マミさんの歩く道に祝福がありますように ~やがて円環へと導かれる物語~ 作:XXPLUS
「わたし、なる。さやかちゃんと一緒に戦う」
顔に浮かんでいた苦笑を消すと、落ち着いた静かな声で、ゆっくりとまどかが告げた。
「あんた、本気なの?」
「うん」
さやかの問いに首肯すると、まどかは言葉を続けた。
「今までごめんなさい。魔法少女の生き方は辛いってマミさんや杏子ちゃんに教えてもらっていたのに、その辛い生き方をさやかちゃんだけにさせちゃって」
穏やかな表情だった。そして温かい声だった。
「わたしも魔法少女になる。それで、辛いのははんぶんこにしよ。ううん、マミさんと杏子ちゃんもいるから、よんぶんのいちだね」
「じゃぁ今すぐ契約してよ」
表情からも口調からも、まどかが軽い気持ちで言っているわけではないと美樹さやかは理解していたが、それでもなお、彼女は親友を嘲るように言った。そんな風に振る舞いたくないと、心の中で悲鳴をあげながら。もしかすると、まどかが「やっぱり無理」と折れることをどこかで期待していたのかもしれない。
――ううん、きっと折れる。まどかは勢いで言ってるだけだもん。まどかにそんな勇気があるはずない。
「うん。キュゥべえ、まだいるんでしょ? 出てきて」
だが、まどかは折れず、契約の遂行者の名を呼ばわる。果たして、前触れもなくふたりの足元にキュゥべえが現れた。
『願い事は決まったのかい、まどか』
いかなる感情も浮かべない赤い瞳で桃色の髪の少女を見つめると、彼女の意志を確かめる。
その瞳の色は、先ほど見た心臓から零れる血の色を思い出させ、さやかは胃液が喉元まで這い上がってくるのを感じた。ごくり、と喉を鳴らして胃液を抑えつけると、視線をキュゥべえからまどかに向ける。
キュゥべえとさやかに凝視されたまどかは、先ほどまで見せていた穏やかな表情を崩して、困ったような、悩むような、微妙な笑みを見せた。もちろん、つい先ほどまで魔法少女になることを決意していなかったのだから、願い事など決まっていなかった。
――どうしよう、前にいってた億万長者? 素敵な彼氏? 絶世の美女? 満漢全席? ううん、お金は自分の身の丈にあっただけあればそれでいい。彼氏は奇跡じゃなくて、わたし自身に魅力を感じて好きって言ってくれる人がいい。絶世の美女なんて突然なっても周りが驚くだけだし。満漢全席は……一度食べてみたいかも。じゃなくて!
当然のように考えはまとまるはずもなく、まどかは助けを求めるように親友の顔を見た。
「わたしの願いは……さやかちゃん、何がいいかな?」
「なんであたしに振るのよ」
「えへへ……まだ決めてなかったから……」
――ほら、やっぱり。
さやかは自分の思い描いた展開になったことに安堵していた。まどかが契約しなくて良かった、と。
だが、深呼吸をするまどかは、さやかの想像とは逆に覚悟を決めていた。さやかとマミたちのそもそものボタンの掛け違えは、さやかが仁美を助けなければ良かったと思ってしまったこと。その原因は、恭介を巡ってのことだと、さやかの話からまどかにも想像できた。
――杏子ちゃんは怒るだろうけど、さやかちゃんがこんなに苦しむのは見ていられないよ。今はそれしか考えられないし、きっとこれを願うのが、正解なんだよね。
「キュゥべえ、わたしの願いは、さやかちゃんと上条くんが仲良く……」
まどかの言葉が途切れた。さやかの柔らかい掌が、まどかの口を強く塞いだからだ。
「さやかちゃん?」
濁音まじりのくぐもった声でまどかが言うが、さやかの耳には届いていなかった。
――あたしには、こんなに大切な親友がいたんだ。それをあたしは……。
「ごめん、まどか。ほんとごめん。やっぱり契約なんてしなくていい。しないで欲しい」
「さやかちゃん……」
口元から離れたさやかの手が、まどかの頬を撫で、髪を弄んだ。
――この柔らかい肌も、艶やかな髪も、本当のものだ。壊れて魔法で作り直したあたしの身体とは違う。これは壊しちゃいけないんだ。
桃色の髪を手櫛でくしゃくしゃにすると、さやかは満足したように手を離した。
そして、足元に転がるグリーフシードを無造作に拾い上げて、暗灰色に濁ったソウルジェムを浄化する。インディブルーといった色にまで回復したソウルジェムを眺め、さやかは泣きそうな笑みを見せて優しく囁いた。
「もう遅いし、まどかは帰りなよ。あたしはもう一回りして帰るから」
まどかの返事を待たず、さやかは跳躍した。
二度、三度と跳躍を繰り返すと、さやかの姿はまどかの視界から消える。ふたりの会話が終わるのを待っていたのか、黙っていたキュゥべえがまどかに語りかける。
『契約は、もういいのかい?』
「わたし、さやかちゃんになるなって言われて、ほっとしたの。……なんて卑怯な子なんだろう、わたし」
『それが何故卑怯なのか、ボクには理解できないが……。キミがそう思うなら、いま契約してしまえばいいんじゃないのかい? 今なら、さやかを追いかけることも可能だよ』
「キュゥべえは、自分の仕事に熱心で、えらいよね」
それきり、まどかは口を噤んだ。
◇ ◇ ◇ ◇
「親友にまで辛くあたって、試すような真似までして、あたし本当に最低だ」
思考を声にするが、存在の希薄化の影響下にある音は、誰に聞きとがめられることもなく雑踏に消える。
今のさやかを認識できる存在は、魔法少女とキュゥべえと魔女と使い魔だけだ。その存在のうち、後者――魔女と使い魔――の住処を美樹さやかは発見した。
発見した、という表現は厳密には適切ではない。キュゥべえの誘導があったからだ。そして、その誘導の大元は、魔女の結界を発見し、その情報をキュゥべえに寄越したマミと杏子であった。
マミと杏子は、使い魔とさやかでは荷が重いと思われる強力な魔女――ここ数日では、お菓子の魔女が該当する――のみを排除し、それ以外の魔女はすぐには倒さず、キュゥべえを介してさやかに情報を伝えていた。もっとも、さやかの到着が遅くなるようなら被害が出る前に駆除はしていたが。
さやかの魔力が枯渇しないように、とのマミと杏子の配慮だったのだが、自傷行為に等しい戦いを繰り返すさやかには、決して良い影響は与えなかった。
「最低なあたしでも、みんなを守る剣としてなら、存在価値はあるよね。この世界にいてもいいよね」
肺腑から絞り出すような生温かい息を吐くと、さやかは結界の入り口を乱暴に破壊した。
豚の体躯に鶏の頭と翼を据えた魔女に、さやかは対峙していた。
耳を塞ぎたくなるような甲高い哄笑を唾液とともに撒き散らしていたその魔女は、今は耳を塞ぎたくなるような悲哀に満ちた喚声を撒き散らかしていた。
四つあった脚のうち、三つは根元から切り落とされ、一つは機能を失う程に切り刻まれていた。一対の翼はともに半ばで折れ、胴にも、首にも、頭にも、無数の刀傷を創っていた。
魔女の傷痕から噴出した黄白色の体液は、無造作に立つ美樹さやかの全身にまとわりつき、その肌と髪を焼き溶かしていた。
「……」
汚らしい体液が皮膚を溶かし、その下にある肉を焼く――それを治癒の魔法が瞬く間に癒す。
治っては溶ける、治っては溶ける。出来の悪いカートゥーンのような有様に、さやかは口の端を歪めた。
やがて、魔女の悲鳴は途絶え、結界が蜃気楼のように歪み始める。魔女の体液も、時間とともにその力を弱め、腐食と治癒の均衡は治癒に傾いた。
「魔女を倒したよ。あはは……マミさんたち、見直してくれるかな?」
転がるグリーフシードを摘まみ上げると、漆黒の中に紫の光を宿したような色のソウルジェムに、コツンと接触させる。ソウルジェムの穢れが黒い霧となってグリーフシードに吸い取られていく様を見つめながら、さやかは脳裏に直接響く声を聞いた。
『結局キミはいつもそうだね』
声の主は、足元に現れたキュゥべえだ。
『上条恭介に振り向いてもらうという見返りを求めて奇跡を願い、マミや杏子に認めてもらうという見返りを求めて魔女を倒す。あまつさえ自分のために鹿目まどかに魔法少女になれと言う』
空っぽだったグリーフシードが、ソウルジェムから吸い上げた穢れで漆黒に染まっていく。墨汁で満ちた硝子細工のように、それは見えた。
『マミや杏子と別れたのだって反省したからじゃない。自分に罰を与えて罪悪感を軽くしたかっただけだろう。その行いでマミや杏子がどれだけ心を痛めるか考えもせずね。キミたちの言葉だと、悲劇のヒロイン気取りっていうんだっけ?』
穢れを吸われたソウルジェムは、しかし輝きを取り戻すことはなかった。底冷えのする紫の光が時々漏れ出でるが、その在り様は正しく一個の黒曜石だった。
『キミには、ひとのために純粋に何かをするということはできないのかい? 巴マミも佐倉杏子も、犠牲者を出さないことを願って魔女や使い魔と戦っている。キミは魔女や使い魔と戦う時、犠牲者のことを考えたことはあるのかい?』
戸惑い気味に「ある」という形にさやかの唇が動いた。が、それは声となって紡がれることはなかった。そんなさやかの所作を無視して、キュゥべえは言葉を連ねる。
『あるわけないよね。キミはいつも自分のためにしかその力を振ってこなかった。そんな魔法少女が、いまさらマミや杏子に受け入れられるはずもない』
「そんなこと……」
『そうかい? だったらどうして、腕が治った上条恭介を素直に祝福してあげないんだい? 見返りが欲しかったからだよね。それが得られなくて不満なんだろう? 上条恭介のために奇跡を起こした、なのに自分に振り向いてくれない。巴マミと佐倉杏子に自分を認めてもらうために、魔女を倒した、なのに認めてもらえない。自分、自分、自分、自分、ほんとうに自分のことばかりだよ。そしてそれが叶わなければ親友まで傷付ける。キミは、それでいいと思っているのかい』
「……うるさい」
追いすがる声を振り払うようにさやかが振るったサーベルが、キュゥべえの胴を裂いた。それは絶命に追いやるほどの斬撃ではなかったが、彼は意図をもって自らの身体を崩壊させた。
傷口からこれ見よがしに血の色の体液を溢れ出させ、穴の開いた紙風船が萎むかのように身体を変形させる。そして泥が雨に流されるように、変形した身体を溶けさせていった。
「あ……」
『やれやれ、今度はボクに八つ当たりかい』
崩れゆくキュゥべえを横目に、新たなキュゥべえが姿を現して美樹さやかを詰った。
『キミの周りにいると誰もが不幸になるようだ。ボクも行くよ。命が幾つあっても足りやしない。君の周りにいようなんて思う人はいないだろうね。美樹さやか』
「まっ……て……」
『さぁ、私たちも行きましょう、杏子ちゃん、鹿目さん』
『そうだな。八つ当たりされたくねーし』
『昔っから乱暴だよねぇさやかちゃんは。そんなんだから上条くんにも嫌われるんだよ』
かつてハコの魔女に受けた精神汚染がまだ残っていたのか、それとも純粋な幻聴か、美樹さやかはキュゥべえのみならず仲間の詰る声も耳にしていた。
◇ ◇ ◇ ◇
『マミ、杏子、大変だ! 美樹さやかが不味いことになった』
自らがそう誘導したことなどおくびにも出さず、キュゥべえはふたりに告げた。さやかの魔女化を目の当たりにすることで、ふたりが連鎖的に絶望することを期待しながら。
つまり、さやかの魔女化はもはや止められない。その確信がキュゥべえにはあった。
先ほどまで魔女の結界があった廃ビルの一室に、美樹さやかはあった。
だらしなく両脚を投げだし、背中を薄汚れたセメントの壁に預けている。瓦礫が散乱する床には半乾きの吐しゃ物が広がり、すえた臭いが充満していた。
美樹さやかは口元に残る吐しゃ物を拭うこともせず、焦点の定まらない瞳を天井で明滅する裸電球に向けたまま、その一室にあった。
マミと杏子がキュゥべえの案内で部屋に入ってきても、一瞥をくれることもなく、糸の切れた人形のように天井を見つめていた。
さやかが反応を示したのは、何度も名前を呼ばれ、何度も肩を揺すられた後だった。
「マミさん……杏子……」
ようやくふたりの存在を認識したさやかは、怯えるように頭を抱えて身体を丸めると、謝罪の言葉をひたすらに口走った。
どうしたの、と優しく尋ねるマミの声が、さやかには慇懃無礼にあげつらう嘲笑に聞こえた。
落ち着けよ、と心配そうに顔を覗き込む杏子の声が、さやかには口汚く罵る怒号に聞こえた。
ガタガタと身を震わせながら呪文のように謝罪の言葉を連ねるさやかの口から、胃液が溢れ出た。既に胃の中にあったものは吐き出されており、胃液だけが喀血よろしく飛び散る。
それに怯むことなく顔を寄せると、マミは治癒魔法をさやかに使った。もちろん、さやかの方が治癒魔法は得手であることも、既に外傷らしきものが残っていないこともマミは理解しているが――
「何か、辛いことがあったのね」
治癒魔法には、傷を癒すだけでなく精神を落ち着かせる効果もあると、マミは信じていた。魔女に魅入られた犠牲者や、気を失った人に治癒魔法をかけることで正気を取り戻させた経験が何度もあったから。
果たして、耳元でささやかれたマミの声は、嘲笑や怒号に塗りかえられることなく美樹さやかに届いた。
「ごめんなさい、私、美樹さんの苦しみを誰よりも分かってあげなくちゃいけなかったのに。私も、昔そうやってひとりで全部かかえこんで……。杏子ちゃんがいてくれて、自分はひとりじゃなくなったからって、昔のことを忘れて、美樹さんの苦しみを思い遣ることも出来なかったの。本当にごめんなさい。来るのが遅くなってごめんなさい」
ややあって、さやかは懺悔するように言葉を紡いだ。それは、やはり思い込みと幻影に囚われた言葉だった。
「……私は、マミさんや杏子みたいな正義の味方にはなれなかった。一緒に戦う資格なんてないんだ」
「資格なんていらないわ。私たちが美樹さんと一緒に戦いたい、それじゃダメ?」
いまだ力の抜けたままのさやかを抱き締めると、さやかの言葉に重ねるようにマミは伝えた。そして、しばらくさやかの反応を待ち、反応がないことを確認してから言葉を続ける。
「美樹さんは、私と杏子ちゃんのこと、強いと思ってるのでしょうね。でも、そんなことないの。私も杏子ちゃんも弱くて、だからふたりで支えあって今日までこうしてきたの。ひとりだととっくに……。だから美樹さんだけ、ひとりで立とうとする必要なんてないの。私と杏子ちゃんと美樹さん、これからは三人で支えあいましょう」
杏子もマミの言葉を肯定するように頷くと、背中の方からさやかの身体に腕を回した。
「……ありがとう。でもあたし、もう戦えない」
そう呟くと、さやかは掌にソウルジェムを浮かべてみせた。
かつて瑞々しいアクアブルーをたたえていたそれは、今は黒く濁り果てていた。黒曜石の上から更に墨を塗りたくったような、絶望的なまでの黒い色がそこにあった。
「大丈夫。こんなこともあろうかって、ね」
マミは歌うような明るい声で言うと、取り出したグリーフシードをさやかのソウルジェムに近づけた。ここ最近では一番の大物から奪ったグリーフシードであり、穢れを吸い取る力は充分と思われた。
ソウルジェムに近づいたグリーフシードは、目に見えない渦潮のようなものを発生させると、ソウルジェムから穢れを奪い取りその空洞の胴部に蓄えてゆく。瞬く間にソウルジェムは光を取り戻し、グリーフシードは引き換えに闇に染まる。
アクアブルーとまではいかないものの、青と表現できる色を取り戻したソウルジェムを見つめ、満足気な笑顔を見せるマミと杏子。だが、その笑顔が次の瞬間には崩れた。
「どうして!」
青を取り戻したソウルジェムが、一瞬で再び黒に染まる。絶望的なまでに深い黒に。
「ダメなんだ。魔力を使って濁ってるんじゃないんだ。あたしの心が濁っているんだ」
「どうしてよ! 美樹さんの心が濁ってるっていうなら私だって同じじゃないの! しっかりして美樹さん!」
一瞬でもソウルジェムが浄化されたことで、美樹さやかの意識ははっきりしていた。だから、幻に囚われることなく声を聴くことも、幻を怖れることなく言葉を紡ぐこともできた。
「マミさん、杏子、来てくれてありがとう。まどかに伝えてもらえないかな。酷いこと言ってごめん、許して欲しい、あんたは魔法少女には絶対になっちゃダメだよって」
「いやよ! 美樹さんが自分で伝えればいいことじゃない!」
「なに弱気になってんだよ、さやか! 魔法が使えなくなったって、どうにでもなるって!」
だが、さやかにはソウルジェムが濁り切った末路がどうなるか、即ち自分がどうなるか、本能的に理解できていた。そして、その末路が今や遅しと顎を広げ自分を飲み込もうとしていることも。
「そうできれば、いいんだけどね……。なんかさ、諦めがつくと、結構、晴れ晴れとするもんだね。飾ったり取り繕ったりする必要がないのって、こんなに楽なんだ。もっと早く、こんな気持ちになれていれば、良かったんだよね」
その言葉の通りに穏やかな笑顔を見せるさやかだが、笑顔に似つかわしくない大粒の涙が、瞳からとめどなく溢れていた。
「美樹さん……」
「さよなら、ありがとう」
かつて瑞々しいアクアブルーをたたえていたソウルジェムは、今や黒く濁り果てていた。
ソウルジェムの張り出した部分が、あたかも内部が真空状態になったかのように、内側へと吸い込まれ、ひしゃげていく。
鈍い金属音が幾度となく響き、卵型だったそれが捻じれた一本の棒のように変化した時。
高い音を発して、その上下から針が伸び、ひしゃげていた棒状の部分が風船のように張り出した。
それは、見慣れた形だった。
魔女の源、グリーフシードの形だった。
先ほどまで魔女の結界があった廃ビルの一室に、美樹さやかはあった。
今はもうない。
そこにはかって美樹さやかであったものの抜け殻と、美樹さやかであったものの成れの果てがあった。
◇ ◇ ◇ ◇
時を数時間遡る。
夕闇の迫る成田国際空港に、エミレーツ航空5096便が到着していた。
5096便、すなわちドバイ発のボーイング777型を下りる黒髪の少女は、感情の起伏を忘れ去って久しいその顔に、ほんの僅かの笑み――口の端を歪めるだけのもの――を浮かべた。
そして、心の中で呟いた。
――今度こそ倒してみせるわ。ワルプルギス。