軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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まだまだ終わらないゲーム。
今回は三人目のチャレンジャーのお話です!


五十話『静かに…ひっそりと』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

悠里が彼にアタックしてから三時間後… 

昼食を終え、少ししてから彼女…直樹美紀は外に出る。

 

 

 

 

 

 

…バタン

 

 

 

 

 

美紀「……何してるんですか?」

 

外に椅子を持ち出し、一人読書をしているその人物に彼女は声をかけた。

 

 

 

 

胡桃「見てわかるだろ…読書だよ読書」

 

一瞬だけちらっと美紀を見て…

胡桃は再び由紀に借りたあの本に視線を向けた。

 

 

 

 

美紀「まだ読み終わってなかったんですか。」

 

 

 

胡桃「いや、読み終わってるよ…」

 

 

 

美紀「じゃあ、早く挑戦してみたらどうですか?」

 

 

 

胡桃「ダメだ……」

 

 

 

美紀「どうしてです?」

 

美紀がそう尋ねると、胡桃は本を閉じ…顔を青くして呟いた。

 

 

 

 

胡桃「なにをしたら良いのか、全然わかんねぇ……」

 

 

 

美紀「えっ?…だからその本に書いてあるやつをどれか実践してみれば」

 

 

 

胡桃「………」

 

 

 

美紀「…どうしました?」

 

 

 

胡桃「美紀…お前はどのくらいで方法を決めた?」

 

 

 

美紀「えっと、十五分くらいですね」

 

 

 

胡桃「はやいな…それとも、あたしが優柔不断なのか?」

 

そう言って胡桃は頭を抱え、顔を伏せる。

 

 

 

 

 

美紀「あ、さっき由紀先輩が私にこっそり言ったんですが…あの人は最後がいいみたいですよ。」

 

 

 

胡桃「なに?じゃあもうあたしの番じゃん!?」

 

 

 

美紀「そうなりますね」

 

慌てる胡桃…

そんな彼女に、美紀は言った。

 

 

 

美紀「はやくしないと、由紀先輩が急かしにきますよ。」

 

 

 

胡桃「ぐっ!…わかった。すぐに作戦を考えるよ…」

 

由紀に急かされるのが嫌だった胡桃は本をめくり、使えそうなページを必死に探した。

 

 

 

 

 

 

美紀「まぁ…がんばって下さい。私は中に戻りますね。」

 

 

 

胡桃「ん~……」

 

 

 

美紀「………」

 

美紀は車の中に戻ろうとしたが、本を読むのに夢中になっている胡桃を一人にする事に多少の不安を抱き…

結局胡桃が作戦を決めるまでその場に残ることにした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

そして十分程たった頃、胡桃は本を閉じて立ち上がる。

 

 

 

 

胡桃「…いよし!!」

 

 

 

 

美紀「作戦、考えましたか?」

 

自信あり気な胡桃の表情を見て、美紀は尋ねた。

 

 

 

胡桃「あぁ、美紀…悪いけど、この勝負はあたしがもらったぜ!!」

 

 

 

美紀「それはどうでしょうね?りーさんはあんなでしたが、私はかなりの評価を受けているハズ…いくら先輩でもそう簡単に越えられませんよ。」

 

同じく自信あり気な表情で答える美紀。

そして"りーさんはあんなでしたが"と言ったが、実はそんな悠里がかなりの高評価を得ていた事を、彼女は知らなかった。

 

 

 

 

 

胡桃「ふっ…、まぁ見てろって…」

 

そう言って胡桃は車内に戻る…

美紀もそれに続いた。

 

 

 

 

 

 

バタン!

 

戻って早々、彼が席に座ってぼうっとしているのを胡桃は確認して…そこに歩み寄る。

 

 

 

 

 

胡桃「…座るから、つめてくれるかな?」

 

 

 

「ん?あぁ、了解です。」

 

 

 

胡桃「ありがと」

 

奥の方へと移る彼に胡桃は礼を言うと、その隣に座った。

美紀は彼に気づかれないように少しだけ離れた所からその様子を伺う。

 

 

 

胡桃「………」

 

 

 

 

「………」

 

 

 

美紀(隣に座る…それが先輩の作戦なのかな?)

 

 

 

 

胡桃「今日は寒いな。」

 

隣の彼をちらっと見つめて胡桃が呟いた。

 

 

 

 

「うん。…ほんの少しだけね」

 

 

 

胡桃「だよな?由紀悪い…ちょっと毛布取ってくれ」

 

 

 

由紀「わかった~」

 

胡桃はベッドの上でごろごろしていた由紀にそう頼む

由紀はすぐに起き上がるとそばの棚から毛布を一枚だけ取り出して胡桃に渡した。

 

 

 

 

胡桃「サンキュー」

 

 

 

美紀(隣に座る…毛布…はっ!?先輩…もしかして!!)

 

由紀から毛布を笑顔で受け取る胡桃を見て…

美紀は一つの考えにいたる。

 

 

 

 

美紀(あの一枚の毛布を…__さんと一緒に!?)

 

 

 

 

 

 

胡桃「うぅ~…さむ~っ」パサッ

 

 

 

 

美紀(あれ?)

 

美紀の予想とは裏腹に、胡桃はその毛布を自分一人で羽織った。

 

 

 

 

美紀(なんだ、一緒に使うのかと思った。もしそれをやられたら、かなりドキドキすると思うんだけど。…先輩、本当にただ寒くて毛布を借りただけなのかな?)

 

 

 

 

由紀「ねぇ胡桃ちゃん、今お喋りできる?」

 

毛布を渡した後、由紀が胡桃の横に立って尋ねる

普段の彼女ならばそんな事は尋ねずに話しかけてくるが…

今回わざわざ尋ねたのは、胡桃が今現在"ゲームの最中"だったら邪魔になってしまうと思ったからだった。

 

 

 

 

胡桃「ん?別に構わないぞ。」

 

胡桃がそう答えると、由紀は嬉しそうにテーブルを挟んだ正面の席に座った。

 

 

 

 

 

 

由紀「よかった!胡桃ちゃん…今はちょっと忙しそうだったから、断られるかと思ったよ~」

 

 

 

胡桃「全然大丈夫。ここでちょっと会話するくらいならな。」

 

 

 

 

由紀「あのね、なんか私…最近ちょっとだけ太ってきた気がするんだけど……」

 

深刻そうな顔で由紀は胡桃に言った。

それを胡桃の隣で聞いていた彼は、驚いたような表情で由紀に言う。

 

 

 

 

「全然じゃないですか!?そんなんで太ったとか言ってたらきりないですよ!」

 

 

 

由紀「えっ?じゃあ__くんから見て私って細い方?」

 

 

 

 

 

「はい。細い方ですよ。」

 

 

 

由紀「そう?…えへへ~。ならよかった!」

 

細いと言われてご機嫌な表情になった由紀

そんな彼女に、胡桃は忠告する。

 

 

 

 

胡桃「でもお前、ストックに余裕があるとすぐにお菓子とか食べるだろ?あれ…気を付けないと太るぞ。ただでさえ由紀はあまり運動とかする方じゃないんだからな。」

 

 

 

 

由紀「うぐっ!?……気をつけます。」

 

 

 

胡桃「そうだな。女子ならそういうのに気を使えよ?」

 

 

 

 

由紀「………」

 

軽く説教をされている中、由紀はじっと胡桃を見つめる。

 

 

 

 

 

胡桃「ん?なんだよ」

 

 

 

 

由紀「いや、そういえばさ…胡桃ちゃん最近痩せたよね。」

 

 

 

 

胡桃「…そうか?」

 

 

 

 

由紀「うん。ほんの少し」

 

 

 

 

胡桃「ん~…どうだろ。自分じゃそんなに分からないな…お前はどう思う?」

 

毛布を羽織ったまま、胡桃は隣に座る彼の顔を見つめて尋ねた。

 

 

 

 

 

「…あまり分かんないかな?」

 

 

 

胡桃「だよな?」

 

 

 

 

由紀「まぁ胡桃ちゃんはよく動くから…とりあえず太る事はなさそうだよね。」

 

 

 

 

胡桃「ふふん。そういう事だ」

 

 

 

 

由紀「私も運動とかしないとなぁ~…」

 

由紀がテーブルに顎を乗せて呟く

 

 

 

 

 

 

胡桃「話変わるけど、由紀はさ…、どんな男の人が好き?」

 

 

 

由紀「おぉ!そういうのガールズトークっぽくて良いね!」

 

 

 

胡桃「みたいじゃなくて、ガールズトークだけどな。」

 

 

 

 

由紀「ん~…やっぱり、優しい人かな。」

 

 

 

胡桃「なるほどな。」

 

 

 

 

由紀「胡桃ちゃんは?」

 

 

 

 

胡桃「あたしか……ん~、そうだなぁ…」

 

 

 

視線を上に向けて考える胡桃…

そんな彼女を、美紀はじっと見ていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

美紀(あれ?先輩、私に見てろとか言ってたのに…ただお喋りしてるだけじゃないですか。)

 

 

 

美紀(しかもガールズトーク…あれじゃ隣に座る男性の__さんは気まずいんじゃ…)

 

 

 

 

 

 

悠里「どうしたの?」

 

 

 

美紀「あっ、いえ…」

 

突然悠里に声をかけられ、少しだけ驚く美紀…

美紀は悠里に小声で事情を説明した。

 

 

 

 

 

美紀「胡桃先輩…__さんをドキドキさせる作戦を考えたと言っていたのに、それを実行に移す気配が無いんです。」

 

 

 

悠里「あら、そうなの。…タイミングをみてるんじゃない?」

 

 

 

 

美紀「どうでしょうね…」

 

そう呟き、美紀は再び胡桃に視線を向ける。

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「あたしは…いざって時に頼りになる人が良いな。」

 

 

 

「っ!?」

 

 

 

 

由紀「あ!そういうのも良いよね~!」

 

 

 

胡桃「だろ?」

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

胡桃「お前は好きな女の子のタイプってどんなの?」

 

 

 

「……え?僕に言ってる?」

 

胡桃からの突然の質問に彼は戸惑う。

 

 

 

 

胡桃「うん。お前に聞いてる」

 

 

 

 

「えっと……そうだな…」

 

彼はじっくりと考えながら、横に座る胡桃の顔を彼は見つめた。

胡桃もまた彼を見つめながら、その返答を待っている。

 

 

 

 

 

胡桃「………」

 

 

 

 

「………」

 

 

 

由紀「なに~?__くんどうかした?」

 

何やら様子のおかしい彼に由紀が尋ねる。

 

 

 

 

「い、いえ…なんでも。」

 

 

 

「えっと…好きなタイプか……なんでしょうね?」

 

 

 

由紀「好きなタイプだよ?ほら…優しい子が良いとか、可愛い子が良いとか。」

 

 

 

 

「じゃあ…優しくて可愛い子で。」

 

 

 

 

由紀「あははっ!欲張りだね~。」

 

 

 

「あは…ですよね…」

 

彼の返答を聞いて由紀は大笑いしたが…

彼はそれどころではなかった。

 

 

 

 

なぜなら…

 

 

 

 

 

胡桃「………」ギュッ

 

 

 

「………」

 

 

 

『あたしは…頼りになる人が良いな。』そう答えた直後から…

胡桃はずっと、テーブルの下で…なおかつ毛布で隠して見えないようにしながら…

 

彼の左手を、自らの右手でギュッと握っていた。

 

 

 

 

胡桃「………」ギュッ

 

 

 

(この人は…なんでさっきからずっと僕の手を…。)

 

最初は指先がほんの少し触れているだけだった…

彼もその時はたまたま触れてしまったのだと思い、気まずくなって手を離そうとした。

 

だが胡桃は離れようとする彼のその手を上から強く握り、そのまま離そうとしなかった。

 

 

 

 

 

 

(相変わらず冷たい手だけど…それがなんか気持ちいい気が…)

 

そんな事を彼が考える中…

胡桃は何事も無いように由紀と会話を続けていた。

 

その会話は五分程続いたが、由紀がトイレに行った事で中断される。

 

 

 

 

「胡桃ちゃん…その、これは」

 

由紀がいなくなった瞬間、彼が小声で尋ねる。

 

 

 

 

 

胡桃「しーっ…」

 

胡桃は左手の人差し指を立てて自らの口に当てると、少しだけ微笑みながらそう言った。

 

 

 

 

 

「!?…」

 

その仕草が、彼の心にとてつもない衝撃を与える。

 

 

 

 

(これは…なかなかのもんですな…)

 

彼は顔を真っ赤にして…胡桃から目を逸らす。

そんな彼に追い打ちをかけるように、胡桃は彼の耳元に顔を寄せて呟く。

 

 

 

 

 

胡桃「手…イヤだ?」

 

 

 

 

「!?」

 

驚いて彼女の方に顔を向ける…

とてつもなく近い距離にその顔があったが、さすがの胡桃もこれには照れたのか…

すぐに顔を離した。

 

 

 

胡桃「ごっ、ごめん」ボソッ

 

 

 

「い、いや…大丈夫です…。」ボソッ

 

ほんの数秒間だけ、二人は無言になる…

だがすぐに胡桃から口を開いた。

 

 

 

 

胡桃「あの…それでさ、手…このままで良いかな?」ボソッ

 

顔を赤く染めながら、上目使いで彼に尋ねる。

 

彼はそれに、ただ無言で頷き、了承した。

 

 

 

 

胡桃「…よかった。」ボソッ

 

胡桃はそう呟いて微笑むと、彼の手の甲の上から指を絡めた。

 

 

 

 

(っ~///なんだこれは!?なんだこれはぁっ!?)

 

胡桃は目線を下げて微笑みながら、彼の手を強く握る。

そして彼はその影響で顔を赤くしながら、どこか挙動不審に…

 

 

そんな二人の横を悠里と美紀が通り、声をかける。

 

 

 

 

 

 

悠里「あら?__君、顔赤くない?」

 

 

 

美紀「本当ですね…熱でもあるんじゃないですか?」

 

そう言って美紀は彼の様子を見ようとテーブルに手を置いてその顔を近づけるが…

胡桃が慌てながら左手でそれを遮った。

 

 

 

胡桃「だっ、大丈夫!!熱じゃないから!」

 

 

 

美紀「ん、そうですか?」

 

美紀がそんな胡桃の行動に違和感を感じた時…

 

 

 

 

美紀「……ん?」

 

胡桃が声には出さずに、口をパクパクとしている事に気がついた。

 

 

 

 

美紀(じゃ…じゃます…るな?…あぁ、『邪魔するな』って言ってるんですね)

 

その発言で彼女が密かに作戦を実行していた事に美紀は気づき、悠里…更にトイレから出てきた由紀の二人を連れて外に出ようとした。

 

 

 

 

美紀「りーさん、由紀先輩も…ちょっと良いですか?」

 

 

悠里「うん?なに?」

 

 

由紀「ん?」

 

 

 

美紀「いいからいいから…ほら、来てください。」

 

半ば強引に二人の手を引き、美紀は外に出る。

 

 

 

 

 

…バタン

 

 

 

 

 

 

悠里「で、何かしら?」

 

 

 

美紀「胡桃先輩がいつの間にか作戦を実行していたみたいです。__さんに近づこうとしたら邪魔するなって言われました。」

 

 

 

由紀「ほんと!?じゃあ…いつからだろ?」

 

 

 

美紀「私と車の中に戻った時は既にやる気があったので…その時から始めたとしたら十分くらい前からですかね。」

 

 

 

悠里「全然気づかなかったわ…」

 

 

 

美紀「私もです。」

 

いつからだと考える悠里と美紀…

そんな中、由紀は大きく体を伸ばしながら言った。

 

 

 

 

由紀「ん~、とりあえず…私達はあと五十分くらい外で時間つぶそうか?邪魔するのはルール違反だし。」

 

 

 

美紀「そうですね。胡桃先輩の場合…どんな作戦なのかも分かりませんから、私達の行動の何が邪魔になってしまうかも分かりませんし」

 

 

 

悠里「少なくとも外にいれば、邪魔にはならないものね。」

 

 

 

美紀「そういう事ですね」

 

 

 

由紀「じゃああと五十分…なにする?」

 

 

 

悠里「あまり離れても危ないから、ここで適当にお話しでもしてましょ。」

 

悠里はそう言って車にもたれてしゃがみこむ。

 

 

 

 

悠里(胡桃の作戦って…なんなのかしら?)

 

そんな事を考えながら…彼女はそっと車の方を向いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃(みんな…外行ったな。)

 

 

 

 

 

「…………」

 

 

 

 

 

胡桃(……会話がない)

 

二人きりの空間で手を握りっぱなし…

そんな状況に、胡桃は気まずさを感じていた。

 

 

 

 

 

「胡桃ちゃん…」

 

そんな彼女に突如、彼が声をかける。

 

 

 

 

胡桃「うん?」

 

 

 

「みんないなくなったから聞くけど、この手は…何かな?」

 

彼が握られた左手を、ほんの少しだけ動かして尋ねた。

 

 

 

 

胡桃「……聞きたい?」

 

 

 

 

「それなりには…」

 

 

 

 

胡桃「ダメ…内緒。」

 

胡桃は笑いながらそう言って彼との距離を更に詰め…

そしてその肩に頭を乗せ…彼に寄りかかる。

 

 

 

 

「っ…胡桃ちゃん!?」

 

その行動に彼はますます顔を赤くし、彼女を見つめる。

 

彼の肩に頭を乗せたまま、胡桃はチラッと彼の顔を覗き込むと…微笑みながら言った。

 

 

 

 

 

胡桃「あたし、少しだけ寝るから」

 

 

 

「えっ!?う、うん。分かった…」

 

 

 

胡桃「…おやすみ」

 

 

 

「おやすみ…」

 

相変わらず手を握ったままで自分の体に寄りかかり、目を閉じた胡桃の横顔を…

彼は、じっと見つめていた。

 

 

 

 

 

 

(彼氏でもない僕の手を握りながら寝るとか…もしかして、胡桃ちゃんって意外と甘えんぼだったりするのかな?)

 

 

 

 

胡桃「………」

 

 

 

 

(いや、普通甘えんぼなくらいじゃ男の人の手とか握らないはず……。なら、まさか…)

 

彼が一つの可能性を感じていた時…

胡桃は寝たふりをしながら考えていた。

 

 

 

 

 

 

 

胡桃(どうだ!?かなり手応えは感じたけど…)

 

 

 

胡桃(結局あの本はどこを参考にしたら良いか分からなくて、終始アドリブでやってしまった…)

 

 

 

胡桃(でもまぁ…それっぽかったよな?少しは…ドキドキしてくれたよな?)

 

 

 

 

 

 

 

胡桃(てかこれ……)

 

 

 

胡桃(あたしも凄く恥ずかしいんだけど!!なんで手を握ったまま寝たふりなんてしちゃったんだろう!?もう離せないじゃん!)

 

目を閉じて寝たふりをしたまま、胡桃は一人で焦っていた。

 

 

 

 

 

胡桃(肩に頭を乗せて、こんな警戒心のない姿で寝たふりとか…もし何かされそうになったら……どうしよ?)

 

 

 

胡桃(ま、まぁその時はその時だ…起き上がって驚かせてやろう!)

 

 

 

 

 

 

胡桃(そうだ!この手も、寝返りうつふりしてさりげなく離せばいいじゃん!もうやるだけやったし…これ以上握ってる必要はないもんな。)

 

胡桃がそんな事を考えて、それを実行に移そうとする。

 

 

 

 

 

胡桃(よ、よし!適当に寝返りうって、手を離し…そして頭も肩から離そう!)

 

 

 

胡桃(まず、手を……)

 

 

 

 

胡桃(…………)

 

 

 

 

 

胡桃(でも…どうせ寝たふりしてるだけだし、このままでも……)

 

 

 

 

 

胡桃「………」ギュッ

 

 

 

 

 

 

胡桃(うん。いいや…もう少しだけこのままでいよう。)

 

 

 

胡桃(もう少し…もう少しだけ、このままで)

 

 

 

 

 

 

 

 

結局、胡桃はその数十分後に車内に戻ってきた由紀に起こされるその時まで彼の手を握っていた。

 

由紀に起こされた彼女は静かに彼の手を離して起き上がり、チャレンジを終えた。

 

 

 

 

 

由紀が提案した制限時間(一時間)をフルに使用して…

彼女は寝たふりをしてる間、自らもドキドキしてしまうという捨て身の作戦を実行。

 

 

 

思わず彼が『もしかして自分に気があるのでは?』と思ってしまう程の高評価を得た。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀「ねぇねぇ、胡桃ちゃん…もう終わったんだよね?」ボソッ

 

寝たふりをしていた胡桃を起こして少ししてから…

由紀は小声で尋ねる。

 

 

 

 

胡桃「終わった。後はお前だけだな…」ボソッ

 

 

 

 

由紀「ふっふっふ…りーさんはともかく、みーくんと胡桃ちゃんがどんな手を使ったかは知らないけど……私の作戦の敵じゃないね」ボソッ

 

 

 

 

胡桃「言うじゃねぇか。じゃあ、結果を楽しみにしてるよ。」ボソッ

 

 

 

 

由紀「うん。じゃあ…行ってくるね!」

 

そう言って由紀は彼のもとに歩み寄り、その肩を叩いて呼び掛ける。

 

 

 

 

 

 

 

学園生活部最後の挑戦者

 

 

丈槍由紀が…遂に動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 







なんだかんだで一番それっぽく彼を攻略した胡桃ちゃん。

果たして彼女はみーくんやりーさんを越えるドキドキを与えられたのか?


そして次回…やたら自信満々なオーラを漂わせる由紀ちゃんの挑戦です!
ご期待下さいませ(^^)

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