幻想郷の怖い話   作:ごぼう大臣

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一周目・三話目―比那名居 天子

 

「私が三話目かぁ。あ、そうそう、私は天子よ。比那名居天子。

私普段は天界に住んでるんだけどね、こんな集まりあまり無いからわざわざ来てあげたのよ。感謝なさい。

でー、あー、さてどんなの話そうかな、考えてなかった・・・。

阿求って天界に行った事ないわよね?そうよね〜。折角だし天界の話をしましょうか。」

 

 

 

 

「貴女、天界にどんなイメージ持っている?

ふんふん、歌と踊りを楽しめるノンビリした場所?

う〜ん、40点。

下々は皆そういうんだけどね、割りとすぐ飽きるのよ。

だって、毎日毎日のほほんと暮らしているって、脳も体も鈍っていくって事よ?御爺さん御婆さんならそんな生活させてやりたいけど、この聖なる桃が作った、若々しい常人離れした体にはありがた迷惑って奴よ。

それで、そんな私のお気に入りの、退屈しのぎが何かってーと・・・

天界にある、運動場。まあ駄々っ広いだけの雲なんだけどね。そこで飛んだり跳ねたりして有り余るエネルギーを発散する訳。

幸い、若い姿の天神には同じ考えの奴等もいてね。そいつらとかけっこから球技や格闘技やら色々やるの。

・・・ただ、そこが普通の場所じゃなくてさ。

"いる"のよ。何かって?地縛・・・いえ、"天縛霊"というべきかしら。噂だけど、昔、タチの悪い天女が地上でやらかしたとか何とかで、悪い魂を連れて来ちゃったらしいの。本当かどうかは分からないわ。皆顔も見た事ないもの。ただ、未だにトラブった天女を探してるのか、通りがかる人がいると、たまに青白い手だけをヌーッと出して、足を掴むのよ。ヤワじゃないから怪我はしないけど、揃って冷たい何かに捕まって転んだっていうの。

怖い?ふふふ、怪談っぽくなってきたでしょう。でもこれだけじゃ済まないのよ。今度はその噂、天縛霊の呪いを確かめてやろうって連中が現れた。さっき話した運動好きより、更に退屈が嫌いで、無鉄砲な奴等。私はそこまで馬鹿じゃなかったけど、話だけは聞いたわ。

奴等は横一列になって競争をし始めた。元々その辺を走れれば良かったから、皆順位なんて気にせずにテキトーにやっていたわ。それをやって暫くした頃。

 

・・・何回めかのスタート直後、出たのよ。奴が。

 

一位を走っていた奴の足に向けて、地面から追いかけるように手が伸びていった。そしてどんどん追い抜かされていって、終いには半泣きで足踏みしだした。

 

そのせいで、その場にいたやんちゃ連中も呪いを信じざるを得なかった。ちっとも進まないその子を見て、口々に言ったんですって。

 

『なんだアイツ、鈍い(のろい)・・・!!』

 

 

・・・つってね。」

 

 

「・・・・・・・・・」

 

・・・え?

 

これで終わり?何その落語みたいなオチ。もしかしたら続きがあるかもしれない、とチラチラ様子を伺ったけど、天子さんは相も変わらず満足げな笑顔を浮かべていた。

 

「さ、お次の方どうぞ。私は話す方は満足したから、引き続き面白いの聞かせてちょうだい。」

 

他のメンバーが呆れているのも気づかないのか、更に両手を差し出して促す。本当にこれで終わりなのか・・・

 

まあ良いや。七不思議の一つや二つ欠けたって。はあ。


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