戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない 作:imuka
ではどうぞ。
吸魂鬼と学校の始まり
イーニアが秘密の部屋での戦いで感じたことは体力不足や反射神経がまだ遅いこと。それに有効となる魔法の知識が足りないことだった。不意打ちとは言え正面からの尻尾攻撃は避けれたはず。
これらを痛感したイーニアは宿題を1日で終わらせ、残りの時間をトレーニングと魔法研究に熱を注いだ。今回の休みはアリシスが多くいてくれたので組手、魔法研究の手伝いをしてもらっていた。
守護霊の呪文を攻撃に使えないかと研究していたある日。アリシスが家に訪れ、ハリーが魔法を使ったことを伝えらえる。
「ヤンチャするわね、彼。伯母さんを風船にしたそうよ。」
どこから入手してきたのか写真を取り出しクスクスと笑うアリシス。イーニアも写真を見たが十分笑えるものだった。
「ま、お咎めは無しらしいわ。調べたらそりゃ怒ってもしょうがない内容だったそうよ。」
「へー。――で、本題はそれじゃないんでしょ?」
「ああ、ごめんごめん。新しい仕事が入ってね。イーニアの休み中に戻れなさそうなの。」
「それで、ハリーのいる漏れ鍋に行って来たらどうかってこと?」
「ええ。もちろん家に居ても構わないけど、1人でいるくらいなら友達と一緒にいたほうがいいでしょう?」
「そうだね。休みもあと一週間だし、行こうかな。」
その言葉にアリシス満足そうに肯く。
「ああ、漏れ鍋に行くのは姿現わし使ってもいいわよ。私が許す!」
と去り際に残してアリシスは仕事へ向かった。
この夏休み、空間系の魔法を重点的に研究していたイーニアにとって姿現わしは朝飯前の魔法だ。保護者の許可も下りたので荷造りを始めるイーニア。
その日の夜。漏れ鍋がまだ営業している時間に荷造りを終えたイーニアは姿現わしを使い、漏れ鍋近くへ飛んだ。
「うん。問題なし。」
無事飛べたことを確認すると漏れ鍋に入っていく。開いている部屋があるかどうかを聞くとちょうど一部屋開いており、そこの部屋を借りることにする。
カウンターにいた50代くらいの魔女にハリーの所在を聞くと、2階の階段前の部屋に泊まっていることを教えてくれた。荷物を部屋に置いたイーニアは少し遅めの時間であったが、ハリーがいるはずの部屋の扉をノックする。
「どちらさまですか?」
「私だよ。ハリー。」
「イーニア!?」
ドタドタっと音立てて扉を開けるハリー。
「こんばんわ。ハリー。」
「どうしてここに!?」
「色々話を聞いてね。入ってもいい?」
「う、うん。」
ハリーに部屋に入れてもらい、椅子を出されるとそこに座る。
「伯母さんを風船にしたんだって?よくそんなこと思いついたね。」
「え”なんで知ってるの?」
午前中の出来事をその日に情報を仕入れ、訪れたイーニアに驚くハリー。イーニアはそんな驚いた顔を見てクスクスと笑う。
「アリシスが教えてくれたの。どこから情報を持ってきてるかは知らないけどね。」
「君の伯母さんって何者?」
驚きで口が閉じないハリーにイーニアは笑いながら"職業は探偵"と、だけ返した。
「ハリーは残りの夏休み、ここにいるんだよね?」
「うん、そのつもり。イーニアも?」
「せっかくだしね。準備も万端。いつでもホグワーツに行けます。」
胸を張り、わざとらしく自慢げに言うとハリーはそれを見て笑い、つられてイーニアも笑った。
それから2人は魔法の勉強や外へ買い物に出かけたりと残りの夏休みを満喫していた。
休み最後の日にハーマイオニーが漏れ鍋にやってきて合流、夕方にはウィーズリー一家も来るとのことで明日は濡れ鍋からキングズ・クロス駅に行くことなっている。
* * *
次の日、珍しく体調の良くなかったイーニアはキングズ・クロス駅に向かう最中もできる限り休みを取り、汽車に乗った後も毛布に包まり3人に休むことを告げ眠りについた。
汽車の止まる音が聞こえ、目を覚ますと明かりが消えていた。気温も下がってきて息が白い。3人を見るととても不安そうな顔をしていた。汽車が揺れる。
「何かが乗り込んだ?」
イーニアが目を覚ましたことに気が付いていなかった3人は少し驚きながらイーニアを見た。ハーマイオニーはイーニアに何か喋ろうとしたが、廊下になにかいることを察知したイーニアが口を塞ぐ。
黒いマントとローブを身に着けたナニカが自分たちのいるコンパートメントの入り口の前で止まった。細い指を出し、開ける仕草をすると触れてもいない扉が開く。何かを吸われるような感覚、冷気、そして実体がないような存在。そこまで思考が行くとようやく目の前にいるのが吸魂鬼だということにイーニアは気が付いた。
「
イーニアが守護霊の呪文を唱えると狼が現れ、吸魂鬼に噛みついた。吸魂鬼は身を翻し、外へと出ていく。
「あれ1匹だけじゃないはず。全部追い払って。」
イーニアが守護霊に告げると、狼は廊下を駆けていく。ロンやハーマイオニーは問題はなさそうだったが、ハリーは吸魂鬼の影響を受けたらしく、顔色が悪かった。
明かりが戻り、狼がイーニアの元へと戻ると、それに続き1人の男性が入ってくる。
「この守護霊は君が出したのか。」
「貴方は?」
男はリーマス・ルーピンと名乗り、今年度から闇の魔術に対する防衛術の教授を受け持つことを告げた。ルーピンは名乗ると、顔色の悪いハリーが視線に入ったらしくチョコレートを渡してくる。
「これを食べるといい。少し楽になる。」
そういうと他の生徒も見てこなければと言い残し去って行った。ハリーがもらったチョコレートを食べると見てわかるくらい顔色が良くなっていた。
汽車が動きだし、駅に着くと去年同様、セストラルのひく馬車で城へ向かう。
大広間に着き、珍しく食事前にダンブルドアが話を始めた。
「御馳走を前に一つだけ話しておこう。
――ホグワーツ特急での一件で、皆もわかっていると思うが、今年度、ホグワーツは魔法省の要請でアズカバンの看守である吸魂鬼を受け入れることになった。もちろん、奴らに君たちとの接触は禁じた。
しかし奴らは入り口という入り口を塞いでおる。奴らの目を欺くことはできぬ。生半端な魔法も効かぬし、言い訳が通じる相手でもない。不審なことを行い、あの者たちが皆を襲う口実を与えるでないぞ。誰一人、吸魂鬼といざこざを起こすことのないよう気をつけるのじゃ。」
ダンブルドアはそこのことを話し終えると空気を入れ替えるように口調を変え、新任の先生を紹介した。
汽車であったリーマス・ルーピン。言っていた通り空席だった闇の魔術に対する防衛術の担当。そしてもう1人、シルバヌス・ケトルバーンの後任としてハグリッドが魔法生物飼育学の担当となった。イーニアたちは盛大な拍手をハグリッドに送る。そんなハグリッドは照れくさそうであったが、とても嬉しそうだった。食事後、直接ハグリッドにお祝いの言葉を送り、授業を楽しみにしていることを告げ、寮へと向かう。
体調が万全でないイーニアはトレーニングやハーマイオニーたちとの会話もそこそこにベットに潜り込み眠りについた。
探偵って職業はなんでもわかるんだ。すごーい(棒読み
アリシスは今後、ちょくちょく関わらせるつもりです。具体的にはヴォなんとかさんが出てくるときとかに。
イーニアが体調が悪かったのは伏線でもなんでもなく、女の子だからです。
そんなときもあります。
そういえば新刊出ましたね。これを機に全巻買おうかと考えてたりします。
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