NARUTO筋肉伝   作:クロム・ウェルハーツ

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シカマルVSテマリ

 ネジとナルトの闘いは終わった。心残りなく戦い抜いた二人に大きな拍手が送られる。

 会場の中心で高々と拳を掲げたナルトの姿を見たサクラだったが、一瞬の無表情の後、それまで感情を素直に表していた表情を曇らせた。

 

 ──サスケくん。

 

 中忍選抜試験、本選の第二試合はサスケと我愛羅の試合である。だが、試合直前になってもサスケは姿を現さない。サスケはカカシと共に修行をしていると聞いていたサクラであったが、サスケの身に何か起きたのではないかという懸念は拭い去ることは出来ていなかった。

 

『やっぱり、私は君が欲しい』

 

 中忍選抜試験、第二の試験の会場、“死の森”で出会った忍の言葉がサクラの脳裏に響く。

 今まで会った全ての者の中で最も強い忍の狂気を思い出し、サクラは身を震わせた。

 楽観視など出来ようハズがない。最大限の警戒を行っても、まだ足りない。それほどの執念があの忍にはあった。

 

「サクラ」

 

 ハスキーな声がサクラの耳に届く。

 顔を上げたサクラの瞳に映るのは巨大で、しかし、温かな姿。例えるならば、太陽か。

 その太陽の前で俯いたままではいられない。サクラは感情を偽り、笑顔という仮面を向ける。

 

「ナルト。おめでとう」

 

 サクラの声に一度、頷いたナルトは喜びを浮かべることなく、淡々と辺りを見渡す。

 

「サクラよ……サスケはどこに?」

「……まだ来てない」

「サスケ……」

 

 試合の後でナルトの体の至る所には砂埃が着いている上に、いつも着ている黒いTシャツはなく、上着は片手に持ったまま。自分のコンディションを(かえり)みる方がいい状況だが、ナルトの興味はサスケへと移っていた。

 

 ──なんで……。

 

 サクラは拳を握り締める。

 

 ──なんで、こんなに悔しいの?

 

 その悔しさはどこに起因しているのか?

 

 ナルトがサスケを見ているからか? 是。

 ナルトの努力が認められたからか? 是。

 ナルトの闘いに魅せられたからか? 是。

 

 しかし、それ以上に悔しい理由があった。

 

 ナルトとサスケ。

 

 サクラは握り締めていた拳から力を抜き、ナルトを見上げた。ナルトもまたサクラの様子に感じ入るものがあったのだろう。言葉を発することなく、彼女を真っ直ぐに見つめて言葉を促す。

 

 一度、深呼吸をした後、サクラは手を上げた。応じてナルトも手を掲げる。

 

「ナルト……私はアナタとも闘いたい」

「サクラよ……決勝で()つ」

 

 パァンと高い音がナルトとサクラの間で響いた。

 掌と掌が打ち合い、奏でる音は澄み切り、サクラの体に伝播する。

 

 確かに、サスケは姿を見せない。

 だが、サスケが試合から逃げ出すことがあろうか? いや、そのようなことは天地がひっくり返ってもあり得ない。そう、サスケは必ず来る。そう信じているからこそ、サクラは悔しい気持ちを抱えている。

 

 なぜならば、サクラの試合は最後。トーナメントの端のナルトと闘うためにはサクラは決勝まで勝ち進まなくてはならない。そこで、問題となるのはトーナメントのブロックで隣り合うナルトとサスケだ。二人は勝ち進めば相対することとなるだろう。しかしながら、トーナメントで先に進む資格を有するのはナルトかサスケかの内、一人のみ。

 どんなに願おうがナルトとサスケの“二人”と闘うことはできない。

 

 それが、サクラが口惜しく感じる理由だ。

 自分が心から憧れた二人と拳を合わせることができる絶好の機会。

 

『ナルト……私はアナタとも闘いたい』

 

 それで、サクラは『アナタ“とも”闘いたい』と無意識の内に言葉にしたのだろう。自分が闘いたい二人の内の一人に贈る言葉だ。

 

 先ほどのナルトと手を叩いた時の衝撃で決意は更に強靭になった。絶対に負けたくない闘いがある。そのためには勝つ、勝ち続けることが必要だ。

 だから、心配しない。修行したとはいえ、まだまだ自分は弱いということを理解しているからこそ、サクラは自分の試合まで一途に、そして、純粋に気合を高めるのだった。

 

 +++

 

「フフフ……ざわついていますね」

「いい闘いだったからのォ……」

 

 二人の忍が言葉を交わす。

 彼らの言葉通り、会場の雰囲気は先ほどのナルトとネジの闘いで最高潮と言えるものになっていた。

 

「いえ、それもあるのでしょうが……」

 

 二人の忍の内、被っている笠に“風”と書かれた男が目線を隣に遣る。

 

「おそらくは次の試合。物見高い忍頭たちや依頼主である大名たちにとって、これほど楽しみな試合はないでしょうから」

「……」

「ところで、彼はもうここに?」

 

 男は隣で沈黙を保つ“火”と書かれた笠を被る老人に問いかける。

 彼の興味は次の試合に移っていた。ナルトとネジの試合の余韻に浸ることなく、次の試合を心待ちにしている男の心中を推し量った老人はどうするかと考えを纏めていく。

 “風”と書かれた笠を被る男の気持ちが分からない老人ではない。五大国と言われるほどの大国が擁する砂隠れの里、その長だけが被ることを許される意匠を凝らした笠。つまり、老人の隣に座るのは風影、四代目風影である。そして、同じような笠──老人の頭にあるのは火と書かれているが──を被るのは火影、三代目火影だ。

 彼にとって四代目風影の心の内を読むことは容易い。というより、多くの者ならば理解できることだろう。

 

 次の試合は木ノ葉隠れ──うちはサスケ──と砂隠れ──我愛羅──との試合である。そして、我愛羅は四代目風影の実の息子。息子に期待する気持ちは理解できることであるし、その試合を早く見たいという気持ちは当然だ。

 

 三代目火影は軽く後ろに立つ忍へと合図をする。

 音もなく彼に近づいた木ノ葉の忍はそっと耳打ちをした。

 

「それが……サスケの消息がまだ掴めません。大蛇丸の事もありますので、皆が騒ぎ出す前に彼を失格に……」

 

 部下の意見はもっともだと三代目火影は得心する。

 サスケは大蛇丸に狙われている。最悪の事態ではあるが、既に大蛇丸の手に落ちていることも十二分に考えられる状況だ。そして、その状況がこの場で知られるのは余りにも拙い。

 

 下を見渡すと次の試合はまだかとソワソワしている観客の様子が見て取れる。木ノ葉の者だけならば、まだいい。しかし、観客の中には他里の忍頭や各地の大名などがいる。その中で、大蛇丸という世界的犯罪者が木ノ葉の下忍を攫ったなどという醜聞が広まれば、そして、それを阻止できなかったとあれば、木ノ葉隠れの権威は地に落ちるだろう。

 

 三代目火影は意を決した。

 

「やむを得ん。ルール通り、サスケは失格とする!」

「フッ……」

 

 目を閉じ、鼻息を漏らした四代目風影に三代目火影は目を向ける。自分に注目を集めたことを認識した四代目風影は目を開ける。

 

「火影殿。うちはサスケの失格は少しお待ち頂きたい」

「お言葉ですが、忍において時を軽んじる者はどんなに優秀とて、中忍の資格はない。ここに来られている忍頭や大名たちが納得するような明解な理由でもなければ、彼を待つ理由がありません」

 

 四代目風影の言に反応するのは三代目火影の傍に控えていた木ノ葉の忍だ。

 だが、その言葉を歯牙にかけることなく四代目風影は言葉を続ける。

 

「なるほど、それなら十分な理由がありますよ」

 

 静かな声だが、それは聞く者全てを引き込む引力があった。

 

「私を含め、ここにいるほとんどの忍頭や大名は次の試合を観たいが為にここに来たようなものだ」

「しかし……」

「何せ、彼はあの“うちは”の末裔。それに風の国としても是非、うちの我愛羅と手合わせ願いたいのです」

「……どうしますか?」

 

 三代目火影は目を閉じ、メリットとデメリットを天秤に掛ける。ややあって、目を開けた三代目火影は被る笠で顔を隠しながら口を開いた。

 

「……分かった。特別、この試合を後回しにして待つことにしよう」

「火影様! 本当にそれでよろしいのですか?」

「試験官に伝えろ」

「……はい」

 

 声の調子が変わらない三代目火影だ。従う他ないと判断した付き人は瞬身の術で姿を消す。

 

「しかし、風影殿がそこまで言われるとは珍しい」

「何……我が里の忍の質をこの依頼主たちに見せつけるには相手はうちは以外にいない。うちとしてもいいチャンスなのですよ」

 

 四代目風影は感情を感じさせない目付きで下を見下ろす。

 そこには、先ほどまで自分たちの後ろに控えていた忍が試験官に耳打ちをしている光景があった。

 自分の目論見通りにいったことに満足したのか、将又、自分の目論見通りにいくのが当然だというのか、四代目風影は頷くのであった。

 

「皆様! 次の試合の受験者が現在ここに到着しておりません。よって、この試合は後回しにし、次の試合を先に始めていくことにしました」

 

 試験官の声が試験会場に響く。サスケと我愛羅の試合を心待ちにしていた観客はブーイングで試験官に自分たちの感情を示す。

 しかしながら、試験官は観客の反応を取り合わない。粛々と試合を進めていくのみだ。

 

「では、次の組み合わせ。カンクロウと油女シノ。下へ!」

 

 ──クッ……。

 

 名を呼ばれたカンクロウは迷っていた。

 それもそのハズ。

 カンクロウ自身は闘いたい。観客として見ているだけで泣きそうになったほどのナルトとネジの素晴らしい試合を観て、自分もそれほどに魅せる試合をしたいと考えるのは不思議な話ではない。何より、ナルトとは木ノ葉に着いた時の一悶着から目を付けている。

 ナルトの足にチャクラで作り上げた糸を絡ませ、そして、転ばせようとしたにも関わらず、ナルトは足踏みだけでチャクラ糸を引きちぎった。それは今までの敵とは一線を画す存在感だったのだ。

 あの時の衝撃は今に至るまでカンクロウの闘争心を刺激し続けている。

 

 ナルトと闘いたい。それは混じりけのないカンクロウの本音だ。

 

 しかしながら、彼は“忍”である。その立場がカンクロウを縛っている。

 首を回し、自身が誇りと命を預ける忍具をチラと見る。ここで闘えば、任務にも多大な影響を与える。それも致命的な影響を。

 カンクロウが扱う術は傀儡の術という暗具を仕込んだ人形を操る術。その術の特異性──作った仕込みの絡繰りはそう簡単に変更できない──から一度、仕込みを見られては看破され易いという特徴がある。

 

 ──どうする?

 

 答えは決まっている。

 

「オレは棄権する」

 

 苦渋に満ちた顔を浮かべ、カンクロウは任務を選択した。“忍”であることを彼は選択したのだ。

 

「……」

 

 苦し気な様子のカンクロウに声を掛けることなく、さりとて、親愛を示すように彼の肩に手が置かれた。カンクロウの姉であり、班員であるテマリの手だ。

 カンクロウは分かっていると言うかの如く、自身の肩に置かれたテマリの手を何も言わずに叩く。

 姉弟にはそれだけで十分だった。

 

「ハイ!」

 

 人の身の丈ほどもある扇子をいとも容易く軽々と操り風を起こす。扇子に飛び乗ったテマリは試験会場へと華麗に降り立った。

 

「……」

 

 やるべきこととやりたいことを天秤に掛け、任務を優先したカンクロウは悔しそうにテマリの後ろ姿を見つめる。

 

「残りの一人、降りて来い」

 

 中忍選抜試験、本選。その第四回戦。対戦者はテマリ。

 

「ったくよォ。何でオレの相手は女ばかりなんだよ。やり辛えなァ……」

 

 そして、シカマルだった。

 テマリに続いて会場に跳び降りたシカマルはどこか気の抜けた表情でテマリを見つめる。

 

 その仕草が、その言葉がテマリの逆鱗に触れる。

 女という理由で侮られるのは屈辱だ。そもそも、男だから何だというのか?

 男だから強い? 男だから偉い? 男だから女を見下してもいい?

 

 ──ふざけるな!

 

 これまで高ランク任務を熟してきた。達成した理由は我愛羅の力が大きいものの、自分の力は確実に任務達成の一助となっている自負がある。鎧袖一触と言わんばかりに自分よりも巨大な男を、数多くの男を吹き飛ばした実績がある。

 それを目の前にいるヒョロヒョロと頼り気のない自分よりも年下の少年に否定させない。

 

「おい! まだ開始とは……」

「テマリ! 何してんだ! 試験官の合図はねェぞ! けど、ここで熱を冷まさせる訳にはいかねーから開始ってことで一つどうっすか、ゲンマさん?」

「チィ、仕方ねェな。……試合開始!」

 

 試験官であるゲンマと解説のザジの声を無視し、目を鋭くさせたテマリは巨大な扇子を振り上げ、一息にシカマルに接近する。

 

「ラァ!」

 

 シカマルの頭を割り、熟れたザクロのように脳漿を飛び散らせる。

 確固とした殺意を乗せた扇子の一撃は、果たして、何も捉えることはなかった。濛々と湧き上がる砂埃の奥で気の抜けた声がする。

 

「中忍なんてのはなれなきゃなれないで別にいんだけどよ。男が女に負けるわけにはいかねーしなぁ……まぁ、やるか!」

 

 砂埃が晴れて行く。

 テマリは奥歯をギリッと噛み締めた。それは屈辱から来る行動だ。彼女が額に井桁模様を作るのも仕方のないことだろう。必殺の一撃とも言うべき扇子の殴打がいとも簡単に避けられ、更に、地面に減り込ませてしまった自慢の扇子の上に細く、そして、惰弱な右足をこれ見よがしに乗せられたのだ。

 

「どけェ!」

 

 自分はコケにされた。

 それに気づいたテマリのチャクラは荒ぶり、怒髪天を衝くほどに髪を逆立たせる。力任せに扇子を振るい、テマリはシカマルの足を強引に振り払った。

 

 だが、それで終わるほどテマリの怒りは小さくない上に、足を払った程度の発散で怒りを収めることなど彼女の元来の性質から有り得なかった。

 

「オラァ!」

 

 憤怒により、一時的に底上げされたチャクラの性質を変化させる。一度、起こしたら止まらない、止められない、止まることなど考えられない。

 

 それは、まさに嵐だった。

 

「おいおい、マジかよ」

 

 テマリが広げた扇子を振るうと同時に凶悪なチャクラが前方に向かって吹き荒れる。テマリの視線の先にいるのはシカマルだった。風が巻き起こり、砂を持ち上げてシカマルの姿を一瞬にして隠し尽くしてしまう。

 

「こいつァ、テマリの十八番! 強力な風を起こして敵を圧砕して切り刻む! 忍法 カマイタチだァアアア!」

 

 ザジの声を後ろにテマリは眉根を寄せる。

 

 ──手ごたえがない。

 

 吹き荒れる嵐の中、テマリの感覚に微細な揺れが引っ掛かった。

 

「逃げ足は速いようだな!」

 

 感覚に従い、テマリは顔を試験場の端に向ける。テマリの目線の先には試験場を囲む壁に沿うように木が何本か生えている場所。人が身を隠すには十分なスペースだ。

 

「おおっと! テマリは何かに気付いたようだぜ。それもそうだろうな。何せ、テマリの攻撃()が通り過ぎた後には……何も残っちゃいねェ!」

 

 本来ならば、テマリの攻撃が当たっていれば、そこには風に切り刻まれ吹き飛ばされたシカマルの無残な姿が残っていたハズだ。

 だが、何も残っていないということは、そういうことである。

 

「!!」

 

 ザジの解説通り、そして、テマリの予想通りシカマルに風で刻まれた傷はほとんどない。戦闘に支障が出るほどに大きな傷は皆無だった。

 

 今度は自分の番と言わんばかりにシカマルは反撃に移る。地面を這いながらテマリに迫る黒い影。事実、それは影だった。

 

 “影真似の術”

 

 シカマルの一族、奈良一族が得意とする特異な忍術の一つだ。

 自分自身の影の形を任意に変え、対象の影と接触させると同時に同化させる。その後に影を捕まえた対象に術者の動きを強制させる術である。

 

 ただ、この術の速度は速くない。忍相手であっては、不意を打たなくては影真似の術に掛かることなど、よっぽど油断していない限り、そうあることではない。

 その上、影真似の術で行う影の変化可能な面積は、術者の影の表面積分だけだ。威力だけでなく、攻撃範囲もテマリの忍法 カマイタチと比べれば雲泥の差だ。

 

 かくして、テマリは自身に迫るシカマルの影から逃れるべく地面を強く蹴った。

 後ろへと飛び擦るテマリを捕まえようとシカマルの影が更に形状を変え、細く伸びている。が、突然、シカマルの影が止まる。

 腕立て伏せを限界まで行い、床にへばり付く寸前の者のように数秒プルプルと震えた影は、力を失ったように緩慢な動きでシカマルの元へと戻っていく。

 

 テマリの唇が弧を描いた。

 扇子で地面に線を描いた彼女は自身の勝利を確信し、立ち上がる。

 

「影真似の術……正体見たり! どうやら、影を伸ばしたり縮めたり、形を変えるにも限界があるようだな。どんなに影の形を変え、伸ばしても、自分の影の表面積分しか伸ばすことはできない……そうだろ?」

「ハハ……当たり」

 

 テマリの正確な推測に顔が引き攣るシカマルを歯牙にもかけず、テマリは扇子を縦にして地面と垂直に立てる。

 

 ──15メートル30センチ。

 

 扇子で距離を測ったテマリは続いて笑みを浮かべる。それは肉食獣が弱った獲物を見つけた嗜虐心溢れた表情によく似ていた。

 

 テマリの表情とは逆に、シカマルの表情は暗い。それも仕方のないことだろう。

 なにせ、シカマルが使える忍術は影真似の術と他には忍者学校(アカデミー)レベルの基礎忍術のみである。

 それに対してテマリが得意とするのは遠距離からの風の性質変化の忍術。影真似の術が届く範囲よりも外側から攻撃できる術を持つテマリはシカマルにとって最悪の相性とも言っても良かった。

 

 ──どうすっか……。

 

「んん?」

 

 難しい顔をしたシカマル。試験会場を俯瞰できる位置からシカマルを見ていた解説者のザジは首を傾げる。

 

「何だってんだ? シカマルが腰を曲げ……柔らけェなァ、オイ!」

 

 ザジの困惑ももっともな事であろう。

 何故なら、突如、シカマルが自分の足先に向かって両手を伸ばし始め、更には両手が地面にぺったりと着くまで体を曲げたからである。

 いくら12歳と言えども、柔軟性に富み過ぎているシカマルの身体のポテンシャル。更には命を奪い合うこともあるような中忍試験、その本選の試合中に、何の脈絡もなく柔軟体操を始めたシカマルの剛毅な胆力に驚いたザジを誰が責めることができようか?

 

「何なの、アレ?」

 

 木ノ葉隠れの里の上忍であり、シカマルと同期の下忍たち──キバ、シノ、ヒナタ──を受け持つ里一番の幻術使いである夕日紅ですら呆気に取られたのだから。

 しかし、彼女の隣に座り、試合を観戦しているシカマルの担当上忍はニヒルに嗤う。

 

「アイツの癖みてーなもんだ」

「え? 癖? 戦闘中に? え?」

「アイツの日課は早朝のラジオ体操。そんなジジイみたいな奴でね」

「え?」

「で、他にもジジイみたいな趣味があってな……アイツ、将棋や碁が好きでいつもオレが相手させられるんだが、手が詰まるといつも決まってアレをやる」

「柔軟体操を?」

「ああ、柔軟体操を」

「……」

「……」

 

 会場もテマリもまだ動かない。

 シカマルの惚れ惚れするほどに曲がる関節に見惚れてしまっているからである。

 

「……続けて」

「ああ」

 

 膝を曲げずに体を後ろに逸らして地面に手を着いているシカマルの姿を見続けていると、何か不安を覚えてしまうと紅は考えたのだろう。

 幻術に掛かってしまったのかと一瞬、思ってしまうほど体が後ろに曲がっているシカマルから目を逸らし、紅は隣のシカマルの担当上忍である猿飛アスマに続きを促す。

 

「シカマルは、な。柔軟体操をしながら……」

「アレが柔軟体操と言えるかどうかは別として……将棋とか碁をしている最中に、それどころか戦闘中に柔軟体操をしながら?」

「戦略を練ってんのさ」

 

 ──体を柔らかくしても頭は柔らかくならないと思うんだけど。

 

 喉まで出かかった言葉を飲み込んだ紅はアスマの言葉の続きを待つ。

 

「で、オレは一度もアイツに勝ったことがない!」

「……戦略って。これは実戦。ゲームとは違うのよ、全く」

「けど元々、軍師が戦略練るのに使ってたコマがあーゆー遊びになったって言うぜ。言ってみりゃ、シカマルはキレ者軍師ってとこか」

「キレ者……?」

「信じられねーだろ? 忍者学校(アカデミー)じゃドベのナルトと成績は同レベルだからな。だがな、アイツは『筆記なんてめんどくせー』ってテスト中いつも寝てたんだと」

 

 ──違う!

 

 紅は的外れなことを言うアスマを思わず睨みつける。

 

 キレ者は敵の前で! 戦っている最中に! 柔軟体操なんかしない!

 普通の人間でも! 戦闘中に! 柔軟体操なんかしない!

 

 大きな隙を見せながら戦略を練っているような人間がキレ者と呼べようか? いや、どちらかと言えば、バカ者と呼ばれることだろう。

 

「紅。会場に入る時に渡されたパンフを見てみろ」

「ああ、コレ? 試合の順番とか書かれているモノでしょ?」

「それが違う。お前もシノのことをザジから聞かれただろ?」

「ええ。何でもいい解説をするために必要だとか」

「その時に答えた情報がパンフに書いてある」

「あのバカは後でシメる」

「え?」

 

 パンフレットを握り潰しながら紅は遠くの解説席にいるザジに殺気を向ける。

 

 ──忍の情報を流出させることがどういうことか全く分かってないバカが。

 

 自分の部下であるシノが扱う術までザジに答えた紅は自責の念で一杯だった。

 この中忍試験は各国の大名たちを招待している。そのため、忍についてよく知らない大名たちに分かり易い解説をすることで、大名たちに忍の術について理解させ、彼らから今まで以上に依頼を引き出す可能性があった。そのために本選に出場したシノの情報をザジに渡したのだが、まさかパンフレットという形で配布するとは、紅にとって予想だにしない出来事であったのだ。

 確かにパンフレットは分かり易いものの、問題は配布された時間である。シノの試合が始まる前に詳細が書いてあっては、それは即ち、相手にシノを倒す戦略を練る時間を与えるのに他ならない。

 

 ──いや、まだ大丈夫。

 

 パンフレットに素早く目を通した紅はほっと胸を撫で下ろす。

 シノについての情報は詳しく書かれてはいなかった。精々が、シノが蟲を扱うという程度の情報。致命的なものにはなり得ない情報だった。

 

 しかしながら、ザジの犯した罪は重い。

 忍が情報を開示する意味、弱点を教える信頼をザジは裏切ったのだ。罰が必要だ。

 

「それは後でやるとして、アスマ。シカマルは何を書かれていたの?」

「あ、ああ。……聞いて驚くなよ」

 

 豹変した紅に少し腰が引けながらもアスマは実力者である。すぐにいつもの調子を取り戻し、再びニヒルな笑みを浮かべる。

 

「余りに戦略ゲームが強いんで、ちょっと腑に落ちなくて遊びに見せかけてIQテストをやらせたことがある。そんときゃ、オレも遊びのつもりだったんだが……」

「で、どうだったの?」

「パンフに書いてある通りだ。キレ者もキレ者! あいつはIQ200以上の超天才ヤローだった!」

「……」

 

 ──柔軟が終わった。今からだな。

 

 アスマは視線を鋭くさせる。

 一瞬にして精神を切り替えることができるアスマは上忍であることを許されるレベルの実力者と言えよう。

 そう、下でシカマルの柔軟体操をポカンとした表情で見続けているテマリと比べれば、その実力は雲泥の差であった。だが、テマリも上忍には及ばないものの、下忍の中では随一の実力を持つ忍。

 今が戦闘中だということをシカマルに思い知らせるべく、扇子を持つ手に力を籠める。

 

「私を馬鹿にしていると取っていいんだな? 殺す!」

 

 再び風の刃を放つテマリ。

 

「くっ!」

 

 それを素早い動きで躱すシカマルにテマリの怒りのボルテージがグングン上がっていく。

 

「逃げるな!」

「無茶言うなよ……」

 

 何度も瞬身の術を繰り返し、細かく移動を続けるシカマルへと、何度もカマイタチを放ち、退路を塞いでいくテマリ。将棋でいう千日手の様相を呈してきた試合であるものの、今、行われているのは盤上の戦いではない。忍絵巻の一端である。

 

 この闘いを終わらせるのは死か、または自分から敗北を認めるという屈辱。

 この闘いを終わらせるのは生か、または相手が敗北を認めるという栄光。

 その二つのみ。

 

 どちらかが勝ち、どちらかが負ける。膠着から脱出し、攻め方に成るためには何が必要なのか?

 

 千日手を変えるために必要なのは、ただ一刺し。

 

「!」

 

 風塵の隙間を縫い、黒い影がテマリに迫る。此度、迫る影は物理的なものであり、そして、それは殺傷能力を持つもの──クナイであった。

 

「チィ……」

 

 扇子を反転させ、シカマルから放たれたクナイを弾いたテマリは隙を晒してしまった。1秒ほどの、到底、隙と呼べるものではないが、その時間はシカマルに更なる攻めを許す。

 

「影真似の術!」

 

 テマリに迫るシカマルの影。しかしながら、テマリは動かない。

 

 ──フッ……無駄だ。

 

 15メートル30センチ。シカマルの術の攻撃範囲を既に見抜き、地面に線を残していたテマリは次の攻撃に繋げるべく、チャクラを練り込む。

 

 ──この線より内側にいる限り、絶対に捕まることは……いや、待て! ……ヤバイ!!

 

 が、練り込んだチャクラを足に集めて、地面を蹴り後ろへと下がった。その判断は正解だ。シカマルの影がテマリを捕まえようと、先ほどテマリが引いた線を越えてきていた。

 

「テマリが引いた線を越えたシカマルの影! この短い時間に限界を超えやがったァアアアアア!」

 

 ザジの声に沸く会場の中、テマリは冷ややかにシカマルを見つめていた。

 

 ──時間稼ぎだったか。

 

 テマリは柔軟体操を始めたシカマルの行動に得心した。

 態々、大きな隙を晒したシカマルの本意。それは、陽が落ちることで大きくなる会場の壁の影を利用するために、時間を稼ごうとしていたと考えれば納得いく。

 テマリは予想だにしないシカマルの動きで攻撃の手を緩めてしまった自分の浅慮に怒りを覚える。

 

「ちんたらする暇はなさそうだ。次で決める!」

 

 扇子を開き、地面に突き立てるテマリは扇子の影で印を組んでいく。

 

 ──陽動作戦をやるか。まず、扇子で体を隠し、分身で二人に。一人が飛び出し、注意を引き、その隙に……チャクラを最大に練り込んだ最大風力のカマイタチでバラバラにしてやる。

 

 テマリが分身の術の最後の印を組み上げた瞬間、シカマルの手から玉が零れた。

 

「ッ!?」

 

 次の瞬間、シカマルは煙に包まれ姿を消した。シカマルが地面に落とした、破壊することで大量の煙を発する煙玉という忍具のせいだ。

 こうなってしまえば、陽動もない。会場の1/4程も覆う煙だ。あの煙の中でシカマルが自分を確認することなどはできないとテマリは判断した。

 

 ──作戦を変更するしかない。

 

 煙玉によって、陽動作戦は瓦解した。

 ならば、断つ。

 風で全てを断ち切る。

 

「……」

 

 テマリは視線を煙から扇子に移し、扇子に手を伸ばし、そして、有り得ない言葉を聞いた。

 

「影真似の術」

 

 ビクンという痙攣を最後に、テマリの体の自由は奪われた。それと同時にテマリの思考までもが固まる。

 

「な……何で?」

「ど……どういうことだ?」

 

 テマリと解説席のザジの声が重なった。

 動かない思考の中、言葉を振り絞るテマリの耳にシカマルの声が届く。

 

「何でオレがここにいるってことか?」

「そうだぜ、シカマル! お前は煙の中に居たハズだ! そんな所……テマリの背後を取るなんて出来っこねェ!」

「……」

 

 ザジの言葉は言わずもがな。テマリの沈黙を肯定と受け取ったのだろう。シカマルの解説は続く。

 

「壁に沿って全力で走っただけだ。位置関係上、半周すればアンタの背後を取れるからな」

「そんなバカなことがあるか!」

 

 シカマルの適当な言い様が癇に障ったのだろう。怒りで動きを取り戻したテマリは声を荒げる。

 

「速すぎる! 有り得ない!」

「アンタ、こう言ってたよな? 『逃げ足は速いようだな!』って」

「!!」

 

 確かに言った。異常なほどに逃げ足が速かったのを確認していた。

 つまり、シカマルが出せる速度は最低でも、逃げ足と同様。逃げ足が速いならば、通常時に走る速度も同等だというのにも関わらず、逃げたという一点で自分は相手を量り間違えていた。

 

「分かって貰えたんなら、次、行くぜ。ギブアップするようなタマじゃあ……ねェようだしな」

「当たり前だ」

 

 量り間違えたとして、それは致命的な問題ではない。テマリは薄く笑う。

 思い出すのは予選でのシカマルとキンの一戦だ。あの時、シカマルはどうやってキンを下したのかテマリは覚えていた。

 ただ、単純に腕立て伏せや腹筋などを行い、体力を奪うのみ。影真似の術が相手に自分と同じ動きを強制させる以上、一対一の対戦では役に立つことはない拘束術でしかない。

 そして、テマリは忍として自らの肉体を鍛えている。筋肉量もキンと比べて多い。シカマルが行う体力減らし程度では自分を削り切ることなど出来はしない。

 

 それがテマリの余裕を裏付けるものだった。

 

「さて、それじゃあ始めは……マールジャーナアーサナだ」

「マールジャーナアーサナ?」

 

 シカマルが地面に四つん這いになると同時にテマリも動きを強制させられる。

 背中が丸まっていく。次いで、ゆっくりと体勢を元の四つん這いに戻し、上体を仰け反らせていく。

 

「んんんぅ!」

「おお! シカマルが仕掛けた!」

 

 背骨が音を立てている。痛みはあるが、軽い。耐えられないほどではない。

 

 ──だから、柔軟体操をッ!?

 

 シカマルの意図に気付いたテマリは驚愕する。

 シカマルはあの時、自分を捕まえることを考えて異常な行動をした訳ではない。全てはこのため。影真似の術で自分を追い詰めるための下準備でしかなかったのだという事実にテマリの背筋に震えが走る。

 

 だが、まだ足りない。耐えることができる。

 

「この程度で……」

「ウパヴィスタコーナーサナ」

「うぱあああああ!」

「おお、これは中々……」

 

 テマリの足が勝手に開く。角度で言えば、180°だ。それだけでも辛い。とても辛い。だというのにも関わらず、シカマルは手を緩めない。そのまま体を地面に倒す。

 

「うぃすたああああん!」

「ふむふむ……」

 

 想像を絶する痛みだ。先ほど口から出てしまった『この程度で……』という言葉を撤回したいほどの痛み。プライドなど捨ててしまってもいい。勝利など要らない。この痛みから逃れることができるのなら、全て捨ててしまっても構わない。

 だが、言葉を作り上げるほどの余裕はない。

 

「カポターサナ」

「かぽっ……た……あ、あ、ああ……」

「いいねェ……もうちょっと何だけど」

 

 膝立ちになり、そのまま頭を爪先の位置まで動かされた。

 

「ラージャカポターサナ」

「らぁあああじゃあかああああ!」

「ああッ! さっきの! さっきのポーズをもう一度!」

 

 胡坐をかく時のように左足を曲げさせられ、右足を捻らされて上へと曲げさせられた後、右腕で固定させられた。

 

「エーカパーダラージャカポターサナ」

「いっ! そおおおお……ころぅううううん! せぇえええええ……」

「これも惜しい! もう少しなんだ、もう少し!」

 

 もう、何が何だか分からない。人体の不思議を体現するかのような動きを強制させられたテマリの虚ろな瞳に青空が映る。知らず知らずの内に流していた涙は痛みのためか、空の美しさに感動したためか、それとも、デトックス効果のためか。テマリは分からなかった。

 

「まいった、ギブアップ」

「……」

「はああああ!? 何で止めるんだよ、シカマル! やれよ、もっとやれよ! なあ、頼む! もう少しで見えそうなんだ!」

 

 解説者は何を言っているのか?

 テマリは理解できなかった。そう言えば、影真似の術に掛けられた後にも解説者の声は聞こえていたなとぼんやりと思い出しながら、テマリは冷たい地面に熱い体を押し付ける。

 そして、彼女は気づくのだった。自分は敗北したと。

 

「ん? お前、何で立たないん……ああ、シカマル。仕方ねェよ。お前は頑張った。よくやった。テマリの喘ぎ……んんッ! 嬌せ……あー、アレだな。ヒット音を聞いて耐えられたお前に拍手を送ろう。オレは……いや、オレたちはお前の健闘を忘れない。総員、拍手!」

 

 会場の男たちほぼ全員が同じ気持ちだった。女性たちの冷たい視線にも屈することなく、惜しみない拍手でシカマルの健闘を讃える。

 

「勝者 テマリ!」

 

 勝負に勝って試合に負けたシカマルは心を落ち着かせる。ゆっくりと立ち上がり、伏したままのテマリに背を向ける。

 

「済まねェ」

「……謝るな。余計、惨めな気になる」

「済まねェ……」

「だから、謝るな。それに……」

「それに?」

「気持ち良かった」

「テメェッ! テメェ!」

 

 顔を赤くし、前屈みになりながらシカマルはテマリに叫ぶ。それをどこか可笑しく思いながらテマリは笑う。

 

 年下の少年と侮っていた。つまらない男だと思っていた。

 だが、違った。

 強く、そして、柔軟性に優れ、頭の回転も速い。自分を完膚なきまでに敗北させることができるほどの男だ。

 

「惜しいな……」

 

 テマリの隣に降りて、彼女に肩を貸すカンクロウに聞こえないような小さな呟き声。

 きっと、その言葉は木ノ葉隠れの里のすぐそこまで迫る蛇の毒牙からシカマルを助けることができないという諦めから来ているのだろう。

 

 +++

 

「なあ」

「ああ。これ以上ないほどの負け方だ」

 

 観覧席で二人の木ノ葉の中忍が言葉を交わす。一人は、はがねコテツ。始めに話しかけた黒髪を逆立たせた忍だ。そして、もう一人の右目を髪で隠した忍は神月イズモ。中忍試験第一の試験の試験官だった中忍である。

 彼らはチームを組み、任務にあたったこともある関係であり、イズモはコテツの言いたいことを最後まで聞かなくとも理解したのだろう。イズモは言葉を続ける。

 

「シカマルは相手が風影の娘だということで簡単に勝つことができない。もし、一瞬で勝負が決めたり、手玉に取るような勝ち方だと、風影の面子に泥を塗ったとして砂隠れとの関係が悪くなるだろう。けど、シカマルは挑発してテマリの実力を引き出した上で、自分の知力、そして、身体能力を見せているから他里への牽制にもなる。下忍の実力を見せるという中忍試験の意図に沿ったものだしね。それに、ギブアップしたことで、大きな消耗を避けてテマリが次の試合に出ることもさせた。テマリなら、次の試合で勝利を収めることも可能だろう。そうすれば、風影の面子も守られる。力を見せて他里への牽制と、風影の面子を潰さない二つのことを達成するためには、これ以上ない方法だとオレは思うね」

 

 頷いたイズモはシカマルへの評価を固める。

 

「里の先を見据えて、自分の勝利よりも里の安寧を取る。中忍、いや、上忍に必要な心意気を持っている。もしかしたら、中忍になるのはシカマルかもしれない」

 

 それに対して、コテツは首を横に振った。

 

「オレが聞きたいことは、そうじゃなくて」

「そうじゃない? どういうことだ?」

 

 コテツは真面目な顔をイズモに向ける。

 

「パンツ見えたか?」

「見えなかった」

 




マールジャーナアーサナなど聞きなれない言葉はヨガのポーズ名です。
実際には時間を掛けてゆっくりと呼吸をしながらするのがヨガですので、間違っても無理矢理させるものではありません。
あと、本文中に出したヨガのポーズは難易度が高いものがほとんどですので、間違っても初心者の方はしないようにお願いします。痛かったです。

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