」
「明日ならまだオフだから付き合うわよ。」
「一人でも行けるけど……わかった。お願いね。そのあと普通の買い物もしよ?」
「ええもちろん。」
二人はソファーから立ち上がり、お昼を食べることにした。
* * *
ダイアゴン横丁でホグワーツで必要なモノの買い物を済ませたイーニアたちはそれ以外の買い物を楽しんでいた。
横丁をうろうろしていると知っている顔がありイーニアはそこに近づく。
「久しぶりね。ドラコ。」
「げっ。イーニア。」
イーニアの姿を見るなり嫌そうな顔をし、半歩後ろに下がる。
「げっ、とはずいぶんなあいさつじゃない。それが3か月ぶりに会った友人に対する言葉?」
「口うるさいお前が悪い。」
「いつまでも凝り固まった考えでいる君もどうかと思うよ?――ところでそちら様は?」
「ハッ…余計なお世話だ。――彼はハリー・ポッターだよ。」
「へぇ!君があのハリーね!――初めまして。私はイーニア・シュツベル。」
イーニアが手を差し伸べるとハリーも手を差し出し握手を交わす。
「ハリー・ポッターです。よろしく、シュツベルさん。」
「イーニアでいいよ。ごめんね、ドラコうるさかったでしょ。」
その質問にハリーはどう答えていいか迷っていたがイーニアは"彼のことは気にしないで、いつものことだから"と微笑みかける。
「失礼な!僕は魔法界に慣れていない彼に色々と教えてあげようと――。」
「君の凝り固まった考えを押し付けるもんじゃないよ。見たところハリーは――っとと馴れ馴れしい?」
「ううん。ハリーでいいよ。」
「そっか。よかった。ハリーは自分の考えをしっかり持っているようだし、100人いれば100個の考え方あるって前から言ってるでしょ?無理に考えを押し付けないの。君の器の小さいところだよ?」
「うるさい!君は僕の母親か!」
「同い年の子供なんて持ちたくないなー。しかしハリー、君細いね。ちゃんと食べてる?」
濁したように話していたがどうやらハリーの生活はとてもいいものではないようだった。それを聞いたイーニアはホットドック屋でホットドックを3つ買ってくるとハリーとドラコに渡す。
「3人で食べよう。」
ドラコは何も言わずにそれを受け取り食べ始める。ハリーはどうしていいかわからず困っていた。
「ポッター、ひとついいことを教えてやる。この女はこうなったら絶対引かないから食べろ。特に食事関しては。」
「魔法使いでもあってもなくても体が健康じゃなきゃ生きてけないの。だから食事はとても大切。ハリーは年齢の割に小さいから食べれるものは食べるべきね。もちろん同情とかじゃないよ?お近づきの印。おごりだから気にせず召し上がれ。」
「あ、ありがとう。いただきます。」
ハリーが食べ始めるとイーニアは満足そうに微笑み自分の分を食べ始める。
3人が仲良くホットドックを食べていると商品を見ていたアリシスが店から出てきて近づいてきた。
「あら、ドラ坊じゃないの。久しぶりね。――イーニア私の分は?」
「いつになったらその呼び方をやめてくれるんですか?」
「半分上げるから我慢して。」
「ドラ坊が一人前になるまでよ。――仕方ないわね。」
そこまで話してようやくハリーに気が付く。
「…ハリー・ポッターじゃない。そっか、イーニアと同い年だったわね。」
「アリシスはハリーを知ってるの?」
「ええ。まあ、職業柄ね。――初めましてハリー。イーニアの伯母のアリシス・コーランドです。」
イーニアの時と同じく手を出され、慌てたハリーは持っていたホットドックを落としそうになったが落ちそうになったホットドックをドラコがとりハリーに突き返した。
「相変わらず素直じゃないわねー。ドラ坊は。ごめんなさい、ハリー。この子不器用なのよ。トゲトゲしているし家自慢とかするけど邪険に扱わないであげて。」
イーニアやアリシスと話すうちに、ハリーは二人で会話していた時に感じていた嫌な感じをドラコから感じなくなっていた。彼もまたどこにでもいる11歳の子供なのだ。そう考えたらドラコのことを受け入れることができた。有名な家柄的に大変なこともたくさんあるだろう。
「マル…いや、ドラコ。ホットドックありがとう。」
「…ッ!!!い、いきなり名前で呼ぶな!」
「駄目かな?」
「…!い、いや。好きにしろ。ハリー。」
イーニアがそうなようにマルフォイ家の子息ではなく自分を、ドラコという存在を見ている視線を感じたドラコはそれに答えるようにハリーを名前で呼び返した。ハリーは名前で呼ばれたことを嬉しそうな顔をし、ドラコは耳を赤くしていた。
そんな光景をみてイーニアがニヤニヤしていると一人の大男が近づいてくる。
「またせたな、ハリー。」
アリシスが大男を見ると知った顔、ルビウス・ハグリッドがそこにいた
「あれ?ハグリッドじゃない。なんでここに?ついに解雇されちゃった?」
「おお、アリシスか!久しぶりだな。―今日はハリーの付き添いだ。」
少しふざけた風に声をかけたアリシスに特に怒る素振りもせず答える。
「この時期暇な先生なんていないものね」
「ああ、皆あっち行ったりこっち行ったりだ。」
「相変わらず皆大変ね。――イーニアとドラ坊は初めてかしら?こちらルビウス・ハグリッド。ホグワーツの禁じられた森の番人をしているわ。」
イーニアとドラコは紹介され軽く会釈をする。ガサツな感じをドラコはあまりよく思わなかったようで少し顔に出ていた。ハグリットはそれに特に気が付いた様子もなくハリーに梟を渡し、今日はこれで帰ることを告げる。
ハリーとドラコ、イーニアは9月にまた会うことを約束し3人は別れた。
脳みそまで筋肉な主人公ってわけじゃありません。
魔法だって使います。ただ頼りすぎないってだけです。
程よく筋肉がついているんです。筋肉モリモリもそれはそれで面白いかもしれませんが…w
ドラコが全然違うキャラになってしまいましたが、これはこれでいいと思ってます。
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