軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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以前由紀ちゃん達がやっていた体育祭を、彼やあの人達と共にもう一度!というリクエストをいただいたので書いてみました(*^^*)
本当はもっと早く公開する予定だったのですが、色々詰め込んでいたらこんなに遅くなってしまいまして…(汗)リクエストしてくださった方、本当にすいません!お待たせしましたm(__)m

一話にまとめるとかなりの文字数になってしまう為、分割して数日事に更新します!全四~五話くらいになる予定です!


体育祭をもう一度!~じゅんび~

 

 

 

見知らぬ高校のグラウンド、その隅に停まる一台のキャンピングカー。

由紀、胡桃、悠里、美紀、そして彼の五人はその車内にいた…

 

 

 

 

由紀「こうして学校にいるとさ、なんか色々思い出すね」

 

窓の外に広がるグラウンド…そしてその奥の校舎や体育館を眺めて、由紀がはしゃぎ出す。

 

 

胡桃「確かに…そうだなぁ」

 

美紀「学校で暮らしていた時の事を思い出します。楽しいこと、辛いこと、色々ありました…」

 

悠里「ええ、本当に色々あったわよね。肝だめししたり…体育祭をしたり…」

 

「肝だめし?体育祭?すいません…話についていけてない男がここにいます」

 

彼女達の学校暮らし時代の事を深く知らない彼はそっと手をあげ、少しふてくされる。彼は彼女達がそういった行事を行っていた頃、一人で"かれら"と戦っていたのだ。

 

 

 

悠里「あっ、ごめんなさい。そういえばあなたとはまだ会ってない頃の話になっちゃうわね」

 

「みんな…僕がいない間に楽しい学校生活を謳歌していた訳ですか…。」

 

胡桃「仕方ないだろ。あの時のあたし達はお前の事なんざこれっぽっちも知らない…他人同士だったんだからさ」

 

「わかってる…。わかっちゃいますが…少しさみしいですわ…。僕もそんな素敵イベントに混ざりたかった…」

 

美紀「まったく…なにをそんなに落ち込んでるんですか」

 

テーブルに顔を伏せ、深いため息をつく彼に美紀が冷たく言い放つ。

その直後、由紀が何かを思いついたらしく、突如車内で大きな声をあげた。

 

 

 

由紀「…ぃよしっ!!じゃあもう一回だ!!!」

 

胡桃「うわっ!?びっくりした…。何がもう一回なんだよ?」

 

由紀「せっかく学校にいるんだし、今度は__くんも加えて体育祭をしようよ!!」

 

「………」ピクッ

 

由紀のこの発言に、テーブルに伏せていた彼の耳がピクリと動く…

 

 

 

美紀「体育祭を…もう一回ですか?」

 

由紀「うんっ!りーさん、良いでしょ?」

 

悠里「う~ん…そうね。__君もやりたいみたいだし、もう一回しましょうか。」

 

由紀「やった~!良かったね__くん!今日はわたし達と体育祭しようね♪」

 

 

嬉しそうに彼の肩を叩く由紀…

彼は伏せていた顔をあげると由紀の顔を見つめてにっこりと微笑み、席から立ち上がって外へと出た。

 

 

 

「そうと決まればこうしちゃいられませんよ!体育館の方に行き、必要な物を集めましょう!!」

 

由紀「うん!みんなも行こう?」

 

胡桃「はいはい…」

 

美紀「体育祭の準備ですか…。競技に合わせて必要な物を揃えなきゃですね」

 

悠里「ええ、競技の方は私と美紀さんで適当に決めましょうか?」

 

由紀「パン食い競走っ!パン食い競走がやりたいっ!!」

 

 

美紀「パンがありません。普通の競走で我慢して下さい。」

 

由紀「うぅ~、やってみたかったなぁ…」

 

 

彼女達はそんな会話を交わし、体育館の中へと向かう。

 

 

 

 

 

 

~~~~~

 

一方、その頃…

 

学校の正門を越えた先にある駐車スペース

そこに一台の外車が停まり、中から四人の人物が降り立った。

 

 

 

 

 

 

 

 

穂村「んで…なんでまたこんな所に?」

 

柳「連日働いて疲れているであろう君達を連れ、たまには一緒にのんびり外出するのもありだと思ったんだが…。偶然にも我が母校を見つけてしまったのでね、少し立ち寄ったんだよ」

 

圭一「心底興味がないんだが…」

 

狭山「…ボクも」

 

外から一人懐かしそうに校内を覗く柳を見て、圭一達三人はブツブツと文句を言う。三人は柳を無視して車に寄りかかり、雲一つ無い空を見上げて会話を交わした。

 

 

 

圭一「良い天気だな…」

 

穂村「そうッスね~…」

 

狭山「…せっかくの良い天気なのに、ボク達は知りもしない学校の駐車場にいるんだね」

 

穂村「………」

 

狭山「………」

 

 

圭一「言うな…惨めになる」

 

穂村「柳さんの気がすむまで待たなきゃダメなのかねぇ…」

 

狭山「…たぶん、そう…」

 

 

 

穂村「あと何分くらいで終わるかなぁ…」

 

圭一「本人に聞けよ…」

 

 

圭一にそう言われた事で穂村は柳本人にいつまで待てば良いのか尋ねようとするが…懐かしそうに校舎を眺めていた柳はいつの間にか一人でズカズカと中へ入っていき、三人の前から姿を消していた。

 

 

穂村「うわ…中に行っちゃったんだけど……」

 

圭一「………」

 

穂村「てかさ、中に感染者とかいたらどうすんのかな?」

 

圭一「さぁ…、まぁアイツはそこらの感染者に簡単に殺られたりしないだろ。…たぶんな」

 

穂村「…それもそうだね。ほっとくか…」

 

圭一「ああ、ほっとけほっとけ…」

 

 

狭山「…ボクらは一応、あの人の護衛の役割も兼ねてるんだけど。恐ろしく無能だね…」

 

穂村「学校見てはしゃぐようなオッサンの護衛とか勘弁だわ…」

 

圭一「だな…」

 

 

校内に消えた柳に呆れ、ぼーっと辺りを見回す三人…

今日は本当に良い天気で、太陽の光が心地良い。

目を閉じればそのまま眠ってしまいそうだ…

 

そんな事を考えていた、その時……

 

 

ゴロゴロゴロゴロ…

 

 

 

圭一「おい…なんだ、あれは…」

 

学校の敷地内を転がる大きな赤い謎の球体…

それはゴロゴロと音をたて、三人の元へともの凄い勢いで迫ってくる。

 

 

穂村「おいおいっ!?あんなんぶつかったら車に傷がつくぞ!」

 

狭山「…良いんじゃない。これは柳さんの車であって、ボク達の車じゃないし…」

 

圭一「まったくだ…。傷でもへこみでも、どんどんつけてくれて構わない」

 

 

そう言い放ち、圭一、狭山の二人は車から離れる…

ただ一人、車のそばに残った穂村はこの車に傷をつけたら後で柳に何を言われるか分かったもんじゃないと思い、真正面からそれを受け止めようと構えた。

 

 

 

穂村「まったく、後でお前らが役立たずだったって柳さんに報告するかんな!?」

 

狭山「…ご自由に」

 

圭一「ああ、ご自由に…」

 

 

 

ゴロゴロッ!!

 

穂村「ぐうっ!!」

 

迫る球体に向けて穂村は両手を伸ばし、手のひらを広げて待ち構える…

その球体は勢い良く穂村の手にぶつかり、大きな音をたててその場に弾んだ。

 

パシィンッ!!

 

 

穂村の手に弾かれたそれは始めはポヨンポヨンと大きく地面を跳ねていたが、少しすると勢いが衰え、落ち着いてゆく…

そして最終的にはその場に静止したその球体に穂村は手をつき、じっと見つめた。

 

 

 

穂村「…ったく。誰がこんなもんを…!」

 

 

そう言いながら穂村はその球体が転がってきた方向を見る…

するとそこには一人の少女が申し訳なさそうに立っていて、すたすたと穂村の元へと歩み寄ってきた。

 

 

 

由紀「ご、ごめんなさい…。大玉、車にぶつかったりとかしちゃいましたか?」

 

穂村「いや…、ギリギリで止めたから大丈夫だけどさ。」

 

由紀「ふぅ~。良かったぁ~!ギリギリセーフっ!!」

 

穂村「セーフじゃねぇって!俺が止めなきゃぶつかってたっての!!」

 

 

目の前で大玉を撫で、ニコニコとする少女を見た穂村は少々苛立ち、その娘の額を軽く小突く。

少女はそれを受けると痛そうな声を漏らし、フラフラとよろめいた。

 

 

 

由紀「うぅっ~!ご、ごめんなさぁ~い!」

 

穂村「分かれば良いけどな、ちゃんと反省しろよ?」

 

由紀「は、はいっ…」

 

狭山「…これ。何に使うの?」

 

 

二人のそばに駆け寄って、その大玉を指先でつつきながら少女に尋ねる狭山…

その問いに対して少女はにっこりと微笑み、自慢気に答えた。

 

 

 

由紀「みんなで体育祭をやるんだよ!これは大玉転がしに使うのっ!」

 

狭山「…体育祭?」

 

穂村「大玉転がしぃ?」

 

 

圭一「何を言ってるんだコイツは…?」

 

 

 

感染者だらけの世界…

そんな世界で目の前の少女が放った言葉に彼等は首をかしげ、不思議そうな表情をする。

三人が不思議そうに少女を見つめていると更に四人の少年少女がその場に駆け寄ってきて、驚いたような声をあげた。

 

 

 

悠里「由紀ちゃん、大玉は……。えっ!?」

 

美紀「先輩っ!大丈夫ですか!?」

 

胡桃「あんたら…誰だ?」

 

「ちょっと待って…誰かいるんですか?」

 

 

 

由紀の前に立つ圭一達に警戒心を向けてくる三人の少女…

そしてその背後、ゆっくりと転がる白い大玉の後ろから少年の声が聞こえた。

どうやら玉が邪魔で前が見えていないらしい。

 

その少年はゆっくりと転がしていた大玉を止めるとその背後から顔を出し、目の前の三人を見回した。

 

 

 

「…あなた達は?」

 

圭一「あぁ~…。俺達は仲間がここの卒業生だっていうから、久しぶりの母校見学に無理やり付き合わされてるだけだ。だから…そんなに警戒するな。今日はのんびりしたいし、お前らみたいな若い連中に襲いかかったりはしないさ」

 

穂村「そゆこと。んで…君達は?」

 

悠里「えっと、私達は……」

 

尋ねる穂村に対して五人は名前を名乗って軽い自己紹介をし、更にこれから自分達だけの体育祭をするという事も告げた。

それを聞いた穂村・狭山の二人は興味を抱き、微かに表情を明るくする。

 

 

 

狭山「…ちょっと、楽しそう」

 

穂村「だな。…おい!それって俺んちも参加出来たりするか?」

 

圭一(いや待てよ、参加出来たらするつもりなのか…!?)

 

 

 

悠里「え?えっと…由紀ちゃんに任せるわ」

 

由紀「うん!じゃあ、みんなで楽しもう!!えっと…」

 

 

なにかを言いたげに、じっと狭山達の顔を見つめる由紀…恐らく狭山の名前が分からないからなんて呼べば良いのか戸惑っているのだろう。

そんな彼女の手を狭山はギュッと握り、軽く頭を下げた。

 

 

 

狭山「…狭山真冬。よろしく、由紀」

 

由紀「うんっ!よろしく、真冬ちゃん♪」

 

 

 

 

 

 

 




…というわけで、本編ではまだ彼女達と絡みの無い"外伝メンバー"を加えて体育祭を開きます!


念のため、外伝メンバーの簡単なプロフィールを…

神崎圭一(かんざきけいいち)…外伝の主人公、27才。生意気な人や、見ていてイライラさせる人が嫌いです。今回の体育祭にはあまり乗り気ではありませんが、穂村達に巻き込まれ渋々参加する事に…。

狭山真冬(さやままふゆ)…17才、圭一の仲間。女の子なのに自分の事を『ボク』と呼ぶ、いわゆるボクっ娘です。普段は笑ったりせず、常に無表情。ただ、仲間であるはずの穂村とは相性が悪く、イライラした表情を見せます。

穂村竜也(ほむらたつや)…21才、圭一の仲間。お喋りで少しチャラチャラした性格をしていて、圭一や狭山から鬱陶しく思われてます。今回の体育祭に最も乗り気なメンバーです。

柳恭介(やなぎきょうすけ)…34才、圭一達三人を束ねるリーダー的な存在です。普段は滅多に外出しませんが、たまたま今回は圭一達三人を連れて外出している途中でした。


~~~

この話はあくまでもifストーリーの為、外伝メンバーが学園生活部をターゲットにしていなかったり、彼が狭山真冬と初対面だったりといった本編とは違う点があります。

ただメンバーの大まかな性格などはそのままなので、もし外伝メンバーが敵意なく学園生活部と出会ったら…というのをポイントにして楽しんで頂けたら嬉しいです(^-^)

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