軌跡〜ひとりからみんなへ〜   作:チモシー

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さて…お待たせしました!!

久しぶりの本編!それもシリアスじゃないヤツです(*´-`)
私自身明るい話が大好きなので、書いていて楽しかったです(笑)

まぁ、シリアスな話も嫌いでは無いんですけどね…(´∇`)
けどやっぱり、書いていて楽しいのは明るい話なのです♪


第八章・たんさく
九十九話『二つの変化』


 

 

 

由紀『ミナちゃんたちとお別れしてから二日…。わたしたちは外に出て胡桃ちゃんを治す手がかりを探してるけど、まだそれは見つかってない。でもね、胡桃ちゃんは毎日明るくて…ひょっとしたら、ずっとこのまま何事もなくいられるかも…とか思っちゃったり…』

 

由紀達五人を乗せたキャンピングカーは行くあてなく道路を走り、胡桃を救う手がかりを探していた。だが、それはそう簡単に見つかるものではなく、由紀は心のどこかで不安を感じていた。そうして一人ボーッとしながら席についている由紀へ、目の前に座っていた胡桃が声をかける。

 

 

 

 

胡桃「由紀、どした?考えごとか?」

 

由紀「へっ?う、ううんっ!なんでもないよ!!」

 

胡桃「?…そっか?やけに大人しかったからさ、なんかあったのかとおもって…」

 

由紀「えっと…その……今日の夕飯なにかなぁって考えてて…」

 

胡桃「おいおい…昼飯食ったばかりなのに、もう夕飯の事考えてんのかよ」

 

由紀「………」

 

『夕飯の事を考えてた』というのは咄嗟に口から出た言い訳だったので、先ほど昼食を済ませたばかりだという事まで頭が回らなかった…。由紀は自分が食い気ばかりの人間だと思われてると感じて気恥ずかしくなり、胡桃からスッと顔をそむける。

 

 

 

胡桃「まぁ…食事も立派な楽しみの一つだし。理解できなくはないけどさ…食い過ぎには注意しろよ?」

 

由紀「ら、らじゃ~…」

 

小さく返事を返し、胡桃の顔を見る…。

そうして目が合った途端に少しだけ微笑む彼女はいつもと何も変わってなくて、健康そのものに見える。

 

 

 

 

由紀(でも…身体の調子、悪いんだよね。はやく治してあげないと……胡桃ちゃんも……)

 

席に座りながら、そばにある窓から外へと視線を向ける。

今は街中を走っているため見えるのは建物ばかりだが、由紀が見ているのは、その付近の歩道をのっそりと歩き回る"かれら"だった…。

 

 

 

由紀(胡桃ちゃんも…あんなふうに…?)

 

外を歩く"かれら"を見て、由紀は静かに拳を握る。

大切な友達である胡桃を"かれら"のようにしたくはない。絶対に…絶対に彼女を助けると、由紀は改めて決意した。

 

 

 

由紀(みんなで力を合わせれば…大丈夫だよね!)

 

顔を上げ、辺りを見回す。

悠里と美紀はそれぞれ運転席と助手席に…。

彼はというと、由紀と胡桃のいる席とは反対側に位置する席に座り、窓から景色を眺めていた。

 

 

 

由紀『…そういえば、ミナちゃんの屋敷を出たあの日から変わったことが二つあった。一つは彼…__くんなんだけど、気のせいかな?前より大人しくなった気がするよーな……しないよーな……』

 

前の彼はどちらかと言えば騒がしい性格で、幾度か悠里の頭を悩ませていた。しかし未奈の屋敷を出てからというもの、彼は何一つ問題を起こしていない。そして今現在もそうなのだが、時おり外を眺めながら考え事をしているようだ…。

 

 

 

胡桃「なぁ…最近のあいつ、なんかキャラ変わったよな?」

 

胡桃もまたそれに気付いていたらしく、そっと由紀に耳打ちする。

それを聞いた由紀は自分一人の勘違いではなかったのだと思い、素早く二回頷いてから返事をした。

 

 

由紀「やっぱりそう思うよね?なんか違うよね?」

 

胡桃「ああ…なんつーか……やたらクールなキャラになってる。どうしたんだろうな…」

 

由紀「悩みごとかな?」 

 

胡桃「なんにせよ、はやく元に戻ってほしいぜ…。あいつがあんなだと調子狂うんだよなぁ…」

 

由紀「そうだねぇ…」

 

二人がそんな会話をしていると、車が少しずつ速度を落としてどこかに停まる…。窓から外を眺めると、そばに川が流れていた。それを見た由紀と胡桃は、今日がその日なのだと理解する。

 

 

 

由紀「冷たくないといいなぁ…。はやく普通のお風呂に入りたいよぉ」

 

胡桃「だな。まぁ、しばらくは我慢だ」

 

悠里が川のそばに車を停めるのは洗濯物のたまった時か、体の汚れを落としたい時…もしくはその両方だ。今日は洗濯物もそこそこあるし、全員が体を洗いたいと考え始めていたので、両方ともするつもりだろう。

 

車を停めた悠里は運転席から立ち上がり、全員に笑顔で告げた。

 

 

 

悠里「さぁ、今日はここに車を停めるとして…水浴びと洗濯をしちゃいましょうか?」

 

由紀「りょーかい。洗濯はあとで?」

 

悠里「そうね、水浴びしてから洗濯して…少ししたら夕飯の準備しちゃいましょう。__君、先に水浴び行ってくる?」

 

これまで水浴びする時は基本的に男女別々…というか、彼とは別にしてきていた。水浴びの際、女性陣は水着を着用しているので一緒でもいいのだが、水着姿を彼に晒すのはそれとなく危険な気がして…避けてきていた。

 

 

 

「あ~…後でいいです。お先にどうぞ」

 

言いながら彼は立ち上がり、車内のトイレへと入って扉を閉める。

こうすることで、彼女達が車内で水着に着替えられるのだ。

 

 

 

美紀「なんか…今日はあっさりしてますね」

 

悠里「そうねぇ、どうしたのかしら?」

 

今回は進んでトイレへと入っていった彼だが、普段はこうではない。いつもなら誰かに言われるまでは然り気無くその場にとどまろうとして気配を殺していたし、酷い時では彼女達が着替えてる時にそっと扉を開けた事もあった…。

 

しかしその時、扉の隙間から彼が見たのは彼女達の着替えではなく…黒いオーラのような物を発しながら至近距離でニッコリと微笑む悠里だった。彼女と目が合った彼はその後、悠里によってトイレから引きずり出され、丸々二時間以上の説教をされたのだが…。

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「…また覗く気じゃねぇよな?」

 

悠里「私が見張っておくから、みんなは隅で着替えちゃって」

 

悠里は彼のいるトイレのそばに立ち、その扉をじっと見つめる。

もしこれが少しでも開こうものなら、また数時間の説教をせねばならないだろう…。

 

そうして悠里がそこを見張っている内に由紀達は隅の方でささっと水着に着替え、悠里のそばへと戻る。以外にも、扉は最後まで開くことがなかった。美紀はトイレの中にいる彼に聞こえぬよう、そっと悠里に耳打ちする。

 

 

 

美紀「…覗きませんでしたね?」

 

悠里「そうね…。扉の前に私がいるのが分かっちゃったのかしら?」

 

胡桃(そもそも覗く気がなかったって思われてない辺り…マジで信頼されてねぇな、あいつ)

 

こっそり交わされる二人の会話を聞いた胡桃はそんな事を思い、彼のいるトイレの扉へと同情の視線を向ける…。彼が彼女らと共に行動してからそれなりに経ったが、こういった面においての信頼はまだ掴めていないようだ。

 

 

 

 

美紀「りーさんも着替えちゃって下さい。ここは私が見張っておきますから」

 

水着姿の美紀がそっと告げる…。

すると悠里は自らの顎に人差し指をあてて何やら唸り、彼の潜むその扉をじっと見つめた。

 

 

 

悠里「ん~……先に外、行ってていいわよ」

 

美紀「えっ?でも…それだと覗かれた時に見られちゃいますよ!?」

 

悠里「そうだけど、まぁ大丈夫でしょ。彼には色々と助けられたし、このくらいの信頼はしてあげなきゃね?」

 

胡桃「ほ、ほんとにいいのか…?それはさすがにあぶねー気がするけど…」

 

悠里「大丈夫大丈夫、ほら、先に行ってて♪」

 

半ば無理矢理にして美紀達を外へと出し、悠里は今一度そこを見つめる…。彼はまるで死んでいるかのように静かで、その扉は開く気配を見せない。悠里は扉へと近づき、右手で二回ノックした。

 

 

 

コンコンッ…

 

悠里「…大丈夫?」

 

 

 

 

「…何がです?」

 

中からすぐに返事が返ってきた。一応、生きてはいるらしい。

それは当たり前の事なのだが、あまりに彼が静かなので心配していた悠里はほっと胸を撫で下ろす

 

 

 

悠里「ふふっ、なんでもないわ。あと少ししたら着替え終わるから、もうちょっとだけ待っててね?」

 

「了解です」

 

返事を聞いてから、悠里は制服のシャツへと手を伸ばし、胸元からボタンを一つずつ外してゆく…。そうしてシャツを脱ぎ終えた後はそのまま下着へと手をかけるが、その際にチラッと彼のいるトイレを確認しておく。

 

 

 

悠里「………」

 

扉はしっかりと閉まっており、覗かれている気配はない。

とりあえずは一安心する悠里だが、少し開けられてしまったら見られる位置で着替えているので、どこか恥ずかしかった。

 

 

 

悠里(マコトさんと一緒だったとはいえ、私は彼に命を助けてもらったんだし…見られたら見られたで仕方ないと思ってあげるつもりだけど、やっぱり恥ずかしいわね)

 

胸を覆う下着へと手をかけ、それを外す…。

念のためにトイレには背を向けて着替えているので万が一の時は見られるよりも先に手で隠せると思うが、やはり落ち着かない。

 

 

 

 

悠里(や、やっぱり…美紀さんに見張っておいてもらえばよかったかしら…)

 

見られてる訳ではないが、左手で胸を隠しながら用意してた水着を右手で取ると、少しだけ急いでそれを着ける。とりあえず胸を隠すことが出来て一安心するが、問題は次だった…。

 

 

 

悠里(下……下も…着替えなきゃいけないのよね…)

 

そっとスカートに手をかけ、もう一度トイレへと視線を向ける。その扉はやはり閉まったまま…覗かれてはいなかった。

 

 

 

悠里(大丈夫…大丈夫…彼なら大丈夫だから、信じてあげないと…)

 

言い聞かせるようにして心で呟き、スカートを脱ぐ。

悠里はまたトイレへと振り向きかけるが、その時間が惜しいので、ここまできたら先に着替えることにした。

 

 

脱いだスカートを一度席にかけ、今度は下着に手をかける。

あとはこれを脱いで水着を着ればいいだけなのだが、この下着が中々脱げない…。緊張して、手が止まってしまっているからだ。

 

 

 

 

 

 

悠里(大丈夫っ…大丈夫っ!見られて…ないからっ!!)

 

意を決し、下着をずり下ろしていく…。

彼は扉を隔てた先にいるので見られてはいないのだが、逆に言えば自分は今、扉一枚しか隔てていないところで下着をずり下ろしている。もし…万一にも今、彼が覗きを働き扉を開けたら、裸状態の下半身を見られてしまう…。そう思ってしまうと悠里の鼓動は激しくなり、みるみる顔が真っ赤になっていった。

 

 

 

 

悠里(一人で着替えてるだけなのに…なんでこんなにドキドキしてるの?バカみたいじゃないっ…!)

 

下着を足元へとずり下ろし、足先から抜いていく。

脱いだその下着を隠すのは後回しにして、まずは水着を着ようと思い、それに手を伸ばした…その瞬間

 

 

 

 

 

 

 

ガタッ…!

 

 

 

悠里「っ!?」

 

彼のいるトイレの扉から、物音が鳴った…。

悠里は即座に何も着ていない下半身を左手で出来るだけ隠し、右手でその扉を力強く押さえた。

 

 

 

悠里「なっ、なにしてるのっ!!?」

 

ガシッと扉を押さえ、開かないようにしながら尋ねる。

状況が状況なので余裕がなく、悠里は声を荒げてしまった…。

 

 

 

「すいません、足を扉にぶつけちゃいました」

 

落ちついた様子で彼が答える。

どうやら、嘘ではなさそうだ…。

 

 

悠里「そ、そう……」

 

「もう、着替え終わりますか?」

 

悠里「あっ、あとちょっとだから…もう少し待ってて!」

 

 

悠里は右手を扉から離し、慌てて水着を着る…。

その後は脱いだ服をたたみ、それが彼の視界に入らないよう、運転席に置いてあったバッグの奥へとしまって隠した。

 

 

 

悠里「終わったわ。待たせてごめんなさいね」

 

扉を軽く叩いて、彼に着替えが終わったことを報告する。

彼はこの報告がきて一分ほど経ち、女性陣が外に出てからトイレを出るのがいつもの決まりだった。それは今回も例外ではなく、彼はトイレに身を潜めたままの状態で返事を返す。

 

 

 

「わかりました。じゃ、気をつけて行ってきて下さいね」

 

悠里「うん…済んだら外から声かけるから、お願いね?」

 

「は~い」

 

返事を聞いてから、悠里は外へと出る。

一足先に外へと出ていた由紀達は既に川に足をつけたりしながら、持っていったタオルや石鹸を使って体を洗っていた。

 

 

 

 

 

 

悠里「…お待たせ」

 

美紀「お先です。…って、何かありました?」

 

車内で何かあったのか…遅れてそこに現れた悠里の顔は先ほどよりも疲れているように見えた。実際は特に何もなく、ただ一人で着替えただけなのだが…扉一枚先に彼がいることからのプレッシャーが悠里を精神的に疲れさせたのだろう。

 

 

 

悠里「いえ…大丈夫よ……」

 

力なく答え、悠里は川辺に歩み寄っていく…。

今日は比較的暖かい日だからか、水もそこまで冷たく感じなかった。

 

 

 

 

由紀「胡桃ちゃん、シャンプー取って~」

 

川につけた足をバタバタと動かして水しぶきをあげながら、由紀はそばにいた胡桃へと手を伸ばす。それを見た胡桃は持ってきたバッグから一本のシャンプーボトルを取りだし、それを由紀に手渡した。

 

 

胡桃「ほれ、次からは自分でとれよ」

 

由紀「わたし、ついつい甘えちゃう年頃で…許してね」

 

胡桃「いや…あたしはお前と同い年だけど、別に甘えたい年頃じゃねぇぞ」

 

そんなツッコミをいれながら、胡桃も川に足をつける。

するとそのそばに悠里と美紀も寄ってきて、四人並んでの会話をした。

 

 

 

 

 

美紀「今日はわりと暖かいですね」

 

悠里「ええ、これなら洗濯物もすぐに乾きそう」

 

胡桃「りーさん、あいつはどうしてる?覗かれたりしなかったか?」

 

 

悠里「うん。大人しく待っててくれたわよ。前にあれだけ説教したから、もう覗いたりする気はないのかしらね」

 

美紀「いや…まだわかりませんよ」

 

由紀「みーくんはキビシイなぁ。そんなふうに警戒しなくても大丈夫だよ。__くん、とってもいい人だもん」

 

美紀「それは分かってますが…それとこれと話は別というか…」

 

胡桃「…………ん~」

 

それぞれが体や髪を洗いながら話をしていると、胡桃が悩ましげな表情をして俯く。次の瞬間…彼女はその顔を上げ、三人へある提案をした。

 

 

 

 

胡桃「そんなこと話してる時に言いづらいんだけどさ…その……」

 

申し訳なさそうに、少しずつ言葉を放つ胡桃…。そんな彼女を見て、由紀は少しだけ嬉しそうにニッコリと微笑んだ。

 

 

 

 

由紀『ミナちゃんの屋敷を出てから変わった二つのこと……一つはさっき言ったとおり、__くんが大人しくなった。それで、あと一つは……』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

胡桃「あいつも……ここに呼んでやっていいかな?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由紀『胡桃ちゃんが、前より__くんに優しくなった』

 

 

 




そういう訳ですので、彼が彼女達の水着姿を"初めて"拝める流れになりました。

彼は今現在、少しだけ大人しいキャラとなっていますが、これだけのビッグイベントを前にしたらさすがにいつもの彼に戻り、大興奮する事でしょう!


彼が見てきた彼女達は基本的に制服・ジャージ姿などが殆どで、露出控え目でしたから、水着姿なんか見たらそりゃもう喜ぶはずです(笑)

喜ぶあまり、調子にのり過ぎないといいのですが…(汗)

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