NARUTO筋肉伝   作:クロム・ウェルハーツ

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上を向いて歩くべし

 目を丸くしたサクラを腕から降ろしながら少女は立ち上がる。水色の目を怒りに燃え上がらせながら立つ姿は華のよう。野に咲く花の如き強さと温室育ちの花の如き美しさを併せ持った華だ。

 サクラの前に出た少女は長い髪を軽く揺らし、ドスを正面から見る。

 

 彼女の名は山中いの。

 木ノ葉の名家の一つである山中一族の娘だ。通常の忍では扱うことのできない特殊な忍術を扱うことができる血を持つが、今の彼女の実力は凡百の下忍に毛が生えた程度。ドスのように非常に特殊な忍──音を武器として使うという通常は考えられない術を持つ忍──に正面切って戦うと、勝算は限りなくゼロに近くなる。

 

「サスケとおかっぱの人も移動させたよ」

 

 だが、それは一対一で戦う時の話だ。

 いのには頼りになると手放しでは言えないものの、やる時はやる仲間がいた。

 

「おし、そんじゃあ行くか」

 

 いのの隣に並び、サクラを背に置く二人の下忍。いのと同じ第十班のシカマルとチョウジだ。

 

 第一の試験が開始する前に話して以後、半日と少し。ほんの少しの時間だ。男子三日会わざれば刮目して見よという言葉があるが、サクラはその1/3の時間で変貌を遂げた。だからこそ、彼らの心は動かされたのだろう。

 アカデミーで共に学んだ友。だが、忍であるならば敵対した瞬間、命を奪い合う関係に変わる。このバトルロワイアルでは、弱った者は例え見知った中でも喰らうべき存在。

 

 しかしながら、自分たちの利益を度外視してでも、いのたちが弱ったサクラを守る理由はサクラの強さにこそあった。どんなに絶望的な状況でも諦めない心の強さ。無駄だと笑う者もいるだろう。諦めろと嘆息する者もいるだろう。だが、諦めない姿勢は時として人の心を打つものだ。サクラを見捨てるという選択肢がなくなった以上、いのたちには、ただ一つの選択肢しか残されていなかった。

 

「ごめんね、シカマル、チョウジ」

「気にすんな。お前が行かなきゃオレたちが飛び出してた」

「うん、シカマルの言う通りだよ」

 

 ──戦う。

 

 いのたちの心の内を理解したのだろうドスから殺気を放たれた。額から汗を流しながらも彼女らの足は一歩たりとも退いてはいなかった。

 

「ったく……あのアマ、ぶっ殺す!」

「キン、アイツはオレが殺す」

「ザク、アンタじゃ一瞬で殺してしまう。あの糞アマには、私らをコケにしたことを泣きながら、叫びながら詫びさせなきゃ気が済まない。そうでしょ?」

「……チッ。最後だけはオレにやらせろよ」

「ああ。アンタの術で粉々にしてやってよ」

 

 一人は口から、もう一人は鼻から血を流しながらドスの隣に二人の忍が並んだ。

 流石は音隠れの里で育った者たちだ。弱者は死ぬことが相応しいという考えを持つ大蛇丸が起こした里であるが故に、音隠れの里に所属している忍たちは鍛え上げられている。正確には、育成プログラムに耐えられなかった者は一人残らず死んでいるという話ではあるが。

 その音隠れの里で生き残った彼らの能力は、心技体、そのどれもが下忍のレベルを超えていた。サクラが放ったアッパー、そして、頭突きは意識を刈り取る事こそ出来たものの、一分も経たない内に彼らは復帰したのだ。

 

 ドスを挟むように並んだキンとザクは濃密な死の気配を漂わせる。

 皮膚がチリチリと焼きつくように痛い。戦場独特の空気だ。初めて命の取り合いを行ういのは生唾を飲み込んだ。確かに緊張はしている。体が恐怖で震えている。

 

 ──けど、ここで逃げ出しちゃ女が廃る。

 

 いのはクナイを取り出した。それは開戦の合図。木ノ葉と音との全面戦争が始まったのだ。

 

 いのの動きに応じるようにザクは両腕を伸ばし、いのに照準を合わせる。しかし、いのと同時にチョウジもまた動いていた。

 

「倍加の術! 肉弾戦車!」

 

 チョウジが印を結んだかと思うと、彼の体は一瞬にして肥大した。見た目は肉の玉。重量が大きくなることで、これからチョウジが行う術の威力は大幅に向上する。

 丸い体を回転させたチョウジは猛烈な勢いでザクへと転がっていく。転がってくる巨体は脅威だ。ザクよりも二回りほど大きな肉の塊は簡単に彼の体を圧し潰すことができるだろう。

 

「チッ!」

 

 一つ舌打ちをしたザクは狙いをいのからチョウジに変える。迎撃態勢を整えたザクは腕のチャクラを放出した。

 

「斬空波!」

 

 大砲の如き威力を持つ空気圧であったが、チョウジの回転する巨体を押し留めるには、些か威力が足りなかったらしい。斬空波により、軌道こそ変えられたものの、毬のようにバウンドしたチョウジの体の回転は止まらない。

 地面に落ちたと同時に再び前進を始めるチョウジにドスは溜息をつく。

 

 ──回転を一度止めてボクの術を……。

 

 自身の考えを実行しようと体に力を入れた瞬間、ドスは自分の体の違和感に気付く。

 

「なにッ?」

 

 指一つ動かない。

 例えるならば、全身に蝋を塗りたくられ動かそうにも動かせない。そのようなことが想起されるような状況だ。

 内からの影響、恐怖で身が竦んだなどではない。外からの影響だ。

 ドスは辛うじて動かすことのできる眼球を動かし、状況の把握に努めようとした。だが、突如として、彼の体は思いも寄らぬ動きを始める。

 

「ドス! 何をふざけてる!」

 

 キンは思わず怒鳴る。

 両手を頭に乗せ、英語のMの形を頭の上で作るドスの姿は非常に滑稽だった。

 

 ドスが何の前触れもなしにポーズを取った理由はシカマルにある。彼が扱う秘伝忍術。彼の一族しか使うことのできない忍術は“影”を利用した術だ。彼が今し方、ドスに対して行使した術は影真似の術。自らの影を任意の形に操作して、対象の影と自分の影を繋ぐことで影真似の術は完成する。

 対象に術者と同じ動きを強制させる影真似の術は使い方によっては、敵を強制的に移動させることもでき、同士討ちも狙える術である。だが、シカマルが選んだのは、一見ふざけているようにしか見えないポーズをドスにさせることによって、キンを冷静でいられなくさせるというもの。

 命を取り合う状況で、このような選択肢を選ぶ者は、ほぼいない。いるとしたら、自殺志願者や心から人を怒らせるのが好きで堪らないというような人非ざる者、そして、機転と度胸を兼ね備えた知将と呼ばれる者という所だ。

 

 そして、シカマルの術は彼の予測通りの効果を示した。ドスは動けず、キンは興奮状態に陥っている。

 頭に血が昇っているキンには、ドスのその動きはふざけているようにしか思えなかったのだ。彼女が冷静であれば、ドスが術に掛けられていることに気が付いたのやもしれないが、自分が嘗めていたサクラから思わぬ反撃を喰らい、キンは冷静ではいられなかった。

 一瞬の油断が死を招く戦場。油断はしていなくとも、冷徹に自身を律し得ない者が辿る道筋は油断した者と同じ場所に到るだろう。

 

「影真似の術、成功っと。あとは頼むぜ、いの」

「了解。私の体、お願いね」

 

 ドスとキンの動きを止めた彼らは次へと進む。

 いのは印を組み、両手を前に突き出した。いのの腕の先にはキンの姿。

 

「心転身の術!」

 

 キンの体がぐらついた。だが、彼女の体のふらつきは一瞬。すぐに体勢を立て直したキンの体は淀みなく動き、自らの首にクナイを当てる。

 

「これでおしまいよ! アンタたち! 一歩でも動いたら、このキンっていう子の命はないわよ!ここで終わりたくなければ、巻物を置いて立ち去るのね! アンタたちのチャクラの気配が消え次第、この子は解放したげる!」

 

 突如、言葉を捲くし立てたキンの様子にドスとザクは何が起こったのか当たりをつける。

 大方、幻術か何かで精神を乗っ取ったという所だろう。

 そして、彼らの予測は的を射ていた。山中家の秘伝忍術、心転身の術は対象に自分の精神を入り込ませ、体のコントロール権を完全に奪うというもの。

 

 そのことを知ってか知らずか、音隠れの二人は唇を捲り上げた。

 

「いの! 逃げて! そいつらはッ!?」

 

 サクラが叫ぶが遅かった。

 ザクがキンへと右手を向けると同時に、ザクの掌の射出孔から斬空波が出された。

 

「キャッ!?」

「いの!」

「テメェもだよ」

「!?」

「いの! チョウジ!」

 

 いのを心配して回転を止めてしまったチョウジに向かってザクは左手を向け、斬空波を発動させる。

 いのに続いて、吹き飛ばされるチョウジを見つめながらザクは首を鳴らす。

 

「フン……油断したな」

「我々の目的は下らぬ巻物でもなければ、ルール通り無事、この試験を突破することでもない」

 

 意識こそ失わなかったものの、しばらくは満足に動けないほどのダメージを負ったいのとチョウジ。そして、立ち竦むシカマルとサクラに向けてドスは“目的”を話し始める。

 

「サスケくんだよ」

 

 今だ倒れ伏すサスケへと目を向けたドスへと突然、声が降ってきた。

 

「フン……気に入らないな」

「ネジ! それに、テンテンも」

 

 声に反応したのはリーだ。

 チョウジに移動させられ体力の回復に努めたリーが安堵の声を上げた。木の上から見下ろすのはリーの班員であるネジとテンテン。ネジはチラとリーに目を向けた後、音の忍たちへと視線を注ぐ。

 

田舎者(マイナー)の音忍風情が、そんな二線級をいじめて勝利者気取りか」

「なに?」

「ワラワラとゴキブリみたいに出てきやがって」

 

 ドスとザクの発言を無視し、ネジは再びリーへと視線を向けた。

 

「ヘマしたな、リー」

「うっ……すみません、ネジ」

「全く! 他人を庇うぐらいなら、キチンと敵を倒しなさい」

「すみません、テンテン」

 

 リーへの言いたいことはまだあるものの、それは後でもいいだろうと判断したネジはテンテンの言葉を遮る。

 

「さて、音忍ども」

 

 ゆっくりと瞼を持ち上げるネジの眼光は鋭かった。

 

「これ以上やるなら、全力で行く! ……ん?」

「フフ……気に入らないのなら、恰好つけてないで、ここに降りてきたらいい」

「いや。どうやら、その必要はないようだ」

「?」

 

 怪訝な顔をしたドスとザクの耳に新しい声が届いた。

 

「サクラ……」

 

 体から蒸気を立ち昇らせながら、一人の少年が立ち上がっていた。サスケだ。

 だが、今までのサスケとは違う。彼の肌には入れ墨が入っているかの如く、所々黒い紋様に覆われていた。呪印だ。

 ゆらりと立ち上がるサスケの雰囲気は限りなく冷たかった。

 

 冷酷。

 その言葉を体現するような空気を纏い、サスケは赤く煌めく写輪眼でサクラを見遣る。

 

「誰だ? お前をそんなにした奴は?」

「サスケ……くん?」

 

 サクラの声は困惑していた。今まで自分が接してきたサスケとは全く違う。サクラはサスケの只ならぬ様子に何も言えなくなってしまった。

 言葉に詰まるサクラへとサスケは感情を感じさせない声で問い返す。

 

「どいつだ?」

「オレらだよ!」

 

 サクラの代わりにサスケの質問に答えたのはザクだ。木の影の中で、サスケは写輪眼を一度、光らせ呟いた。

 

「そうか」

「んッ!?」

 

 何かが何かに減り込む音がした。それと同時に自分の膝が地面についていることをザクは感じた。

 

「カハッ……」

 

 やや遅れてザクが感じるのは腹に奔る痛み。

 それを認識した瞬間、ザクは自分の顔が地面に叩き付けられたことを認識し、そして、何も認識できなくなった。

 

「いの! その恰好じゃ巻き添えだぞ! 元の体へ戻れ! チョウジもこっち来い! 隠れんぞ!」

 

 状況を一早く確認したのはシカマルだ。いのとチョウジに指示を飛ばし、茂みの中へと駆け込む。

 

「術は……使う必要もないな」

 

 ──な、何が?

 

 ドスは大きく目を開く。

 サスケの姿が掻き消えたかと思ったら、ザクが地面に倒れ、ザクの頭の上にはサスケの足が置かれていた。

 シーンを飛ばしたような光景。

 

「止めて!」

 

 目の前に拳があった。

 心臓が煩いほどに鼓動を刻んでいる。

 

 ドスの目の前の拳を止めたのはサクラの声だった。

 

「お願い……止めて」

 

 サクラの声で止まった拳の持ち主、サスケは赤い双眸でサクラを見つめる。サクラが泣いていた。いつもとは違い、そのことを理解するまでに時間が掛かることをサスケは感じていた。理性ではサクラが泣いていることを認識しているものの、理性に感情が追い付かない。サスケはゆっくりとドスに向けた拳を引いていく。それと同時に呪印も引いていく。

 サスケの体を取り巻く呪印が引いていくと共に、サスケは自分の理性に感情が追い付いたことを認識した。

 

 ドスに背を向けたサスケはサクラへと近づく。サクラの前で跪いたサスケは元の黒い瞳でサクラと視線を合わせた。

 

「サクラ。済まない」

「ッ! サスケくん! サスケくん!」

 

 ──サスケくんだ。

 

 いつもよりもしおらしいサスケだが、それはサクラが知っているサスケだった。戻ってきたサスケを放さないというようにサクラはサスケをきつく抱き締める。

 

「君は強い」

 

 と、声が掛けられた。ドスだ。

 二人がそちらに目を向けると、ドスが“地”と書かれた巻物を地面に置いている様子が見えた。

 

「サスケくん。今の君はボクたちでは到底、倒せない。これは手打ち料。ここは引かせてください」

 

 ドスは気絶したままのザクとキンを肩に担ぐ。

 

「虫が良すぎる様ですが、ボクたちにも確かめなきゃいけないことができました。その代り、約束しましょう。今回の試験で次、アナタと戦う機会があるのなら、ボクたちは逃げも隠れもしない」

「待って!」

 

 去りゆくドスを留めたのはサクラだ。

 

「大蛇丸って一体、何者なの? サスケくんに何をしたのよ! なんでサスケくんに!?」

「分からない」

 

 ドスはただ、首を横に振る。

 

「ボクらはただ……サスケくんを殺るように命令されただけだ。あの方は……理解できない」

 

 それだけ言い残すと、班員を担いだドスはその場から姿を消した。

 

 +++

 

「済まぬ! 此度の戦い、駆け付けられずに済まぬ! 悔やみ切れぬ。ここは腹を切るしか詫びを示せぬか」

「やめなさい!」

 

 ドスたち音忍をなんとか撃退したすぐ後、ナルトが広場に降り立った。そして、状況を聞くや否や、音忍たちを殴りつけに行こうと再び森へ走り出そうとしたナルトを何とかシカマルとチョウジが止め、今に至る。

 

 土下座を続けるナルトの上半身を、シカマルは渾身の力で起こさせながら、ふと思った疑問をナルトへと尋ねた。

 

「ところで、ナルト。なんで、お前はそんな危険な奴を追ったんだよ?」

「逃げられたら追うだろう?」

「いや、追わねーよ、普通」

「私は解毒剤とか持っている可能性があるから追ってってアイコンタクトで伝えたと思っていたのに……」

 

 煤けたサクラ。サスケも唇を尖らせ、文句を言うべきかどうか迷っている様子だ。

 

「あ……」

 

 サクラは立ち上がり、テンテンの説教が終わったリーへと近づいた。

 

「リーさん、ありがとう。私、リーさんのお陰で目が覚めました。ちょっとだけ、強くなれた気がするんです」

「いえ、そのようなことはありません。アナタは強い人でした」

「……ありがとうございます」

 

 困ったように笑うサクラにリーは親指を立てる。

 

「自信を持ってください。アナタは強いんですから」

 

 その言葉はいのやナルトに言われた言葉だった。今度こそ、サクラは笑った。

 

「ありがとうございます」

 

 綺麗な笑顔を浮かべたサクラに歯をキラリと光らせたリーは、次いで、サスケへと目を移す。

 

「ボクはまだまだ努力が足りなかったみたいです。サスケくん、流石はうちは一族。音忍を追い払うなんてやっぱり、君は凄い力の持ち主だ。ボクはコテンパンにやられた」

 

 ──何!? こいつがコテンパンにやられた?

 

 一次試験前にリーと手合わせして、その力を十二分に体感したサスケだ。そのリーがコテンパンにやられたということを信じることができないのだろう。サスケは目を丸くした。

 

 ──どういうことだ? そんなに強かったのか、アイツ等が?

 

 自分の殴打、数発で地面に沈むような音忍の実力。そう判断したサスケは違和感を覚えた。自分と周りとの間にはギャップがある。そう感じたサスケだったが、リーが再び話し始めたことで、そのことを頭の隅へと追いやる。

 

「サクラさん。木ノ葉の蓮華は二度咲きます。次に会う時はもっと強い男になっていることを誓います」

「……うん!」

 

 各々の班員の傷が回復するのを待ち、回復した班から離れていく。

 その際に、ナルトがサスケとサクラを探す道中、襲ってきた敵から貰った巻物を、他の班に一セットずつ礼として渡そうとしたが、自分で集めると言って聞かないネジやいのに何度も頭を下げて、やっと受け取って貰えたということもあった。が、それはまた別の話。

 

 別々の方向に向かって離れていくいのたちとリーたちを見送った第七班の三人も移動を始める。

 陽の光が当たる森を進む中、サクラがふと、思い出したことを口にした。

 

「ナルト。他に集めた巻物はどうする? 三人で分けて持った方がいい?」

「む? 巻物はもうないが」

「え? でも、皆にお礼だっていって、あげてたじゃない」

「然り。贈った分で全てだ」

 

 サクラは思わず足を止めた。

 

「……ハァ!?」

 

 サスケも立ち止まり、頭に手を当てながら、どこか諦めたかのように溜息をつく。

 

「サクラ、諦めろ。ナルトはこういう奴だ」

「でも、あげるほど巻物があったなら、自分たちの分を残してるって思うじゃない!」

「だが、己は彼らに報いる術は巻物だと考えた。今の己が彼らに出来ることは巻物を礼として渡すことだけだろう」

「う~、そうだけど……そうだけど!」

「サクラ、落ち着け。振り出しに戻っただけだ。巻物は別の奴らから奪えばいい。だろ、ナルト?」

「然り!」

 

 拳を鳴らすナルトと首を鳴らすサスケの姿を見て、サクラは一人苦い顔をしながら思う。

 

 ──きっと、二人とも戦うことが好きで好きで堪らないんだろうな。私も強くならないと……強く、なれるかな? 大蛇丸とか音忍とかに負けないぐらいに、強くなれるかな?

 

 サクラは上を見上げた。

 皮肉なほどに空は綺麗で、何故か、サクラの目からは清水が零れるのだった。

 


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