少し短めになっております…m(__)m
弦次「…ここですね」
弦次の案内の元、車はスーパーにたどり着く。
そこまで大きくはない建物だが、中は薄暗い…。奥まで行くならライトが欲しいところだろう。
バタン…
四人は車から降りるとすぐに辺りを見回し、安全を確認する。
とりあえず、すぐそばに"かれら"の姿はない
弦次「ここは奴らの数が少ないですので、比較的安全なはずです。もちろん…大きな音をたてたりしたら寄ってくるでしょうから、警戒は緩めないで下さいね」
「了解。それで、物資はどこら辺に?」
弦次「この中の奥…そこにある棚の一角にありました。前にここに来た時から1週間程度しかたってないから、まだあるはず…」
由紀「じゃあそれを取りにいけば良いんだね?ちゃんとカバンも持ってきたし、行こっか!」
悠里「由紀ちゃん、ちゃんとカバンを持つ前にちゃんとライトを持ってね。足下が見えないかも知れないでしょ?」
弦次「ええ、この建物…中がけっこう暗いです。明かりは持っといた方が良いかと…」
由紀「じゃあ、わたしとりーさんで照らしといてあげよっか。二人は手ぶらの方が良いもんね?」
悠里「そうね。そうすればいざって時に二人はすぐ動けるし…」
弦次「ありがとうございます。すごいな…、お嬢はそこまで気を使えないんだが…」
由紀達の細かい気配りに驚いたところで、弦次達は中へと入る。
入口付近は綺麗に漁られているが、奥にあるという物資はまだ残っているのだろうか?そんな考えを胸に、彼らは奥へと進んでいく…。
悠里「足下…気をつけてね」
「…はい」
建物内は窓が少なく、外からの光をほとんど取り込んでいない。
奥に進めば進むほど、辺りは暗くなっていく。悠里達が照らしてくれていなかったら、1m先が見えるか見えないかといったところだ。
由紀「静かだね…」
中はとても静かで、唯一聞こえるのといえば彼女達の足音くらいのものだった。今のところ…"かれら"の気配はない。
弦次「…あった、あそこです」
奥にあった棚の一つを弦次が指差す。由紀がそこをライトで照らすと、いくつかの水や食料などが置かれている棚があった。
悠里「来たかいがあってよかったですね。」
弦次「ええ、まったくです」
物資の量は中々のもので、確かに一人では全てを持ち帰る事は出来ない量だ。それらを見た悠里は自分達の手元を照らせる場所にライトを置くと、持ってきたカバンを広げ…その中に必要な物資を詰め始める。由紀もそれを手伝い、その間彼と弦次は周囲を警戒していた。
由紀「…これ、お茶かな?」
悠里「お茶にはお茶でしょうけど…ダメになってるわね。その辺に置いときなさい」
由紀「は~い…あっ、これは?」
悠里「ん?それは――」
一つ一つチェックしながら物資を詰める悠里と由紀…。
弦次はそんな二人を一瞬だけチラッと横目で覗き、微かに微笑む。
弦次「…仲間が多いと楽だな」
「未奈さんに探索を手伝ってもらった事は?」
弦次「あるにはある…。でもお嬢はのほほ~んとしててなんか危なっかしい…。白雪は白雪で連れていっても疲れるだけだし…、こんなに安心感のある探索は初めてかも…」
「苦労しているようで…」
弦次「ま、こんなのは苦労の内に入らないよ。それより…さっき物音が聞こえたな…。」
「…聞こえたかな?僕は気づかなかったけど」
悠里「どうかした?」
「物音が聞こえたみたいです」
悠里「物音?気づかなかった…由紀ちゃんは?」
由紀「わたしも気づかなかった。どんな音?」
弦次「……缶が転がるような音です。気になるから、少し見てくる…」
悠里「危なくない?」
弦次「慣れてるんで平気です。ライトだけ借りていっていいですか?」
悠里「ええ、かまわないけど…」
弦次「ありがとうございます。すぐに戻りますんで…」
そばに置いてあったライトを手に取り、弦次は一人歩き出す。
一時的とはいえ、弦次がいなくなった分より強い警戒を心がけなくてはならない…。由紀と悠里が物資を詰める間、彼は一人で周囲を警戒したが…特に何も現れず、何の物音も聞こえなかった。
聞こえた音といえば、弦次がどこかに向かっていった時の足音と、悠里達の小さな話し声くらいのもの…。それ以外は何も聞こえない、本当に静かな場所だったが…。
悠里「さて、こんなものかしらね…。ゲンジさんはまだ?」
由紀と共に物資を詰め終えた悠里がカバンを閉じ、ライトを手にして辺りを見回す。あれから5分ほど経ったが…弦次は戻らない。
「まだ、戻ってきませんね…」
由紀「大丈夫だよね?ちょっと心配…」
悠里「争ったような感じの音は聞こえてこなかったからたぶん無事だとは思うけど、どこまで行ったのかしら…」
念のため、その場でもう2分ほど待ってみるが、それでも弦次は戻らない…。彼は少し嫌な予感がして、一度由紀達だけを外に送り出す事にした。
「……一度外に出ましょう。二人を車のそばに戻したあと、僕はここに戻ってあの人を探します」
悠里「…わかった。由紀ちゃん、戻りましょう」
由紀「う、うん…」
彼は由紀と悠里を連れ、足早にスーパーから外へと出る。外に出るや否や、彼は二人を車のそばに残し、再び中に戻ろうとした…
悠里「念のため、車のエンジンはかけておくから…」
由紀「気をつけてね、すぐ…戻ってきてよ?」
「はい、すぐに――」
弦次「あっ、やっぱり外に出てたんですね。」
悠里「えっ?」
由紀「お?」
「…あ?」
由紀達を外に届けた彼が振り返ると、ちょうどスーパーの中から弦次が出てくるところだった。見た感じでは怪我一つなく、無事のようだ…。弦次は悠里から預かったライトを彼女に返すと軽く頭を下げ、申し訳なさそうな顔をした。
弦次「すいません…思いのほか手こずってしまって」
「手こずった?やっぱり、なんかいましたか?」
弦次「奴らが2体…やっぱり、暗いと戦いづらいなぁ」
悠里「はぁ…気をつけて下さいよ?ほんとに心配したんですから…」
弦次「ええ、これからは気をつけます」
悠里は弦次の言葉を聞いてから車に乗り込み、エンジンをかける。
弦次「………」
エンジン音を響かせながら微かに震える車を見つめ、弦次がボーっとしていると、背後から誰かがその肩を叩く。
驚いた弦次がゆっくりと振り向くと、そこには微笑む彼がいた。
「まぁ、とりあえず無事でよかったですよ」
弦次「わるいね。いろいろと…」
「いえ…、お気になさらず~」
弦次は車に乗り込む彼を見送った後、自らもそれに続こうと足を動かす。
だが乗り込む直前、少し後方でどこかを見つめながら動かない由紀に気がつき、そっと声をかけた。
弦次「由紀さん…どうしましたか?」
由紀「ん~。あのね、さっきあそこに誰かいて、こっちを見てたような気がしたんだけど…」
弦次「………」
由紀の指さす方向へと目線を動かす弦次…そこにあったのはスーパーの向かいにある三階建ての小さなビルであり、由紀はそこの2階部分…窓際を指さしていた。
弦次「………」
由紀「見間違い…かな?誰もいないね」
弦次「……ええ、そうだと思いますよ。さぁ、はやく車に乗りましょう」
由紀「あっ、うん!」
じっくりとそこを見て、誰もいない事を確認してから二人も車に乗り込む。その直後に車は悠里の手によって走り出し、その場所をあとにした…。
とりあえず無事に探索を終えたので、彼らはこのまま未奈ちゃんの家へと帰る予定です!
次回は家で待つ胡桃ちゃん達の留守番風景から始まると思いますので、ご期待下さいませm(__)m