戦いの基本は格闘だ。魔法や道具に頼ってはいけない   作:imuka

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皆様が私の書くドラコを好きになっているようでうれしいです。
主人公のイーニアもよろしくお願いします。



ではどうぞ。


蜘蛛

 何日か経ち、今日はクィディッチ。イーニアとロンはいつものようにハリーを控え室で応援し遅れてくるハーマイオニーと合流しようと観客席に行こうとするとマクゴナガルに呼び止められる。これから試合の選手たちも止められると試合は中断と言う話しになる。

 

「緊急事態です。試合は中止、寮へ戻りなさい。Mr.ポッターにMr.ウィーズリー、それにMs.シュツベルも来なさい。」

 

 マクゴナガルに連れられ医務室にへ行くとそこには石化したハーマイオニーが寝かされていた。その光景に思わず固まる3人。

 

「図書館の近くで見つかりました。手にはこれを。」

 

 そういうと手鏡を見せる。それを見たイーニアたちの顔が強張る。

 

「何か心当たりはありますか?」

 

 そう聞いてくるマクゴナガルに真面目な顔をしながらイーニアは聞いた。

 

「先生は今、生徒の間で噂になっている話は知っていますか?」

 

「バジリスクのことですか?」

 

「はい。ハーマイオニーは恐らく何か危険を察し、話通りに鏡越しにバジリスクを見たんじゃないでしょうか?」

 

「ではバジリスクがいる…と?」

 

「これ可能性論でしかありません。ですが1匹と2人目の犠牲者です。ホグワーツ的にも何かしなければいけないはず、でしたら話しておいた方がいいかと思いまして。」

 

 マクゴナガルは肯くと3人にひとまず寮に戻るように告げる。

 寮に戻ると机の上に置いてあったリドルの日記がなくなっている。しかもイーニアがかけた封印まで解かれていた。無いことを確認すると間違いなくあの日記は黒だと判断し、ハリーたちに日記のことと内容を伝える。

 

「私が封印、封印って言っても鍵をかけた簡易なものなんだけど、それが壊されてる。」

 

「それはどんな封印だったの?」

 

「一枚の布で巻いてあって開かないようにしといたの。開けるには42桁の英数字を入れなきゃいけない。」

 

「42桁…。」

 

 ロンがげぇと言った顔をした。

 

「本当はもっとわかってから話すつもりだったんだけど、ハーマイオニーが襲われたし、疑いをかけられたハリーは他人事じゃないから。」

 

 少し申し訳なさそうに話すイーニアにハリーたちは水臭いこと言うなと言わんばかりの顔をした。その後マクゴナガルがやってきて対応を話す。生徒の1人での行動、クラブ活動の禁止を告げる。イーニア達にとってはデメリットはあるもののチャンスではあった。

 

* * *

 

 イーニアたちは目くらまし術と透明マントを使いハグリッドの小屋へ訪れると扉をノックする。ハグリッドは少し驚きつつも迎えてくれた。

 

「お前さんたち!?寮から出るのは禁じられていたはずだ。」

 

「うん。わかってる。でもどうしてもハグリッドに聞きたいことがあってきたの。」

 

「俺にか?まあいい。中に入れ。」

 

「お邪魔します。」

 

 ハグリッドの小屋に入りマフラーを取ると大きめな椅子に座る。

 

「で、俺に聞きてぇってのは?」

 

「1943年に開いた秘密の部屋について知っていることをすべて話してほしいの。」

 

 イーニアの言葉にビクッとなると少し困った顔で見る。

 

「なんでそれを俺に聞く?」

 

「ある本でそれを知ったの。」

 

 イーニアは日記で見たこと聞いたことを隠さず話した。ハグリッドは少し考えると肯き答える。

 

「お前さんの話した内容は事実だ。――だが俺は秘密の部屋は開けてねぇしアラゴグも何もしてねぇ。」

 

「別にハグリッドを疑ってなんかいないよ。――それに蜘蛛、アラゴグだっけ?―に襲われた人間が五体満足の遺体として見つかることもないと思ってる。」

 

 イーニアは一呼吸置くと続ける。

 

「タイミングが良すぎるの。本が見つかったタイミングが。現在、秘密の部屋が開けられて、しかも過去に開かれたときの日記が見つかり剰え、当時犯人とされる人間がわかる内容なんて怪しすぎるよ。しかもそのあとにハーマイオニーが襲われて本もなくなってた。」

 

 そこまで話すと小屋の扉がノックされる。ハグリッドは3人に隠れるように無言で指示し3人で透明マントに入りさらに目くらまし術を使った。ハグリッドが扉を開けるとダンブルドアと40~50歳くらいの男性が入ってきた。

 

「コーネリウス・ファッジ魔法大臣…。」

 

 イーニアが2人にしか聞こえない声で言うとロンが魔法省のトップだと補足する。ファッジが話し始める。

 

「状況はあの時と同じだ。」

 

「ッ!!」

 

「ついてはハグリッド。君を重要参考人として連れて行かなければならない。暫定的な処置だ、情けない事だがね。」

 

 世間には知らされていないが人の口に戸は立てられぬとはよく言ったもので、ハグリッドが犯人だということが当時いた人間の間で噂が独り歩きしているのだろう。

 

「お、俺はアズカバンに行くんですかい?」

 

 顔を蒼白に染めたハグリッドが聞く。するとルシウス・マルフォイが入ってきた。

 

「なんであの人がここに…?」

 

 ルシウスは巻紙をひとつ取り出すとダンブルドアへ渡す。

 

「解任命令です。委員会の全ての合意によって決定されましたぞ、校長殿。」

 

「「「ッ!?」」」

 

 声が出そうになったがなんとかお互いの口を塞ぎ声を抑える3人。ハグリッドは解任命令を見て叫ぶ。

 

「ダンブルドア校長がいなくなっちまったら、誰がホグワーツを守るってぇんだ!!」

 

「いらんでしょう、被害を防げない校長など。」

 

 その言葉にハグリッドがルシウスに掴みかかろうとしたがダンブルドアがそれを止めた。

 

「よいのじゃ、ハグリッド。委員会がそう決めたなら、わしはそれに従おう。じゃが一つだけ覚えておくが良い。ホグワーツでは助けを求めた者にのみ、それが与えられる。」

 

 ダンブルドアはそう言い、こちらを見るとニコッと笑うとルシウスと共に出口へと向かう。ファッジもハグリッドに声をかけると出口へ向かう。

 

「ファングの餌を上げるやつがいないのは困るんですがね、あと蜘蛛も。ま、謎は追えばわかりますか。」

 

 突然よくわからないことを言うハグリッドにファッジは疑問を抱いたが、ハグリッドに続き小屋を後にした。4人が確実にいなくなったことを確認すると透明マントから出る。

 

「やっぱり蜘蛛追わなきゃいけないのね。」

 

 絶望した風に言うイーニア。

 

「ダンブルドア校長、こっち見て笑ったね。」

 

「ばれてたよ。間違いなく。」

 

 ハリーとロンは落ち込んでいるイーニアの肩を叩きながらそんな会話をしているとノーバートを連れたサーベイがやってきた。

 

「君たちどうしてここに!?寮を出ちゃいけないんじゃないのかい!?」

 

「サーベイこそどうしてここに?」

 

「ハグリッドが留守にするってことでファングを預かることになったんだ。――イーニアに会えなくなるとノーバートは拗ねるから君のところへ預けようかと。」

 

「そっか…。おいでノーバート。」

 

 サーベイの腕に乗っていたノーバートがイーニアの腕に飛び移る。

 

「サーベイ、僕たちがここにいたことは秘密でお願い!!」

 

 ハリーとロンが頭を下げると少し困惑しながらも承諾してくれた。3人はサーベイに寮へと戻ると嘘を吐きハグリッドの小屋から続いている蜘蛛の行列を辿り始める。

 

「あ、あのね。2人にお願いがあるの。」

 

 顔を引き攣らせながら言うイーニアに2人は心配しながら聞く。

 

「手を……握ってて…ほしい。」

 

 突然の提案に2人は少し顔を赤くする。

 

「…蜘蛛…嫌い…なの。」

 

 ハリーとロンはそれを聞いて少し笑ったがイーニアの女の子らしい一面に微笑むとイーニアを真ん中に両方から手を握った。

 禁じられた森を進み奥へ行けば行くほど蜘蛛が増えていく状況に半分泣き目になりながら何とかこらえているイーニア。穴を抜け開けたところへ出ると蜘蛛たちが途切れた。ノーバートが警戒している。

 

――誰だ?

 

 とても大きな、イーニアたちの2倍はあるサイズの蜘蛛が姿を現す。あまりの衝撃に強く手を握るイーニアに痛みを感じながらもハリーが話しかける。

 

「……君が、アラゴグかい?」

 

――いかにも。お前たちは誰だ。

 

「ハグリッドの友達のハリー。彼が危機なんだ。助力がほしい。」

 

――ハグリッドの…それを証明するものは?

 

「あ、あなたの名前を知っています。」

 

――お前は?

 

「イ、イーニア。こっちがロン。」

 

 半泣き状態だが震える声で答えるイーニア。ハリーが続けて質問をする。

 

「ハグリッドが濡れ衣をを着せられようとしているんだ。無実を証明するために、秘密の部屋の情報を集めています。何でも良いです。知っていることはありませんか?」

 

――わしらはその話を決してしない。ひとつわかるのはそこに潜むあれは筒を使って移動している。

 

「そう。ありがとう。僕らはその情報をもとにハグリッドの無実を証明する。」

 

――帰すと思っているのかね。

 

「ッ!!」

 

――久方ぶりの新鮮な肉だ。むざむざ我らが食卓に飛び込んで来おった夕食を、逃す手はなかろう。

 

 気が付くとハリーたちの周りにたくさんの蜘蛛がいた。自分たちの腰くらいのサイズの蜘蛛もいる。

 

――さらばだ。ハグリッドの友達。

 

 大きめの蜘蛛が飛びかかってくると手を放したイーニアが蹴り飛ばした。いつの間にか身体強化の魔法をかけている。

 

「「イーニア!?」」

 

 蜘蛛が嫌いと言い手を握ることを要求したイーニアが自ら手を放し蜘蛛を蹴った、それに疑問を持ったハリーとロンは顔を覗く。するとイーニアは目の焦点が定まっておらず顔面蒼白だった。

 

「そう。   襲ってきてる。 だから仕方ないの…。   ハグリッド   友達。  襲ってきてるから。だから   だから…。」

 

 ぶつぶつと呟き続けるイーニアは杖を構えた。次の瞬間、周りを囲んでいた蜘蛛たちが切り裂かれていく。

 

――何をした!?

 

 アラゴグの言葉に返事をせず、ただ歯をガタガタいわせ真っ青な顔をし震える手で杖を構えるイーニア。しかし蜘蛛たちが一定以上近づけはそのたびに切り裂かれ死んでいく。

 

――お前たちやめろ。――小僧たち、その小娘を連れていけ。

 

 切り裂くだけではなく森に火を点けそうな勢いのイーニアを見てアラゴグは蜘蛛たちを止めた。ハリーとロンはアラゴグに言われた通りイーニアを連れて行こうとする。

 

「イーニア。行こう。」

 

「このままじゃ   私 襲われ  嫌  こいつら 殺さなきゃ。」

 

「イーニア!!」

 

 杖を構えて動かないイーニアをハリーが強く呼ぶとイーニアはハリーと目を合わせると意識を失った。

 

――二度とその小娘をここに来させてくれるな。

 

 そう聞こえたがハリーたちはイーニアを抱えるとそれに返事をせず立ち去った。

 

 

 

 イーニアが目を覚ますとハグリッドの小屋の近くだった。ノーバートが額を舐めている。

 

「イーニア!よかった目が覚めたんだね!!」

 

 ハリーが顔を覗き込み声を上げる。それに反応し少し離れた場所にいたロンも近くに寄ってくる。

 

「良かった。このまま朝まで起きないかと思ったよ。」

 

「私…。」

 

「怖かっただろ?あそこまで怯えるならぼくたち2人で行けばよかった。」

 

「うん。ごめん。イーニア。」

 

 体を起こし、まだ回らない頭を回すとどうして自分が意識を失ったかを思い出した。

 

「う、ううん。日記のこととか私が知ってたから、私も行かなきゃ。――私こそごめんね。パニック起こして。」

 

「かなりやばい顔してたけど、覚えてるのかい?」

 

「蜘蛛が飛びかかってくるところまでは…あとは断片的に。」

 

 まだ恐怖が残っているのか青い顔をするイーニアにノーバートが頬擦りする。

 

「わわわっ…もう大丈夫だよ。心配してくれてありがと、ノーバート。」

 

 ハリーの手を取りイーニアは起き上がると寮へと戻ることにした。

 

 




簡易封印魔法
布でクルっと本を巻き結び目にかける。布自体も強化されて切れたり破けたりしなくなる。もちろん布でなくてもできます。入れるっと表現しましたが本の前で杖を振るイメージです。

蜘蛛を切り裂いたのはディフィンド(裂けよ)です。
ロンが蜘蛛に対してビビらないのは蜘蛛が苦手じゃない設定にしました。


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