軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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ちょっと多忙で更新遅れました!(汗)

本当に申し訳ないです(T_T)


次回は早めの更新を心がけます!!



では、彼の復讐劇…その1をお楽しみ下さいm(__)m


五十三話『ふくしゅう-その1-』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠里「ん…んんっ」

 

車内…窓の隙間から外の朝日が漏れ、悠里は目を覚ます。

 

 

 

 

胡桃「おっ!りーさん、おはよー。」

 

彼女よりも先に、既に起きていた胡桃がベッドの上であぐらをかきながら挨拶をした。

 

 

 

悠里「おはよう…今朝は早いのね?」

 

 

 

胡桃「ん…、まぁね」

 

 

 

悠里「他のみんなはまだ寝てるわね…。」

 

 

 

胡桃「あぁ…今日もここで一日休むんだろ?」

 

 

 

悠里「ええ。物資のたくわえもまだ十分に足りてるし…たまにはまとまって何日か休むのも良いでしょう」

 

 

 

悠里「…延長戦もやらなきゃだしね」

 

 

 

胡桃「あのゲーム…疲れんだよなぁ……」

 

 

 

 

 

そう言ってからため息をつき、胡桃は座席に座って眠る彼を見つめる。

 

彼女達の仲間になったばかりの時は寝づらそうにしていた彼だが…

 

今は慣れたもので、毛布をかけながら気持ち良さそうに眠っていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

同じ広場に滞在して二回目の朝、ゲームの延長戦が…

 

 

 

 

 

 

 

いや…延長戦という名の復讐劇が始まる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その後、全員が起床し…

 

朝食を済ませた後に悠里が告げる。

 

 

 

 

 

 

 

悠里「ええっと…今日もここで一日休みましょう」

 

 

 

悠里「まだ物資に余裕もあるし…たまには二日間続けて休むのも良いと思わない?」

 

 

 

 

由紀「うん!いいと思うよ」

 

 

 

美紀「そうですね…また明日からがんばればいいですし、ゆっくりしますか。」

 

 

 

胡桃「あたしもそれが良いと思うよ。」

 

 

 

彼女達は一人残らず悠里の案に賛成する。

 

何故なら、今日は延長戦があるから…

 

そしてその事を知っている彼も当然それに賛成した

 

 

 

 

「僕も良いと思います。たまにはね…」

 

 

 

 

由紀「また今日ものんびりできる~♪」

 

ご機嫌な表情を浮かべ、由紀は鼻歌を歌う。

 

 

 

胡桃「さてさて…じゃあ、あたしは少し休憩~」

 

 

悠里「私も~」

 

 

 

 

 

胡桃・悠里(作戦たてなきゃいけないからね!)

 

 

二人はお互いアイコンタクトをし、脳内で同じことを考えた。

 

 

 

 

 

美紀(…昨日と同じ順番なら、私が一番手か。)

 

由紀・胡桃・悠里がのんびりし始めたのを見て、美紀は昨日と同様に彼を誘う。

 

 

 

 

美紀「あの…すいません」

 

 

 

「…なんですか?」

 

 

 

美紀「昨日も頼みましたが…散歩行きませんか?私と…」

 

 

 

(早くも動いたな…思えば昨日の散歩中の言動も、全てはゲームに勝つためだったって事か)

 

頭ではそんな事を考えつつも、彼は美紀に爽やかな笑顔を見せて答える。

 

 

 

 

「良いですよ。行きましょう♪」

 

 

 

美紀「良かったです。二日も続けてすいません…習慣付けたくて。」

 

 

 

 

胡桃「なに?出掛けんの?」

 

 

 

美紀「はい、二人で散歩行ってきます。」

 

 

 

 

 

胡桃「おぉ…気を付けてな~」

 

 

 

悠里「気を付けて~」

 

 

 

由紀「ごゆっくり~」

 

三人は席に座りながら、パタパタと手を振って美紀と彼を見送った。

 

 

 

 

(全てを知った上で落ち着いて見ると…みんなの言動が不自然に見える。)

 

 

(由紀ちゃんとか普段なら絶対『私もついてく~!』とかって言うだろうに…)

 

 

 

 

「じゃ、行きますか。」

 

 

美紀「はい!」

 

 

 

 

バタン…

 

 

ドアを開け、二人は外に出た。

 

 

 

 

 

 

「コースは…昨日と同じでいいですか?」

 

 

 

美紀「はい!大丈夫ですよ。」

 

 

美紀はそう答え、彼ににっこりと笑顔を見せる。

 

 

 

 

(カワイイ笑顔だけど…この裏に隠された真実を知っているせいで素直に喜べない…)

 

 

 

 

美紀「どうしました?」

 

 

 

「いえ…、行きましょ。」

 

 

 

彼は美紀を連れ、昨日と同じコースをのんびりと歩いていく…

 

美紀は少しの間無言で歩きながら、昨日以上に彼をときめかせる手段を考えていた。

 

 

 

 

美紀(何をしたらこの人はドキドキするんだろ…。呼び捨て作戦は昨日使ったし…何よりあれは私も恥ずかしいからな…)

 

 

美紀(私が恥ずかしくなくて、__さんがドキドキする行動か…。むずかしいなぁ…)

 

 

美紀(あ…。私をどう思ってるか聞くのはどうかな?……ダメだ、これも恥ずかしい。)

 

 

美紀(じゃあ…ええっと……ええっと~…)

 

 

 

 

「美紀さん…どうしました?」

 

 

 

黙りっぱなしの美紀に彼が声をかける。

 

美紀は不意に話しかけられて少しだけ驚くが、すぐに笑顔で答えた。

 

 

 

 

美紀「なんでもないです。少し考え事してただけですから。」

 

 

「考え事。…何を考えてたんですか?」

 

 

 

 

美紀「えっ?いや…大した事じゃないですよ!」

 

 

 

「……そうですか」

 

 

 

美紀「散歩…付き合ってくれて本当にありがとうございます。私一人だと危ないですが、あなたが一緒だと安心できますね。」

 

 

 

「遠慮なくお誘い下さいね。僕はいつでも大丈夫ですから」

 

 

 

美紀「ありがとうございます。それと…」

 

 

 

「はい?」

 

 

 

美紀「昨日は…変な事頼んじゃいましたね…。すいません…」

 

 

 

「変な事?」

 

 

 

美紀「呼び捨てしてほしい…とか言ってしまった事です。本当に…困らせましたよね?」

 

道路の真ん中で歩みを止め、美紀は彼に謝る。

 

 

 

 

 

「全然困ってませんよ…平気です。」

 

 

彼は少しだけ微笑んでから優しい声で答える…

 

美紀はそんな彼を見て心を痛めた。

 

 

 

 

美紀(こんなに優しくしてくれるのに…私達はこの人の気持ちをもてあそんでしまってるんだ。)

 

 

美紀(本当にすいません…。終わったら謝るので、今は私達のゲーム相手になっていて下さい……)

 

心の中で一度彼に謝ると、美紀は彼をときめかせようと照れたような笑みを浮かべて言った。

 

 

 

 

 

美紀「憧れてたんです…。男の人に…呼び捨てで呼ばれるの。」

 

 

美紀「もちろん、男の人なら誰でもいい訳ではありません。素敵な男性に呼ばれる事が…憧れでした。」

 

 

美紀(結局こんな恥ずかしい台詞になってしまった……。)

 

 

 

美紀(言ってしまった以上、恥ずかしがっていても仕方がない…勝ちにいこう!)

 

 

 

 

 

「それ…僕で良かったんですか?」

 

 

 

 

美紀「確かに、あなたは少し変わってますが…。私は…とても素敵な男性だと思いますよ?」

 

 

 

彼をときめかせる為…

 

美紀は滅多に見せない満面の笑みを見せる。

 

 

 

 

だが…以外にも彼はそれに動じなかった。

 

 

 

「そうですか…ありがとうございます。」

 

 

 

 

 

美紀(ん?昨日はあれだけおどおどしてたのに…今日はリアクションがイマイチ…。私の台詞、ちょっとわざとらしかったかな?)

 

 

「………」

 

 

 

笑顔を引っ込め、美紀は少し不満そうな顔をする。

 

その後、散歩を再開し…

 

車の近くまできてもう散歩も終わりというところで…彼は再び歩みを止め、立ち止まる。

 

 

 

(そろそろ始めるか…)

 

 

 

 

 

美紀「…どうかしましたか?」

 

 

 

「昨日は恥ずかしがってしまいましたが…今日は言えます。」

 

 

 

美紀「え?…何をですか?」

 

 

 

 

 

「僕なんかを、素敵な男性って言ってくれて…」

 

 

 

 

 

 

「本当にありがとう……美紀」

 

 

 

 

彼は美紀の前に立ち、その顔を見つめて彼女を呼び捨てにした。

 

昨日のように恥じらいながらではなく…

 

ハッキリと…彼女の目を見つめながら。

 

 

 

 

美紀「ちょ、ちょっと…どうしたんですか!?」

 

頬を赤く染め、美紀は少しだけ後ずさりする。

 

 

 

 

「どうしたも何も…憧れなんでしょう?」

 

 

 

美紀「た、確かにさっきはああ言いましたけど…それは……」

 

 

 

「後輩にさん付けするのも、他人行儀で嫌だなぁって思っていたところだし…」

 

 

 

静かに呟きながら、彼は後ずさりする美紀の方へと一歩一歩ゆっくりと歩み寄る。

 

美紀は彼に謎の違和感を抱き、一定の距離を保とうとするが…

 

 

 

ドッ…

 

 

 

美紀「っ!?」

 

後ずさりし過ぎてコンクリートの塀に背中をぶつけてしまい、彼女は逃げ場をなくした。

 

 

 

 

美紀「さん付けでも…ぜ、全然他人行儀じゃないですよ?わ、私はさん付けで呼ばれるのも気に入って…」

 

 

 

「美紀がなんて言おうと…僕はもう、さん付けはイヤだ…。」

 

彼はそう言って、美紀の顔の真横…彼女の背後の壁に手をつけた。

 

 

 

 

 

美紀「ちょっ…!?」

 

 

 

 

(これぞ奥義…壁ドン!!かなり恥ずかしい技だけど…ここで照れた様子を見せてはいけない!)

 

 

(これは復讐なんだ…僕をときめかせにくる彼女達を……逆にときめかせてやる!!)

 

 

 

 

 

彼の復讐…

 

それは、自分をときめかせに来る彼女達にことごとくカウンターを仕掛けていく事だった。

 

自分がゲームの真実を知っていると彼女達にバレていない以上…彼はどこまでも攻めに転じる事が出来る。

 

今の彼は…無敵だった。

 

 

 

 

美紀「ど、どいて下さい!」

 

片手で壁ドンする彼に対し…美紀は空いてる方から抜け出そうとする。

 

だが……

 

 

 

 

ドッ!

 

 

 

 

美紀「わっ…!」

 

逃げようとする彼女を見て彼はもう片方の手も壁ドンに使い…美紀の両サイドを塞いだ。

 

 

 

 

美紀「ど、どうしたんですか…なんか…おかしいですよ…」

 

胸の前で自らの両手をギュッと握りしめ、美紀は目の前の彼に尋ねる。

 

 

 

「おかしくない。ただ…美紀を逃がしたくないだけ」

 

 

 

美紀「なっ!?」

 

恥ずかしい台詞を呟く彼を見て、美紀は顔を真っ赤にした。

 

 

 

 

美紀「おかしいですよ!普段の__さんは…そんな事、言ったりしません」

 

 

 

「……嫌?」

 

 

 

美紀「嫌…です。こんなの…冗談なら……は、はやく止めて下さい。」

 

 

顔を背けて美紀は呟く。

 

そんな彼女に顔を近づけ、彼は囁いた。

 

 

 

 

「冗談なんかじゃない。美紀だから…こうしてるんだよ。」

 

(本当は冗談なんだけど…あなた達も僕を冗談半分でときめかせているので、おあいこですよね。)

 

 

 

 

美紀「それって…つまり……」

 

 

 

 

「うん…そういう事だね。僕は…美紀の事が……」

 

 

 

 

美紀「そっ、そんなそぶり…今まで見せなかったじゃないですか!?な、なのに…どうして……」

 

 

 

「美紀が鈍感なんだよ。僕は…ずっと美紀の事を思っていたよ」

 

(しっかりした人だなぁ~ってね!)

 

 

 

 

 

美紀「そ、そんな…。どうしよう、私…私……」

 

 

 

彼が心の中で下らない事を言ってる事など知らずに、美紀は顔を赤くして戸惑う。

 

そして彼は美紀に更なる追い打ちをかけるように、そっと顔を寄せる。

 

 

 

 

「美紀…」

 

 

美紀「だっ、ダメですよ!これ以上は…ほんとにっ…!」

 

 

 

「大丈夫だよ。」

 

 

 

美紀「大丈夫じゃないです!私まだ突然の事で…どうすれば良いのか……」

 

 

 

 

「見たところ周りに奴らはいないけど…。あまり大きな声出しちゃダメだよ?」

 

(この発言…かなり危ないな。)

 

 

 

 

 

美紀(声出しちゃダメって…な、何をする気で…)

 

美紀「ダメです…。本当に恥ずかしいから……やめて下さいっ!怒りますよ!!」

 

 

 

美紀は身の危険を感じ、彼に強く言った。

 

だが彼は、怯まず美紀に迫ってゆく…

 

 

 

「怒ってもいいけど…静かにね」

 

 

 

美紀「あぅ……ダメ…ですよ……ダメっ…!」

 

 

 

肩を震わせながら、美紀はギュッと目を閉じる。

 

すると直後、彼は壁から手を離して美紀から離れた。

 

 

(とりあえずは…こんなとこかな?もう十分だろう)

 

 

 

 

美紀「………?」

 

 

「今日は…このくらいにしておきます。なんかすいませんでした…。帰りましょう」

 

 

そう言って彼は車へと歩いていく、美紀はポカンとしながらも…彼の後を無言で追って、車へと戻った。

 

 

 

 

 

 

…バタン

 

 

 

 

悠里「お帰りなさい」

 

 

由紀「おかえり~!」

 

 

胡桃「散歩…楽しかったか?」

 

 

 

胡桃はあえて彼に尋ね、その反応で美紀にどの程度ドキドキさせられたのかを探ろうとしたが…

 

彼は以外にもあっさりと笑顔で答えた。

 

 

 

 

 

「うん。楽しかったよ~。今度は胡桃ちゃんも一緒にくる?」

 

 

 

胡桃「ん?…あ、あぁ。そうしよう…かな。」

 

 

胡桃(あれ…なんか余裕のある反応だな。美紀…失敗したのか?なんか暗い顔してるし…)

 

 

 

 

美紀「………」

 

俯いたまま、無言で隣に座る美紀に胡桃は小声で尋ねる。

 

 

 

 

胡桃「どうした?なんか元気ないじゃん。」

 

 

 

美紀「いっ、いえ!大丈夫です!」

 

 

 

 

胡桃「そっか…。ならいいけど…」

 

慌てたように答える美紀に違和感を抱きつつ、胡桃は顔をそむけた。

 

 

 

 

 

美紀(告白まがいな事された…なんて言えない。どうしよ…どうしよ~!!)

 

 

美紀(同じ車内にいるのも気まずい…。私はあの人の事をそんな風に見たことなかったのに…。)

 

 

 

胡桃(やっぱ、少し様子がおかしいよな…)

 

 

 

 

テーブルに顔を伏せたままで、ピクリとも動かない美紀…

 

そんな彼女を見て、胡桃は不思議そうな顔をした。

 

 

 

 

 

(昨日と同じ順番で攻めてくるなら…次はりーさんだよな。)

 

 

彼は昨日の出来事を順を追って思い返し、次のターゲットは悠里だと確信する。

 

そして彼が確信したまさにその瞬間…彼は悠里に声をかけられた。

 

 

 

 

悠里「__君。ちょっといいかしら?」

 

 

 

 

(りーさん…はやくも攻めてきたか)

 

「はい。なんでしょうか?」

 

 

 

悠里「散歩から帰ってきてばかりで悪いけど…洗濯手伝ってくれる?」

 

 

 

「洗濯?いいですけど…」

 

 

 

悠里「よかった!じゃあ先に外で待ってて。私は後から洗濯物持っていくから」

 

 

 

「先にですか?待ってますから一緒に…」

 

 

 

 

悠里「『先に』…外で待っててくれる?」

 

 

 

「わ、わかりましたぁ…」

 

 

 

悠里の笑顔の奥に恐怖を感じ…

 

彼は大人しく従って一人先に外へ出た。

 

 

 

 

バタン

 

 

 

 

悠里「さて…じゃあ洗濯の準備をしないとね。」

 

 

由紀「私も手伝おうか?」

 

 

 

由紀は洗濯かごを取り出す悠里に歩み寄ってから言う

 

悠里はそれに対して笑顔を返し、由紀の頭を撫でながら答えた。

 

 

 

 

 

悠里「ありがとう由紀ちゃん。けど大丈夫よ。これも作戦の内だから…」

 

 

 

由紀「お!そうなの?…じゃあ邪魔しちゃ悪いね。」

 

 

 

胡桃「りーさんもう動くのかよ…じゃあ次はあたしか。」

 

 

 

 

 

由紀「順番変わってあげようか?」

 

 

 

胡桃「いいよべつに…最後は最後で緊張するし」

 

 

 

由紀「えぇ?そんな事ないよ?」

 

 

 

 

胡桃「お前はいいよな、気楽に楽しめて…」

 

 

 

由紀「胡桃ちゃんも気楽に楽しめばいいんだよ!」

 

 

 

 

胡桃「気楽にったって…難しいよ…。あいつ相手にこういう事するなんて…恥ずかしいわ、意識しちゃうわ…大変な事ばっかりだ」

 

由紀はため息をつく胡桃の向かいに座り、ぐっと顔を寄せて微笑んだ。

 

 

 

 

由紀「胡桃ちゃん…意識しちゃうんだね。かわい~♪」

 

 

 

胡桃「しっ、しょうがないだろ!?男相手にときめくような事しなきゃいけないんだから、意識せずにやるのがまず無理なんだよ!」

 

 

胡桃「由紀だって昨日、多少は意識しただろ?」

 

 

 

 

由紀「ん~?いつもどおりだったよ?」

 

 

胡桃「いつもどおり…?お前…昨日あいつに頭撫でてもらったり、妹扱いされたりしたんだよな?」

 

 

 

 

由紀「うん。」

 

 

 

胡桃「…なんとも思わなかった?」

 

 

 

由紀「やっぱ__くんて面白い人だなぁ…って思った!」

 

無邪気な笑顔で答える由紀を見て、胡桃は頭を抱えて俯く。

 

 

 

 

胡桃「あ~~。そうか…まぁお前はそういうやつだもんな。」

 

 

 

由紀「…どゆこと?」

 

 

 

胡桃「気にすんな。ただお前が誰かを好きになったりする事は、しばらくなさそうだなって思っただけだ…」

 

 

 

由紀「てへへ…ちょっと出会いがなくて…」

 

 

 

 

胡桃「その発言はあいつがかわいそうだろ…」

 

 

 

 

 

悠里(由紀ちゃんにとって、__君は全く恋愛対象じゃないのかしら?)

 

 

 

 

悠里(いや、由紀ちゃんの場合は…まだ恋愛自体がよくわかっていないだけかしらね)

 

 

 

 

 

 

悠里(ま…、私もそこまで人の事いえないんだけど…)

 

洗濯物をまとめ、悠里はドアの前に立つ。

 

 

 

 

悠里「じゃ、行ってくるわね。すぐ戻るから」

 

 

 

由紀「がんばってね~!」

 

 

 

 

悠里「ええ!がんばってくるわ~♪」

 

 

 

バタン…

 

 

 

 

 

 

胡桃(りーさん、相変わらずノリノリだな…)

 

 

 

明るい笑顔で楽しそうに悠里は外へと出る。

 

彼女を見送った後、由紀は胡桃に話しかけた。

 

 

 

由紀「さっきの続きだけどさ…」

 

 

 

胡桃「ん?なに?」

 

 

 

由紀「ほら、相手が男の子だと意識しちゃうって話!」

 

 

 

胡桃「…あぁ、それか」

 

 

 

由紀「みーくんも__くん相手だと意識しちゃうの?」

 

 

由紀は尋ねる。

 

散歩から戻ってからずっと黙ったまま、死体のようにピクリとも動かない美紀に…

 

 

 

 

美紀「なっ、なんで私が__さんを意識しなきゃいけないんですか!?」

 

 

 

胡桃「うおっ!ビックリしたぁ~!!」

 

 

バッ!と勢いよく顔を上げ、美紀は大声で言う

 

彼女のあまりの声の大きさに、隣の席に座る胡桃は驚いた。

 

 

 

 

 

由紀「あ、ごめんごめん。__くん相手っていうより…男の子相手っていった方が良いかな?」

 

 

 

美紀「わ、私はあの人を意識なんてしたことありません!なのに…なのにっ!!」

 

 

 

 

 

由紀「あれ…みーくん?…みーく~ん?」

 

 

 

美紀「どうしてあの人は…私を……私をっ…」

 

由紀の声を無視して美紀は一人でブツブツと呟いていた。

 

 

 

 

 

由紀「み~~く~ん?聞こえてますか~?」

 

 

 

 

胡桃(やっぱり…どうみても様子がおかしいよな)

 

胡桃「美紀、あいつと…なんかあった?」

 

 

 

どうしても気になってしまい、胡桃は美紀に尋ねる。

 

すると彼女は顔を真っ赤にして、大慌てで答えた。

 

 

 

 

美紀「な、なにも!なにもないです!」

 

 

 

胡桃「え?だ、だってなんか様子が…」

 

 

 

由紀「みーくん、顔真っ赤!!」

 

 

 

美紀「あっ!そうです!私ちょっと熱っぽいので……少しだけ寝ます!!」

 

 

そう言って美紀は立ち上がり…ベッドまで行くと、掛け布団を顔までかけて横になってしまった。

 

 

 

 

 

 

由紀「熱っぽいなら薬とか飲んだ方が…」

 

 

 

胡桃「本当は熱っぽいんじゃなくて、なんか聞かれたくない事情でもあるんだろ…ほっといてやれ」

 

そう言って胡桃は薬を取り出そうとする由紀を手で止めた。

 

 

 

 

 

 

 

美紀の不自然な態度を見て疑問を深める胡桃だったが…

 

悠里の次は自分の番なので作戦を練らなくてはと思い、美紀の事はあまり気にしないようにした。

 

 

 

 

 

この時、胡桃が美紀に何があったのかをしつこく問い詰めていれば…

 

いち早く彼の作戦に気づけたかも知れない。

 

 

 

 

 

だがもう手遅れ…

 

 

誰も…彼を止められない。

 

 

 

 





とりあえず、みーくんへの復讐を遂げた彼…。

残すは三人…何気にりーさんへの復讐が一番大変そうなんですよね。
全てが終わり、彼の作戦がバレた後の仕返しが怖そうですし…(-_-;)


ということで、次回はそんなりーさんへの復讐です!

また次回もよろしくお願いしますm(__)m





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