虚物語   作:きりっぴ

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処女作です。割と短めですけど読んでみてください。
いろいろと日本語おかしかったり誤字とか脱字とかあったら言ってください


壱話

001

 

 

 

 英霊というのは僕にとって絵本の中に、童話の中にだけ出てくるヒーローという認識だった。羽川曰く正しくは英雄や、大罪人などが死後、人々に崇められ精霊化した存在らしいが。その辺りは忍野がよく知るところだろう。

 それはともかくとして。その英霊というのは言ってしまえば所謂、過去の人間たちだ。過去の人間。既にいない存在。死人。英霊という存在にそんな言い方が当てはまるとも思えないが、過去の人間であることだけは確かだ。つまり、過去の人間ということはいくら精霊化しているといえども現世に現れるということは決してあり得ない。もしそれを望んだところで彼らが表れる理由も、手段もないのだから、それはあり得ないという事実で完結してしまう。だが、彼らが現世に現れる理由があったとしたら。現世に姿を現れる手段があったとしたら。彼らは果たして現世にやってくることはあるのだろうか。

 古来より、人間とは死ぬものだというのが通説だ。しかし、生きている以上目的があるだろう。

 例えば正義の味方になるということ。例えば故国の救済を成就するということ。例えば世界平和を願うということ。例えば―――。

 こういった目的、あるいは願いというものは、人の数だけ挙げられるだろう。

 しかし、その目的や願望が叶うということは極めてまれだろう。生きているうちに成し遂げられたというのはよっぽど成就に近い願いだったのか、それを成しえるだけの力があったのか。あるいは―――。だが、大抵は人とはその目的を果たす前に果ててしまう。志半ばで倒れる、ということは歴史書を見てもなんら珍しいことではないし、やはり人間としての目的を達成しようとするならば時間はあまりにも少なすぎるのだろう。そうして人は願いを、本懐を遂げられずに死んでいってしまう。だがその悔恨を死後、再び現世に現れ、果たせるという甘い言葉が釣り上げられたとしたならば英雄として祭り上げられてもはや人間を超越した存在となった彼らはこの現代に再びその姿を現すことはあるのだろうか―――。

 

 

 

 

 

 

 

002

 

 

 

 

 今日は休日の朝。

 戦場ヶ原と羽川の勉強会もない正真正銘の休日というわけなのでゆっくりしていたいものだったが可憐で苛烈な二人の妹たちは僕が遅くまで布団の中にいることが気に食わなかったらしい。そんな理由で僕の安眠を妨害(というより破壊)するのは、いささか以上にやめてもらいたいのだが、そんなことを言ったところでバイオレンスな行動に出られるだけなので言わない。つーか言えない。

 ともかく僕は休日の朝の八時半という微妙な時間に叩き起こされたのだった。もう少し早ければすることもあっただろうが、あいにくこの時間である。

 僕のかわいい妹たちはどうやら用事があるらしく僕が目覚めたことを確認するなりどたばたとどこかへ出かけてしまった。そんなことなら寝かせていてほしかった。というか寝かせろ。しかしあいにくその抗議をぶつけるべき相手はすでに外出中なのだった。かといって、今更眠ろうとしてもすでに眠気は妹と共にどこかへ行ってしまったようだし。

 こういう暇な時はいつもなら妹たちに絡んで暇をつぶすのだがその相手もいない。親もすでに家にはいないだろうし。つまり家には僕一人。正しくは僕の影の中にもう一人いるのだがこの時間はおねむだろうからノーカンだ。このままでは貴重な休みというものを浪費してしまう。なにかないものだろうか。しかし休日といわれても特にすることがない。これといった目的がないのだからなにをしていいのかという漠然としたものだけが残っている。要するに暇だ。好きなことをしていいのだが、これといってしたいことも思い浮かばないし、というかこういう時に限って学校の課題も出ていなかったりする。それは出ていたとしてもやるとは限らないのだが。

 というわけで僕のすること探しは内ではなく外を向いたのだった。

 とりあえず、今日暇そうなやつを思い浮かべる。羽川も戦場ヶ原も珍しく用事があるといっていたし、考えられるのは神原のところぐらいだろうか。僕のかわいい後輩であるところの神原のお宅には毎日でも行きたいといいたいところだがさすがに先週掃除をしにお邪魔させてもらったばかりだったのでなんとなくそれははばかられてしまうのだった。

 しょうがなくすることが見当たらなかったのでしばらくだらだらとしていればすることも見つかるだろうと考えた僕はテレビを見ようかとリモコンを捜索するのであった。

 いつもなら居間のテーブルに置いてあるのだがこんな時に限って見当たらない。ソファーの下も、台所もくまなく探したのだが一向に見当たらないのだった。

 それから10分ほどテレビのリモコンを探していたがついに見つけることができなかった僕が今何をしているのかというと、捜索の途中に発見された新聞に目を通していたのだった。だが、目を通していても目を引く記事はあまり見当たらないのでだんだんとペラペラと写真や絵を見るだけになってしまった。普段なら気を引く記事が多少はあるのだが今日の記事は全くと言っていいほど面白い記事はなかった。

「それだけ平和ってことなのかねぇ」

 そんなわけでだんだんと飽きてきた僕は何気なく広告を見て暇を潰していたのだった。ざっと広告のある面を見たところで一つ目を引かれる広告があったのだった。そこには大きな見出しと共にヨーロッパの本格リゾート地を思わせる、ゆったりとした空間が魅力的。水温は体温に近い三十三~三十四℃に保たれ、一年を通じて楽しめるプールリゾート。プールサイドはビーチの水際のように浅瀬のマリン感覚を楽しめる水遊びエリアで、きのこの滑り台はちびっ子に大人気。という文が。どうやら、全天候型屋内ウォーターレジャーランドの広告らしい。それにどうやら温水プールのようで今は秋なのだが十分楽しめそうなのだった。

 「へえ、温水プールか。この夏は一回も泳いだことがなかったしたまにはこういうのもいいか。えっと?名前は…わくわくざぶーんっていうのか」

 なんとなく心躍りそうな名称。気に入った。僕がそろそろ神原のうちに遊び、もとい掃除をしに訪問しよう(さすがの神原も一週間では掃除が必要になるまで散らかせられないと思うが。散らかせられないよな。散らかっていないと信じたい)と思っていたところでそれを発見したのは行幸だったと言える。

 その全天候型屋内ウォーターレジャーランド、わくわくざぶーんはどうやら電車でここから一時間ほど行ったところにある冬木という町にあるようだ。たまには電車でどこかに遊びに行くというのも悪くないと思い、さっそく出かける準備をする僕だった。

 

 




いろいろと不安ではあるけど頑張って書いていきたいと思います

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