やっぱりコックリさんなんかやるもんじゃないね 作:hotoke 814
あれ?ここはどこだ。
目の前が真っ暗だ。違う。俺は目を瞑っているのか?
「う、うぅ…」
恐る恐る目を開ける。そこには、いつも見ている自分の部屋の天井だった。
「いきなりどうしたんだよ」
聞きなれた声。透き通りの悪い声。だが嫌ではない…
「とか考えてるだろ」
「考えてねぇよ」
なんだ、何の変哲もないただの馬鹿だ。やはりあれは夢だったかぁ。うんうん。
「ってかいきなり倒れて大丈夫か?」
やはり俺は倒れたらしい。まぁ、最近徹夜多かったしなぁ。貧血気味だったのかもしれん。
「いい加減、わらわに反応せい」
話しかけられた。今まで必死に見てないふりをしていた。視覚だけであれば疲れのせいに出来た。しかし話しかけられれば話は変わってくる。話だけに。うわー、今、うまい事言った。
「「別にうまくねーぞ」」
了と狐?の耳をした奴が同時に言い放つ。
「心読んでじゃねぇよ」
「いやなんとなく」
「うむ」
うん?ちょっと待て。了にこいつは見えてるのか?
「なぁ、了」
「ん?なんだ?」
「お前、なんか見えてる?」
恐る恐る聞いてみると了は少し考えるような素振りを見せた後、何を思いついたのかニヤニヤしだした。
「俺はお前しか見えねぇよ」
そういいながら了は右手をのとの顎にやった。くいっ。巷でよく聞く"顎くい"というやつだ。
「ふんっ」
「ふごっ!?」
思い切りみぞおちにストレートかましてやった。了はみぞおちを抑えながら、転げ回っている。
「お前、何も本気でやることねぇだろ…!」
「まだ本気じゃねーよ」
嘘ついた。結構本気の振りだった。
「キャーッ」
声のした方を見ると狐?の耳をした奴が、両手で顔を隠していた。ちらりと見える頬は少し赤みがあった。
こいつ何やってんだ。
「了、とりあえず今日は帰ってくれねーかな」
「お前、この状態で俺を放り出すのか…!?」
「自業自得だ。ほら帰った帰った」
最後の良心で少し手助けしてやると、すぐに立ち上がり帰っていった。
「さて…と…」
のとはおもむろにベッドに置いてある枕を手に取った。
「てめぇ、誰だァ!!!」
全力で手に取った枕を狐に向かって投げつける。自慢ではないがボール投げはかなり自信がある。
「よっと」
狐は軽く避ける。
なん…だと…。
「いきなり友を帰したと思えば」
呆れた、と狐は正座に直す。
「まぁ、座りなされ」
「ここは俺の家だ!」
ナチュラルに自分の部屋であるかのように座る事を勧めてくる。
なんだこいつ。
とりあえず言われるがまま座る。
「で、お前は誰なんだよ」
話を元に戻した。とりあえずこいつの身元確認しなくては、どうにも始まらない。
「んー、これはこっちの世界では初めて見るのぉ…ん?こっちはなんじゃ?」
この狐はこっちの話なんか聞いちゃいなかった。殴りてぇ。殴り飛ばしてぇ。
そんな思いもあったが実行してさらに面倒なことになったら困る。見た限りこいつは人ならざる力を持っているようだし。
「おい…話聞いてんのか…」
「なんじゃ若いの。そんな眉間にしわを寄せては幸せは来んぞ」
カカカ、とマヌケのような笑い声を響かせる。マジに殴りてぇ。
「とりあえず自己紹介くらいしろよ。な?」
少々苛立ち気味に言うと流石に観念したのか向きを直し、真剣な眼差しでこちらを見つめてきた。その凛々しい表情にのとは少しドキッとしたが顔に出さないように努めた。
「私は…そうだな…おぬしらの世界でいう…コックリさんじゃ」
「はい?」
かなりマヌケな声を出してしまったと思う。この狐がコックリさん?そんな馬鹿な…。
しかし、自称コックリさんは真剣な顔で佇んでいる。顔を見るに嘘はついていないようだが。
いや待て、とのとは考えを止めた。
「お前がコックリさんだとして、どうしてここにいるんだよ」
問題はここだ。なぜ自称コックリさんはここに現れたのか。そこがわからないと納得しない。わかっても納得しないとは思うが。
「そなたが呼んだのじゃろ?」
「え?あのコックリさんが原因か?」
だとしたら一生了を恨んでやる。と心の中で付け足した。だが
「いや、ただのコックリさんでは私を現すことは出来ない…出来ないはずなんじゃが…」
頭の上にはてなを浮かべながら首を傾げる。
「じゃあ、なんで出てきたん…だ…よ…」
言っていて思い出した。
そうだ…あの時…俺は…。
コックリさん中に手を離してしまったんだ…。
…
……
………
これかぁぁぁぁぁ!!!!!
頭を抱え、盛大に転げ回る。机やベッドに体をぶつけるがそんなのお構い無しに転げ回るのと。
それを冷静に眺めるコックリさん。
恐らく、10分はこうしていたんではないだろうか。やっと、頭が冷えてきたのとは起き上がり、コックリさんを睨みつけた。
「お前、帰れよ!」
「人を呼んでおいて帰れとは随分な言い草じゃな?」
自分でもそうだと思うが今は構っていられない。一刻も早くこいつには退場していただかなくては。
「大体、帰れるのだったらとっくにやっておる」
今、希望の崩れる音がした。えぇ、はっきりとね。
「…なんだって?」
聞き間違えかもしれない。一時期ブームを巻き起こしたコックリさんがそんなはずはない。
「だから、帰れるのだったらとっくにやっておると言っておるのじゃ」
今、希望の明るい色が絶望の暗い色に変わった。えぇ、はっきりとね。
のとは盛大にため息をつき、枕のないベッドに力の限り倒れ込んだ。
いつものベッドの包容力がいつも以上に体を包んでくれている。あぁ、これは夢か。夢だったんだ。
「夢ではないぞー」
狐は現実逃避を許してはくれなかった。
「…黙ってろよー」
恨めしそうにつぶやいた。どうしてこうなってしまったんだ。今まで溜め込んでいた疲れがどっと溢れ出した感じだ。
「恐らくは力が薄れたのが問題かの。元に戻るまでの辛抱じゃ」
カカカ、とまたマヌケのような笑い声を響かせているコックリさん。
「んで、いつ回復すんだよ」
倒れ込んだ状態で狐に話しかける。
回復するんだったら早く回復して早く帰ってもらわなくては。
「うむ、回復するのにはちと時間がかかってな…恐らくは一ヶ月か二ヶ月か…」
長い。なんだこいつ。絶対意図的にやってやがる。
「早く回復する方法ねーのかよ」
ベッドに顔を埋めながらイライラした声を上げる。ここ最近で1番頭痛がしてるかもしれない。
「あるぞ」
「ですよねー、ありますよねー……あんの!?」
ばっとベッドから顔を上げる。
「それを早く言えよ!」
「聞かれなかったからな」
もっと早く聞けばよかった。しかし、早く危険が去ってくれれば万々歳だ。
「で、その方法は?まさか、お前の命だとか言わねーよな?」
「それがお好みならそういうのもできるぞ?」
口から艶かしく舌を出す狐。少しドキッとしたが言うのはやめとこう。図に乗られても困る。
「やった瞬間にお前のことを呪うからな」
「冗談じゃ、冗談。それが一番回復できるが嫌じゃろ?」
「当たり前だ」
「だから…」
いきなり狐は身を乗り出し顔を近づけてきた。そのまま
ちゅ
なにかが触れた。かなり柔らかいなんというか感触のいいものが。
目の前には微笑を浮かべている狐。
しかもかなり近い位置で。
少し、本当に少し前に顔を出せばくっついてしまうほど近くに…。
「……は?………は!?」
思い切り飛び退いた。ベッドのすぐ横の壁に思い切りぶつかった。
自分でもわかる。今の自分は顔が真っ赤なんてものではないことが。
「これで契約完了じゃな」
そう言うご満悦な顔をした狐の顔がそこにはあった。
はい、お久しぶりです。ほとけです。
まずはじめに投稿遅れてすみません。わざとじゃないんです助けてください。
とまぁ、投稿は早めにしたいと思ってるんですが、いかんせん文章力というか脳がないので少し難しいじゃないかな。
ですが多少のストックは出来ているので随時更新して行ければと思います。
それでは次回にご期待ください。ごめんなさい。