怪人バッタ男 THE FIRST   作:トライアルドーパント

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遅くなりましたが、あけましておめでとうございます。2019年の初投稿です。

そして、ふと気付いたらUAが400000を超えていました。ご愛読ありがとうございます。そして、予想以上に「マタンゴの所為でトロ顔になった取蔭ちゃん」が好評で驚いております。ちょっと思いついたネタがここまでウケるとは思いもよらず、未だに発見が多い事を思い知らされます。

タイトルの元ネタは『仮面ライダー(初代)』の「恐怖のペット作戦ライダーを地獄へおとせ!」。小説『雄英白書Ⅱ』における変態ブドウの犯罪行為を参考にして書いた結果、過去最大レベルで「下ネタの限界」へ挑戦する事となりましたが、果たして……。



第38話 恐怖のお色気作戦! 変態ブドウを地獄へ堕とせ!

歌って踊れる愉快且つ奇っ怪なキノコ怪人こと、マタンゴの群れが『魔獣の森』に姿を消したのと入れ違いで、プッシーキャッツの宿場に到着したA組の面々は誰もが土に汚れ、制服は所々破れており、その姿は正に満身創痍と呼ぶに相応しかった。

俺以外のA組はピクシーボブの“個性”『土流』を用いた土魔獣との戦いによって限界まで心と体を消耗しており、勝己や轟さえも疲労の色を隠す事が出来ていない事を考えれば、相当に過酷な戦闘だった事を予想させる。

 

「何が三時間ですか……ッ!」

 

「ソレ、私達ならって意味。悪いね」

 

「実力差自慢の為か……やらしいな……」

 

「腹減った……死ぬぅ……」

 

「つーか、何で呉島は居なかったんスか……」

 

「この子は40mの巨人になれるからね。土魔獣を無視して森を一気に突破されちゃったら君達の強化に繋がらないでしょ?」

 

「確かに……。周りに人工物が無いこの状況なら、確実に呉島君の巨大化に頼っていただろうな……」

 

「ねこねこねこ……でも、正直もっとかかると思ってた。私の土魔獣が思ったより簡単に攻略されちゃった。良いよ、君ら……特にそこ4人! 躊躇の無さは経験値によるモノかしらん?」

 

「………」

 

経験値……か。確かにピクシーボブが指さした4人の内、出久、飯田、轟の三人はステインと言う百戦錬磨のヴィランとの戦闘を経験し、残り一人の勝己はバッタ怪人となった俺と真っ向からガチで殴り合う事を好む様な男だ。土で造られた「魔獣」と言う名の操り人形では、少々力不足な感じは否めない。

しかし、世間ではエリートと称されるヒーロー志望の高校生20人を相手に、一人で此処まで苦戦させたピクシーボブの手腕は注目すべき事である。「体外の物質を操る」と言う点で『モーフィングパワー』と共通する特徴を持った“個性”である事を考えれば、彼女に教えを乞う事は今回の合宿において必須だろう。

 

「三年後が楽しみ! ツバつけとこーーーーーーッ!!」

 

「マンダレイ……あの人、あんなでしたっけ?」

 

「彼女、焦ってるの。適齢期的なアレで」

 

アレは“焦る”と言うよりは“必死”と言うべきでは?

 

とても口に出して言える様な事ではないが、自分の倍程も年の差がある高校生にツバをつける彼女の姿を見て、「あんな大人にはなりたくないものだ」と思ったのは俺だけではない筈だ。

 

「適齢期と言えば……「と、言えばて!!」ウプッ」

 

そして、出久は出久で命知らずも良い所だ。地雷を積極的に踏み抜くスタイルは、身の破滅を招くと言う事を知らんのか? そう言えば体育祭では、自ら地雷を掘り起こして一か所に集め、爆発させる事で自分の力として使っていたが……それは関係ないか。多分。

 

「ずっと気になってたんですが……その子は、どなたかのお子さんですか?」

 

「ああ、違う。この子は私の従兄弟の子だよ。洸汰、ホラ挨拶しな。一週間一緒に過ごすんだから」

 

「……あ。えと……僕、雄英高校ヒーロー科の緑谷。よろしくね?」

 

「……フンッ!!」

 

ぎこちないながらも友好の握手を求めた出久に対し、洸汰と呼ばれた少年は体重を乗せたキレのいい右ストレートを出久の股間に叩き込む事で、これ以上無い程の拒絶の意思を、この場に居る全員に示した。

幾ら幼稚園児程度の年端もいかぬ子供の攻撃とは言え、睾丸は紛れもなく内臓であり、金的は何時でも、そして如何なる相手にも有効な攻撃である。その威力は一撃で出久に膝を突かせ、白目を剥かせる程に強力だ。

 

「きゅう」

 

「緑谷君! おのれ従甥!! 何故、緑谷君の陰嚢をッ!!」

 

「ヒーローになりたいなんて連中とつるむ気はねぇよ」

 

「つるむ!? 幾つだ君は!?」

 

「マセガキ」

 

「お前に似てねぇか?」

 

「あ? 似てねぇよ!!」

 

「何だ、貴様まだ気付いていなかったのか?」

 

「あん!?」

 

「思いついても普通は実行に移そうと思わぬ、ある種の大胆な言動と行動の数々。一見すると一理ある様な感じの暴論をまくし立て、自分の思い通りに事が運ばぬと露骨に機嫌が悪くなる!!」

 

「「「「「「「「「確かに」」」」」」」」」」

 

「おい!! 何だテメェらまで!! 殺すぞ!!」

 

「そして、これらの情報を第三者の視点で捉えた貴様の人物像はズバリ、幼児的万能感が抜けきらぬまま小賢しい知恵を身に付けた……“大人子供”だッ!!」

 

「死ねゴルァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「GYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

そして、他人事の様に「しょーもないガキだ」とでも言わんばかりの視線を洸汰君に向けていた勝己だが、轟が指摘したようにかなり似ている。しかも、俺が出会った頃の“幼少期の勝己”ではなく、“今の勝己”にだ。

それはイナゴ怪人1号の余りにもストレートな勝己の人物評に、クラスの大半が頷いている事が証明している。

 

その結果、イナゴ怪人1号はものの見事に爆発四散したが、この国には古来より「人の振り見て我が振り直せ」と言う金言があるので、勝己には洸汰君を見て「他人から見た自分」と言うモノを知って貰いたい所である。

 

「茶番はいい。バスから荷物降ろせ。部屋に荷物を運んだら食堂にて夕食。その後、入浴で就寝だ。本格的なスタートは明日からだ。さァ、早くしろ」

 

「……出久。動けるか?」

 

「何とか……。そう言えば、あっちゃんは何してたの?」

 

「サイクロンの運転。後は……救助活動かな?」

 

「救助活動?」

 

「ああ、実は「おい、早くしろ」……後で話す。夕食が終わった後でな」

 

「え? どうして、夕食の時じゃないの?」

 

「飯が食えなくなる可能性がある」

 

「?」

 

出久は怪訝な表情をしていたが、その理由を此処で話す訳にはいかない。そして、俺が危惧していた事は物の見事に当たっていた為、マタンゴについて話すのは入浴時間に持ち越しとなった。

尚、マタンゴに感染しなかった為、いち早く意識を取り戻したらしい円場が一人で食堂に現われたのだが……。

 

「ヒィイイイイイイイイイイイイイイイッ!! キッ、キノコだぁああああああああああああッ!!」

 

「? なんだ? キノコ嫌いなのか?」

 

「おいおい、ヒーローが好き嫌いとかよくねぇだろ」

 

「そーそー、食わず嫌いは良くないよ?」

 

「ほら、試しに一口食って……」

 

「ヤメロォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!! 俺の傍に近づくなぁああああああああああああああああああああああッ!!」

 

「………」

 

案の定、円場はキノコに対して猛烈なトラウマを植え付けられたらしく、その表情は食べ物の好き嫌い何て言うレベルを、遥かに上回る恐怖に染まっている。

その後、次々と現れるB組の誰もが同様のリアクションを見せ、異常な程にキノコを避けていた事に、A組の面々は少なからず彼らに何か恐ろしい事が起こった事を察した。

 

 

●●●

 

 

さて、食堂で一騒動あったものの、プッシーキャッツが用意した食事で腹を満たし、次に我々がやるべき事は、訓練で汚れた体を清め、心と体を癒やす事である。

 

「かくして、お前達が森の中でヒィヒィ言っている間に、我が王は新たな忠実なるミュータントを創造する事に成功した! その名は『マタンゴ』!! それは人間でも植物でもない、“第三の生物”なのだ!!」

 

「「「「「だ、第三の生物!?」」」」」

 

「チッ……」

 

「「………」」

 

そして、B組を襲ったマタンゴに関する情報は、イナゴ怪人1号が自分の手柄の如く声を弾ませて言いふらしていた。その波乱万丈にして奇々怪々、奇想天外かつ吃驚仰天な超展開を聞いた出久達は、実に派手なリアクションを見せている。

それ以外には、舌打ちをしつつも黙って話を聞く勝己。無反応ではあるが静かに話を聞いている様子の轟や常闇等、何だかんだで男子全員がイナゴ怪人1号の話に耳を傾けており、B組のキノコ恐怖症候群の正体を理解した。まあ、イナゴ怪人1号がいる所為で、俺が話す事が全く無いと言うのがアレだが。

 

「まァまァ……。飯とかわね……ぶっちゃけ、どうでも良いんスよ。求められてんのってそこじゃないんスよ。その辺分かってるんスよ、オイラぁ……ん?」

 

……いや、一つ訂正しなければならない。やはりと言うかなんと言うか、“性欲の権化”と称されるこの男だけは、例外的にイナゴ怪人1号の話を聞いていなかった。

いや、むしろ男子の大半の意識がイナゴ怪人1号の話に向いている今がチャンスとばかりに、女湯と男湯を隔てるベルリンの壁に、まるで発情したセミの様に張り付いている。

 

「おお! 見える、見えるぞ……! 全ての男の故郷たる、桃源郷への入り口が……!」

 

そして、ギラギラとした両目を充血させながら、口から滝の様によだれを垂れ流し、ハァハァしながら腰を激しく動かしつつ、峰田は必死に壁に空いた穴を覗いていた。峰田が何をしているか一目瞭然であるが、そんな邪悪な存在を視界に収めながらも、俺の心は早朝の静かな湖畔の水面の如き冷静さを保っている。

正直な話、雀の涙程ではあるが、峰田が改心する事も期待していた。しかし、そんな甘い考えは、ヒーローの卵から只の性犯罪者へ成り下がった峰田を見て、俺の心から完全に消え去った。

 

残念だ、峰田。お前にはもはや、犠牲となる道しか残されてない。そもそもは林間合宿が行われると決定した時からある大きな犠牲だ。この合宿に関わる全ての女性の尊厳と、彼女達が安心して合宿を終える為の犠牲。

 

そう、峰田は犠牲になるのだ。犠牲の犠牲にな……。

 

「クソ湯気が……地獄に堕ちやがれ……ッ!!」

 

悪いが、地獄に堕ちるのはお前だ。しかし、犠牲の真実を知っているのは俺とイナゴ怪人達だけであり、他の面子はそんな事は知らない。その為、峰田の行動を不審に思いつつも、峰田が何をしているのか察して、男湯の空気が静かに熱くざわついた。

 

「み、峰田君、何やってんの?」

 

「いやいや、緑谷。これは所謂……アレだろ? なあ?」

 

「! 峰田君、止めたまえ! 君のやっている事は、己も女性陣も貶める恥ずべき行為だッ!! そんな事をしたら、誇り高き雄英生の風上にも置けないぞッ!!」

 

「何言ってんだ飯田ぁ!! 女湯と男湯を隔てる壁に空いている穴が目の前にあったら、誰だって覗きたくなるもんだろうが!! いや!! 此処の管理者であるプッシーキャッツや、クラスの女共がこの壁の穴に気付いていない訳が無いッ!! つまり、プッシーキャッツやクラスの女共はなぁ、性欲を持てあましてムラムラしているオイラの為に、敢えてここに女湯を覗くための穴を空けておいてくれたんだぁ!! イヤッタァーーーッ!! アーッハッハッハッハッハッ!!」

 

んな訳ねぇだろ。今までのお前が犯してきた悪行の数々を思えば、どんなミラクルが起こったとしても、そんな事は絶対に起こらないと断言できる。

ぶっちゃけ、「地球を滅ぼそうとしている宇宙人が、喫茶店でマスターをやっている」って言われた方が、まだ信じられるだろう。

 

「てゆーか、お前らもアレだろ? 見たい女の裸の一つや二つあるだろ? なぁに、クラスメイトのよしみだ。全部、オイラの所為にすりゃあ良い……」

 

「「「「「(ゴクリ……)」」」」」

 

「級友を悪の道に引きずり込むんじゃあないッ! 君のやっている事は立派な犯罪行為だッ!!」

 

「決断できない男は無能だぜ、飯田ぁ……もっとも、こう言うのは古来より最初に見つけた奴に役得がある。まずはオイラが……おお! 見える! 見えるですたいッ!! この大きさは八百万か!? 遂に夢に見たヤオヨロッパイをオイラは……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッッ!?!?!?」

 

「「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」」

 

共犯者を作り出そうとする峰田の悪魔の様な囁きにそれなりの人数が反応する中、飯田の正論に聞く耳を持たない峰田が再び穴を覗くと、間も無く激しい腰のラッシュと共に穴から見える光景を実況し始めていたのだが、突如凄まじい絶叫と共に白目を剥きつつ、泡を吹いて背中から勢いよく倒れた。

 

「あばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばばば!!」

 

「み、峰田君!?」

 

「何だ!? 白目を剥くほどスゲェって事か!?」

 

「……ククククククク、フハハハハハハハハハハハハハハハハハ!!」

 

ガクガクと全身痙攣を起こし、まるで毒物でも摂取したかの様な峰田を見て、流石に只事ではないと飯田が心配し、上鳴が穴の向こう側に広がる光景を予想したが、そこへイナゴ怪人2号が壁を蹴り破って男湯に乱入した。その手にはドライアイスが入ったバケツと、ポータブルDVDプレイヤーが握られ、背後には露天風呂のポスターが貼っているのが見えた。

 

「い、イナゴ怪人!?」

 

「ど、どうしてお前が女湯から……って壁の向こうに壁!?」

 

「そうだ、リビドー・スパーキングよ。実は男湯と女湯を隔てる壁は二枚仕掛けになっていてな。そこには人一人が通れる程度の隙間があるのだ。我々はイレイザーヘッドやプッシーキャッツと密かに情報交換を行い、お前達が夕餉にありついている間に罠を仕掛けていたのだ。

エロ怪人の視線の位置に小さな穴を開け、そこからさも女子の露天風呂が見える様に工作し、極度の興奮から注意力が極端に低下したグレープ・チェリーが、トリップギア・ターボの忠告に視線を外した隙を狙い、コレを見せたのだ」

 

そう言いながらイナゴ怪人2号が手にしたポータブルDVDプレイヤーの画面には、何場所かは知らないが、屈強な力士達の取り組みが映し出されている。

 

「え? 何? つまり、どう言う事?」

 

「分からんか? つまり、エロ怪人グレープ・チェリーは、この穴から見せたこの映像を……即ち力士の豊満な乳房を、クリエティの乳房だと思いこんだという事だッ!!」

 

「「「「「「「「「はぁあッ!?」」」」」」」」」」

 

「……そうか。イナゴ怪人1号が此処に居たのは、テレパシーの精神感応で峰田が穴から目を離し、背景と映像をすり替えるタイミングを知る為だったか」

 

「正確には、エロ怪人が目を離す隙を作る為だ。その必要は無かったがな。そして、ゆっくりと全体像を見せた事で、発情により興奮する下半身と、真実を知って絶望する精神の板挟みにあい、心と体の均衡を失ったグレープ・チェリーは、自我の崩壊を選択したのだッ!!」

 

「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」

 

イナゴ怪人2号の言葉に俺以外の男子全員が驚愕し、そして絶句した。特に、密かに期待に胸を膨らませていた連中は、一歩間違えば自分達も峰田と同じ末路を辿っていたのだから、その戦慄は図り知れない。心の中では瀑布の様な冷や汗を流している事だろう。

 

「ち、違う……お、オイラは……オイラ、はぁ……」

 

「ほう……まだ息があったのか。だが、どんな言い訳をしようと、貴様は相撲取りの乳に劣情を催した男ッ! 貴様が背負うのは『ジャパニーズ・スモウレスラー・ファッカー』と言う、永遠に消えぬ血塗られた十字架ッ!! そうして明らかになった貴様の本性は、性別など関係無しに森羅万象を性対象とする『最低最悪の魔王』に他ならないッ!!」

 

「……ち、がう……。オイラは……極めて健全な、男子、高校生……だ……ッ!」

 

「違わないッ!! そして、目を背けるなッ!! 見よ!! 天を衝かんばかりに屹立した、貴様の粗末な分身をッ!! コレが貴様の真実の姿だぁああああああああああああああああああああああああああああ!!」

 

「IYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

峰田は絶望した。男の体に欲情した何よりも明確な証拠として、未だに興奮冷めやらぬ自分の下半身を目にした事で、幼少期から構築していたアイデンティティーが音を立てて崩壊したのだ。

 

「さて、それではハンケツの貴様に、我が王の判決を言い渡す……死だッ!!」

 

「大義の為の犠牲となれ……! オォーーウ、ラァアアアアアアッ!!」

 

「キャアーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ!!」

 

そして、イナゴ怪人1号が峰田を押さえつけ、イナゴ怪人2号が峰田のケツに何かを叩き込むと、峰田のナニカが割れて喰われて砕け散った様な音が聞こえ、うつぶせに倒れる峰田のケツに何かが深々と刺さっていた。

 

「……おい、一体何を刺したんだ?」

 

「マタンゴだ。コイツに感染すれば、最低でも今夜の内はグレープ・チェリーが性犯罪に手を染める事はあるまい。これにて一件落着――うん?」

 

「? ……んんッ!?!?」

 

轟の質問に答えた通り、万が一にも復活されては困るとばかりに、イナゴ怪人達はマタンゴによって峰田を無力化させる算段だったのだが、倒れた峰田の全身からポツポツと生えるモノを見た時、イナゴ怪人を含めた全員が、思わずその場から大きく後ずさった。

何故なら、峰田から生えているモノは明らかにマタンゴ……と言うか、キノコですらない。どう見ても人間の男性器としか思えない卑猥物が、峰田の全身から無数に生えていたのだ。

 

「な、何だコレは!?」

 

「み、峰田の全身から、夥しい数のアレがッ!!」

 

「おい!! どうなってんだよ、コレ!?」

 

「落ち着け! アレは人間の男性器ではない! アレは恐らく……タケリタケだッ!!」

 

「た、タケリタケ!?」

 

「何だ!? つまり、キノコなのか!?」

 

「正確には、テングタケの仲間にヒポミケス属の菌が寄生する事で起こる自然現象だ。恐らく、苗床であるグレープ・チェリーの持つ変態パワーがマタンゴを逆に侵食し、科学では説明のつかない超反応が起こったに違いないッ!!」

 

「「「マジでかッ!?」」」

 

なるほど。つまり、峰田の想像を遙かに超えた超絶的な変態の才能。或いは性的興奮から分泌された脳内麻薬。念願のヤオヨロッパイ(偽)を見た事による多幸感。そして、妄想が現実になった昂ぶりからもたらされた、その先に待つ勝利の幻。

これらの内どれか――或いは全てとマタンゴが混ざり合い、化学反応を起こしスパーク……。その結果、我々にとって余り有り難くない事が起こり、峰田がホラー映画に出てきても遜色の無いオゾマシイ怪物に変態したと言う事か。変態だけに。

 

素晴らしい。何処からどう見ても非の打ち所が無く、別の可能性を疑う余地の無い、正に完全無欠の推測だ。褒めてつかわす。

 

「ウホウホウホウホウホウホウホウホ♪」

 

「ウホウホウホウホウホウホウホウホ♪」

 

「な、何だ?」

 

「何かの……歌?」

 

「ホーーーーーーーーーーーーーーーーーーー♪」

 

「モーーーーーーーーーーーーーーーーーーー♪」

 

「ホォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー♪」

 

「「「「「「「モォーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー♪」」」」」」」

 

「「「「「「「「「「うわぁああああああああああああああああああああああッ!?」」」」」」」」」

 

峰田の体がタケリタケの形をしたマタンゴに覆い隠され、筆舌に尽くしがたい化物へ成り果てる中、突如民族音楽の様な独特かつ軽快な音楽が流れ、イナゴ怪人達とマタンゴ達が歌いながら男湯に雪崩れ込んだ。

イナゴ怪人達はともかくとして、マタンゴ達が異様にきびきびとした動きで、ビシッと軍隊の如く整列して俺達を取り囲む姿は、初めてマタンゴを見た者達に異様に強烈なインパクトを与えている事だろう。

 

「グレープ・チェリー♪ グレープ・チェリー♪ ドスケベのゲス野郎♪」

 

「グレープ・チェリー♪ そう、犯罪者♪ いやらしくて、キ・モ・イ♪」

 

「よし、決めた♪ コイツを♪ マランゴにしちゃおう♪」

 

「でも、心配しないで♪」

 

「「「グレープ・チェリーは無事さ♪」」」

 

「「「「「「「「「グレープ・チェリーは無事さ♪」」」」」」」」」

 

「「「いや、どう見ても無事には見えねぇよ!!」」」

 

「マランゴって……」

 

「我々のセンスだ。良いだろう?」

 

いや、切島達のツッコミはごもっともである。感染者は最終的に解放される事は知らされているが、どう見ても今の峰田は無事とは言い難い。そして、確かにイナゴ怪人のネーミングセンスは、相も変わらず嫌な方向に抜群だ。

そんな我々の抗議や疑問など知らんとばかりに、イナゴ怪人2号~スーパー1までの8人のイナゴ怪人とマタンゴの群れはノリノリで歌い、全力で踊り狂っている。中には温泉に飛び込み、シンクロナイズドスイミングの如きパフォーマンスを見せる個体さえいる。

 

「本当はそれでも♪ エロ怪人は変わる♪」

 

「マランゴの魔力で♪」

 

「性対象、書き換える♪」

 

「変態の♪ 嫌なヤツ♪」

 

「世界中の女子に♪ 愛される♪ ホモになれ♪」

 

「ホモ嫌う女子は♪」

 

「いーーーーー♪」

 

「なーーーーー♪」

 

「「「「「「「「「いぃーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーッ♪」」」」」」」」」

 

「フォオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオオッ!!」

 

そして、世にも奇妙な怪人ダンスが最高潮に達した時、峰田を取り込んで完全なる怪人体へと成長したマランゴは、野獣の如き産声を上げた。

その姿は周囲で踊っているマタンゴ達とは明らかに異質であり、頭部と両腕が巨大なタケリタケと化したキングギドラの如き威容は、マランゴの名に恥じぬ、余りにもご立派過ぎる魔物様であった。

 

「祝え!! 全人類の性癖を受け継ぎ、過去と未来に汚名をしろ示す変態の王者! その名も変態ブドウ・マランゴアーマー! 正に、新たな性癖に目覚めた瞬間である!!」

 

「「「「「「「「「「………」」」」」」」」」」

 

超祝いたくねぇ。

 

誰もがマランゴの一度見たら忘れられない衝撃的なビジュアルに圧倒される中、イナゴ怪人1号がスクロールの様に見えるトイレットペーパーを片手に訳の分からない事を宣っている間に、イナゴ怪人1号を除いた8人のイナゴ怪人とマタンゴの群れは、浴場から駆け足で立ち去った。

尚、峰田を体内に取り込んでいたマランゴだが、立ち去る前にちゃんと峰田を体内から解放しており、マランゴの苗床となった峰田はどう良く見積もっても性犯罪者としか思えない恍惚の笑みを浮かべている。

 

「ブラボォー!! おお、ブラボォーーーーーッ!! どうだ、お前達! マタンゴは中々どうして愉快な怪人であろう!!」

 

「……まるで練習したみたいだったな」

 

「何と言うか……全て分かっていた様な……」

 

「何を馬鹿な事を……当たり前ではないかッ!!」

 

「「「「「「「「「「……はあッ!?」」」」」」」」」」

 

魔王誕生の儀式としか思えない、ミュージカルチックな怪人ダンスの感想を何とか絞り出したらしい常闇と障子に対し、イナゴ怪人1号のさも当然と言わんばかりの堂々とした回答は、唯でさえ混沌としていた浴場の空気を更なる混乱へと導いた。

 

「この変態がこれまでに犯してきた悪行の数々を思い出してみろ!! どさくさに紛れて女の乳を揉み! 全世界に配信される公の場で女の尻にひっついて腰を振り! 正義を理由にパンティを盗み! ゾンビ化にかこつけて手当たり次第に女体を貪り! 正当性を盾に変態奥義をかました挙げ句! 反省の色も無く白昼堂々ピッキング用品を購入する! 冷静にならずとも、この男がこの合宿で何もやらかさない訳がないではないかッ!!」

 

「嫌な信頼だなぁ、オイ」

 

「しかし、その通りではないか!! 見ろ、この表情をッ!! この変態はもはや人間ではないッ!! 人間の皮を被った男性器だッ!!」

 

「それって単に剥けてないだけじゃ……」

 

「てゆーか、さっきまでの姿が正にそれだし」

 

砂藤の言う通り、見方を変えればマランゴは峰田という人間の皮を剥いた事で生まれた人成らざる怪物。もしくは、峰田が心の底から絶望したことで生まれた、峰田の心に巣くう魔物(ファントム)と解釈する事も出来るだろう。何せ、他の感染者から成長したマタンゴは、あんな姿形で生まれたりしなかったのだから。

 

「……で、『ホモになれ』とか歌っていたが、峰田をどうするつもりなんだ?」

 

「我が王よ。私は以前、この変態が捧げた忠誠を拒絶したが、それが大きな間違いだと言う事に。そして、我々は一つ大きな勘違いをしていた事に気付いたのだ。そう、『今ならまだこの変態をまともにする事が出来る』……とな」

 

「ほう……続けろ」

 

「御意。ハッキリと言う。ソレは絶対に不可能だ。この変態をまともにするなど、普通を賢くするよりも遙かに難しい。そもそも天才とは人類にとって有益なモノであるとは限らず、才能そのものに善悪という概念は存在しない」

 

「……つまり何か? 峰田はエロの天才だと?」

 

「然り! 現にこの変態は小学生の頃からレンタルビデオ店の18禁コーナーに入り浸り、辞書を引いて官能小説を読みふける様な天性の才能を持った筋金入りの変態だと、行きのバスで自ら告白したではないか!! その数万年に一人と言うほどの人知を遙かに超えた変態の才能は、中学時代に渾名は『マスター』か『ベーション』かで論争が起こり、自宅は近隣住民から『エロ本図書館』と呼ばれ、親が夜な夜な『頼むから、下ネタやめてくれ』と枕を濡らす始末だ!!」

 

「……え? それ、マジ? マジの話?」

 

「全て真実だ! このままでは近い将来、この変態が『最低最悪の魔王』となる事は目に見えている! そうなれば、決して無辜の民は幸福にはならないだろう! それは知恵で武装されたゴジラを野に放つも同義だからだ!!」

 

「……まあ、峰田が除籍されないおおよその理由はソレか、もしくは同じ様な不穏分子を、一気に殲滅する手段として確保しているかのどちらかだろうな。今の状態で除籍してもそうなりそうだし」

 

「然り! 大いに然りだ! ならば、ちょっとしたネジの回し加減で、この変態の才能を世界と人類の為に使う様に仕向けるのが、この変態と同級生になった我々が成すべき使命なのではないだろうかッ!!」

 

いや、その方法がホモ属性を付与するってのはどうなのよ? 峰田が今よりも手に負えない変態に進化するだけの様な気もするが……いや、これから峰田を女体に一切反応しない体に洗脳……もとい改造すると言う事か?

 

「ま、待て! 確かに峰田君は異常な性欲の持ち主と言えるが、幾ら何でも男色のヒーローなど余りにも不毛過ぎるんじゃないか!?」

 

「いや、ツッコミ所そこ!?」

 

「安心しろ、トリップギア・ターボ。最終的にこの変態は、古代ギリシアで最強と謳われた『神聖隊【ヒエロス・ロコス】』を再現した、栄えある『ショッカー神聖隊』の将軍に任命する予定だ」

 

「ヒエロス・ロコス?」

 

「何だソレ?」

 

「簡単に言えば、男同士の番の軍だ」

 

「「「男同士の番の軍!?」」」

 

「そして! 希望者には我が王の御力によって改造手術を施し! 体内に子宮を生成する事で、男だけでも繁栄できる新世界を提供すれば万事解決だッ!!」

 

何一つとして解決してねぇよ馬鹿。てゆーか、俺はそんな目的の為にリカバリーガールの所で勉強している訳じゃ無いんだケド。

 

「しかし、『ショッカー神聖隊』と言うが、そんな軍に匹敵する程の数のホモを集められるものなのか?」

 

「史実として、超常黎明期に実在したある男色のヒーローが、ヒーロー活動の度に刑務所を脱獄し、捕獲した犯罪者と共に刑務所に戻る事を繰り返した結果、自分だけのハーレムを作る事に成功したと聞くぞ?」

 

「……つまり、峰田自身に集めさせる訳か」

 

「そうだ。この変態がハーレムを作るには、これ位しか方法はあるまい。更には、犯罪者の社会復帰にも役立つと言う側面も持っている。まあ、駄目なら駄目で、強力な社会的影響力を持った男色ヒーローを大量に世に送り出す事で世論を動かす。ランキング上位を男色の男性ヒーローで埋め尽くせば、流石に国も無視する事は出来んだろう」

 

ランキング上位のヒーローが全員ホモとか、もう悪夢じゃねぇか。そして、そうなったが最後、グレイトフルヒーローの絶対条件が「雄英高校を卒業する事」ではなく、「ホモである事」になるだろう。考えたくも無いが。

 

「……と言う訳で、このイナゴ怪人1号が立案する『偉大なる計画』の一つである『ショッカー神聖隊』を発足する為の“第一の計画”『もぎもぎプリズナー計画』と平行し、“第二の計画”である『消えぬ炎の薔薇男児計画』を――」

 

「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

俺は瞬時に怪人バッタ男へと変身し、イナゴ怪人1号を屠り去った。そして、改めて風呂に入って体を温め直した後、破壊された壁をモーフィングパワーで直してから、皆と一緒に大部屋に戻った。

 

 

○○○

 

 

翌日、林間合宿二日目。B組の面々は朝早くからプッシーキャッツの合宿所前に集合していた。昨日の事もあって集合時間はA組よりも遅いが、それでもまだ朝日が昇ったばかりで、十分に早朝と言える時間帯だ。

生徒の中には何時もなら寝ている時間である者も多くいるため、眠気からあくびの一つでも出る所なのだが……そんな彼等の眠気を一気に吹き飛ばす存在がイナゴ怪人と共に、彼等の担任のすぐ横に立っていた。

 

「えっと……。“個性”を伸ばす……?」

 

「そうだ。A組はもうやってる。早く行くぞ!」

 

「フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォ……」

 

いや、訓練の前に横にいるキノコ怪人について説明してくれ。

 

B組の誰もがそう思ったが、このキノコ怪人によって全滅の憂き目に遭った彼等としては「このキノコ怪人とは、あまり関わり合いになりたくない」と言うのもまた本音である。

 

「前期はA組が色々と目立っていたが、後期は我々のB組の番だ。いいか? A組ではなく我々だ!」

 

「フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォ……」

 

いや、無理だろ。

 

生徒想いなブラドキングの言葉を聞いたB組の中には、自分達の不甲斐なさに涙する者もいるにはいるが、大半が「この光景を見たらどう考えても、誰だって俺達よりそこの怪人の方に目が行くだろ」と思っている。

 

「その……突然“個性”を伸ばすと言っても、21名21通りの“個性”があるし……何をどう伸ばすのか分かんないんスけど……」

 

「ぐ、具体性が欲しいな……」

 

「フォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォッフォ……」

 

ブラドキングと共に自分達に同行する怪人二人を極力視界に収めない様にしつつ、これから始まる訓練の内容について、ブラドキングに訪ねてみる取蔭と鎌切。

イナゴ怪人は兎も角、キノコ怪人が近くに居る事もあって、ブラドキングと生徒達の距離が少々遠いが、ブラドキングは特に気にした様子も無く、今回の林間合宿で彼等に課す訓練の目的を話し始めた。

 

「筋繊維は酷使する事によって壊れ、太く強くなる。“個性”も同じだ。使い続ければ強くなり、でなければ衰える! すなわち、やるべき事は一つ! 限・界・突・破ぁ~~~~ッ!!」

 

「「「「「「「「「「……ええ~~~~~~~~~~ッ!?」」」」」」」」」」

 

朝日が差し込む森を抜けたその先で、B組の面々が見たものとはッ!?




キャラクタァ~紹介&解説

呉島新
 今回は割と空気だった怪人主人公。珍しくイナゴ怪人の作戦に賛同したが、あくまで「変態ブドウを懲らしめる事」が目的であり、『ショッカー神聖隊』なる軍団の結成までは賛同していない。そして、只でさえアレな友人の父親の精神が、これ以上おかしくなるのは流石に許容する事は出来なかった。
 ちなみに、シンさんはプッシーキャッツの虎が元女性で、タイに行って男になった事を知らない。まあ、超人社会なら完全なる性転換は元より、男同士や女同士で繁殖する事も可能だとは思う。法的にどうなのかは知らんが。

爆豪勝己
 原作やアニメを見て、「どうして死柄木はコイツを欲しがったのか?」と言う疑問を色々と考えてみた結果、最終的に作者は「死柄木と似ている部分がある」事が、死柄木がコイツをスカウトした最大の理由なのではないかと言う結論に達した。
 もっとも、原作や『すまっしゅ!!』での絡みを見れば分かる様に、“子供大人”と“大人子供”で上手くいくかと言われば……ねぇ?

峰田実
 まさかの強化フォーム登場。そして、変態ブドウとして更なる高みへと至る第一歩を踏み外す(間違いに非ず)事となったが、このままだとコイツの最終奥義は「奈良づくし」となり、2019年1月現在行われている、原作のA組とB組の合同演習編で物間がありとあらゆる意味で死ぬ事になるだろう。
 尚、原作と違って「もぎもぎで壁を登る」のではなく、「壁に空いた穴を覗く」と言う展開は、原作7巻における女子更衣室を覗く回のオマージュ。

円場硬成
 B組で唯一マタンゴに感染しなかった為、他のB組よりも早く夕食をとる事になったが、キノコを見ると凄まじいレベルの拒絶反応が出るようになってしまった。まあ、それ自体は彼に限った話では無いのだが……。
 原作8巻をよく見ると、B組もA組と共に夕食をとっている様だが、彼等は原作でどんな試練をどんな風にくぐり抜けて、一日目の夕食にありついたのだろうか?

出水洸汰
 全てにおいて難しい少年。原作ではA組の女子の裸をもろに見てしまった、ヒロアカ屈指のラッキースケベボーイだが、この世界ではイナゴ怪人達が変態ブドウを再起不能(意味深)にする為の作戦を実行していた為、出番が無かった。しかし、どうやってコイツは峰田が壁を登る場所をピンポイントで把握する事が出来たのか? 謎だ。
 作中では描写されていないが、デク君は彼の事が気になっていたので、彼がこうなった理由をマンダレイ達から後でしっかりと聞いていたりする。

イナゴ怪人(1号~スーパー1)
 本格的にショッカーの怪人みたいに、変な計画を立てて行動する様になった怪人軍団。1号&2号は下記の『もぎもぎプリズナー計画』に専念しており、残りはマタンゴ達と一緒に『チャーリーとチョコレート工場』のウンパルンパダンス(ver.オーガスタス・グループ)の替え歌を歌って踊った。
 A組の女子と同じ肌の色と、同じ位のサイズの乳を持った力士や男性プロレスラーの映像を探し出すなど、地道且つ入念な準備を行っていたが、流石に下記のマランゴの誕生は完全に想定外であり、全て計算通りと言う訳では無い。

マタンゴ(無数)
 イナゴ怪人がショッカーの怪人なら、コイツ等はショッカーの戦闘員と言った所。今回登場したのは群れの一部であり、全体の半分にも満たない。出番は少ないが、イナゴ怪人達と共に『チャーリーとチョコレート工場』のウンパルンパダンス(ver.オーガスタス・グループ)を、シンクロも含めて完璧に踊り切った。
 男湯と女湯の壁の隙間にマタンゴ達がみっちりと密集して足場を作り、壁の上から踊って女湯からもマタンゴダンスが見える様にするアイディアもあったが、肝心要のマランゴの誕生が女湯から見えず、面白さが半減する為にボツにした。芦戸あたりはマタンゴダンスだけでもウケそうではあったが。

マランゴ
 マタンゴが峰田に感染した結果、峰田のエロパワーと反応して頭と両腕が巨大なタケリタケと化した……と、イナゴ怪人1号が説明し、シンさんも納得していたが、実はコレは環境に適応した擬態に近く、この変化は苗床となった峰田よりも、15本のタケリタケ(意味深)がひしめく男湯と言う環境による所が大きい。つまり、峰田以外に感染しても生まれた可能性が高かったのだが……コレもある意味、峰田が築いてきた信頼がなせる業と言えるだろう。
 要するに「姿形が違うだけのマタンゴ」なのだが、その余りにもアレ過ぎる見た目から固有名詞が与えられる事になった希有な存在。決して『真・女神転生』のマーラ様でも、『覚悟のススメ』の戦術鬼でも無い。



ショッカー神聖隊
 イナゴ怪人1号が立案した『偉大なる計画』の一つであり、シンさんのヒーロー事務所『秘密結社ショッカー(仮)』における上級戦闘員の集団。古代ギリシアで最強と謳われた『神聖隊』を再現したもので、希望者は改造手術によって「子孫繁栄が可能になる」と言う豪華な特典がついてくる。
 世間から迫害される側にいる事が多いシンさんとしては、犯罪者の社会復帰以外にも、迫害される傾向が強い性的マイノリティの救済と言う側面もある為、「発足そのものは有りかも知れない」と考えている。
 流石に殺人未遂29件に加え、殺人を3件も犯しているマグネが所属する事は難しいだろうが、マグネの友達は救われるかも知れない。ちなみにマグネは某潔癖症の若頭がやられた為、この世界では生存する予定。だから、マグネの友達がマグネの遺品である磁石型の武器を膝でへし折る様な展開は無い。多分。

???「貴方にぃい……忠誠をッ、誓ぉおおおおおおおおおおおおおおおおおッ!!」

もぎもぎプリズナー計画
 変態ブドウを有効に活用する為、イナゴ怪人1号が超常黎明期に存在したヒーローを参考にして立案した計画。「温故知新」或いは「毒をもって毒を制す」と言えば聞こえは良いが、日本にとっては「犯罪の解決に犯罪者を使用する」と言う、法治国家として恥部としか言いようがない黒歴史である。ある意味『Mr.アンチェイン』と言える凄いヒーローではあったのだが。
 元ネタは『ワンパンマン』の「ぷりぷりプリズナー」……と言うか、まんまソレ。尚、この世界の『特殊拘置所:タルタロス』は、コイツのデータを参考にして造られている。テクノロジーは兎も角として、作中の設定を考えると、ワンパンマンの世界は“ヒロアカの様な超人社会に至るまでの過渡期”として見る事も出来る様な気がする。

消えぬ炎の薔薇男児計画
 作中で語られた通り、主に世論を動かす為の計画。誰をどうするのかは、お察しの通り。ちなみに“第三の計画”も存在し、名前は『紅白の薔薇美人計画』だとか。仮に20年ほど前にこの計画が実行されていれば、轟家における数々の悲劇は起こらなかった代わりに、冷さんは『獣国の百合女』になっていただろう。
 元ネタは『マンガで分かるFGO』……だけではなく、「轟をモーフィングパワーで女に改造して、シンさんの子供を産ませる」と言う事を、エンデヴァーが考え付くと言う感想から生まれた一種の読者サービス.

出久「これって、最終的にあっちゃんもその……そうなるの?」
イナゴ怪人「デクよ。正統派アメコミヒーロー映画の様な連中なら兎も角、色物サメ映画の様な我が王が、ヒーローチャートで上位になれると思うか?」
シンさん「………」



後書き

今回はここまで。本来はもう何話かまとめて投稿する予定だったのですが、想定していたよりも時間がかかったので、完成していた話を先に投稿する事にしました。長くとも二週間くらいで次話を投稿できると思いますので、もう少しお待ち下さい。

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