軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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ニヤニヤ出来る展開を書いていきたいところですが、こうしてやってみると意外と難しいものですね…(汗)


今回で『りーさん編』は一区切りとなります!
最後までお楽しみ下さいませm(__)m



前回までのあらすじ『るーちゃんの一言で修羅場になりそうな予感…』


第十話『大人っぽい同級生』(ゆうり)

 

 

 

 

 

 

 

 

るーが退屈だという事で、勉強会は予定よりも早く終わった。

その後、彼は悠里・るーと共におままごとをする事になったのだが…事件はその途中で起きた。

 

 

 

 

るー「ママの好きなあの喫茶店で、くるみと仲良くデートしてた」

 

るーのこの一言をきっかけに楽しかったおままごとは一転…。悠里の表情に怒りが混じり、彼は修羅場に立たされる…。

 

 

 

 

悠里「さて……どういうことか説明してくれるかしら?」

 

廊下に立っていた彼を部屋へと連れ戻し、悠里は睨むようにしてじっとその顔を見つめる…。彼はどう答えればいいか分からず、るーの方へチラチラと目線を向けていた。

 

 

 

(ここにきてその秘密を暴露するとは…!!恐ろしい子だな…!)

 

 

 

 

悠里「ねぇ、はやく答えてくれる?くるみとデート…したの?」

 

「いや…その………」

 

鋭い目線を向け、それを問いただす悠里…。やはりどう答えるべきか分からないので、彼は黙っている事しか出来ない。

 

 

 

悠里「黙ってるってことは…そういう事なのね?」

 

「………ぐっ」

 

完全に追い詰められたと思った彼は顔を俯け、悠里に怒られる覚悟を決める。彼のそんな様子を見た悠里はくるっと回って背を向けると、腕を組んでため息をついた。

 

 

 

 

悠里「はぁ……これは離婚もあり得るわね…」

 

「………んっ?」

 

悠里の呟きを聞いた瞬間、彼は思った。もしかしたら、悠里は先ほどのるーの言葉をおままごとの設定の一つとして受け取っているのかも知れないと…。だから『離婚』などというワードが出てきたのではないだろうか。

 

 

 

 

悠里「もういい…あなたなんて知らないからっ!」

 

彼が黙っていると、悠里は両手で顔を覆って泣き顔を隠す演技をしながら勢いよく部屋を出ていってしまった…。やはりこの様子だと、るーの言葉を本気で受け取った訳ではないらしい。

 

 

 

 

「りーさん…さっきのるーちゃんの言葉もおままごとの設定の一つだと思ってたりするのかな?」

 

悠里が出ていった直後、るーに尋ねる。

 

 

 

るー「うん、たぶん…。りーねー、けっこうそういうところある…」

 

「そういうところっていうのは……一度役に入り込むと中々止まらない、みたいなことかな?」

 

るー「うん。今のりーねーなら、わたしがお兄ちゃんとくるみのこと話しても絶対本気にしないと思ってた。どう?びっくりした?」

 

「……かなりね。出来ることなら、もうやらないでほしいよ…」

 

るー「えへへ、ごめんね?」

 

るーがイタズラに笑う…。本当にかなり焦ったのだが、この子の楽しげな表情を見ていたら強くは言えなかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

そうして部屋に残った二人だけで会話をすること数分後…。ニコニコとした表情を浮かべながら、悠里が部屋へと戻ってきた。戻ってきた彼女は一枚のトレーを手にしており、その上にはジュースの入れられた三つのグラスが乗っていた。部屋から出ていったついでに下の階に行ってきたらしい。

 

 

 

悠里「さぁ、おままごとは一旦休憩!一息つきましょう。あなたも慣れない遊びで疲れたでしょ?」

 

「えっと…まぁ………」

 

おままごとという遊び自体ではそこまで疲労していない…。ただ、悠里に胡桃との事がバレたと思った事による精神的な疲労はあった。

 

 

 

 

るー「じゃ、ちょっとトイレいってくる」

 

悠里がグラスの乗ったトレーをテーブルに置くと同時にるーは立ち上がり、部屋を出ていく。悠里は彼女を笑顔で見送ると、床に座ってグラスを一つ手に取った。

 

 

 

悠里「付き合ってくれてありがとね。あの子も喜んでるみたい」

 

「いえいえ、このくらいは別に…」

 

グラスに注いであったジュースを一口飲み、悠里は微笑む。彼もちょうど喉が渇き始めていたので、悠里が用意してくれたグラスを手に取った。

 

 

 

「もらいますね」

 

悠里「ええ、どうぞ♪」

 

よく冷えていたそのジュースを飲み、彼も一息つく…。悠里はそんな彼を見て微笑むと、その表情のまま…あることを尋ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

悠里「……で、くるみとのデートは楽しかった?」

 

 

 

 

「…………へ?」

 

突然の問い掛けに、彼はそんな間の抜けた返事しか返せない…。涼しげな部屋の中…冷たいジュースを飲んでいるにも関わらず嫌な汗が額に溢れる…。

 

 

 

「デート……ですか……?」

 

悠里「うん。くるみと…したんでしょ?るーちゃんがあのお店に行った時っていうと……ちょうどくるみに勉強会を断られた日の事になるのかしら?」

 

ニコニコした表情で言葉を放つ悠里…。一見すると優しげな表情なのだが、それがかえって恐ろしくも見えた…。しかし、キョロキョロ目を泳がせる彼の様子を見て悠里はそれを察したらしい。

 

 

 

 

悠里「あっ、違うのよ?怒ってる訳じゃないの。ただ、くるみとあなたが仲良く出来る間柄になっていたのが嬉しくて…」

 

彼女が焦ったようにして告げるのを目の当たりにして、彼も一安心する。あまり隠し事は得意ではないので、正直に話せるなら話しておきたかった。

 

 

 

 

「あはは…すいません。胡桃ちゃんに口止めされてて…」

 

悠里「勉強会だって強制参加じゃないんだから、そこまで気を使わなくてもいいのに…。くるみったら、あなたに口止めしてまで何をそんなに――――」

 

そこまで言って悠里の口が止まる…。『デート』『口止め』…その二つのワードを関連付けた時、一つの答えを見いだしてしまったからだ。悠里の顔はだんだんと赤くなっていき、彼の顔からそっと目線をずらす…。

 

 

 

 

 

悠里「もしかして……くるみと付き合ってるの?」

 

「いや、そこまでの間柄じゃ…。ちょっと一緒に出掛けただけですよ」

 

悠里「あら…ごめんなさい。早とちりしちゃった…」

 

悠里は照れたようにわらいながら、ジュースをもう一口飲む。

少しして、るーも部屋へと戻り、三人は遊びを再開した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

 

 

おままごとの続きからトランプ…ビデオゲームまで、様々な事をして遊んでいると気づけば外が夕焼けに染まり始めていた…。さすがにそろそろ帰らねばならないので彼は勉強道具を詰めてきたバッグを手に取り、そっと立ち上がる。

 

 

 

「じゃあ…そろそろ」

 

悠里「あっ…もうこんな時間だったのね。じゃあるーちゃん、お姉ちゃんはこの人を外まで送ってくるわ」

 

るー「うん…。お兄ちゃん、またね」

 

パタパタと手を振るるーに手を振り返して、彼は悠里と共に部屋を出ていく。悠里はそのまま、家の前まで彼を送りとどけに来てくれた。

 

 

 

 

 

悠里「結局勉強は予定よりも短くなっちゃったけど、どう?少しは頭に入ったかしら?」

 

「ええっと……はい、おかげさまで」

 

口ではそう答えたが、実際はそこまで内容を覚えていない…。あの時はどこか無防備な格好の悠里にばかりに気を取られてしまっていたのだから…。

 

 

(思い出すのは教科書の内容じゃなく…りーさんの際どい姿ばかりだ…)

 

 

 

 

悠里「それでね、次は勉強会じゃなく…普通に遊びましょ?るーちゃんも喜ぶだろうし、私もあなたと遊びたいから。くるみとだけデートなんて、なんだかズルいもの…」

 

「じゃあ、僕がデートに誘ったら受けてくれますか?」

 

あえて少し意地悪な聞き方をする。これを言った相手が胡桃なら、きっと怒られるだろう…。しかし、悠里はその胡桃とはまた違った反応を返した…。

 

 

 

 

悠里「うん、喜んで♪誘いにくるの楽しみにしてるわね♡」

 

「ッぐ……!」

 

満面の笑みを浮かべながら答えてくるとは予想しておらず、彼は戸惑う。悠里を照れさせてやろうと思って言った台詞なのに、見事返り討ちにあってしまった……。彼は照れている顔を見られぬよう悠里に背を向け、そこを足早に立ち去る。

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ…またその内に……」

 

悠里「ええ、また学校でね~~」

 

立ち去る途中でそっと振り向くと、悠里がこちらに手を振っていた。やはり、夕焼け空の下に立つ彼女も大人っぽく見える…。先程彼が放った『デート』という単語にも動じなかった辺り、彼女は内面的にも大人なのだろう。

 

 

同い年なのにお姉さんのような彼女へ、彼はそっと手を振り返した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回は少し短かったかもですね(汗)
何はともあれ、とりあえずりーさん編は一区切り…。
次回のヒロインは由紀ちゃんを予定していますので、ご期待下さいませm(__)m

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