マミさんの歩く道に祝福がありますように ~やがて円環へと導かれる物語~   作:XXPLUS

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第四九話 マミさんのいない冬・後編

 放たれた熱線を、武器が受け止めた。

 大身槍ではない。杏子の腕はそこかしこに受けた傷により機能不全状態にあり、熱線の光速に近しい攻撃に槍を差し込めるほどの迅い動きは不可能であった。

 熱線と杏子の間に差し込まれた武器は、蒼銀に彩られた手甲のような形をした射撃武器。

 それは、ホーリーレイと呼ばれる夜宵かおりの呪装魔具だった。

 邪魔をする武器を溶かそうと、熱線が激しい熱気をあげる。武器の表面は緩やかに溶解し、その下にある肌は焼け、数寸先にある杏子の前髪がちりちりと焦げる。

 

「さすがに熱いですわね……。モード・フローズンシューター」

 

 つぶやくと、右手に備えられた武器を氷の長銃へと変形させる。

 とたん、長銃が放つ冷気が熱線を押し返す勢いで周囲を冷却させていく。

 熱線が止む、そして次は夜宵かおりを狙ってあらたな熱線が飛来した。彼女はそれを氷の魔弾で迎撃。空中で霧消させた。

 

「わぁ、強い強い。これがわたくしの本当の実力ですわね」

 

 おどけるように言う彼女を、不自由な身体を捻った杏子が見上げる。外傷はない、が、ソウルジェムは砕かれ喪われていた。

 なぜ生きているのか――そう問うために発声することは喉に満ちた血液が許さず、意味のある言葉とはならない。

 見上げた杏子へ視線を落とし、彼女は柔和な笑みを見せる。

 そして、すっと手を伸ばすと、彼女の得意魔法を傷だらけの魔法少女へと行使する。

 

 だが――夜宵かおりの得意魔法は一切の効力を発揮しなかった。杏子が魔法を拒んでいる。そのように彼女には感じられたが、それは悪化した関係性から来る被害妄想なのかもしれない。

 杏子の代わりに、キュゥべえが問うた。

 

『かおり、キミはソウルジェムを砕かれて死んだはずだ』

「……このままでは死ねない、と、そう念じていたらこうなりましたわ」

 

 ふたたび空中で熱線と激突する氷の魔弾。

 ほとばしる堅氷は熱線を遡上するように伝い凍らせていく。ほどなく逆さ吊りの魔女の吐き出したそれは、熱線ではなく氷柱と化した。

 魔力が普段の十倍にも膨れあがったように感じる――また、威力もその感覚を肯定していた。

 

「わたくしの魂の在処はソウルジェム。それはそうなのでしょう。しかし、わたくしの魂は本来はこの身体に宿っていたものですわ」

『身体に魂を戻したというのかい? そんな馬鹿な、ありえない。既に身体の方には魂を受け入れるだけの座はないはずだよ』

「ええ、その通りなのでしょう……。身体が拒んでいること、自覚しておりますわ」

 

 肉体に拒絶された魂は軋みをあげ、激しい痛みを彼女の精神にもたらしていた。

 歯の神経を全て剥き出しにして、ヤスリで削るかのような痛み。そんな痛みに苛まれ、ともすると正気を失いそうにさえなる。

 それに耐えているのは、彼女の精神力が強い――というわけではない。既に感情の大部分が摩耗してしまっていることと、その痛みを罰として肯定的に受け容れていることによる。

 

「ですが、かりそめに宿るくらいのことはできましてよ。それに、ソウルジェムから身体を遠隔操作するより、身体に魂を同化させて動いた方が迅く強い――当たり前の理屈ですわよね。人馬一体という言葉がありますが、さしずめこれは人魔一体、といったところでしょうか」

『なるほど……。しかし、どう見ても魔力の使い過ぎだ。キミの魔力の総量はさほどではない、そんな戦いは長くはもたないよ』

「ナンセンスなことを。わたくしは既にソウルジェムを失い、魂を無理矢理に身体にまとわせているのですよ。こんな状態が長く続かないことは分かっております。五分か十分か……。その間、魔力がもてばよいのですわ」

『ふむ……しかしだね』

「残り少ない時間であなたと無駄に問答をしているつもりはありませんわ。夜宵かおり畢生の戦い、しかとご覧あそばせ」

 

 ――巴さん、ご覧になってください、とは言う資格はありませんが……ここでワルプルギスをしとめてみせます。

 

 マミを想いながら、髪を飾る花のアクセサリーに手を添える。そして固有魔法を行使する。

 彼女の固有魔法は、傷の永続化という毬屋しおんの奇跡に相対するもので、傷の発生以前まで時間を巻き戻して再生させるというものだった。

 奔流のように溢れ出る魔力は、マミのアクセサリーすなわちソウルジェムの時間を巻き戻し、破壊前の姿へと再生させていく。それを撫でさすった指の感触で悟ったかおりは、一瞬喜色をたたえ、そして寂しく笑う。

 

 ――今さら治っても、もう、宿るべき魂はないのですわね……。そう、何事もあとからどう取り繕おうとも……。

 

 それ以上の感傷を許さないとばかりに、熱線が撃たれた。

 より強大な魔力を狙うというワルプルギスの夜の習性のままに、攻撃は全て夜宵かおりに集中する。

 生前、と表現してよいものだろうか。ソウルジェムから身体を操作していた状態に比べると、運動能力は数倍にも上昇している。それでもなお、熱線の全てを避けきることは容易ではなかった。これを易々と回避していた佐倉杏子、それと同格の巴マミを思えば、あらためて感じる。

 

 ――おふたりとは、ここまでの力量差があったのですわね。

 

 熱線の七割を回避し、残り三割を右手に備えた氷の長銃を盾にしてしのぐ。

 幸いというべきか、ソウルジェムという急所は既になく、さらには彼女の得意とする治癒魔法は膨大な魔力を伴ったことでいかなるダメージも瞬時に治癒する。ある種の不死性に近いものが、彼女にはあった。

 

「佐倉さん、お怪我を治しておいてくださいな。攻撃はわたくしが引きつけます」

 

 言われるまでもなく自前の治癒魔法を行っていた杏子だが、ソウルジェム以外の全てを破壊されたといってもいい惨状、そうそう動ける状態まで回復しそうになかった。

 まだ明瞭に出ない声で「分かってる!」と返し、その返事を受けて夜宵かおりはひとつ頷いた。

 

 

◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 フローズンシューターを構成している濁った氷がさらなる成長を遂げる。肩口までを覆い尽くしたそれは、腕そのものを巨大な砲身としたバズーカの様相を呈する。

 

「フローズンシューターの上位となると、スノウ・クィーンってところですわね。あ、いえ、フローズン・フィナーレっていうのも良いですわね」

 

 軽口を叩く夜宵かおりを二条の熱線が襲う。射撃姿勢に入っていた彼女は回避行動を取ることはできず、直撃を受ける。

 しかし、右腕に命中したものはフローズンシューターの冷気が中和し、左脚に命中したものは治癒魔法が瞬時にリカバーした。

 その結果に満足気に口の端を歪めると、余裕を持って照準をあわせる。

 

 ――広がらずに収束なさい!

 

 魔弾に命じ、撃つ。

 魔女のおとがいに着弾した魔弾は、射手の即興の命に従い、狭い範囲にのみ堅氷を作り出して魔女の顔面を氷漬けにした。

 氷の下で、魔女の口腔が紅に染まる。熱線を吐こうとして、堅氷で抑えこまれているのだろう。

 

「これで炎でのオイタはできませんわよ」

 

 彼女の武器がまとっていた氷を砕いて変形した。蒼銀の籠手のかたちをした銃、ホーリーレイへ。

 即座に光の矢を放つ。装弾なしで続けざまに。狙うのは魔女の首。

 射撃の度に、光の矢の煌めきが砕け散った氷に反射し、闇の中そこかしこで光彩を描く。

 撃ち続けられる矢の数が一四を数えるころ、逆さ吊りの魔女の首が千切れ飛んだ。

 氷の塊、といった様相を呈する魔女の頭部が大地に落ち、衝撃が響いた。

 

「今度こそ、素っ首いただきましたわ」

 

 笑う。しかし、逆さ吊りの魔女はワルプルギスの夜の本体ではない、いわばアンコウの擬餌であり、そこを砕いたところで倒すことはできない――そのことを知る杏子が、ようやく取り戻した声で叫ぶ。

 

「かおり、アイツの本体は上の歯車だ!」

「分かりましたわ!」

 

 首の破断面から砂粒をさらさらと散らす逆さ吊りの魔女。戦闘力を失ったかに見えるその姿を一瞥すると、彼女は足場を作りつつ上空へと駆ける。

 それを目で追うキュゥべえがつぶやく。能面のような顔はそのままだったが、口調からは口角を吊り上げているような印象を与えた。

 

『五分か一〇分か、そう言ったね、かおり。残念だけど、そんなにもたないよ』

「!」

 

 キュゥべえの言葉が呪詛であったかのように、夜宵かおりの身体が硬直した。全身が金縛りにあったようにぴくりとも動かなくなる。

 

『ソウルジェムが砕かれたあとに、身体に一時的に魂を定着させる。確かに過去に例のあることなんだ。しかし、歴史に名を残すような魔法少女しか成しえなかったことだからね。キミができるとは驚いたよ。その執着心はたいしたものだ』

 

 空中で硬直した身体は、足場を踏むこともできずに落下する。まるで、ロウで作った翼を溶かし尽くされたかのように――。

 

『歴史に名を残す魔法少女でさえ、その状態はもって五分だったよ。キミならば――あぁ、今で三分一二秒だね、よくもった方だと思うよ』

 

 地に墜ち、したたかに全身を打った。しかし、痛みを感じることはもはやなかった。

 不自然な方向に手足を曲げ、横たわる夜宵かおりの肉体。

 魂が身体から剥離してしまったのだろうか、夜宵かおりの意識は横たわる傷だらけの自分の肉体を、第三者の視点をもって少し上から見ていた。

 同じように傷だらけの身体で、杏子が駆けよってきていた。

 杏子がかおりの上半身を抱きおこす。

 

 ――動かなくて幸いかもしれませんわね。泣く姿も怯える姿も、見せないですみますもの。

 

 その魂のつぶやきを聞きとがめられることがないことも、また幸せなのであろう。夜宵かおりの魂は、ワルプルギスの夜が生み出す烈風に運ばれ、霧散していった。

 彼女の側頭部から、マミのソウルジェムがこぼれ落ち、杏子の太ももを叩いた。本来は暖かくオレンジイエローに輝いていた宝石は、今は何も宿っていないことを表すかのように無色透明だった。

 

『なるほど、あの状態の魔力なら、ソウルジェムの復元も可能だったということだね、だけど――ソウルジェムを復元しても、そこに入るべき魂がなければどうしようもない。マミが死んでもう六ヶ月だ。彼女の魂はとうに霧散しているよ。キミたち風に言うと、天に召されたとでもなるのかな』

「お前はもう……何も喋んな」

 

 立ち上がる。三分の治癒では満身創痍を癒しきることはかなわず、立ち上がる動作もゆらりといったものだ。

 それでも、瞳には強い意志の光が宿っていた。

 右手を突き上げる。槍の柄の半ばを持ち、大地と水平にして掲げる。

 と、頭上に掲げた槍が伸びた。槍穂は右へ、石突きは左へと、手で持った部分を中心にして前後ともに伸長していく。

 右へ伸びた穂先は、彼方に小さく見える岩塊に喰い込み、その進みを止める。

 左へ伸びた石突きも、小高く盛り上がった土に喰い込み、同様に進みを止めた。

 左右ともに伸びを止められた大身槍は、持てあました勢いを内に宿すかのように太くなり、同時に反り返っていく。

 

 それは、上空から見れば、地上に生まれた巨大な弓に見えた。

 さらに、槍穂を石突きを結ぶように鉄鎖が奔り、弦を成した。

 

 深く息を吐き出すと、矢とするべく新たな槍を作り出す。

 それはアパシュナウト・トリデンティと称する三叉槍を、遥かに巨大にしたもの。

 鉄鎖の弦に巨大槍の石突きを乗せ、力の限りで引き絞る。あたかも、ガリバーの弓を小人が引くかのように。

 

 名は付けられるまでもなく、決まっていた。

 巴マミの最大の魔法技がティロ・フィナーレ・ヴェルシオーネ・イリミタータであるのならば、佐倉杏子の最大の魔法技は、名付けられるまでもない。

 

「アパシュナウト・トリデンティ! ヴェルシオーネ・イリミタータッ!」

『ダメだ杏子! ワルプルギスの夜を倒してはいけない!』

「黙ってろ!」

 

 刹那、逆さ吊りの魔女の生首が動いた。

 夜宵かおりに落とされ、地をなめていた生首。覆っていた堅氷は夜宵かおりの魔力が散逸したことで溶け落ちていた。

 地に傾いだままの生首の口が開き、漏らす。嗤う声と、焼けつく熱線を。

 熱線が届き、佐倉杏子の左脚を焼いた。ひざに直撃を受け、そこより下が焼け失せた。

 

 左の脚が焼き切れると同時、引き絞られた鉄鎖の弦が放たれた。撃ち放つというよりは、手放すようにして。

 重力を振り切り宇宙に飛び出さんばかりの勢いで、巨大槍が飛んだ、

 射撃によって弦がびぃぃんと鳴る。その振動も収まらぬうちに、巨大槍は対象を貫いた。

 だが、射出の際の僅かな乱れが、飛翔軌道をかすかにずらさせた。

 シャフト状の中央歯車、すなわちワルプルギスの夜の弱点をを射抜くはずだった巨大槍は、軌道をずらして外輪部の巨大歯車を貫いた。

 そして、本来ならばシャフト歯車に突き刺さり爆炸するはずの巨大槍は、外輪部の巨大歯車の薄板では受け止めることができなかった。

 外輪歯車の薄板を貫いて、さらに彼方へと飛んだ。

 彼方へと、飛び去ってしまった。

 そのため、巨大槍の穂先に蓄えた莫大な魔力を敵の内部で爆炸させることはできず、与えたダメージとしては致命には程遠かった。

 

「なら、次だッ!」

 

 次の大身槍を掌中に生み出し、魔力を込めて巨大化させようとするが――。

 生首の放った次の熱線が、彼女のわき腹を焼き、彼女の身体を吹き飛ばして横倒しにした。

 手からこぼれ落ちた槍が、からからと転がる。

 満身創痍――その言葉すら生ぬるい状態の杏子だが、闘志はいささかも衰えていない。這うようにして大身槍を掴む。身体を引きずって鉄鎖の弦まで近づき、大身槍をつがえる。弦を引き絞ろうとする、その時に歯車が動いた。

 

 天地を逆にするように、くるりと回った。

 その動きは、時の砂が落ち切った砂時計を、くるりとひっくり返すようにも見えた。

 そして、その動きの意味を知る杏子が叫ぶ。

 

「逃げんなよ! 待てよてめぇ、あたしかお前か、どっちか死ぬまでやらせろよ! おい!」

 

 遠吠えのように叫ぶその声を、上下反転したワルプルギスの夜は一顧だにしない。

 その代わりに、尋常ではない烈風をもって応えた。

 

 斜め上から吹き下ろされる魔風は、杏子の身体を軽々と持ち上げた。仮に全身に瑕疵がなく万全の状態であっても、抗することはできなかったであろう。

 目に見えぬ風はしかし確かな質量を持って、津波のように杏子の身体を押し流した。

 

 

 

 時間にして三分程度。

 彼女の身体は、数キロメートルを転がり、川の堤に受け止められるかたちで、そこにあった。

 直下で受けた前回と異なり、衝撃は斜め方向に逃がされていた。そのため、烈風により受けた傷は骨折と裂傷程度。

 瞳も無事だった。見上げた景色は抜けるような青空だった。それが、ワルプルギスの夜が既に消えていることを彼女に伝えた。

 

「ちくしょう……」

 

 だらしなく伸びた両の腕、拳を握りしめると、土くれに混じって柔らかいものが触れた。

 見やると、夜宵かおりの身体がそこにあった。

 声をかけようとすると、変化が生じた。

 杏子に見られることを待っていたかのように、見られて満足したかのように、その身体は風化を思わせるように静かに崩壊し、砂粒のかたまりへと変わっていく。

 既に烈風はやみ、そよ風が吹いていた。それにさらわれるように、彼女だった砂粒が少しずつ散っていく。

 

「……お疲れさん」

 

 それだけ呟くと、杏子はゆっくりと瞳を閉じた。

 

 

◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 一掴みの彼女だった砂粒を握りしめた佐倉杏子は、夜宵かおりの家の庭にいた。

 亡き骸は庭に置いてほしい、そう言っていた彼女の遺志を汲んでのことだ。

 

「すまねぇな。ハンパにしか約束はたせなくて」

 

 拳を緩めると、掌中にあった砂粒がはらはらと舞い落ちる。

 ゆっくりと時間をかけて彼女だった砂粒を庭に撒き、からっぽになった掌をぎゅっと握りしめる。

 降り始めた雨に、庭に撒かれた砂粒が溶けるように土に馴染んでいった。雨はやがて強くなり、杏子のポニーテールを濡らし、背中に貼り付けるようにしていく。

 

「じゃぁな」

 

 少し寂しそうな口調でつぶやいた。

 

 

◇  ◇  ◇  ◇

 

 

 激しい雨にうたれて杏子が部屋に戻った時、時刻は深夜の二時を過ぎていた。

 杏子は横たわるマミに、ワルプルギスを討伐しそこねたことを謝罪とともに報告する。そしてリビングに腰をおろすと、キュゥべえに語りかけた。彼の姿は見えなかったが、必要なときはどこにいようとも会話が成立することを、彼女は知っていた。

 

「ワルプルギスを倒すなって言ったよな。どういうことだよ」

 

 果たして、キュゥべえの姿がテーブルの対面に現れる。尻尾をひとしきりくねらせると、彼は答えた。 

 

『ワルプルギスの夜の出現規則が分かったんだよ。おそらく、次の出現が最後になる。場所はこの見滝原だ』

「最後って?」

『次の次、を計算したが、結果は先ほどの風見野での出現時間を示している。次の次の次、はその前のドバイでの出現時間――時間が巻き戻っているかのようにね。宇宙の終末論のひとつにビッグクランチというものがあるが、ワルプルギスの夜の出現規則は、ビッグクランチとそれに伴う振動宇宙――宇宙の巻き戻りを示す式と合致していた』

「次はもう逃げない、ってことか?」

『いや、随伴している魔女が出現のたびに減じている、と言ったよね。逆だったんだ。過去に戻るほど増えている、と表現するべきだったんだ』

「……?」

『つまり、ワルプルギスの夜は未来で生まれ、過去に向かっているんだ。そのさなかで倒した魔法少女を随伴する魔女として捕らえ、その数を増やしていた。それがボクたちには、その戦いで命を落とす魔法少女の分だけ、随伴する魔女が減っている、そういう風に見えていたんだ』

「……よく分からねぇけど、それがなんて倒すなってことになるんだ?」

 

 杏子の問いに連ねるように、声がした。

 声だけでなく、ドアが開く音がした。マミの亡き骸を寝かせていた、彼女の部屋のドアが開く音が。

 

「そうよね。魔女は倒すべき存在。それはなにがあっても変わらないわ……つらいけれど」

 

 

 

 

 

 


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