軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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今回の話は主人公の"彼"、胡桃ちゃん、みーくんの三人がゲンジ君の待つ屋敷へと戻ったところからスタートします!

屋敷への道中の話も書こうかと悩みましたが、それだとまた話が長くなるのでカット!一連の話も佳境に入ってきている為、サクサク進める予定です(>_<)


文字数が多少多めになっていて見辛いと思いますが、ゆっくりとご覧下さいm(__)m


八十五話『ひとりきり』

 

 

 

 

 

 

…バタン

 

弦次「…早かったな」

 

屋敷内の広間…。弦次は椅子に座ったままそう言って、彼と美紀と胡桃を順番に見つめる。するとすぐに由紀と悠里がいない事に気付き、静かに呟いた。

 

 

 

弦次「由紀さんと悠里さんは…奴らに捕まってしまったか」

 

「…ッ!!」

 

三人を見てから呟いた弦次のその言葉を聞いた直後彼は一気に駆け出し、椅子に座る弦次を地面へと押し倒す。椅子はその際に倒れ、ガタンと大きな音をたてた。

 

 

 

弦次「っ!?」

 

「決まりだな。美紀さんの言ってた通りだ…」

 

弦次「……」

 

地面へとうつ伏せに押さえつけられる中、弦次は視線を美紀へと向ける。すると美紀は側へと歩み寄り、その事実を確認する為に弦次へ問う。

 

 

 

美紀「ゲンジさん、やっぱり…あなたはあの人達の仲間ですね?」

 

弦次「…言い訳にしかならないと思いますが、俺はアイツらの仲間なんかじゃない。…ただ仕方なく協力しているだけです」

 

胡桃「仕方なく?」

 

弦次「ええ、アイツらはここを襲わないのを条件に物資を要求してきていて、俺はそれに応じてただけ…それだけだった…」

 

「もう少し分かりやすく説明してくれると助かるんだけどな」

 

彼がそう言い放つと、弦次はその顔を覗いて恐る恐る答えた。

 

 

 

弦次「とりあえず離してくれるか?暴れたりしないから…」

 

「………」

 

胡桃「…離してやれよ。どうせ逃げられないしな」

 

胡桃の言葉を聞いた彼はそっと弦次から離れ、そのまま美紀達の横に立つ。その後弦次は立ち上がり彼等と真っ直ぐに向かい合うと、あの連中と自らの繋がりを語り始めた。

 

 

 

弦次「…俺がアイツらと出会ったのは二週間前。一人で外出してる時に出くわしてしまった。…アイツらはこのデカイ屋敷に住んでいる俺達に前から目を付けてたらしく、外で待ち伏せされてたんだ」

 

弦次「相手は五人もいたし、争う前に結果は分かっていた。俺は間違いなく殺されると思ったが、物資を定期的に渡すなら見逃してやるとアイツらは提案してきた。もちろん、俺はそれの提案に乗った。物資を分けてさえいればこれからもこの屋敷で暮らせるし、お嬢や白雪を守る事が出来るからな」

 

美紀「じゃあ、この屋敷の物資が少しずつ無くなっていったのはゲンジさんがその人達に渡していたからなんですね」

 

美紀が話に割り込むようにして尋ねる。

予備の物資が少しずつ無くなっていく事を未奈は不気味に思っていたが、それは弦次の手によるものだった。

 

 

 

弦次「ええ。予備の物資ならバレないと思ったから盗っていたのに…、お嬢はしっかりと管理用の記録をとっていた。あれには驚いた」

 

胡桃「その言い方から察すると、ミナやシラユキは何も知らないのか?」

 

弦次「もちろん何も知りません。あの二人はここにいれば平和だと思って暮らしているのに、余計な心配はかけたくなかった…」

 

胡桃「………」

 

事情を知った胡桃は何も言えずに口を閉じる。

一方で弦次はというと、何か言いたげに彼をじっと見つめていた。

 

 

 

「…何か?」

 

弦次「…俺は皆が寝静まった夜中に門の前で奴らと待ち合わせして物資を渡していたんだが、その時に聞かれたんだ…『住人が増えたのか?』ってな。たぶん、外に停めてあったあのキャンピングカーを見られたんだろう」

 

胡桃「もしかして、その時にあたしらの名前を教えたのか?」

 

弦次「…ええ。正直に言わなきゃ何されるか分からないし、それに言ったって問題はないと思っていた…。でも、一つだけ思いもよらない誤算があった…」

 

「………」

 

弦次「あんた…奴らと知り合いだったんだな」

 

弦次は彼を見つめ、ため息混じりに呟く。

 

 

 

「知り合いって言えるほど深い仲じゃない。ほとんど他人だよ」

 

弦次「けどアイツらの方はそう思っていない。今のあんたにとても興味があるみたいで仲間にしたがっている。おかげで…お嬢はアイツらの手の中だ」

 

ポツリと呟かれたその言葉に対し、胡桃達三人は驚く。

 

 

 

「なっ!?」

 

美紀「ミナさんまで!?」

 

胡桃「どうしてっ!?ミナはあんたと一緒にいただろう!?」

 

 

弦次「俺(みずか)ら、お嬢をアイツらの元へと連れていった。一時とはいえ、お嬢をアイツらの手に渡すのは嫌だったが、そうしないと力ずくでここに攻め込むと脅された。そうなれば俺達は恐らく全滅……運が良くても誰かが必ず死ぬだろう。それだけは絶対に避けたかった」

 

胡桃「お前…アイツらにミナを渡して、無事に帰ってくると思ってるのか!?」

 

弦次「そう信じるしかない。逆らえばどのみち殺されるんだ。なら、奴らが約束を守る可能性にかけるしかない。あんたを奴らの隠れ家に届ければ、お嬢は返してくれる約束になっている」

 

弦次は彼を見つめてそう告げる。

つまり、彼があの連中の元にさえ行けば未奈は戻って来れるという事だ。

 

 

 

胡桃「__を…アイツらの所に届けるだと?」

 

弦次「ええ。そうすればお嬢は戻って来れるし、俺達はまた平和に過ごせる。まぁ、今回の事でお嬢にはかなり嫌われただろうけど…」

 

「あんたは…奴らの隠れ家の場所を知っているんだな?」

 

弦次「知っている。ここからそう遠くはないから、徒歩でも簡単にたどり着けるハズだ」

 

「そこには、由紀ちゃんとりーさんもいるよな?」

 

弦次「あぁ。絶対にいる」

 

「…よし。その場所は?」

 

彼は淡々(たんたん)とした様子で弦次と会話を進め、弦次からその場所を聞き出す。そんな彼を見ていた美紀と胡桃は不安を感じ始めていた。"もしかしたら、彼は一人でそこへ向かうつもりでは…"そう思ったからだ。

 

 

 

胡桃「…おい、一人で行くつもりじゃないよな?」

 

「………」

 

弦次「奴らは俺が彼を届けるにあたり条件をつけました。"隠れ家には彼一人だけで向かわせる事"…。もしこれを破って仲間を連れてきた場合、人質の誰かが殺されてしまう可能性があります」

 

美紀「ッ!」

 

胡桃「一人でだと…?そんなのっ…危険過ぎるだろ!!」

 

胡桃は弦次の胸ぐらを掴み、大きな怒声を飛ばす。

美紀も彼を一人で向かわせるのには大きな不安があったが、それでもどうにか平静を保っていた。

 

 

胡桃「一人でなんて絶対にダメだ!バレないようにして、あたしも一緒に…!」

 

「大丈夫だよ。上手くやるから…」

 

胡桃「な…っ…!」

 

穏やかな表情を見せて、彼は胡桃を弦次から引き剥がす。

だが胡桃は彼を一人で向かわせるのには賛成できず、大きな声で反論した。

 

 

 

胡桃「上手くなんて…無理だろ!!そんなのっ!!相手は人質までとっていて、更にお前が一人で来ることを知ってるんだぞ!!そんな状況でどう上手くやるんだよ!!」

 

「………」

 

美紀「…先輩」

 

美紀はそっと胡桃の背後に歩み寄り、その様子をうかがう。

その拳はプルプルと震えていて、かなり興奮している事が分かった。

胡桃はそのまま囁くような小さい声で、後ろに立つ美紀へと尋ねる。

 

 

 

胡桃「美紀は…それで良いと思ってるのか?」

 

美紀「えっ?」

 

胡桃「こいつを一人で向かわせるのは…正しい判断だと思うのか?」

 

美紀「…えっと……」

 

正直に言うと、どうすれば良いのかまだ分からない。

彼だけを敵地へと向かわせるのは確かに危険だが、他に良いアイデアも、それを考えるだけの時間もない。このままダラダラと選択を先伸ばしにしていても由紀達に危険が及ぶだけ…。やはり、彼を向かわせるしかないのかも知れない。

 

美紀は頭の中でそう結論付け、静かに口を開いた。

 

 

 

 

美紀「…はい。ここは、__さんに任せるしかないと思います…」

 

胡桃「ッ!!」

 

胡桃は勢い良く振り返り、美紀をギリッと睨んだ。

美紀ならば、絶対に自分の意見に賛同してくれると信じていたからだ。

 

 

 

 

胡桃「一人で行かせて…戻って来なかったらどうする!?」

 

美紀「それでも…信じるしかないです」

 

胡桃「一人で皆を助けてそのまま戻ってくるなんて、絶対に無理だって分かるだろ…?」

 

美紀「それでもっ…信じるしか…」

 

胡桃「おんなじ事しか言えねぇのかよ…!!ふざけやがって!!!」

 

ガタンッ!!!

 

怒鳴り声をあげ、胡桃はそばに転がっていた椅子を蹴飛ばす。

彼女のそんな様子を見た美紀は肩を震わせながらも、退く事なく声を張り上げた。

 

 

 

美紀「だって…それしかないじゃないですかっ!!奴らの言い付けを破って__さんについていったとして、もしそれがバレたらどうするんですっ!?」

 

胡桃「そ、それはっ…」

 

美紀「そんな真似をしてバレたら、その瞬間に由紀先輩かりーさんが殺されてしまうんですよ!?それでもいいんですかっ!!?」

 

胡桃「良いわけねぇだろっ!!!あたしはこいつが一人で行くのは危険だって言ってんだよ!!!」

 

美紀「だとしてもっ、今はそれしか方法が無いんですっ!!」

 

胡桃「ッ…!!お前はこいつが戻って来なくても良いと思ってんのか!!?」

 

側で立ち尽くす彼を指さしてから美紀の肩を掴み、胡桃は怒鳴り声で問う。美紀はそれに対して涙目になりながらも、強く答えを返した。

 

 

 

美紀「私だって嫌ですよっ!!でも…でもっ…!そうするしかないからっ……」

 

そう言い終えた時、美紀の瞳から一筋の涙がこぼれた。

美紀は慌ててそれを右手で拭い、顔をうつむける。胡桃はそれを見た途端に虚しい気持ちになり、美紀の前から離れて広間の壁に背中を寄りかけた。

 

 

胡桃「……くそっ!」

 

 

…ガチャッ

 

部屋の扉がそっと開き、そこから白雪が顔を覗かせる。

騒がしかった為様子を見に来たらしく、彼女はトコトコと胡桃の元へ歩み寄った。

 

 

 

白雪「…くるみ。どうかしたの?」

 

胡桃「……なんでもねぇ。部屋に戻ってろ」

 

白雪「?」

 

 

俯いたまま呟く胡桃を不思議そうに見つめ、白雪は首を傾げる。そんな彼女を見た彼は弦次へしか聞こえぬよう、小さな声を出した。

 

 

 

「あの子はまだ何も知らないんだよな?」

 

弦次「…あぁ。何も知らない。シラユキは今も、お嬢が部屋で眠っていると思っているハズだ」

 

「……そっか。じゃあ、あの子の為にもミナさんを連れ戻さなきゃな」

 

弦次「お前…俺の事怒ってないのか?」

 

「そりゃあ怒ってるよ。アンタにハメられたせいで胡桃ちゃんは怪我したし、由紀ちゃんとりーさんはさらわれた。怒ってない訳がない…」

 

弦次「……だよな」

 

「…でも」

 

実際、彼は心の内で弦次に対してかなり強い怒りを抱いていた。

弦次が自分達をハメたせいで胡桃は傷を負い、更に由紀と悠里はさらわれたのだから…。しかし彼がその怒りを出来る限り抑えているのは、弦次は脅されていただけだと知ったから…そして、奴らの狙いが自分だと知ったからだった。

 

 

 

 

「…奴らは僕を狙っているからこんな事をし始めた。だとすれば不本意ながら僕にも多少の責任がある。それに巻き込まれた彼女達は、絶対に助けなきゃな…」

 

弦次「……」

 

「とりあえず今は時間が無いし、アンタとの話は全部終わってからにする。それまで胡桃ちゃん達をここに置いて行くけど、手を出すなよ?」

 

弦次「…あぁ。それは約束する」

 

彼は弦次のその言葉を聞くと、ゆっくり扉へ歩み寄っていきそのドアノブを捻る。扉を開ける前に一度胡桃と美紀の方へと視線を移したが、二人は俯いたままで顔を合わせてはくれなかった。彼はそれを少しだけ残念に思いながら、静かにその部屋をあとにして廊下へと出た。

 

 

…バタン

 

 

 

 

胡桃「…ゲンジ。シラユキを見ててくれ」

 

弦次「ん?あ、あぁ…シラユキ、こっちこい」

 

白雪「…うん」

 

彼が部屋から出た直後、胡桃は側にいた白雪を弦次に任せ、駆け足で彼のいる廊下へと向かう。そしてそれは胡桃だけでなく、美紀も同じだった。

 

 

美紀「…っ」

 

 

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

 

胡桃「おいっ!」

 

「…なに?」

 

背後から駆け寄って来た胡桃に答える為に彼は一度足を止め、くるっと振り返る。声こそあげていなかったが、美紀もまた彼を追ってきていた。

 

 

 

胡桃「そのっ…ほんとに、行くんだよな?」

 

「うん。ついてきちゃダメだよ?」

 

胡桃「分かってるよ…。もう仕方がないから、全部お前に任せる」

 

「………」

 

美紀「絶対に戻ってきて下さい。由紀先輩とりーさんとミナさん…みんなと一緒に…」

 

潤んだ瞳を彼に向けながら美紀は彼の元へ歩み寄り、そっとその手を握る。彼は一瞬その行動にドキッとしたが、状況が状況だからか素直に喜べなかった。

 

 

 

美紀「絶対…無事に帰ってきて下さいね…。待ってますから…」

 

「…分かりました。みんなを連れてすぐに戻りますから、美紀さんはしっかりと留守番していて下さいね?」

 

美紀「…はいっ」

 

彼は握られていない方の手で彼女の頭を優しく撫でて、にっこりと微笑む。美紀はその笑顔に答えるように微笑み、握っていた手を静かに離した。

 

 

胡桃「あのっ…えっと……」

 

美紀が彼から離れた直後、入れ代わるようにして胡桃は彼の前へと歩み寄った。しかし彼女は中々伝えたい言葉を言えず、ただあたふたとしていた。

 

 

 

「…胡桃ちゃん?」

 

胡桃「あ…あたしっ……お前に伝えなきゃいけない事があるんだ…」

 

「伝えなきゃいけない事?」

 

胡桃が意を決して放った言葉は意味深なもので、彼はなんとも言えない表情をする。胡桃は彼のそんな顔を見つめながら、続けて言葉を放っていった。

 

 

胡桃「…そ。伝えなきゃいけない事…。今は言えないけど、帰ってきてきたら絶対に言うよ。だからさ…必ず戻ってこいよ…」

 

プイッと顔を逸らし、胡桃はそのまま彼に背を向ける。

そんな彼女がおかしく感じた彼は少しだけ笑うと、返事を返しながらその肩を手で引いて彼女の顔を覗き見た。

 

 

「ははっ…うん、絶対に戻っ――」

 

胡桃「…っ」

 

覗き見た胡桃の表情を見た途端、思わず言葉が途切れてしまう。

こんな表情をしているとは、微塵も予想していなかったからだ。

 

 

 

 

「……胡桃ちゃん」

 

胡桃「っ…み、見るなよっ!」

 

"その表情"を彼に見られた胡桃はすぐに顔を背け、そのままくるっと背中を向ける。その後、胡桃はもう彼に顔を見せる事をせず、背を向けたままで語りかけた。

 

 

 

胡桃「みんな連れて帰ってきてよ。誰か一人でも欠けるのは…絶対にイヤだからさ」

 

「…了解。がんばってくるよ」

 

彼は背を向けたままの胡桃に言葉を返してから、こちらをじっと見つめている美紀へと軽く手を振る。それに応えて美紀がパタパタと手を振るのを見届けてから、彼は一人…屋敷の外へと向かって歩き出していく。

 

美紀は彼が廊下の先を曲がり、姿が見えなくなるまで見送ったが…胡桃は結局、最後まで彼に背を向けたままでいた…。

 

 

 

 

 

 

美紀「……先輩…」

 

彼がいなくなった後でも胡桃はピクリとも動かず、ただ顔をうつむけていた。そんな彼女を美紀が気にかけ、そっと声をかけると、胡桃は静かにその場にしゃがみこんだ。

 

 

 

胡桃「なぁ…、あいつ、帰ってくるよな?」

 

自らの膝に顔をうずめながら、胡桃は弱々しい声を出す。

 

 

 

美紀「…ええ、絶対に帰ってきますよ。由紀先輩にりーさん、それにミナさんも連れて…絶対に…」

 

ただ胡桃を元気付ける為だからではなく、本当にそうなると信じているから…。美紀は僅かに微笑みを浮かべながら囁くように答え、少し屈んでから一人うずくまる胡桃の背に手を当てた。

 

 

 

胡桃「………だよな」

 

膝にうずめていた顔を上げ、その顔を背後にいる美紀へと向ける。

胡桃は彼女のその笑顔に応えるように、自らもにっこりと笑った。

 

 

 

胡桃「美紀…さっきはゴメンな。あたし、怒鳴ったりしちゃって…」

 

美紀「…いえ。気にしてませんよ」

 

そう答えてくれた美紀の優しさに感謝しながら、胡桃はそっと立ち上がる。そうして顔を合わせた途端、美紀は一瞬だけ胡桃から目を逸らし、冗談混じりな笑みを浮かべた。

 

 

 

美紀「…まぁ、ちょっと怖かったですけどね」

 

胡桃「うぅっ…、ほ…ほんとにゴメン…」

 

 

美紀「……いいですよ。こんな状況ですからね、それだけ不安にもなります」

 

胡桃が申し訳なさそうに頭を下げて謝ると、美紀は返事を返しながら彼が歩いていった廊下の先へと視線を移す。

 

 

美紀「あの人なら…絶対に大丈夫です。私たちは、ただ無事を信じて待っていましょう」

 

胡桃「…お前、意外とあいつの事を信頼してんだな?」

 

美紀がここまで彼を信頼していたという事が意外で、胡桃は思わず目を丸くする。そうして驚いている胡桃の表情を横目でチラッと覗き込み、美紀はポツリと呟いた。

 

 

 

美紀「そう…ですね。自分でもびっくりです」

 

ふふっと可笑しそうに笑うと、胡桃もそれにつられて笑う。

二人は少しの間笑い合うと、弦次と白雪のいる部屋へと戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~

 

 

 

…スタッ!

 

二人が部屋へと戻った頃、彼は屋敷の門をよじ登り、そのまま外へと出たところだった。

 

 

「…ふぅ」

 

外へと出てから一度振り向いてその屋敷を見つめると、先程別れ際に見てしまった胡桃の表情を思い出す。

 

あの時、彼が胡桃の肩を引いて見てしまったその表情は…普段はあまり見せない"泣き顔"だった。彼は弦次から聞いた連中の隠れ家へと駆け足で向かいながら、胡桃は何故泣いていたのかを考えた。

 

 

 

(あれは…由紀ちゃん達が心配なあまりの涙だったのかな。それとも、どんどん話を進めて一人で行くのを決めた僕に呆れての涙だったり……。いや、もしかしたら僕を心配して泣いてくれたのかもな。だとしたら、どれだけ嬉しいか…)

 

 

「………」

 

 

(なんにせよ、最後に見た胡桃ちゃんの顔が泣き顔ってのは嫌だからな。絶対に、みんなを連れて無事に帰ってこよう…。そうすれば、今度は笑ってくれるよね?)

 

 

 

 

 

 





胡桃ちゃん、みーくんを屋敷に残し、彼は一人で由紀ちゃん達の救出に向かいました。相手方は由紀ちゃんやりーさんといった人質をとっているので彼はかなり不利ですが…それでもどうにかして全員助けるつもりでいるのです!


次回の更新は出来るだけ早めにしたいですが、また遅れるかも知れません(汗)ご了承下さいませm(__)m

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