戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない   作:imuka

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短めですが区切りがよかったので。


では、どうぞ。


私の想いと笑顔

 

 

 泣きつかれたイーニアは、そのままハーマイオニーに寄りかかって寝てしまい、起きたのは日が暮れはじめてからだった。起きるとドラコは居らずイーニアが寝てから寮に戻ったという。

 

「ごめん。ハーマイオニー。寄りかかったまま寝ちゃって。」

 

「大丈夫よ。つらい体勢じゃなかったわ。」

 

 イーニアが謝るとハーマイオニーは笑顔でそう返した。

 ノーバートを小屋に戻すと大広間でパーティーに参加し、寮へと戻ろうと階段を上っていくと太った婦人の前で人だかりができていた。

 

「どうしたの?」

 

 前にいたクラスメイトに事情を聞くと太った婦人の絵はめった切りにされ、婦人がいないらしい。それを聞き驚いていると後ろからダンブルドアがやってくる。ダンブルドアは夫人を探すように言う。すると婦人は5階の風景画にいた。ダンブルドアに犯人を聞くとシリウス・ブラックがやったと言う。その名前を聞いたイーニアはその存在を思い出した。

 

「周り見えてなかったな…。」

 

 ぼそっと呟いたイーニアの言葉は生徒たちの騒ぎ声でかき消された。その日は全校生徒、大広間で寝ることになった。眠くなかったイーニアは生徒たちを守るために座っていたマクゴナガルと今日あったことを話しつつ、まだ魔法を使うことができないことを報告すると寝れるかわからないが横になった。

 その日、総力を挙げてシリウス・ブラックを探したが見つかることはなかった。

 

 

 シリウス・ブラック侵入騒動が少し落ち着いた頃、ルーピンの授業にスネイプが現れた。

 

「ルーピン先生は体調を崩されたので、吾輩が授業をする。――286ページを開きたまえ。」

 

 その後、スネイプは人狼について授業を行った。

 

「人狼はその姿となると理性はなく見るものすべてを襲う。魔法が効きづらく失神呪文などまず効くことはない。奴らを殺すには人から狼になる瞬間が適している。満月を見ても変わるのに時間がかかる。その隙を狙い心臓を打ち抜くのだ。狼となったらまず、殺すのは難しいだろう。奴らは人の何倍もの力を持つ。もう一度言う。奴らに理性はない。狼になる前に殺すのだ。」

 

 人狼の特性、危険性、対処法、まるで人狼が嫌いと言わんばかりの言い方で、殺し方を説明されたときは、皆引いた。

 

 

* * *

 

 

 月日が流れ、豪雨の中のハッフルパフとのクィディッチ。雨風だけではなく、雷もすごいというのに試合を行うという。イーニアは皆頭がおかしいんじゃないかと思ったりしていた。それでもイーニアはハーマイオニーたちと一生懸命声援を送る。ハリーたちはスニッチを見つけたらしく、上空へ上がっていき雲の中へと入っていった。どうなっているかは見えない。

 

 突然、汽車の時に感じた寒気が襲ってきた。吸魂鬼が来た、そう直感でわかった。上空を見上げるとハリーが落下してきている。それを追うように吸魂鬼が何十体も降りてきた。会場の声援が悲鳴に変わる。イーニアは守護霊の呪文を唱えようと杖を取り出したが、魔法がまだ使えないことを思い出す。

 落下するハリーがゆっくりに見える。落下しているハリーを助け、吸魂鬼を追い払わなければいけない。しかし手が震える。記憶が頭を占める。

 

――それでも――。

 

「――後悔したくないから!!――失いたくないから!!…だから!!だから!!力を貸して!!――ナイ!!」

 

 大切な友人を助けるため、亡き友人の名前を叫ぶイーニア。

 

エクスペクト・パトローナム(守護霊よ来たれ)!!!!!!」

 

 イーニアの杖が強く輝き、狼が現れた。狼は落下するハリーを背中にうまく乗せ、地上に下ろすと次々と吸魂鬼を撃退していく。最終的に100体以上いた吸魂鬼は1体残らず撃退された。吸魂鬼がいないのを確認すると狼が消え、イーニアはペタンと座り込んでしまう。

 手も足も何もかも震えている。泣きそうな顔をしつつ、隣にいるロンとハーマイオニーを見る。

 

「よかった……できた。できたよ。……魔法ちゃんと使えた。」

 

 体が震えで動かないイーニアを抱きしめるハーマイオニー。イーニアの体の震えが止まるとハーマイオニーの手を借りて立ち上がりハリーの様子を見に向かった。

 

 

 ハリーを見に行くと付き添っていたマクゴナガルに"魔法、使えるようになりましたね"と笑顔で言われた後、頭を撫でられた。ハリーは命に別状はないらしい。気絶して寝ているハリーに近づく3人。手を握ると握り返してきた。

 

「ハリー?」

 

「……見てたよ、君が魔法、使うところ。」

 

「うん。できたよ。」

 

 微笑むハリーはそのまま起き上がる。

 

「大丈夫?」

 

「うん、問題ないよ。」

 

 ハーマイオニーがハリーに聞くとしっかりと返事をするハリー。そこにフレッドとジョージがやってきた。

 

「お、起きたかハリー。気分はどうだ?」

 

「サイコ―だよ。」

 

「最高なところ悪いが残念な話がある。」

 

「君の箒だが…。」

 

「「暴れ柳に当たって壊れた。」」

 

 声を揃えて言い、折れた箒を見せる。ハリーはそれを受け取り、触ると少し悲しそうな顔をしたが、仕方ないか、という顔に変わった。

 

「あまり落ち込まないんだな。」

 

「うん。確かに残念だし、ウッドには申し訳ないけど、今はそれよりうれしいことがあったから。」

 

 ハリーはそういうとイーニアを見る。皆の視線が集まり少し困るイーニア。

 

「そういえばそうだな。」

 

「ああ、我らの姫の完全復活だ!」

 

「ちょっとまって。私を姫なんて呼んでるの?」

 

「今考えた。」

 

「それとも大将の方がいいか?」

 

「もっと嫌。」

 

 医務室に笑いが起きる。イーニアもつられて笑う。

 

「やっと、ちゃんと笑ったね。」

 

 ハリーの言葉に首を傾げるイーニア。

 

「話を聞いた日から作り笑いはやめてたけど、やっぱりちゃんと笑えてなかったから。」

 

「そうだな、突っ込みのキレもいまいちだった。」

 

「そうそう。心ここ在らずって感じだったし。」

 

「そう…かな?でも――そうだったなら皆のおかげだよ。魔法が使えたのも、笑顔になれたのも皆が居てくれたから。皆が居るから勇気が持てるの。」

 

 イーニアはそういうとハリーたちが初めて見る最大の笑顔で笑った。

 その笑顔に男女問わず見とれ、そして笑い合う。マダム・ポンフリーに怒られるまで皆で笑う。そんな笑い声の中

 

 

――いい笑顔。

 

 

 イーニアの耳には、確かにそう聞こえていた。

 

 

 

 

 




イーニア、完全復活!!

事が起きた次の話で魔法が使えるようになるのはちょっと展開早いかなっと思いましたが物語的には結構時間が経っているのでよしとしました。


やっとシリウスの話が出たと思ったらまた、存在が消えそうです(汗


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