NARUTO筋肉伝   作:クロム・ウェルハーツ

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トーヌス

 中忍選抜試験、第二の試験の会場は一言で言えば“森”だった。

 とはいえ、森の雰囲気は人と寄り添うものではない。普通に成長するとしたら、樹齢1000年を超えるやもしれないほどに太い幹の大木が森を形作っていた。その木が広げる枝と葉により陽は陰り、森の中は薄暗い。

 

 誰かがゴクリと喉を鳴らした。

 

 おどろおどろしい森の雰囲気に呑まれた受験生たちを実に愉しそうな表情で見るのは、中忍選抜試験、第二の試験の試験官である特別上忍みたらしアンコだ。

 

「フフ……ここが“死の森”と呼ばれる所以、すぐ実感することになるわ」

 

 誰も言葉を発する者はいなかった。

 アンコの言い様に寒気が背筋を下から上へとゆっくりと上がってくる。顔を青くした受験生たちが多く見られるが幾人かの強者、もちろんナルトもその内の一人に入るが、彼らは表情を一つも変えることはない。

 それどころか、長い黒髪の上から笠を被った受験生は邪悪な笑みを浮かべていた。額当てから見るに草隠れの里の下忍だ。だが、その人物が発する雰囲気は下忍のものではない。その立ち振る舞いから察せられる精神の強さは中忍、いや、上忍にも届き得るほどだ。

 

 ──血の気の多い奴が集まったみたいね。愉しみだわ。

 

 闘争を求め、うずいている様子の下忍たち、ナルト、草隠れの忍、そして、我愛羅に期待した目を向けていたアンコだったが、自分のすべきことを思い出したように受験生へと向けて声を張る。

 

「それじゃ、第二の試験を始める前に、アンタらにこれを配っておくね!」

「それは……?」

「同意書よ。これにサインをして貰うわ」

 

 手に持つ紙をヒラヒラと降って、アンコはにこやかに言い放った。

 

「こっから先は死人も出るから、それについて同意をとっとかないとね! 私の責任になっちゃうからさ~♡」

 

 強張る受験生たちの表情とは対照的に彼女の笑顔は綺麗だった。

 

「まず、第二の試験の説明をするから、その説明後にこれにサインして班ごとに後ろの部屋に行って提出してね」

 

 順々に回っていく同意書。同意書が受験生全員に行き渡ったことを確認したアンコは説明を再開する。

 

「じゃ、第二の試験の説明を始めるわ。早い話、ここでは……極限のサバイバルに挑んで貰うわ。まず、この演習場の地形から順を追って説明するわ」

 

 アンコは懐から取り出した巻物を広げる。広げられた巻物に書かれているのは、簡素ではあるが、この演習場の地図だ。中央には塔、真ん中を走る川、そして、その周りを取り囲むようにぐるりと円になって森が描かれていた。

 

「この第44演習場は……カギのかかった44個のゲート入口に円状に囲まれてて、川と森……中央には塔がある。その塔からゲートまでは約10km。この限られた地域内であるサバイバルプログラムをこなしてもらう。その内容は、各々の武具や忍術を駆使した……なんでもアリアリの……“巻物争奪戦”よ!」

「巻物?」

「そう。“天の書”と“地の書”……この二つの巻物を巡って闘う。ここには、114人。つまり、38チームが存在する。その半分19チームには“天の書”をそれぞれ一つずつ。もう半分の19チームには“地の書”をそれぞれ一巻きずつ渡す」

 

 彼女が見せた巻物は掌よりも少しはみ出るほどの大きさ。巻物の標準サイズだ。その一方には“天”と、そして、もう一方には“地”と大きく書かれており、一目でその巻物を判別することができるようになっている。

 

「そして、この試験の合格条件は……天地両方の書を持って中央の塔まで3人で来ること」

 

 アンコは“天”“地”と書かれた二つの巻物を受験生に見えるように掲げた。

 

「つまり、巻物を獲得できなかった19チーム……半分が確実に落ちるってことね」

 

 サクラの言葉にアンコは深く頷き、言葉を進める。

 最年少のサクラがアンコの言葉を理解した。ならば、受験生は全員理解したのだろうと判断したアンコは頷き、説明を進める。

 

「ただし、時間内にね。この第二試験、期限は120時間。ちょうど5日間でやるわ!」

「5日間!?」

「ごはんはどーすんのォ!?」

 

 いのとチョウジにアンコはピシャリと言い放つ。

 

「自給自足よ。森は野生の宝庫。ただし、人喰い猛獣や毒虫、毒草には気をつけて。それに、19チーム57人が合格なんてまずありえないから。なんせ行動距離は日を追うごとに長くなり……回復に充てる時間は逆に短くなっていく。おまけに辺りは敵だらけ。うかつに寝ることもままならない。つまり、巻物争奪で負傷する者だけじゃなく……コースプログラムの厳しさに耐えきれず、死ぬ者も必ず出る」

 

 アンコは人差し指を立てる。

 

「続いて、失格条件について話すわよ。まず1つ目……時間以内に“天”“地”の巻物を塔まで3人で持って来れなかったチーム」

 

 続いて中指を立てる。

 

「2つ目……班員を失ったチーム。又は、再起不能者を出したチーム。ルールとして途中のギブアップは一切無し。5日間は森の中! そして、もう一つ。巻物の中身は塔の中に辿り着くまで決して見ぬこと!」

 

 ──とか言っても、見る奴は見るんだけどね。

 

 アンコは脳裏でほくそ笑む。ルールを破って試験に落ち、自業自得の後悔に苛まれる落第者の顔を見るのはアンコの楽しみの一つである。

 

 だが、今はまだ試験は始まってもいない。お楽しみはこれからだと、アンコは第二の試験の説明を再び始める。

 

「説明は以上! 同意書3枚と巻物を交換するから、その後、ゲート入口を決めて一斉にスタートよ! 最後にアドバイスを一言……」

 

 一旦、言葉を止める。

 

「死ぬな!」

 

 それは、アンコの優しさの言葉だった。

 そして、同時に厳しさの言葉でもある。『死ぬかもしれない』と受験者に思い返させ、気を引き締めさせる。そして、それは受験者たちが持っている薄い紙の重さを更に重くさせる言葉であった。

 

 +++

 

 アンコの説明が終わり、三々五々、同意書へと自分の名前を書き込んでいく受験者たちの中、サスケはじっと辺りを観察していた。

 

 サスケの目が向かうのは小さな小屋だ。先ほど、アンコが示した同意書と巻物を交換するための小屋である。

 暗幕が張られた小屋の中に入っていく受験生の姿を見てサスケは納得する。

 

 なるほど。各チームが渡された巻物の種類、そして、三人の内、誰が巻物を持っているのかも分からない……って訳か。

 イビキが言った通りだ。この試験では情報の奪い合いが命懸けで行われる。

 

 ──全員が敵!

 

 ここにいる奴らの決意は固い。殺し合うことにもなるって訳だ。

 だからと言って、立ち止まる訳にはいかない。

 

 サスケは目を閉じ、過去を振り返る。思い出すのは、あの日の月。

 サスケは目を開け、未来を想像する。思い浮かべるのは、憎い赤の目。

 

 同意書へと書き込まれたサスケの名前は力強かった。

 

 +++

 

 全ての受験者たちの班が第二の試験への参加を表明した後、試験官たちに連れられた下忍たちは第44演習場を取り囲むフェンスのゲートへと移動していた。一つのゲートに三人一組(スリーマンセル)の下忍たち。

 ゲートとゲートの間の距離はそれなりにあり、別の班の動向は見え辛くなっている。森の中に入ってしまえば、相手が何をしているかは全く分からなくなるだろう。

 下手をすれば、開始早々、突然の襲撃も十分考えられる状況だ。サスケは気を引き締める。

 

 と、サスケの耳に雑音混じりの音声が届いた。

 

『アンタたち! 準備はいい? よくないって奴は諦めなさい! これより中忍選抜第二の試験! 開始!』

 

 それぞれのゲートに備え付けられたスピーカーからアンコの声が響き渡った。

 アンコの声を合図とし、引率の試験官がゲートの扉を開く。扉の先には鬱蒼と茂る森。

 その中へといち早く足を踏み出したのはナルトだった。

 

 ──恐怖ってのを知らねェのか、こいつは。

 

 呆れたように肩を竦めるサスケだったが、ナルトの物怖じしない姿に勇気を与えられたことは確かな事実だ。ナルトに遅れを取った自分に歯噛みをしながらも、サスケはある念を強めていた。

 

 ──ナルト、オレはお前と闘いたい。

 

 そのためにも、この中忍試験を軽々と突破してナルトに自分の力を見せつけなくてはならない。

 熱い血の滾りを無表情の仮面で隠し、サスケもまた森へと足を踏み出したのだ。

 

 前を歩くナルトとサスケ。

 彼らの後ろについて行きながらサクラは拳を握り締める。

 確かに恐怖はある。逃げ出したい気持ちもある。

 

 ──けど、私は逃げたりはしない。

 

 前を歩く二人に追いつきたいという気持ちが大きいものの、サクラはこうも考えてきた。波の国での事件以降、サクラは自分が第七班の中で何ができるのか、と。

 

 ナルトは再不斬という強敵とも白兵戦で正面から戦うことができるほどの戦闘能力。サスケは、忍者学校の総合成績で並び立つ者がいないほどに高かった。

 どちらも自分よりも遥かな高みにいる忍者だ。

 戦闘では二人に追いつけていない弱い私だ。そんな私が今できることは……。

 

『お前の分析力と幻術のノウハウは、オレたちの班で一番伸びてるからな』

 

 サスケの言葉がサクラの胸を打つ。

 私が今できること。二人の戦闘を分析してサポートする。

 

 サクラも二人に続いて、森の中へと大きく足を踏み出した。

 

 +++

 

 うわあああ!

 

 突如、森の中に響き渡った悲鳴。思わず、サクラは息を呑む。

 冷や汗を垂らしながら、サクラはあちこちに視線をやり、声の出所を探るがどうやら遠くのようだ。更に、木々に反射されたり吸収されたりした音のせいで、どちらの方向から声が発せられたのか今一、掴みにくい。

 

 森に入ってからまだ十分ほどしか経っていないにも関わらず、第二の試験が早速始まったのかとサクラは緊張を高める。

 

「……」

「ナルト? どうしたの?」

 

 突然、歩みを止めたナルト。

 訝し気に彼を見たサクラはおずおずとナルトに声を掛ける。

 

「出て来い。そこにいるのは分かっている」

 

 ナルトは一見、何の変哲もない茂みに向かって声を掛ける。が、反応はない。

 

「貴殿の殺気は感じている。もう一度言う。出て来い」

 

 ガサガサと茂みから音がした。早速、戦闘になっちゃうかとサクラは茂みへと集中する。

 だが、茂みから出てきた姿がサクラの集中を霧散させた。

 

「サスケくん!?」

 

 茂みから出てきたのはサスケだった。

 

 ──でも、サスケくんは私の横に……いない!?

 

 サクラが混乱に包まれる中、茂みから出てきたサスケが殴り飛ばされる。

 

「オレに変化するとは随分、嘗めているようだな」

 

 サスケに拳を上げたのはサスケだった。そこまできて、サクラはやっと落ち着きを取り戻し、この絡繰りの答えを得た。ナルトはまだ状況について行くことができておらず、どうしていいか分からないというように手持ち無沙汰であったが。

 

 サクラが殴り飛ばされたサスケを睨むと、彼の体から煙が上がった。

 

「そこのデカブツの隙を突いてやろうとしたのによォ……。まあ、いい」

 

 煙から出てきたのは、痩身の男だ。白い拘束服のようなツナギ服にシュノーケルの呼気管を下に向けたような鉄のマスク。目元は布で覆っており、布に開けた穴から見える眼光は鋭い。

 額当てを見るに、男の所属は雨隠れの里であるだろう。

 

「こうなったら実力行使だ!」

 

 自分の企みが通用しないと考えた男はサスケに向かって駆け出しながらクナイを取り出した。それに応じるようにサスケもクナイを取り出し、瞬身の術で雨隠れの下忍へと肉薄する。

 

 だが、それは悪手だった。

 

 サスケと雨隠れの下忍がクナイを重ねた瞬間、雨隠れの下忍の右手から落ちた煙玉が二人の姿を覆い隠す。煙の中で行われる攻防は、煙の外からはクナイの音と煙の中のぼんやりとした影で判断することしかできない。

 

 状況は拮抗しているとサクラは判断した。男の策に嵌りながらも、一歩として敵に譲る事はないサスケにサクラは胸を撫で下ろす。

 

 煙も段々と薄くなってきており、援護もすぐできるだろうとサクラはポーチからクナイを取り出し、ナルトは拳を固めた。

 しかし、サクラの予想を上回る出来事が煙の中で起きていたのだ。

 

「む!?」

「サスケくんが……二人?」

 

 雨隠れの下忍が、またも変化の術を使ったのだろう。先ほどは位置関係に注意していれば、どちらが本物のサスケか分かったのだが、今度は煙幕の中で動き回っていた二人だ。位置関係でどちらが本物のサスケか分からない。

 

「ナルト! 敵を攻撃しろ!」

「む!?」

「ナルト! やめろォ!」

 

 と、サスケの声がナルトへと指示を下した。両極端な二つの命令。そして、その二つは別々のサスケの口から語られたもの。

 つまり、一方は本物のサスケからの指示だ。

 

 どちらの指示を優先させればいいのか分からないナルトは動きを止めてしまう。その間にも前のサスケたちはクナイの斬撃の応酬を行っている。

 

「ナルト! 右!」

「サクラ……承知!」

 

 サスケたちの指示ではない。サクラの指示に従ったナルトは駆け出す。

 ナルトの左ストレートが右側にいたサスケ、『敵を攻撃しろ』と命令したサスケの左肩に当たった。堪らず、地面に転がされるサスケの姿。

 

「……どうして、分かった?」

 

 倒れたサスケから煙が上がる。煙が収まった後にいたのは、雨隠れの下忍だった。

 雨隠れの下忍は恨めし気にサクラを睨む。ナルトは自分の変化に惑っていた。だが、なぜ、サクラは一部の隙もなく自分がサスケではないと判断できたのか?

 雨隠れの下忍はその理由が全く分からなかった。

 

「決まってるじゃない」

 

 サクラは雨隠れの下忍の視線に怯えることもなく堂々と言う。

 

「サスケくんをずっと見てきたから分かる。変化はできていたけど、アナタの動きはサスケくんの動きじゃなかったってことだけ」

「……アンラッキー」

 

 言い残すことはなくなったと判断したのだろう。

 サスケの踵落としが雨隠れの下忍の頭を地面へと縫い付けた。

 

 +++

 

 雨隠れの下忍との戦闘後、場所を移したナルトたちは森の小さな広場で頭を突き合わせていた。サスケ主導の作戦会議だ。

 

「もし、三人バラバラになった場合、例え、それが仲間でも信用するな。今みたいに変化されることに成り兼ねない。それに、サクラに変化されたら、オレとナルトじゃ変化が上手い奴の場合は見破れない」

「それじゃ、どーするの?」

「念のため、合言葉を決めておく。いいか、合言葉が違った場合は、どんな姿形でも敵とみなせ」

 

 やや強い口調で言うサスケの顔は強張っていた。

 

「よく聞け。言うのは一度切りだ。忍歌『忍機』と問う。その答えはこうだ。『大勢の敵の騒ぎは忍よし。静かな方に隠れ家もなし。忍には時を知ることこそ大事なれ。敵の疲れと油断するとき』」

「OK!」

 

 大きく頷いたサクラ。だが、ナルトは暗い顔をしながら、サスケへと言葉を返した。

 

「済まない、サスケ。今度は書き記した後に腹筋をしながら覚える故、もう一度、言ってはくれまいか?」

「ダメだ」

 

 シンクロ・マッスル学習をしたいというナルトへ、(にべ)もなく断るサスケが立ち上がる様子を見ながらサクラは思う。

 

 ──あ、サスケくん。腹筋をしながら暗記するってことにツッコまないんだ……。

 

「巻物はオレが持つ!」

「サスケよ……む!?」

 

 合言葉を変えて貰おうとサスケに声を掛けようとしたナルトの(うなじ)が逆立った。それと同時に感じるのは強烈な殺気。

 殺気を感じた方向に顔を向けたナルトの頬に木の葉が当たった。

 

「新手か!?」

 

 突風が吹き荒れ、サスケの叫びを消す。

 局所的な竜巻はナルトの115kgの体を吹き飛ばすほどの力を持っていた。サスケとサクラは言わずもがな。彼ら三人は分断されてしまった。

 

 ──風遁使い。それも、並みのレベルじゃない。

 

 サスケは冷静に分析しつつ、茂みに身を隠して辺りを窺う。敵の気配はない。

 ゆっくりと茂みから出てきたサスケは風が吹いてきた方向に目を凝らす。すでに敵は移動したのか、そこには何もなかった。

 

「サスケくん!」

 

 後ろから声がした。

 振り向くサスケの目に映るのは、自分へと駆け寄ろうとするサクラ。おもむろに、サスケは彼女へとクナイを向けた。

 

「寄るな! まずは合言葉だ。『忍機』!」

「あ、うん! 『大勢の敵の騒ぎは忍よし。静かな方に隠れ家もなし。忍には時を知ることこそ大事なれ。敵の疲れと油断するとき』」

「よし!」

 

 サクラ本人だと確かめたサスケは自分の元に来るようサクラに合図する。

 と、ガサガサと音がした。警戒を最大にし、そちらに目を向ける二人はナルトの姿を目にする。

 

「すまぬ、不覚を取った。怪我はないか?」

「ナルト! ちょっと、そこで止まって!」

「む?」

 

 サクラは自分たちに近づこうとするナルトを停止させる。

 

「合言葉。『忍機』」

「失敬。『大勢の敵の騒ぎは忍よし。静かな方に隠れ家もなし。忍には時を知ることこそ大事なれ。敵の疲れと油断するとき』」

 

 ヒュッと音がしたことにサクラは気が付く。それと同時に、ナルトが体を捻り、飛んできたクナイを避けた。サクラはクナイが飛んできた方向に目を向ける。と、サクラの目が丸くなった。

 クナイが放たれた方向はサクラの左横、つまり、サスケが居た方向だ。そして、その方向にいたサスケはクナイを投げたように腕を振り切っていた。

 

 信じられないというようにサクラは声を震わせる。

 

「サスケくん、なんで!? ナルトはちゃんと合言葉を……」

「今度はオレの攻撃を避けるほどの奴か」

「ちょっと! サスケくん!?」

 

 サクラの言葉を無視して、ナルトを見続けるサスケ。緊張した面持ちだ。サクラは口を閉じて頭を回転させた。サスケの表情と、今の状況。

 

 ──まさか、偽物!?

 

 弾かれたようにサクラはサスケからナルトへと視線を移す。

 ナルトの顔が邪悪な笑みを作っていた。それは“本物”のナルトならば、決して浮かべることのない表情。

 

「よく分かったわね」

 

 ナルトの姿が煙に包まれた。

 

「なぜ、分かったの? 私が偽物だと」

「テメーが土の中でオレたちの会話を聞いてるのは分かってた。だから、あんな合言葉にした」

 

 薄くなる煙。そこから見えるシルエットは細かった。

 サスケは“偽物”のナルトと問答を続ける。

 

「ナルトは暗記については長い時間を掛けないと覚えられないからな。つまり、お前は偽物ってことだ」

「なるほど……」

 

 煙が収まった。

 細い人物は笠をずらし、顔を露わにする。

 

「疲れも油断もないって訳ね。思った以上に……楽しめそうね」

 

 そこにいたのは、アンコがナルトや我愛羅と同様に、強者と目していた草隠れの里の忍だった。

 


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