艦これの世界にラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将が着任したようです。   作:アレグレット

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第二話 この世界はいったい何なんだ!?

 

■ ラインハルト・フォン・ローエングラム上級大将

あれから3日たつ。ようやく体が元に戻ってきた。それと共にフロイライン・アカギに本を借り、話を聞いた結果、ようやく今の状況がわかってきた。

 

どうやら俺は過去の世界に来てしまったらしい。いや、正確に言えば違う世界に来てしまったようだ。まったく信じられないが、どうもそうらしい。しかもこの世界には「銀河英雄伝説」として俺自身の話が書籍として残っていた。これが夢でなくて何なのだというのだ。

だが、頬をつねっても頭をひっぱたいても夢から覚める気配はない。となれば、ここは現実であって俺はそれに順応するほかないという事だ。忌々しい。

書籍によれば俺はアスターテ星域会戦で勝利し、後にローエングラム王朝を開くと書かれているが、残念ながら現実の俺は未だ上級大将の身だ。しかもキルヒアイスもいない上に、麾下の艦艇もいない。今のところは俺一人でこの世界でやっていかなくてはならないという事だ。

そう思った時に、姉上に遭えないという現実が俺を襲った。キルヒアイスに遭えないことも悲しいが、姉上に最後に一目お目にかかりたかった。やはり出立前に遭っておくべきだったか。姉上はどうされているのだろう。あの老人め!姉上にその汚らわしい手で触ってみろ!!絶対に許さんぞ!!!

 

 

* * * * *

ラインハルトは病室を出た。体はすっかり元通りになって、歩き回れるようになったと思っているのだが、まだフロイライン・アカギに言わせると無理のできない体らしく。外には出させてもらえない。それでも、ラインハルトにはだんだんとこの「ラバウル鎮守府」の様相がわかってきた。

 

 この「ラバウル鎮守府」はフロイライン・アカギが統括しているらしい。そしてその麾下に何人かの女性が配属されている。女性たちは「カンムス」という存在らしい。それはなにか、とラインハルトがフロイライン・アカギに尋ねると、一瞬驚いた顔をされたが、詳しく説明してくれた。

 カンムスとは前世の大日本帝国海軍の艦艇とやらの記憶を持つ生まれ変わりなのだそうだ。この世界には「シンカイセイカン」と呼ばれる異形のエイリアンのような生き物が跳梁しており、シーレーンは遮断されて、各国は孤立している。それと対峙しているのがフロイライン・アカギたち「カンムス」なのだというのだ。そしてそれを統率しているのが「提督」たちなのだそうだが、このラバウル鎮守府は先日攻撃を受けて提督が負傷・後送され、新たに新しい提督がやってくるのだという。

 

「どのような奴かは知らないが、この世界のことをもう少し知る機会が手に入るだろう。俺のほかに生き残った奴はいないのか、キルヒアイスはどうしているのか、その辺りのことを知ることができるかもしれない。」

廊下を歩きながら考え込んでいたラインハルトの視界の隅に、なにやら動くものが映った。振り向くと、さっと廊下の角の隅に隠れるのが見えた。

「どこの誰だか知らんが、出てきたらどうだ?俺はいきなり卿らを取って食うような趣味はしていない。」

冗談交じりに言うと、恐る恐るというように顔が出てきた。黒い長い髪を伸ばした少女だ。制服のような物を着ているが、フロイライン・アカギと違って背丈は小さい。

「誰だ?」

ラインハルトの問いかけに、その少女は物陰から出てきて彼に近寄ってきた。

「あの・・・特型駆逐艦潮です。」

少女は自己紹介をした。自信がなさそうなうつむきがちな顔をして元気のない声で。

「ほう?」

ラインハルトのアイスブルーの眼光に潮は「ひっ。」というように顔をゆがめた。

「そう怖がるな。フロイライン・アカギに聞いた。卿ら艦娘は人間よりもよほど強いのだと。そのような者が俺に怖がっていてどうする?」

「ごめんなさい・・・。」

「謝る必要もない。」

ラインハルトはそう言ったが、かえってそれが少女を怖がらせてしまったようだ。いっそううつむいてしまった少女を見て内心やれやれと思いながら、ラインハルトは話題を変えた。

「このラバウルチンジュフとやらには、フロイライン・アカギやフロイレイン・ウシオのようなカンムスは大勢いるのか?」

潮は暗い顔で首を振った。

「いないんです・・・、先日のラバウル空襲で皆負傷して日本に帰ってしまって・・・。ここにはそんなに大きな病院もないし、大けがしても直せる設備もないんです・・・。今は赤城さん、私、それに金剛さん、曙ちゃん、天龍さん、夕立ちゃんしか――。」

その時、ラインハルトの耳にけたたましいサイレンが鳴り響いてきた。

 

 

ヴ~~~~~~~~~~~~~~~~~~~ッ!!!!!!!!!!

 

 

というその音は途切れることなく鼓膜にひびく音をあたりに弄し続けている。

「どうした!?」

「ししし、深海棲艦が!!!どうしよう!!こんなときに!!!」

潮がパニックになっている。

「司令官もいないのに、こんな時にどうしよう!!」

ラインハルトはうろたえる潮を見、窓の外に視線を転じた。明らかに水平線とは違う黒い点が数点、此方にやってくるのが見えたのだった。

 


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