軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

261 / 323
タイトル通り、みんなで海へ行く内容となっています!
本当はもっと早く投稿したかった話なのですが、中々仕上げられなくて…(汗)

数話にわたって続くと思いますが、ごゆっくりとお付き合い下さいm(__)m


第三十九話『うみ』

つい先日、彼はみんなとキャンプに出掛けた。

 

暑い山道を進んでコテージに向かうのは大変だったし、苦労もした。しかし、その苦労を越えた先にあったバーベキュー…これはとても楽しいものだった。川辺で食べた物はどれも美味しく…と言っても、由紀の作ってくれたグミおにぎりは少しアレな味だったが…それも含めて良い思い出だ。

 

 

 

そしてそれから数日が経った今、彼は電車の中いる。向かい合うようにして設置されている二人がけの座席…彼は車内の通路から見てその左奥に座り、その向かい、右奥には胡桃が。そして、彼女の隣には悠里が座っている。彼の隣はというと、今日も人一倍元気な少女、丈槍由紀が座っていた。

 

また、丁度良い席が空いていなかったので今はそばにはいないが、少し離れた場所にある席には美紀、圭、真冬、歌衣たち二年生組もいる。

 

 

 

 

 

 

由紀「もうそろそろかな~♪楽しみだな~♪」

 

胡桃「たしか、次の駅だろ?」

 

悠里「ええ。もう降りる準備しないとね」

 

足元などに忘れ物はないか…しっかりと確認しながら、駅への到着を待つ。彼女達はの荷物は色々と多かったので確認も大変だったが、軽めの装備でやってきた彼は大した確認をせず、未だに窓の外を眺めていた。走る電車の外に流れる風景…その先には、青い海がどこまでも広がっていた…。

 

 

 

胡桃「おい、起きてるか?もう着くぞ?」

 

「んっ?ああ…起きてるよ」

 

真向かいに座る胡桃に返事を返し、彼は唯一持ってきた茶色のカバンを背負う。中に入っているのは着替えとか、水着とか、そんなものだ。彼は今日、彼女達と共に海へとやって来た。しかも、付近にある民宿で一泊…というオマケ付きで。

 

 

 

悠里「着いたらまず宿の場所を確認して、チェックインだけ済ませちゃいましょうか」

 

胡桃「そだな…。荷物もちょっと多いから、置いていきたいし」

 

由紀「今日泊まるところって遠いの?それとも駅のそば?」

 

悠里「地図を見た感じだと、わりと近くだったわよ。少し歩けばすぐに着くと思うわ」

 

悠里は持っていた携帯電話を取り出し、念のためにその民宿の位置を確認する。そこはやはり近くにあるらしく、彼女はニコッと微笑んで携帯をしまった。少しすると走っていた電車もゆっくりと止まり、目当ての駅へと着く。彼女達は電車が止まってから席を立ち、開いた扉の外へと降り立った。

 

 

 

 

 

 

由紀「おぉ~っ!くるみちゃん!海が近いよっ!!」

 

胡桃「おう!ちょっとテンション上がるな!」

 

広がっている海は駅のホームからも確認する事ができ、自然と心がはずむ。彼や由紀達から少し遅れて降りてきた美紀、圭、果夏、真冬、歌衣達二年生組も、その光景に目を丸くしていた。

 

 

 

 

美紀「うわぁ、潮の香りがすごい…」

 

圭「ほんとだね。海~ってかんじ」

 

 

果夏「ヤバイっ!海だよ真冬ちゃんっ!!」

 

真冬「うん、分かってるよ…」

 

果夏のテンションはやたらと高いが、真冬はそれを避けるようにして悠里の元へ…。そして、歌衣は胡桃の元へと歩み寄る。

 

 

 

悠里「乗車時間は長かったけど、疲れたりしてない?」

 

真冬「う~ん……まぁ、海が見えだした頃からカナのテンションがあんな感じだったから、少し疲れたかな」

 

悠里「あら、それはそれは…」

 

電車の中から海が見えたのは結構前からだが、果夏のテンションはそれからずっとああだったらしい。それを相手にしていた労をねぎらうように悠里がそっと頭を撫でると、真冬は照れたようにして顔を俯けた。

 

 

 

歌衣「くるみ先輩は、海とか来たことありますか?」

 

胡桃「う~ん…数えられるほどしか来たことないかな…」

 

歌衣「そうですか。因みに私、海自体を目的に遊びへ…というのは初めてです!なので、ちょっとワクワクしてます」

 

胡桃「そっか。じゃ、思いきり楽しもうな♪」

 

歌衣「はいっ♪」

 

憧れていた胡桃とまた出掛ける事ができ、歌衣の表情も晴れやかだ。彼はそんな歌衣と胡桃が親しげにしているのを見て微かに微笑むと、悠里へ声をかける。

 

 

 

「じゃ、さっそく宿に向かいますか?」

 

悠里「そうね。よし、じゃあ行きましょうか♪」

 

悠里の言葉にそれぞれが返事を返し、歩を進めていく。今回、一行が訪れた場所は落ち着いている風景の町であり、どちらかと言えば都会よりも田舎寄りだ。駅のホームもかなり小さく、外に出ても車などの通りが少ない。しかし、日差しだけは相変わらずの強さだ。

 

 

 

 

悠里「ふぅ…今日も暑いわね…」

 

「そうですね。荷物、持ちましょうか?」

 

悠里「あら、ありがとう。じゃあ、お言葉に甘えて…」

 

彼は周りの娘たちと比べて荷物量が少なかった為、まだ余裕がある。渡された悠里のバック一つくらいなら、持っていてもさほど疲れはしない。

 

 

 

美紀「静かな町ですね…」

 

胡桃「そうだな…。この様子なら海も()いてそうだ」

 

辺りには小さな民宿や釣具屋…そしてただの民家などがあるがそのどれもが物静かな雰囲気で、人混みの気配はない。今回の旅を企画した悠里と美紀はこの落ち着いた様子が気に入り、この町を選んだようだ。

 

 

 

悠里「夏の海はどこも人がいっぱいかと思ったけど、ここは比較的()いているようだったのよね」

 

美紀「ええ。宿も簡単に取れましたし、穴場を見つけたかも知れませんね」

 

協力して計画を練った二人が、誇らしげに微笑む。そうこうしている内、一行は一つの民家の前へとたどり着いた。和風な造りをしたその民宿は辺りにある物と比べても一回りだけ大きく、悠里はその建物の引き戸をガラガラッ!と横に開いていく。

 

 

 

 

悠里「すいません。今日、九人で泊まる予約をした若狭ですが…」

 

戸を開けた先にある玄関で靴を脱ぎつつ、悠里は大きめな声を出す。するとその呼び掛けに応えて入口奥にあった戸が開き、一人の少女が慌てた様子でこちらの方へと歩み寄ってきた。

 

 

 

??「ああ、すいませんっ!!ええっと、若狭さん…ですね?お待ちしておりました!」

 

どこかあたふたとしながらもニコニコと愛想よく、その少女は微笑む。受け付けには大人が出てくるとばかり思っていたが、目の前に現れた少女は悠里達と同い年くらいに見える。

 

 

 

果夏「おお、真冬ちゃん!これが若女将(わかおかみ)ってヤツだね!!」

 

真冬「そう…なの?」

 

真冬の問いに、少女は首を横へ振っていく。腰元まで伸びた黒髪を揺らすその娘は着物を着てはいたが全体的に弱々しい雰囲気があり、女将的な風格はない。

 

 

 

??「私は女将なんて凄いものじゃないです…!夏休みの間、少しだけおばさんのお手伝いをしに来ただけで……まぁ、そのおばさんは今、買い出しに行っちゃってますが…」

 

悠里「それは大変ですね…。一先ず、お部屋にだけ案内してもらって良いですか?荷物を置いていきたいので」

 

??「あっ…了解ですっ!お~い!ヒメちゃ~ん!!」

 

少女が大声を出すと、奥の方からまたもう一人の少女が現れてこちらへと歩み寄ってくる。その少女はまた一段と幼く、るーと同い年くらいに見えた。

 

 

 

 

由紀「うわぁ、可愛いね♪キミもお手伝いしてるの?」

 

現れた少女もまた同じような着物を着ており、銀色の髪をポニーテールにして纏めている。かなり幼い娘に見えるが、その受け答えはしっかりとしていた。

 

 

 

白雪「はい。未奈と一緒にお手伝いをしている、八島(やしま)白雪(しらゆき)です」

 

胡桃「未奈ってのは…あんたか?」

 

未奈「あっ、はい!私は水無月(みなづき)未奈(みな)といいますっ!!自己紹介が遅れて申し訳ないです…」

 

何も怒ってはいないのだが、未奈は怯えたような目線を胡桃に向ける。その目線を受けた胡桃が気まずさを感じ始めた時、その空気を払うようにして白雪が口を開いた。

 

 

 

 

白雪「では、お部屋に案内しますね?」

 

悠里「はい。お願いします♪」

 

未奈「ヒメちゃん、あとはお願いね~…」

 

白雪はコクリと頷き、彼女達を連れて二階へと向かう。上っている階段の横幅は少しだけ狭く、人一人と擦れ違うのがやっとくらいの物だ。

 

 

 

 

真冬「白雪なのに、なんでヒメちゃんなの?」

 

白雪「それは……わたしの名前、お姫さまみたいだから…」

 

白雪は頬を真っ赤に染めて恥ずかしそうに顔を俯ける。どうやら、本人はあまりその呼び名に触れてほしくないらしい。白雪の様子を見て、真冬達はそれを察したのだが…。

 

 

 

由紀「かわいいね~♪じゃ、わたしもヒメちゃんって呼んでいいっ?」

 

果夏「わたしもわたしもっ!ヒメちゃん…うん!ピッタリの呼び名だね♪」

 

 

白雪「う…うぅ……やだよぉ……」

 

白雪は顔を真っ赤にして呟くが、由紀と果夏だけはそれに気が付かない。白雪はその後、一行を二階にあった大きめの部屋へと案内して直ぐ様帰ろうとするが、由紀と果夏に捕まってしまって帰れずにいた。

 

 

 

果夏「その着物、自分で着たの?」

 

白雪「い、いや……未奈に着せてもらいました…」

 

部屋の隅へ追い込まれ、ぺたっと座り込んだまま胸の前で両手を固める白雪…。果夏はそんな彼女のポニーテールに右手でそっと触れたと思うと、左手の方で自分のポニーテールに触れてまたニヤニヤと笑いだす。

 

 

果夏「ポニーテール…わたしとお揃いだねぇ♪」

 

白雪「そ、そうですね……」

 

 

由紀「小さいのにすごくしっかりしてるよね?えらいえらいっ♪」

 

白雪「ど、どうもです……」

 

ポニーテールを果夏に触られ、由紀に頭を撫でられ、白雪はひたすらに困った表情だ。彼女は辺りの人間に『助けてほしい』と目で訴えるが、悠里や胡桃達は荷物を置いている最中でこちらに気づいていないし、彼に限ってはもうダラダラと寝転がっている…。

 

結局、悠里がその目線に気付いて由紀と果夏を注意するまでの数分間…白雪は二人のオモチャと化してしまっていた…。

 

 

 




終盤に登場した『水無月未奈』ちゃん、『八島白雪』ちゃんの二人は本編の方で登場した娘たちとなっています(^^)久しぶりに登場させたので、ちょっと懐かしかったです(*´-`)

今回は宿に着いたところで終わりですが、次回は海辺へと足を運びます!
なので、みんなの水着をお披露目したりもするわけです…。
どうかご期待くださいませっ!(о´∀`о)

また、今回の旅は泊まり込みということで…。
彼は自宅にいる太郎丸をめぐねえに預けてきています!
なので、そちらの方の話もチラッとやるかもしれません(^ー^)

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。