軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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これで6話目となった『体育祭をもう一度!』ですが、今回でこのお話は最後となります!

本編に先駆けて外伝メンバーを絡ませる事が出来ましたし、本当に書けて良かったと思っています(*^^*)




体育祭をもう一度!~パンくい~

 

 

 

 

 

いよいよ始まる『パン食い競走』。

 

彼と穂村がワクワクした表情でそれを見つめる中、今回もまた…圭一の気だるそうなスタートコールでそれは開始した。

 

 

圭一「…スタート」

 

直後、彼女達は一斉に走り出す。

単純なスピードではやはり狭山がトップだったが、胡桃もそれに負けじと良い走りを見せていた。

 

 

 

柳「狭山君はともかく、恵飛須沢君もずいぶんと速いね」

 

「うちのエースですから!」

 

レジャーシートに腰を落としながら、柳は側の彼へと声をかける。胡桃を褒められた彼は誇らしげに微笑み、親指をぐっと立てた。

 

一方…穂村はその後ろで荷物を漁り、何かを探す。あまりにガサガサとうるさいので圭一がそれに苛立ち、舌打ちを鳴らした。

 

 

圭一「…ちっ!さっきからうるさいな。何を探してる?」

 

穂村「カメラぁ~…。柳さん…カメラあったよね~?」

 

柳「ん?ちょっと貸してくれ…。……ほら、あったよ」

 

漁っていたバックを柳に渡すと、カメラはあっさり見つかった。穂村は柳からデジタルカメラ、そして少し大きめのビデオカメラの二つを受け取ると意味ありげに微笑んでから立ち上がり、デジタルカメラの方を彼に手渡す。

 

 

 

 

「…これは?」

 

穂村「撮ろう…!二人で…!!素敵な物を…!!!」

 

「!!…了解っ!!」

 

その台詞だけで全てを察し、彼はそのカメラを手に取る。

そして二人はレジャーシートの横に立ち、走る彼女達をレンズ越しに見始めた。ニヤニヤしながら女子達が走る様を記録する二人はどう見ても不審者そのもの…。これにはさすがの圭一と柳も少し引いたようで、無言でそれを見つめていた。

 

 

 

柳「……」

 

圭一「………」

 

 

 

穂村「狭山は速えぇな…。もうパンにたどり着いてる。まぁ、苦労してるみてぇだけど…」

 

最速でそこにたどり着いた狭山はピョンピョンと跳ねながら宙のパンをくわえようとしているが、顔に当たって不規則に揺れだしたパンは中々捉えられない。

 

 

 

 

 

狭山「…っ!」ピョンッ!

 

胡桃「…よしっ!」

 

狭山が手こずっている間に胡桃もパンのぶら下がるその場所へとたどり着き、それ目掛けて勢いよく飛び跳ねた。

 

 

胡桃「ふぁっ…!」ピョンッ!

 

だが、一発で捉える事には失敗してしまい…中途半端に触れてしまったパンはブラブラと激しく揺れだしてしまう。一発で決められなかった胡桃は舌打ちをして悔しがるが、横で跳ねる狭山…そしてすぐ後ろに迫る由紀達を見てそんな事をしている時間は無いと悟り、再びパン目掛けて飛び跳ねる。

 

そうしてパン目掛けて跳ねる度に彼女の胸は揺れ、二人の変態が興奮する。惜しい点を挙げるとするならば、彼女の羽織っているジャージが邪魔して時折胸が隠れてしまう事だろうか。

 

 

穂村「おお…おぉ…!!おおっ…!!狭山は揺れる物が大してねぇからあれだけど…、恵飛須沢ちゃんは良いなっ!!!胸が…胸が程よく揺れてっ…!!」

 

「良いっ…!!良いよ胡桃ちゃんっ!!!」パシャ!パシャ!

 

穂村「ちっ!ジャージが邪魔だな…!!今日はそんなに寒くねぇだろ!脱げばいいのにっ!!」

 

跳ねる胡桃を動画と写真…それぞれに収める変態カメラマン二人がここにはいた。柳と圭一はもうこの二人には関わらないようにしようと心を決めながら、静かに彼女達を見守る。

 

 

 

柳「…誰が勝つと思う?」

 

圭一「狭山…って言いたいところだけど、思ったより手こずってるからな。今回は恵飛須沢かもな…」

 

狭山が苦戦している以上、彼女に続き身体能力の高いであろう胡桃が妥当だろうと圭一は予想する。だがその胡桃も苦戦してしまい、美紀・悠里・由紀に追い付かれてしまった。誰一人パンを取れないまま横並びになり、勝負の行方が分からなくなる。

 

パンを求めて飛び跳ねる五人の少女…当然、あの二人はこの光景を前に大興奮した。二人の注目を特に集めたのは悠里だ…跳ねる度に揺れる彼女の大きな胸に、変態カメラマン達は釘付けだった。

 

 

 

穂村「ほぉ~っっ!!悠里ちゃんっ!悠里ちゃんヤバいだろ!?あんなの規格外過ぎるっ!!」

 

「うっ…ぐすっ…!」パシャ!パシャパシャッ!

 

 

圭一「うわぁ…、泣きながらシャッター切ってやがる」

 

柳「無視しなさい。気にしたら負けだよ…」

 

穂村は鼻血を垂らしながら悠里にズームインし…、その隣では彼がパシャパシャとシャッター音を鳴らしながら大粒の涙を流す。

地獄と見まごうその光景に柳と圭一はドン引きし、変態二人をなるべく視界に入れないように努力した。

 

 

 

穂村「由紀はまだ小さいからあれだけど…美紀も中々良いな!」

 

「いや…由紀ちゃんや真冬さんは確かに少し小さめの胸ですが、あれはあれで興奮しますよ…」パシャパシャッ!

 

シャッター音を響かせながら彼は語る。由紀や狭山のように控えめの胸、はたまた悠里のように破壊力のある胸。形や大きさは数あれど、どれもかけがえのない…大切な物なのだと…。

 

 

 

穂村「…哲学だな」

 

「えぇ…」パシャッ!パシャパシャパシャッ!!

 

 

 

~~~~

悠里「ふっ!」ピョンッ!

 

胡桃「ほっ…!」ピョンッ!

 

美紀「…っ!」ピョンッ!

 

由紀「あむっ!」パクッ!

 

周りの全員が手こずる中、由紀の口は宙に揺れるパンの一部を噛みちぎり、遂にパンを口にする事に成功した。まだ四度目のジャンプという比較的早いタイミングで成功し、彼女はパンを口にしながらすぐそば…20m程先のゴール地点へと駆けていく。

 

 

 

穂村「おっ!?由紀がパン取ったぞ!他のやつはまだ苦戦してるし、こりゃ由紀の勝ちかな。」

 

「…ですね」パシャッ!

 

穂村「由紀の跳ねる姿ももう少し眺めていたかったけど、まぁ撮るものは撮れたから良しとするか」

 

そのまま由紀は危なげなく、あっさりとゴールへたどり着き一位の称号を手にした。彼女はニコニコと微笑みながら口の中のパンを飲み込み、彼等の元へと歩み寄って圭一に紐を外してもらう。

 

 

 

由紀「一着!?一着ですよねっ!?」

 

柳「もちろん。他の皆はまだ苦戦中だからね」

 

圭一「いや…恵飛須沢もパンを取ったな」

 

グラウンドに目を向けると、胡桃がパンを丸ごと加えながら全力疾走していた。どうやら噛みついた際に噛み切る事が出来ず、丸ごと取れてしまったようだ。

 

 

由紀「まさかスポーツで胡桃ちゃんに勝てる日が来るとはっ…!これは記念すべき日だよ!!」

 

手を縛っていた紐を外してもらい、由紀は一位を取れた事を大いに喜ぶ。彼女はニッコリと微笑むと側にいた彼の元へと歩み寄り、共に彼女達の試合を見守る事にした。

 

 

 

「おめでとうございます。あの胡桃ちゃんや真冬さんを抑えて一位なんてスゴいです!」

 

由紀「えへへ~♪ありがとー!ほんっとに嬉しいよ!」

 

「さて…次は胡桃ちゃんか」パシャッ!

 

そのシャッター音をきっかけに由紀は彼が見慣れぬカメラを手にしている事に気づく。よく見れば側に立つ穂村もまた、大きめのビデオカメラを手に撮影しているようだが…。

 

 

由紀「あれ?それ、どうしたの?」

 

「えっ?あぁ…穂村さんが貸してくれて…」

 

由紀「へぇ~。二人とも、こんな熱心に撮って…子供の活躍を撮るお父さんみたいだね♪」

 

 

穂村「えぇ…」

 

「まぁ…」パシャッ!

 

言えなかった…。『自分達はそんな綺麗な者ではなく、どちらかと言えばただの変質者です』なんて…、由紀の純粋な笑顔を見たらとても言えない。彼は彼女達の誰かが跳ねる度にシャッターを切っているし、穂村はズームでそれぞれの胸元や太ももばかりを撮っているのだ。彼らが親のような気持ちでカメラを回す人間ならば、そんな変わった撮り方は絶対にしない…。

 

 

 

 

結局、その後は胡桃・悠里・美紀・狭山の順にゴールして、パン食い競走は幕を閉じる。由紀が一位…狭山がビリという結果は予想出来ず、誰もが驚いた。

 

 

 

悠里「由紀ちゃん、一位おめでとう」

 

由紀「ありがとう!いや~、わたしもびっくりだよ…。まさか胡桃ちゃんを越える日が来るなんてね…」

 

胡桃「これ…ただのパン食い競走だからな?」

 

由紀「それでも勝ちは勝ちだも~ん♪」

 

胡桃「っ~!!あーもうっ!!!あとちょっと早けりゃあたしが勝ったのにな~。悔しいぜ…」

 

少しの差で由紀に勝ちを譲ってしまった胡桃は悔しがり、ため息をつく。穂村はそんな彼女へと近寄り、肩を叩いてからニヤリと笑った。彼女以上に悔しがっている人間を知っていたからだ。

 

 

 

穂村「まぁまぁ。走るスピードは申し分無かったのに、揺れるパンに振り回され続けてぶっちぎりの最下位になった女もいるわけだからさ、二位なら十分スゴいって」

 

胡桃「あ…あぁ、そう…だな」

 

胡桃は気まずそうに苦笑いしながらそっと横へと目を向ける。そこでは今回の種目で最下位になってしまった少女…狭山真冬が膝を抱えながら一人うつ向いていた。彼女は一番早くパンの元にたどり着いたものの、ゆらゆらと揺れるパンを中々捉えられず、皆がゴールする中一人で5分以上跳ね続け…ようやくゴールする事が出来たのだ。

 

 

 

狭山「………」

 

美紀「あの…大丈夫ですか?」

 

その淋しげな背中を見てられず、美紀は歩み寄って声をかける。狭山は前だけ見て美紀と目を合わせないまま、そっと口を開いた。

 

 

 

狭山「…美紀、たぶんね、ボクのパンだけ生きてたと思うんだ。じゃなきゃ…あんなに動き回る訳がないもん…」

 

美紀「そ、そうですね…。生きてたのかも…知れませんね?」

 

狭山「…うん。絶対そう…」

 

返事は返すが、やはり目は合わせてくれない…。負けた事がショックなのか…はたまた一人だけ最後まで跳ね続けていたのが恥ずかしかったのか…。美紀に狭山の気持ちを知るすべはなかった。

 

 

 

「…ところで穂村さん。さっき撮った写真…現像する事は可能ですか?」

 

穂村「あぁ、俺たちの暮らしている家には電気が通っているし…しっかりとプリンターもある」

 

「すばらしい。ではその写真…現像したら分けてもらえますかね?」

 

美紀や由紀が落ち込む狭山を慰める中、彼は穂村から写真を分けてもらおうと交渉を始める。家には自家発電機完備…かつプリンターも所持している穂村は、戦友である彼の提案にあっさりと頷いた。

 

 

穂村「もちろんだ。好きなショットを好きなだけ持っていけ!」

 

「っ…感謝の言葉しかありません…。では、この体育祭が終わったらそちらのお宅にお邪魔する形で…」

 

穂村「あぁ、柳さん達には俺から伝えておくから安心しろ」

 

右手の親指を立て、穂村は彼に微笑む…。そんな穂村の笑顔を見て、ここまで頼りになる男がかつていただろうか…と彼は思っていた。変態同士の熱い友情である。

 

 

 

その後、思っていたよりも準備に時間を取られた事や彼が足を負傷してしまった事もあり、一行は予定よりも早めに体育祭を切り上げた。この短い時間ではたった三つの種目しか出来なかったが、由紀達は満足そうに笑っていた。

 

 

 

由紀「リレーじゃこっちの勝ち。綱引きはそっちの勝ちで、一勝一敗…」

 

胡桃「パン食い競走は得点関係なしのお遊び種目だったからな、結果的には引き分けだ」

 

美紀「そんな長い時間動いた訳じゃないのに、やたら疲れました…」

 

 

穂村「柳さん…ちょっと…」

 

柳「ん、なんだい…?」

 

話す女子達を尻目に、穂村はこっそりと柳に耳打ちをする。体育祭は終了したが、まだこの男にはやらねばならない事があった。彼を屋敷に招かないとならないのである。

 

 

 

穂村「あのさ、ちょっとあの少年に今回撮った写真を分けてやりたくて…。あいつら全員、少しの間だけ家に招待してやっても構わないかな?」

 

柳「写真?…あぁ、まぁ…構わないが…」

 

穂村「マジ?よしっ!どうもッス!!伝えてくるっ!」

 

嬉しそうに笑い、穂村はそれを伝えに彼の元へ駆ける。穂村からそれを聞いた彼は表情を明るくすると遠くから柳へと頭を下げた。本来、柳はあまり人を家へと招きたくはなかったが、あの穂村とここまで親しくなれる人間なら構わないだろうと思い始めていた。

 

 

 

それに……

 

由紀「真冬ちゃんっ!わたしたち、少しだけ真冬ちゃん達のお家に行ってもいいって♪」

 

狭山「…え?ボク達の?」

 

悠里「穂村さんが__君に用があるみたいで招待してくれたの。あの…迷惑かしら?」

 

狭山「…ううん。そんなことないよ…」

 

胡桃「めちゃめちゃデカイ家で、しかも電気が通ってるみたいだぜ。穂村さんが自慢気に話してた」

 

美紀「電気が?あ、あの~…図々しい質問になっちゃいますけど、シャワーとか使えますか?」

 

狭山「…使えるよ。大きなお風呂もあるし、その…みんな入っていけば良い…」

 

美紀「ほっ、ほんとですかっ!?」

 

狭山「うん。みんなが良ければ、だけど…」

 

うつ向いたまま、狭山はチラチラと彼女達を見る。気のせいか少し緊張して話しているようにも見えたが、それでも…どこか楽しそうに笑っていた。

 

 

 

 

圭一「…初めて見たな、あんな狭山は」

 

柳「んん、そうだね。やっぱり女の子同士の方が気が楽なのかな…」

 

圭一「まぁ…普段は俺達みたいな男達としか接してないからな」

 

 

普段はとても冷たく、感情を見せたりしない彼女だが、それでも元々は普通の少女だったのだろう。柳と圭一は、狭山が微笑みながら由紀達と話す様を見てそう思った。

 

二人がそんな珍しく、貴重な光景を眺めていると、いち早く帰り支度を済ませた穂村が一同に告げる。

 

 

 

穂村「ぃよしっ!!じゃあボチボチ帰るかね!おい少年っ!俺たちは見るからに高級そうな外車で移動するから、ぶつけないように気を付けながらついてこいよ?」

 

「そんなこと言われても…こっちの車を運転するのは僕じゃないんで」

 

穂村「ん?じゃあ誰だ?」

 

穂村が首を傾げていると、悠里がグラウンドの隅に停めたキャンピングカーへと向かいながら軽く手を上げて微笑む。

 

 

 

悠里「今回は私です。私達はこのままグラウンドから出るので、柳さん達は学校の正門で待っていて下さい」

 

柳「分かった。合流したらそのまま私達が先導するから、君達は後ろからついてきてくれ。早ければ10分としない間に我が家につく」

 

 

悠里達は車に乗り込み、グラウンドから外へと出た。そのまま学校の外側を回って正門に向かうと既に真っ黒な高級外車が顔を出しており、その車は悠里の運転するキャンピングカーを確認してから走り出す。

 

 

 

悠里「あれがあの人達の車ね…。ほんとに高そう…」

 

胡桃「りーさん…ぶつけないように気を付けろよ。弁償とかできねぇからな…」

 

悠里「わ、わかってるわよ…」

 

念のために走り出したその黒い車とは余分に距離をとり、間違ってもぶつけないよう慎重に悠里はハンドルをきった。

 

 

 

 

~~~

 

 

穂村「…やけに車間距離を空けてるな。警戒されてんのかね?」

 

圭一「あれだけ親しくしててそれは無いだろ。あいつら、人を疑うことを知らなそうだったしな」

 

背後をゆっくりとついてくるキャンピングカーを見つめながら、穂村達は会話を交わす。キャンピングカーはこちらの車と常に10m近い距離を空けており、それ以上近付く気配が無い。

 

 

狭山「…穂村がぶつけないようにしろとか言ったから、余計な気を使ってるんだよ」

 

穂村「あぁ、そういや言ったっけ。だってほら、ぶつけられたら柳さん怒るっしょ?この車、お気に入りみたいだし…」

 

柳「わざとでもなければ、別に怒りはしないが?」

 

柳はバックミラー越しに穂村と目を合わせると心外そうに呟く。その器の大きさに穂村が感心していると、柳は思い出したように口を開いた。

 

 

 

柳「さっき圭一君が言っていたが、彼女達…確かに疑うことを知らなそうだったな。丈槍君なんかは特にだ…」

 

圭一「良く言えば純粋…悪く言えばお人好しだな。この世界じゃ危ない人間達だ…。もし危険な連中と出会ったら、あんな奴等はあっさりと殺される」

 

真剣な表情で圭一が語る中、突然穂村は笑い出す。圭一の言ったある言葉がツボに入ったらしい。

 

 

 

穂村「あはははっ!俺らも十分危険な連中でしょ?」

 

狭山「………」

 

圭一「確かにそうだが、出会ったタイミングが良かった。今日の俺達は日頃の疲れを取る為に外出していただけだから無意味な戦闘は避けていたし、それにあいつらの態度も良かったな。もしあいつらのが気に入らない連中だったら、その場で殺してたさ」

 

穂村「まぁ、由紀ちゃんとかやる気が削がれる性格してるしなぁ~」

 

狭山「…でも、穂村が一番気に入ったのは彼でしょ?随分と仲良くしてたし」

 

穂村「あぁ!あれほど話の合う奴はそういねぇ!なんつーか…真の男に会えた気がする!」

 

狭山「真の変態の間違いでしょ」

 

柳「何はともあれ、中々面白い連中だ。体育祭の方は結局引き分けで終わってしまったな。君達なら圧勝すると思っていたのに穂村君はバトンを落とすし…狭山君はパンを捉えられないし…」

 

柳は深いため息をついてから意地悪な言い方をする。実際はただの冗談で、別に気にしてはいなかったのだが…。穂村と狭山は項垂れて悔しがっていた。

 

 

 

狭山「…あれは…すごく悔しかった」

 

穂村「あぁ…。あそこで悠里ちゃんのおっぱいを見さえしなきゃ、あっさりと勝てたのに…」

 

圭一「………」

 

柳「………」

 

穂村の発言で一瞬時が止まったが、全員すぐに気持ちを切り替える。その直後に柳が話題にあげたのは、足を負傷した彼の事だった。

 

 

 

柳「あの少年は足を怪我しているんだろう?少しの間泊めてやろうか?」

 

穂村「おっ!それいいな!よしっ、治ったらまた体育祭をやるように提案してみよう!今度は圧勝してやる!!」

 

圭一「俺はもういい…。お前と狭山だけでやれ」

 

穂村「ノリが悪いな…。まぁいいや、狭山…今度は勝つぞ?」

 

狭山「穂村は邪魔だからいらない…。ボク一人で十分」

 

いつものように狭山が穂村を雑に扱う。彼女の素っ気ない態度に穂村は頭を抱えたが、柳だけはいつもとはそれとなく違う雰囲気を感じ取り、ひっそりと微笑んだ。

 

 

 

 

もし由紀達と出会ったのが今日でなかったら、こんな仲良くはなれなかったかもしれない。タイミングを間違っていたら敵になっていたかも知れないし、そもそも出会う事すらなかったのかも知れない。

 

今回、由紀達は圭一達と体育祭で競う事になり、そして引き分けた。けれどもし、圭一達と体育祭ではなく本気の争いをする事になったとしたら…由紀達はどうなるのだろうか…。

 

この世界とは別の世界で彼女達はそれを経験する事になるのだが、それはまた別のお話…。

 

 

 

 

 




このまま柳さんの屋敷に向かい、数日間泊めてもらうというハッピーエンドで終わらせてもらいました(*´-`)この数日間の内に彼は今回撮った写真を穂村君から分けてもらい、録画映像を共に眺めて乱舞したのは言うまでもありません(笑)

本当は『大玉転がし』や『二人三脚』も…特に『二人三脚』はかなりやらせたかったのですが、時間の都合で断念しました(汗)

余裕があれば、後日談として書くかも知れません(^_^)


因みに私、小・中・高と学園生活を過ごした身でありながら『パン食い競走』を体験した事がありません。これって実在する種目なのですか?本当は架空の存在なんじゃ…( ̄▽ ̄;)

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