今回の話では彼とりーさんのデート(?)風景を書きましたので、楽しんでもらえたら嬉しいです(^-^)
巡ヶ丘の街にあるショッピングモール内―――
休日である今日、彼は悠里とここに訪れていた。
悠里「はい、じゃあ次はこれを持ってね」
「ああ、はいはい」
モール内にある洋服売り場…悠里は気に入った服を手に取ると、付き添うようにして隣に立っていた彼へとそれを手渡す。その腕には既に服が五着ばかり積まれていたが、彼は何の文句も言わない…。いくら恋人関係になったとはいえ、悠里に文句を言うのは何となく怖いからだ…。
「あの……まだ買うつもりで?」
悠里「う~ん、さすがにそろそろやめておきましょうかね…。いくらセールだとはいえ、これ以上買ったら結構な出費になっちゃうもの」
顎に手を当てながら悩ましげな表情を見せる悠里の言葉を聞き、今日がセールの日だった事を知る。言われてみると、辺りに置かれている服のそばには【~%オフ!】といったような札がいくつも貼られていた。
悠里「じゃあお会計しようかしら。それ、レジまで運べる?」
「ええ、お任せを」
彼が抱えていた服をレジまで運ぶと、悠里は財布を取り出して会計を済ませる。そうして買った服を大きめの袋に詰めてもらうと、悠里は彼と共にその店をあとにした…。そんな二人のそば…というよりは悠里のそばをちょこちょこと付いていた少女は二人と一緒に店を出た後、悠里の手をギュッと握る。
るー「りーねー、次はどこにいく?」
悠里「そうね…そろそろお腹が空いてきたし、お昼にしましょうか」
手を握ってきた妹…るーにそう告げた後、悠里はニッコリと微笑む。
今日は彼とのデートだったが、るーも暇そうにしていたので連れてきてあげたのだ。ただ、せっかくのデートに妹を連れてきたら彼が嫌がるかとも思ったが……
るー「お兄ちゃん、わたし、あとでアイス食べたい」
「おお、いいね。じゃあ後で買ってあげるよ」
るー「えへへ…ありがと」
見たところ、彼はるーが来たことを嫌がってはいないようだ。
るーの方も彼にはよく
悠里「あの…今日、妹を連れてきちゃってごめんなさいね…?」
「んっ?いやいや、全然かまいませんよ。るーちゃんだって、家で留守番してるのはつまんないだろうし」
悠里「…そう言ってもらえると助かるわ。ありがとう」
小さく頭を下げて礼を言い、悠里はるーの手を引きながら昼食が食べられそうなところを求めてモール内を歩き回る。そうしてたどり着いたフードコートで昼食を済ませた後、先ほどの約束通りるーにアイスを買ってくれている彼を見て悠里は『ふふっ』と笑みを溢した。
るー「りーねー、みてみて。お兄ちゃんに買ってもらった」
悠里「良かったわね♪ちゃんとお礼言った?」
るー「うん、言った」
悠里「よしよし、るーちゃんは良い子ね」
モール内のベンチに腰かけていた悠里はアイスを手に笑顔を見せるるーを自分の隣に招き、頭をポンポンと撫でていく。そしてアイスの会計を済ませていた彼も少し遅れてそこへと現れると、彼女らが腰かけているベンチの隅に腰を下ろした。
悠里「なんか、三人でこうしていると…」
「…こうしていると?」
悠里「………いえ、何でもないわ」
一つのベンチの上…そこでるーを挟むようにして座っている自分と彼がまるで家族のようだと思ったのだが、何だか気恥ずかしいので口に出すのは止めておく…。しかし三人並ぶこの状況を見れば見るだけ自分が母親…彼が父親…そして、るーがその子供のように見えて仕方がない…。悠里が一人そんな事を考えて微かに頬を染めていると、るーがアイスを舐めながら彼女の事を見つめた。
るー「りーねー、ちょっと聞いてもいい?」
悠里「うん?どうしたの?」
るー「あの…りーねーとお兄ちゃんは付き合ってるの?」
悠里「えっ?あ~……うん、一応ね」
実際そうなのだし、実の妹に隠す必要など無い。
そばにいる彼を見つめた後、悠里がほんの少しだけ恥ずかしそうにそれを告げると、るーは口元を緩めてニヤリと笑った。
るー「じゃあ、これからはもっといっぱいお兄ちゃんと遊べる?」
悠里「まあ、前よりは家に来る機会も多くなるかも知れないわね」
るー「へぇ~……」
悠里の口からそれだけを聞くと、るーはニッコリと微笑んでから再びアイスを食べることに専念していく…。るー自身も彼の事を気に入っている為、彼と遊べる機会が増したという事が嬉しいのだろう。
「りーさんの家か…。勉強会のイメージが強いな…」
悠里「あら、勉強会は嫌なの?」
「少なくとも、あまり好きな方ではないですかね…」
半分笑いながら答える彼を見て、悠里は呆れたようにため息を放つ。彼の成績に関しては前々から気にしていたが、今は自分の彼氏である人間なのだから、前にも増して
るー「わたしもお勉強はキライ…」
「おお、じゃあるーちゃんは仲間だ」
悠里「それってつまり…私は敵って事かしら?」
「いや…何もそこまでは…」
うっすらと開かれていた悠里の瞳には光が映っておらず、何やら
悠里「…ちょっと耳貸して?」
「は、はい…」
ベンチの真ん中に座っていたるーに少しだけ前屈みになってもらい、悠里は彼の方へと身を傾ける。直後、こちらへ向けられた彼の耳へそっと口を寄せると、悠里は手を添えながら囁いた…。
悠里「前に言ったわよね?もしテストで80点以上出せたら、キス以上の事してあげるって…。前のテストは結局ダメだったけど、また次のテストで頑張ったら…しっかり約束を守ってあげる」
「なっ…!?本当ですか…?」
悠里「ええ。そうね…次は85点以上を条件にしようかな?」
それだけを告げてからそっと身を離し、悠里はニコニコと笑う。
85点…いつもの彼なら中々に厳しい点数だが、必死に勉強すればどうにかなりそうな点数だ。
「じゃあ…またりーさんの家で勉強会やってもらって良いですか?」
悠里「ええ、喜んで♪」
例の約束を話題に出された瞬間、彼は自分から勉強会の催促をする…。たとえこれが悠里の作戦通りだと分かっていても…彼女の手のひらの上で転がされているのだと分かっていても、頑張れば『キス以上の事』をしてもらえるというその誘惑には勝てない。
(今度こそ…今度こそっ…!)
次のテストが始まるまでに死ぬ気で勉強する事を心に決め、彼は拳にグッと力を込める…。するとその隣…彼と悠里に挟まれるようにして座っていたるーが二人の顔を交互に見つめて不思議そうな表情を浮かべた。
るー「お兄ちゃん、りーねーと付き合ってるのに、まだ"りーさん"って呼んでるの?」
「ああ、そうだけど……ダメ?」
るー「普通に名前で呼んだ方がカップルっぽいと思うなぁ…」
「ふむ…そういうもんかね」
悠里「えっ…?」
るーがそう言うのならと思い、彼は悠里の事を見つめる…。しかし悠里の方はあまりに突然な事なので心の準備一つ整っておらず、どこか慌てているようだ。
「じゃあ…ゆう―――」
悠里「さ、さてっ!!るーちゃん、次はどこを見に行こうかしらねっ!?」
彼に名前を呼ばれるよりも先にベンチから立ち、るーの手を引いてその場を離れる。これまで後輩はおろか、同級生にすら『りーさん』と呼ばれ続けてきた…。だからだろうか…今更名前を呼び捨てにされると思うと妙に恥ずかしくなってしまう…。恋人である彼が相手となれば尚更だ。
(…まぁ、もう少しの間は"りーさん"でいいか…)
逃げるようにその場を離れた悠里の後を追いつつ、彼は安堵したように微笑む。正直言うと、彼の方も悠里を呼び捨てで呼ぶ事にほんの少しだけ気恥ずかしさがあったからだ…。しかし、呼び捨てにしようとする度に悠里が今のような反応を見せてくれるのなら、これは良い武器になるかも知れない。無敵かと思っていた彼女の弱点を一つ知れたような気がして、彼はニヤリと笑った…。
るーちゃんも付いてきてのデートとなりましたが、楽しんでもらえたでしょうか?
終わりの方でりーさんには呼び捨て耐性が無いと分かった為、これからの彼はいざという時、それを武器にして彼女を追い詰める事もあるかも知れません…(笑)
何らかの方法でりーさんを追い詰めないと、彼はずっと尻に敷かれて終わってしまうと思うので(^-^;)
にしても…『キスより凄いこと』って何だろうなぁ…(すっとぼけ)
また次回の話も楽しんでもらえたら幸いですm(__)m
ではでは~(* ´ ▽ ` *)ノ