瀟洒な召し使い   作:グランド・オブ・ミル

5 / 28
原作前、無印編・5

 

 

 

 

 

 

無数の星々が輝く漆黒の宇宙。ひとつの丸型の宇宙船がその闇を切り裂き飛んで行く。

 

私が惑星フリーザを出発してから大体6時間。今回の目的地であるドライヤ星が見えてきた。色は木星と似たり寄ったりの、惑星フリーザよりも小さい星だ。ドライヤ星は星が一つの国として成立しているような星だからこれくらい小さいほうがちょうどいいのだろう。

 

ドォーン!と音をたてて私の宇宙船がドライヤ星の荒野に着陸する。降りてみると宇宙船の周りには半径3メートル程のクレーターができていた。

 

「さて、まずはこの星の王にご挨拶と行きますか。」

 

私が電子脳からE-13回路に接続し、右目の「戦闘能力数値化装置」を起動させると南西の方向に無数の高い戦闘力が集まっていた。恐らくこれが反乱軍だろう。所変わって北東には一つの低い戦闘力を囲む、高いが反乱軍よりは少し見劣りするたくさんの戦闘力。こっちが国王軍か。

 

「では、行きますか。」

 

そう呟き、私はその場から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「お前がフリーザ軍から派遣されてきた兵士か?」

 

「はい、お初にお目にかかります。十六夜咲夜と申します。」

 

国王の城は、はっきり言って趣味の悪いものだった。いかにも金にものを言わせましたよと言わんばかりの金の装飾。しかも無駄にでかいし、外だけならまだしも城の中までキンキラキンだ。人の趣味にあまりとやかく言いたくないのだが、本当に趣味が悪い。東方の紅魔館の真っ赤なデザインも悪趣味だが、まだあっちのほうが好感を持てる。

 

そして私は今、これまた趣味の悪いシャンデリアがぶら下がる王の部屋にて玉座でふんぞり返るドライヤ王に礼をしている。私が自己紹介を終え、頭を上げると国王はふんっと不機嫌そうに鼻を鳴らした。

 

「フリーザめ、我が国から物資を大量に供給しているというのにこんな雑魚をよこしおって!」

 

なんともまあ礼儀のなってない王である。べジータ王ですらそのへんはちゃんとしているのだが。この世にべジータ王より失礼な王が存在したとは驚きである。まあ、パッと見てもふくよかな、悪く言えばデブな王だ。きっと甘やかされて育ったわがままおぼっちゃまなんだろう。

 

「まあ、せっかく来たのだ。ワシの夜の相手でもしてみるか?」

 

「申し訳ありません。私のこの身はフリーザ様に捧げております故、お断りさせていただきます。」

 

私の体を下碑た目で舐め回すように見て笑う国王の誘いを私は極力懇切丁寧に断る。仮にも革命が起きてるのに何考えてんだとぶん殴ってやりたい所だが、そこはフリーザ様の顔を立てるために根性で耐える。

 

「ふんっ!使えないうえに無礼なやつだ!反乱軍共は明日にこの城に到着するだろう。それまでに戦闘準備でも整えておけ!」

 

「承知しました。」

 

私は国王に軽く礼をして王の部屋を後にする。そのまま国王軍の兵士を観察しながら城を歩いてみたが、どいつもこいつも訓練不足なのが見てとれる。王の絶対的権力に甘えてきた結果なのだろう。だからこそこういう時に収集がつかなくなる。

 

城から出た私は再び右目の装置を起動させ、反乱軍の位置を確認する。そして私は王城から飛び立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

反乱軍を訪れた私は現在、剣や槍といった武器を向けられている。いきなり正体不明の存在が王城の方向からやってきたのだから当然の反応か。

 

「おまえ!何者だ!」

 

赤い髪で鎧を纏い、姫騎士という言葉がぴったりな女性が私に殺気を向けながら聞いてくる。恐らく彼女が反乱軍のリーダーなのだろう。一際戦闘力が高い。

 

「私はフリーザ軍所属の十六夜咲夜と申します。今回、国王からフリーザ軍への救援を受けましたので派遣されました。」

 

「なにっ!?フリーザだと!?……ちっ!国王め、そこまでするか……。」

 

私がフリーザの名前を出すと彼女は冷や汗をかいて驚く。フリーザの名は宇宙的に有名らしい。仲間とゆっくり私への対策を練りたい所だろうが、私はここへ来た目的を果たさなければならない。

 

「あなた達はなぜ反乱を起こそうと思ったのですか?」

 

「なぜ…だと?あれを見てみろ!!」

 

そう叫んだ彼女が指さしたほうを見ると医療班のテントらしきものがあった。彼女の先導されて中に入るとそこには病気で苦しむ子供達や、飢餓に苦しむ子供達にわずかなパンを与える反乱軍の姿があった。

 

「あの王は!国民を自分の都合のいい道具としてしか見ていない!こんなにも苦しむ子供達がいるのに!あいつはなんの救助もせず!私利私欲のためだけに権力を行使する!こんなことが許されるはずがないだろう!!」

 

……なるほど。典型的な革命である。悪の王の倒し、自由と平和の国を築こうとしているのか。

 

「この子達だけじゃない!このドライヤ星にはまだまだ苦しんでいる人が大勢いるんだ!これを見て何もしないわけにはいかないじゃないか!!」

 

そう叫ぶ彼女の目には信念が宿っている。私なんかでは読み取ることもできない強い、それでいて濁りのない信念が。彼女は本気だ。

 

ここで普通の人間は戦うのは良くないよとか、話し合いで解決しようなんて言うと思うが私は彼女を止めやしない。話し合いで解決するなら革命など起きやしないのだ。子供のケンカを例にあげると分かりやすいと思うが、話し合ってダメだったからケンカが始まるのだ。戦争も同じで、両国が話し合ってそれでもまとまらないからよし戦争だとなる。

 

とはいえ、私も鬼ではないので少しくらい彼女達に援助するのもいいだろう。私は「時間を操る程度の能力」で時間と密接な関係にある空間を操り、宇宙船に置いてある白いサンタクロースの袋を取り寄せる。

 

「?それは何だ?」

 

「惑星フリーザから持ってきた私の食糧です。3、4日分程しかないので足しにならないと思いますがどうぞ。」

 

「!?いいのか!?」

 

「ええ、一応私は食べなくても生きていけますから。」

 

私から食糧を受け取った彼女は本当に嬉しそうに笑う。きっと彼女は国民が大好きなのだろう。純粋だ。私のような人間には眩しすぎる。

 

「ありがとう咲夜!さっきは悪かったな!そうだ!まだ名乗ってなかったな!私はリースだ!」

 

「どういたしまして。それではリースさん。また。」

 

私は彼女に礼をしてその場から飛び去った。あとは彼女の頑張り次第だ。私はフリーザ様の命令に従うまで。

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日、反乱軍は国王の城に到達した。しかし、国王軍はすでに迎え撃つ準備を整えており、奇襲をかけるつもりが完全に待ち伏せをくらってしまった。

 

兵力では国王軍のほうが分があるので、反乱軍が勝つには奇襲をかけるしかなかった。そのため待ち伏せをくらったのはそうとう痛い。

 

さらには国王軍にはあの宇宙を支配するフリーザ軍から派遣されたという戦士咲夜がいる。反乱軍は完全劣勢であり、兵士達の戦意も下がっている。

 

「咲夜………。」

 

前線で戦うリースは咲夜の名を呟くも、彼女は国王の側に立っているだけ。彼女が味方になってくれればどんなに頼もしいことか。そんな叶わぬ願いをした時、咲夜が動いた。

 

前線で国王軍を払いのけるリースを鬱陶しく思った国王が、咲夜にリースを消すように命じたのだ。命じられた咲夜はリースの元へゆっくり飛び、降り立つと右手にエネルギーを溜めはじめた。

 

「さ、咲夜…。頼む…やめてくれ…。私達に力を貸してくれ…。」

「……申し訳ありません。フリーザ様の命令ですので。」

 

幾多の戦いを経験してきたリースにはわかった。咲夜が溜めているエネルギーを喰らったら自分は間違いなく消え去るだろう。そうなってしまえば、司令塔を失った反乱軍はたちまち敗けてしまう。

 

しかし、咲夜はやめる気などさらさらない。自分は十六夜咲夜で、フリーザの忠実な従者なのだから。そして咲夜はまもなくエネルギー波を放った……。

 

 

 

 

 

 

 

後方へと。

 

 

 

 

 

 

 

 


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。