幻想郷の怖い話   作:ごぼう大臣

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元ネタの質問が、調べたら二十個近くあった・・・・・・。そしてレミリアの詰問を描くうちに某岩下さん臭が漂う。


六周目・六話目-レミリア・スカーレット

 「とうとう私で六話目ね。まずは自己紹介しときましょうか。レミリア・スカーレットよ。

 紅魔館という屋敷で当主も務めているわ。皆で集まるって嫌いじゃないから、これを機に親交を深めてあげても良いわよ。

 

 それにしても、七人目は遅いわね。ドタキャンする気かしら? 約束は破るものじゃないでしょうに。

 

 ・・・・・・まあ良いわ。先に始めちゃいましょ。私のさっき言った紅魔館なんだけど、色んな部屋があるのよ。エントランスからリビング、食堂、住人の居室は勿論のこと、中庭に屋上、時計塔に地下室まで、掃除も行き届いていつでも気分に応じて楽しめるの。

 それとね、図書館。地下にあるんだけど、これがまたとてつもない広さ。そして本の数。私の友人とその部下が二人で管理しているんだけど、大変だっていつもぼやいている位よ。

 勿論、内容も流石のモノよ。伝説と謳われた昔の魔術師が書いたものや、今は失われた秘薬の作り方、魔物を生み出す本や外の世界の呪いの本まで、図書館にしか無い本が山程。そんじょそこらの古物商なんかに値はつけられないわ。どっかのコソ泥にあげるなんて、もっての他。

 

 で、今日も一冊持って来たのよ・・・。『呪いの書』。おっと、ここではまだ出さないわよ。何故かって?

 

 ・・・・・・阿求。ちょっと貴女一人で付き合ってもらいたいの。今までのように、由来やら事件やら話して終わりってものには出来ないの。

 ちょっと別室に来てもらうだけで良いのよ・・・。出来るわよね?

 

 ・・・・・・ふふふ。ありがとう。じゃあ皆、ちょっとゴメンね。阿求借りるから」

 

 

 

 

 「・・・・・・ここなら誰にも聞かれる心配はないわ。ふふ、緊張してる?そんなに堅くならないでよ。変なことしようってんじゃないんだから。

 

 これが呪いの書。一見大きさも厚さも普通なんだけどね。ほら、文字読めないでしょ?なんでも古代文字らしいんだけど、私でも何が書いてあるかは分からないのよ。

 

 でも、ある儀式の方法が伝わっているの。そこであなたの協力が必要になるんだけど・・・私の頼みを聞いてくれるかしら?

 

 ・・・・・・え、まずはその頼みの中身を聞いてみたい? 用心深いのねぇ。ううん、良いのよ。怒らないから。

 難しいことを頼むんじゃないわ。この本の表紙に、紋章が書いてあるでしょ? ちょっとそこに手を置いてもらいたいのよ。手のひらをね。簡単でしょう?

 

 ・・・・・・うん、それで良いの。

 

 ・・・・・・ちゃんと置いた? ふふ、置いたわね?

 

 ねえ、最初に呪いの書だって言ったけど、どういう方法で呪うのか、まだ話してなかったわね。

 ・・・・・・この本が呪うのはね、その紋章に触れた人。つまり、あなたよ。

 

 あら、怒った? もう、短気ね。最後まで聞いてよ。呪いを解く方法だって、ちゃあんと知っているんだから。

 これから私がする質問に、答えて欲しいのよ。嘘をつかずに全部正直に答えたら、呪いは防げるわ。

 慌てないで。良いわね? 始めるわよ。

 

 

 ・・・・・・・・・まず、あなた、ちゃんと私の話を信じているのかしら? 本当は疑っているんじゃないの?

 ・・・・・・そう、信じているわね。確認したわよ。じゃあ次。

 

 

 あなたは、今までに嘘をついたことはあるかしら?

 ・・・・・・へえ、あるのね。そりゃそうか、生きていれば誰もが嘘をつく。どんな嘘をついた? 悪ふざけの軽い嘘? その場しのぎの姑息な嘘? それとも人を貶める汚い嘘を吐いたのかしら?

 ま、この場で正直に言ったのだけは誉めてあげる。

 

 

 じゃ、次ね。あなたは、死にたくなったことがある?

 ・・・・・・あら、無いの? 本当に? 随分幸せな人生を送って来たのね。何代も転生してきて、心当たりが無い? へえぇ、結構な事ね。あ、それとも不幸を感じ取れないほど鈍感で馬鹿なのかしら。ああ、多分そうね。決まってるわ。

 あなたは、お馬鹿。これ決定事項。

 

 

 次は・・・あなたは、人を殺したくなった事はある?

 ・・・・・・無い? 嘘はついちゃ駄目よ。殺してやりたいと思った事は無いの?  ふん、信じがたいわね。あなたみたいな頭の固い偏屈な奴、カッとなって誰かを殺めるなんて、いくらでも場面が想像できるけれど。

 ああ、質問が悪かったかしら、殺したくなっただけじゃなく、実際にやるまでがセットなんじゃない? ・・・違う? つまらない。

 

 

 じゃ、今度は、人を傷つけた経験はあるかしら?

 ・・・・・・あるの? そうそう、人間は正直であるべきよ。ちょっとしたことで他人を傷つけるなんて、誰もがしちゃうのよ。それも時には、想像以上に深い傷をつける。

 あなた、今までに毒牙にかけた人々に謝ったんでしょうね? まさかもう過去のことだから大した罪じゃないなんて考えてやしないでしょ?

 いえ、むしろ忘れていたりして。やっぱり一度呪いにかかる方がいいんじゃない? そうしたら思い出すでしょう。あなたの今までに重ねた、無数の薄汚い所業を。

 

 

 次は・・・何よ。怒ったの? 嫌ならやめても構わないのよ。あなたが呪われようが、それこそ死のうが私には何の関係もないんだから。

 怖い? なら早くしなさい。さっさと座って、続けるのよ。質問はまだまだあるんだから。

 

 

 あなた、誰かを裏切ったことは無いかしら?

 ・・・・・・あるの? そうよね。誰だって期待や信頼に応えられない場合がある。自分の利益を考えたら、他人の気持ちを慮り行動するなんて、誰かを背負って山道を登るようなもの。時には裏切るのも無理はないわ。

 

 ・・・・・・なにホッとした顔をしているのよ。いい気になるんじゃないわ。

 あなた、すっかり自分がやむを得ず裏切る想像をしたでしょう。都合の良い奴ね。吐き気がする。

 裏切られた側になってみなさい。あなたが仕方なくだったとして、今度は相手に皺寄せがいくのよ。そして相手は苦しむ羽目になる。あなたのせいで。あなたなんかのせいで。あなたごときのせいで。

 あなたはそんな事許されないのよ。倒れようが、手足が潰れようが、必死に、無様に他人の気持ちを損なわないよう努力すべきなの。

 分かった? 分かったら次に行くわよ。

 

 

 あなたは、人に憎まれていると思う?

早く答えなさいよ。憎まれているか、そう聞いているの。

 ・・・・・・思わない? この期に及んでまだそんな事を言うわけ? 呆れた能天気ね。憎しみっていうのはね、敵を見たらすべからく発生する感情なのよ。あなたと関わって、憎まずにいられた人間がどれだけいると思う? いないのよ。いるわけがないわ。あなた一度くらいは鏡を見て胸に手を当てて考えてみなさい。その出来の悪い脳みそのお陰でどんなに不幸を振り撒いたか、出来の悪い脳みそでも十個は思い当たるでしょう。

 

 

 よし、次ね。あなたは、恨まれていると思う?

 ・・・・・・へぇ、これもNOなんだ。まあ良いわ。正直に答えなくても、私は何も損しないから。

 けどね、そのムスッとした顔が素敵だから教えてあげる。あなたは恨まれているわよ。それも沢山の人々にね。

 恨みを買った覚えが、本当にないの? 道案内を断ったり、酔っぱらいを素通りしたり、雨の日に傘を盗むのを止めたりした事はない?

 ない、ですって? ああ、あなたは恨まれるのも納得ね。ふてぶてしい。自分がどこまで利己的か、例を出してあげても認めないなんて、人としての良心までイカれたのかしら。

 

 

 次は・・・あなた、今まで楽しい生活を送ってきた?

 ・・・・・・送ってきたんだ。そりゃあぁ、そうよねエェ? あんな大きな屋敷に住んで、奉公人に囲まれて、他人の富を吸い上げて膨れ上がった家柄に、貧相なその体であぐらをかいているんですもの。楽しくない、なんて言えばバチがあたるわ。

 せいぜい甘い汁を吸っていたらいいわ。生まれついての肩書きに記憶能力のお陰でちやほやされながら、閉じ籠ってミミズみたいな字で記録をつけて死ねば良い。

 ・・・は? なんですって? 『羨ましいのか?』

 なめた口を叩くんじゃないわ。あなたはただ聞かれたことに答えていれば良いの。

 

 

 今度は・・・人を殴ったことはあるかしら?

 ・・・・・・ない? ふぅん。信じられないわねぇ。いくらあなたが腰抜けのモヤシ娘でチンチクリンだとしても、拳を作ってぶつけるくらい出来そうなものだけれど。

 何も度胸なんて要らないじゃない。使用人にかんしゃく起こしてひっぱたいたりしないの? 立場の違いがあるなら『あなたの為』とか屁理屈こねても怒られやしないわよ。

 ・・・・・・ないんだ。余程の臆病者なのね。カタツムリみたい。

 

 

 そして、・・・あとは、悪いと思いながらも何かをした事はある?

 ・・・・・・あるのね。いくら駄目だって躾されても、犬じゃないんだもの。欲に目が眩んだり、魔が刺したり、いくらでもあり得る話よね。

 悪いと思う程度の理性はあったのね。素晴らしいわ。良い子、良い子。突き抜けた悪にはなり切れないのが、あなたの良いところよ。惨めで間抜けで、卑怯で、おまけに中途半端。何代も転生してようが、所詮は人間ね。見ていて飽きないわ。

 

 

 そいで、お次は・・・

 今までに何かで、後悔したことってある?

 ・・・・・・そっか。あなたでも後悔なんてするのねぇ。何やらかしてきたの? こっそり黒歴史小説でも書いてたの? それとも家の財産を賭博にでも突っ込んだ? 屋敷の使用人と淫らな行いでもしたのかしら。

 ・・・最大級の後悔? 良いじゃない。是非聞かせなさいよ。

 ・・・今まさに・・・私に付き合って? ふん。言うじゃない。でもそういうのは最後まで終わってから言ってもらわなきゃ。まだ聞きたい事はあるんだからね。

 

 

 今まで、虫を殺したことはある?

 ・・・あるの。あなたならさぞかし沢山殺してきたんでしょうね。ハエに蚊は無論のこと、蝶に蛾やトンボなんかも、羽をむしって楽しんだんでしょう。虫だけに。

 ・・・・・・あとはブックワーム、だっけ? アレ虫に入るのかな? まあ良いわ。抵抗できない虫けらを弄ぶってどんな気分だった? あなたは見るからにひ弱だし、そんな時ばかりニヤついているんでしょう。どこかで愉悦感を得なきゃ生きていけないものね。精々ストレス解消しなさいな。

 へ? 馬鹿ねぇ、そんなムキになって嘘をつかなくても、表に出さなきゃ問題ないわよ。みーんな、あなたの青カビチーズを吐き戻して腐らせたみたいな本性を知らないんだから。

 

 

 次、ちょっと例えばの話。もし、あなたに恋人がいたとする。その恋人が死にそうな状況であなたが身代わりになれば助かるような状況だったら、あなたはどうする?

 ・・・・・・身代わりに、なる? ふぅーん。自己犠牲というやつね。まああなたが犠牲になる程度で回避できる危険って何かしらね。聞いといて思い付かない。

 でも考えてみれば、恋人はあなたを死なせた罪を背負うわけよねぇ。どうせ大した危機でもないでしょうに。ああ、そう考えると傑作だわ。その時はいっそ一緒に死ねば良いんじゃない? 恋人は永遠にあなたのモノよ。どうせあなたの恋人なんてろくな奴じゃないでしょうけど。

 

 

 じゃ、次ね。あなたは、盗みをした事はある?

 ・・・・・・無いの? 感心ね。私の館は頻繁にコソ泥が出入りするのよねぇ。毎回逃げられるんだけど、死ぬ時には返してくれるらしいわ。あ、じゃあ殺したら解決するのかな。

 でも、そいつはまだ良いのよ。悪事をしている自覚はあるからさ。厄介なのは、自覚無しに盗む輩よ。

 本人はあくまで全うに生きているつもり。だけど、その実どこかで他人が手に入れていた筈のモノを奪っている。

 ・・・・・・心当たりが無い? あなたに聞いているの。

 無いのね。まあそりゃそうか。相変わらず悪びれない子猫みたいな面をして。

 構わない。自分でも矛盾した事を言ってるのは理解してるわ。

 

 

 次ね。これは大事な質問よ。

 今までに犯した罪に対して、反省している?

 ・・・・・・悪いことをしたとは思っているのね。じゃあ言葉だけじゃなくて、行動で示してもらわなくちゃいけないわよね?

 罪が残した傷痕がどの程度か、決めるのは被害者側なの。だから当然、罪に対しての償いを決めるのも私達なのよ。

 ・・・どういうことか、分からない? まだそんなキョトンと出来る程度には罪の意識が薄いのね。じゃあ一旦、もう一個だけ確認させて頂戴。

 

 

 人殺しをした事はない?

 ・・・・・・・・・無いの? さあどうだか。まあ今更あれこれ懺悔を始めようと、こちらのやる事は決まってるわ。

 この質問が最後よ。

 

 

 ・・・罪を償うつもりは、ある?

 

 ・・・・・・そう、無いの? 悪い子ね。あくまで意地を張る気なんだ。それがあなたの答えなのね。じゃあ・・・・・・・・・」

 

「覚悟しろっ!!」

 

 

 

 

 ・・・・・・突然、頭にガツンと衝撃が走った。視界が暗くなり、体がいとも簡単にくず折れる。

 

 なんだ? 私は頭を殴られたのか? 分からない。ズキズキと疼く痛みも遠のく中、辛うじて感覚が残る耳に知らない声が聞こえた。

 

「やっと始められる」

 

「待ちくたびれたよ」

 

「御阿礼の名は・・・・・・今日で終わりだ」

 

 


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