怪人バッタ男 THE FIRST   作:トライアルドーパント

44 / 70
二話連続投稿の二話目はOVAの『勇学園編』。合計で21000字超えの大ボリュームで、読みごたえのある物語をお楽しみ下さい。

タイトルの元ネタは『ビルド』の「ハザードは止まらない」から。それと活動報告にてアンケートを取っていますので、宜しければ参加して下さい。


第31話 バイオハザードは止まらない

変態仮面の再教育を終えた峰田が学校に戻ってきた。一応、先日の件は峰田なりに反省しているらしく、しばらく峰田は口にギャグボールを咥えて「少し賢い珍獣」として過ごしていた。

稲荷寿司がトラウマになり、女子達から針の筵にされているにも関わらず学校に居続ける厚かましさは、何処でも自分の居場所を作る逞しさと強かさを感じざるを得ない。

 

そして、残る一学期のイベントは期末テストのみ……と言いたい所だが、実は授業参観が再来週にあるらしく、相澤先生から「保護者への手紙」と言う地味に難易度の高い宿題を課せられた。

授業参観当日までに何とか完成させなければならない課題にクラスの皆は大なり小なり苦戦しており、俺も何気に頭を抱えている。

 

それから数日後のヒーロー基礎学。何の前触れも事前連絡も無く、見知らぬ制服を着た4人の学生が相澤先生と共に教室に入ってきた。

 

「いきなりだが、本日のヒーロー実習に勇学園ヒーロー科の生徒4名が特別に参加する事になった」

 

いや、本当にいきなりですね。クラスの大半は「新キャラ、キター!!」とかメタい事を言っているが、その中の一人である眼鏡美人を見て、正常(?)に戻った峰田は涙を流して興奮し、上鳴はスマホ片手に連絡先を聞き出そうとしている。

流石はエロ怪人とナンパ怪人の異名を取る男達であるが、この二人に関しては雄英体育祭において存分に醜態を晒し(峰田は予選でのセクハラ。上鳴は本戦におけるナンパ&瞬殺)、その本性がテレビを通じて日本所か世界中に流されている所為か、眼鏡美人はそんな二人を見て明らかにドン引きしている。

 

「……では、自己紹介を」

 

「は、はい。実習に参加させていただく、勇学園ヒーロー科。赤外可視子です」

 

「同じく、多弾打弾です。よろしくお願いします」

 

「藤見……」

 

「……ん? もう一人いる筈だが……」

 

「………」

 

「ケロ!?」

 

「おう!?」

 

4人の内3人の自己紹介が終わり、ずっと眼鏡美人こと赤外を盾にして顔を隠していた謎の女子の顔を見た時、俺と梅雨ちゃんは思わず声を上げた。

何故なら、その最後の一人の正体は、梅雨ちゃんの中学時代からの友達にして、先日俺も知り合った羽生子ちゃんだったからだ。

 

「「羽生子ちゃん!?」」

 

「梅雨ちゃん! シンちゃん!」

 

「え? 梅雨ちゃんとシン君の知り合い?」

 

「……何だろう。何かおかしなモノを感じる。ネイチャー的に」

 

だろうな。普通ならヘビはカエルやバッタを食うものだが、それを俺達に当てはめた場合、明らかに俺が最上位の捕食者に見えるだろう。ちなみに俺はキャンプでヘビやカエルを捕らえて喰った事がある。ヒンナヒンナ。

 

「チッ。万偶数、雄英の奴なんかと仲良くしてんじゃねーよ」

 

「オイ! 今なんっつった!? 雄英以下のクソ学生があッ!!」

 

「ちょ! かっちゃん、落ち着いて……」

 

「黙ってろや! クソナードォオオッ!!」

 

「いや、お前も黙れ」

 

「ぐっ……」

 

うむ、流石は勝己だ。敵を作る才能に関しては他の追随を許さない。何処からどう見ても、ただのチンピラにしか見えないぜ。まあ、そんな勝己も相澤先生の一言によって黙る辺り、順調に調教が進んでいるようだが。

 

「それじゃ、全員コスチュームに着替えてグラウンドΩに集合。飯田、勇学園の生徒を案内してやれ」

 

「承知しました!」

 

何はともあれ、雄英に入学して初となる他校のヒーロー科との合同実習だ。飯田は元より俺も少なからず張り切っているのだが……如何せん、勝己と藤見は完全にお互いを敵として認識してしまっているので、二人の間でギスギス感とバチバチ感が半端ない。具体的には――。

 

「不良上がりみたいな奴が総合2位とはぁ、雄英も地に落ちたもんだぁ……」

 

「んだと、この陰気野郎が!」

 

「不良上がりみたいじゃなくて、普通にチンピラなんだけどな」

 

「あ゛あ゛あ゛ッ!?」

 

「と、止めろよ、緑谷……」

 

「無理だよぉ…」

 

――こんな感じ。

 

お互いに闘争心と敵愾心を丸出しにして言い争い、そこに俺が燃料を投下して争いを更に激化させる。

勝己にハッキリとモノを言うキャラは貴重なので、俺はその光景をむしろ楽しむ事にしたのだが、多くは遠巻きに見守る事しか出来ず、瀬呂、口田、峰田、出久の4人に至ってはあからさまに恐れ慄いている。

 

「気に入らねぇんだよぉ……雄英に入ったってだけで、お前みたいなのが世間にちやほやされてんのはぁ……」

 

「喧嘩売ってんなら、言い値で買ってやんよぉ!!」

 

「この実習でぇ、俺達の方が優れてるって事を証明してやるぅ……」

 

「かかってこいやぁああああああああああああああああッ!!」

 

「いい加減にしないか、爆豪君ッ!」

 

「ごめんなさい! 藤見君は口が悪いけど、決して悪い人ではないんです。むしろ、今回の事は楽しみにしてて……」

 

「こちらこそ済まない。もっとも、此方は悪い人間じゃないと言えないのが何とも……」

 

「確かに(笑)」

 

「んだと! ゴルァア゛ア゛ア゛ッ゛!!」

 

おお、怖い怖い。勝己の怒りのボルテージが際限なく上がり、次のヒーロー実習の内容次第ではゲリラ豪雨並の血の雨が降るだろう。

 

しかし、俺もそろそろちゃんと着替えなければならんな。テキパキとライダースーツを纏い、グローブを装着してからブーツを履く。そして赤いマフラーを巻いた後に“個性”を発動させてフルフェイスのヘルメットを装着する。

かくして、何時も通りに『強化服・弐式』に身を包み、グラウンドΩに向かおうと思った時、先程まで勝己とメンチを切りまくっていた藤見が呆然とした顔で此方を見ていた。

 

「……何だ?」

 

「だッ! だだだだだだッ!」

 

「?」

 

何か言いたいことがあるんだろうかと思って声を掛けてみれば、藤見は激しくどもりながら大急ぎでその場を立ち去っていった。

 

「むっ! 藤見君! 俺がグラウンドΩに案内しよう! 呉島君、多弾君の事を頼めるか?」

 

「ああ、良いケド」

 

そんな訳で、コスチュームを装着する手間の関係から一番遅かった多弾と、お互いの学校のヒーロー科の授業内容なんかを軽く話しながらグラウンドΩに向かうと、俺達以外の全員が揃っていた。

何やら藤見が殺気だった目で此方を見ているが、先程の教室での発言を鑑みるに、雄英生である俺の事を余り良く思っていないと思われるが……。

 

「よし、全員集まったな。今日のヒーロー実習を担当するのは、俺ともう一人……」

 

「私がぁああああああ! スペシャルゲストの様な感じでぇええ……来たッ!!」

 

「お、オールマイトぉ!!」

 

「本物ッ!!」

 

「凄い迫力ッ!!」

 

「雄英が羨ましい……!!」

 

他校との合同実習と言う事もあってか、何時もよりも派手な登場をしたオールマイトに、勇学園の4人は目を輝かせていた。

やはり、№1ヒーローにして“平和の象徴”と謳われるオールマイトは、彼等にとっても憧れるモノがあるらしい。

 

「さて、今回の実習だが、全員参加でサバイバル訓練に挑戦して貰う!」

 

「サバイバル訓練?」

 

「バトルロイヤルみたいなモンか?」

 

「状況を説明しよう。生徒達は4~5人で一組。全6チームに別れ、こちらが指定した任意ポイントから訓練を始めてもらう。訓練の目的はただ一つ……『生き残る事』だ。他チームと連携しようが戦おうが構わない! 兎に角、最後まで生き残ったチームの勝利となる!」

 

「他チームとの戦闘に突入した際、この確保テープを相手に巻きつければ『戦闘不能状態』と見なす事となる。雄英生にはお馴染みのアイテムだな」

 

「それでは早速チーム分けを……」

 

「待て待て待てぇええええええええええええええええええええええええいッ!!」

 

「むっ!? この声は……」

 

「そう! 私はイナゴ怪人2号ッ!!」

 

「イナゴ怪人ブイスリャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「イナゴマンッ!!」

 

「イナゴ怪人エェーーーーーーーーーーーーーーーーーークスッ!!」

 

「アァーーーーーマァーーーーーーーーゾォオーーーーーーーーンッ!!」

 

「い、イナゴ怪人ッ!!」

 

「うわぁ! 本当に出た!」

 

「オールマイトとは別の意味で画風が……」

 

「アレって美味しいのかしら?」

 

「………」

 

そして、他校との合同実習でも気後れすること無く乱入する、鋼メンタルのイナゴ怪人達。もっとも、イナゴ怪人達も先日の雄英体育祭で嫌と言うほど活躍し、これでもかとメディアに露出している所為か、勇学園の面々の驚きは思ったほど大きくは無い。最後の羽生子ちゃんの発言は無視だ。

 

「まあ、そう来ると思ってイナゴ怪人を入れたチーム分けをしてるんだけどね」

 

「しかし、イナゴ怪人は呉島君の味方をするのではないですか?」

 

「いや、俺が『他の奴の言う事を聞け』と言えば、命令権は俺以外に移る。それにテレパシーを使った、イナゴ怪人との五感のリンクも使わない。それでどうだ?」

 

「う~む、確かにそれなら一応は全チームがフェアになるか? しかし、それだと今度は呉島君にハンデが……」

 

「まあ、呉島ならそれ位のハンデがあっても充分だろ。さあ、チーム分けを発表するぞ」

 

……うん。割と俺の事がおざなりな気がするが、それも俺を評価しての事だと思っておこう。そして、イナゴ怪人達を加えてのチーム分けは――。

 

Aチームが出久、麗日、梅雨ちゃん、芦戸、イナゴ怪人V3。

 

Bチームが勝己、切島、八百万、障子、イナゴ怪人アマゾン。

 

Cチームが轟、口田、葉隠、尾白、イナゴマン。

 

Dチームが飯田、常闇、瀬呂、砂藤、イナゴ怪人2号。

 

Eチームが峰田、耳郎、上鳴、青山、イナゴ怪人X。

 

Fチームが藤見、赤外、多弾、羽生子ちゃん、そして俺だ。

 

「全チーム指定したポイントで待機。5分後に合図なしで訓練を開始する。

 

「みんな生き残れよ?」

 

「「「「「「「「「「はい!」」」」」」」」」」」

 

まあ、兎にも角にも訓練開始だ。コミュニケーションにかなり大きな不安があるものの、勇学園の皆と仲良くやって上手いこと生き残りたいものである。

 

 

○○○

 

 

Fチームが所定の位置について作戦会議を行っている時、勇学園の藤見露召呂は不機嫌な様子を隠そうともせず、その心には嵐がこれでもかと吹き荒れていた。

 

「私としては、序盤は身を潜めて状況が動き次第、臨機応変に対応するのが一番だと思うのですが……呉島さんはどう思いますか?」

 

「俺もしばらくは身を隠して静観するのが一番だと思う。少なくとも勝己は他のチームメイトが止めたとしても、それらを無視して必ず攻撃に出る。最優先ターゲットは確実にこのチームだろうが、見つからなければ手当たり次第に他のチームを襲撃して数を減らしてくれる。勝己には単独でそれが出来るだけの力がある」

 

「確かに体育祭で2位だったけど、そんなに凄い人なの? あの爆豪って人」

 

「体育祭を見ているなら、勝己の“個性”と身体能力の高さは知ってると思うケド、厄介な事に見た目と言動とは裏腹に、妙な所で冷静で頭がキレるんだよ。その上、野性的な勘も鋭いから、初見殺しでもある程度は対応してくる可能性が高い」

 

「それじゃあ、見つからないように逃げ続けた方が良いんじゃ……」

 

「いや、Bチームに障子が居る事を考えると、確実に何時は見つかるだろうからそれは無理だ。だが、勇学園側の“個性”が不明って言うアドバンテージはデカい。上手いこと初手で決める事が出来れば充分に勝ち目はある」

 

「………」

 

チーム全体の作戦会議であるにも関わらず、全く話に入れていない。4人の中でも比較的発言力の強い藤見としては面白くない展開であるが、彼の心が乱れる理由はそれとは全く別の事にあった。

 

「(何!? 何この空間!? 気まずい! すっごく気まずいッ!! 呉島新、通称『怪人バッタ男』……雄英体育祭で俺に希望を見せてくれた最強の怪人! 周りからヒーロー向きだとチヤホヤされてきたであろう連中を真っ向から打ち破り続けたその姿に、俺はシビれたッ、憧れたッ!! 俺はそんなアンタと……アンタと……ッッ。い、言えない! これ以上は、とてもッッ!!!)」

 

仏頂面で「お前は恋する乙女か」とツッコミたくなる様な事を心の中で考える藤見。外見と内面のギャップが凄まじい事この上ないが、彼がこうなるのも無理はない話である。

 

藤見の“個性”は『ゾンビウィルス』。他者をゾンビ化させるウィルスを含んだピンク色のガスを噴射する事が出来ると言うモノで、名前からしてヒーロー向けとは言い難い“個性”だが、何よりその性能に大きな問題があった。

まず、ゾンビ化がガスによる空気感染である為、基本的にゾンビ化させるのに敵味方を選べない。更にゾンビ化した者は噛んだ相手をゾンビ化させる事が出来るのだが、藤見にゾンビを制御する事は出来ず、藤見自身もゾンビに噛まれればゾンビ化してしまうと言う、決して無視できない弱点を抱えているのだ。

 

つまり、“個性”の運用と言う点で見れば、藤見の“個性”は「ヒーローとしてもヴィランとしても使い勝手が悪い“個性”」なのである。それでも彼がヒーロー科を目指したのは、やはりヒーローへの強い憧れがあったからであり、“個性”が身体能力である以上、これから“個性”が成長してゾンビを制御する事が出来る可能性だって充分にあると思っていたからだ。

 

しかし、勇学園ヒーロー科に入学して以降、やはり周囲のクラスメイト達の“個性”と自分の“個性”を比較して考え込んだり落ち込んだりする事は多いし、自分の将来に不安を覚えない日は一日たりとも無かった。もしも、違う“個性”を持って生まれたならばと、神を恨んだ事だってある。

 

そんな中、敵愾心から見始めた雄英体育祭で、藤見は「理不尽を凌駕した男」を見た。

 

一目見てヴィラン向きとしか言いようのない姿と“個性”を持ち、不死身の怪人達を従えながらも周りの罵詈雑言をものともせず、明らかに自身よりヒーロー向きの“個性”を持つ生徒達をちぎっては投げちぎっては投げするその圧倒的過ぎる活躍に、藤見の心はこれ以上無いほどに熱く激しく燃え盛った。

 

「同年代でこれだけ狂えるなら、俺もやらねばなるまいッ!!」

 

そう決意した藤見にとって、今回の雄英との合同実習は正に渡りに船。ある意味ではオールマイトよりも憧れている怪人バッタ男と何とかお近づきになりたいと思って、事前に色々な計画を練っていたのだが、それは自己紹介の段階で失敗してしまった。

まさか、万偶数と知り合いのメロンの様に甘いマスク(笑)の高貴なイケメン(爆)が、お目当ての怪人バッタ男だとは露程も思わなかったのである。

 

これはA組と教師陣以外の雄英体育祭に参加、もしくは観戦していた人間の多くに共通して言える事だが、新が雄英体育祭を開会式から閉会式までずっと怪人の姿でいた事から、新は「普段から怪人として生活している異形系」だと勘違いされており、常日頃からあの恐ろしい姿をしていると思われている事に原因がある。まあ、そのお陰で日常生活において新は平穏が保たれている訳なのだが……。

 

「(訓練開始までまだ時間はある。一言二言交わす位なら充分な時間が! しかし、かと言って赤外みたいな無難なトークスキルも無い俺には、一体何を話せば良いのかが分からないッ!! どうすれば、どうすれば、どうすれば、どうすれば……)」

 

「所で……藤見はどう思うんだ?」

 

「!!(ラッキーチャンス到来ッ!! 作戦会議による意見交換! 実習を経て深まる友情!! つまりこれは……俺と仲良くなりたいと言う遠回しな告白ッ!! ウェルカム・トゥ・ビューティフル・メモリーッッ!!!)」

 

説明しよう! 藤見露召呂は数ある未来への分岐点から正解を導き出す予知能力と、相手の何気ない言葉からその真意を読み取る卓越した洞察力の持ち主である!

 

「ヴェ、ヴェバボォボーバンジレッ!!」

 

しかし、常人離れしたその恐るべき能力に肉体が追いつかず、正確なコミュニケーションが取れなくなってしまうのだ!

 

「えっと……じゃあ、全体的にソッチに任せるわ」

 

「え、ええ。分かったわ」

 

「………」

 

千載一遇の機会を逃し、藤見は見えない巨大な何かに敗北を喫した。

 

 

●●●

 

 

勇学園の面々との作戦会議の結果、取り敢えず序盤は様子見と言う事になり、周囲を見渡せる岩場に身を隠しながら様子を伺う。

すると、しばらくして森の方から大きな爆発が何度も巻き起こり、予想通りに勝己が動き出した事を確信する。

 

「やはり動いたか……」

 

「ええ、貴方の予想通り、単独で他チームに仕掛けに行ったわ」

 

そう話す赤外は“個性”である『赤外線』と、“個性”に合わせて作られたサポートアイテムで戦況を正確に把握しており、俺も様々なモニタリング機能を備えたヘルメットで似たような事が出来るため、今の俺は赤外と背中合わせになって、全体的な戦場の状況把握に努めている。

 

「それにしても凄いわね、そのヘルメット。他にはどんな機能があるの?」

 

「人間より広い視界と赤外線による暗視能力の他には、ズーム機能を持つ複眼『Cアイ』。4キロ四方の音を聞き取る聴覚補助。電波の送受信を行う『超触覚アンテナ』。対ヴィラン用脳波探知機『Oシグナル』を備えている。後は、ガス等の化学兵器が通用しない防毒性くらいだな」

 

「「へぇ~~」」

 

「………(きゃぁああああ! 楽しそーーー! 皆、楽しそーですぞぉーーーー!! 駄目だ! 待ってたら駄目だ! 多少強引でもやるしかない! そう、今すぐにでも行動をッ!!)」

 

羽生子ちゃんと多弾が感心する中、藤見が物凄い勢いで此方を睨んでいるが、やはり俺が赤外と一緒になって作業しているこの状況が面白くないのだろうか。

そうこうしている内に勝己は戦場を駆け回り、その恐るべき戦闘力と小賢しい知恵を駆使してクラスメイトを次々と撃破。最終的にはEチームとDチームを単独で制圧する事に成功していた。

 

「チームに合流したわね。距離100メートル。移動開始」

 

「本当に凄いわね、あの爆豪とか言う人!」

 

「ケッ!」

 

「! こっちに向かってる!」

 

「! よし、打弾ッ! ダダンと行けッ!!」

 

「正直、戦いは苦手なんだけど……」

 

「距離80メートル!」

 

「ひっ! フフフ……」

 

「? おい、どうし……」

 

「そぉうさ、チームの為さぁ! 全員焦土にしてやるよぉおおおおおおおおおおッ!!!」

 

「……いや、流石に焦土はヤバいぞ」

 

「大丈夫よ。あんな事言ってるけど、実際はフラッシュバンだから」

 

キャラ崩壊も甚だしい台詞を吐きながら、体中からミサイルを乱射する多弾にギョッとするが、羽生子ちゃん曰くミサイルの正体はフラッシュバン。つまりは閃光手榴弾と同じであり、光と爆音は凄いが破壊力はそれほどでもないらしい。まあ、それでも火薬が入っているから、至近距離で食らえば普通に燃えるんだけど。

 

そして、多弾のミサイルによる絨毯爆撃が終わると、俺達はBチームに確保テープを巻いて戦闘不能状態にするべく、Bチームがいた場所まで近づいた訳なのだが……。

 

「おかしいわね。生体反応が見当たらないわ」

 

「ま、まさか、逃げられちゃったんじゃ!?」

 

「幾らフラッシュバンとは言え、これだけ広範囲に撃ったんだからそんな事は……」

 

「このあたりで気絶してる筈なんだけど……」

 

「そうなると、考えられるのは待ち伏せだな」

 

羽生子ちゃんの言う通り、少なくとも逃げられるような状況では無かった。それでも姿が見えないとなると、考えられるのは敵が姿を現した所で奇襲を掛ける待ち伏せ。或いはトラップの類いが仕掛けられていると思われるが……。

 

「フン……。それなら本物のミサイルでも打ち込んでやれば良かったなぁ……」

 

「オイ、ゴラァ! いちいち、ムカつく野郎だなぁ!」

 

藤見の台詞に答える形で、勝己の好戦的な物言いが聞こえたかと思うと、周囲に溶け込む様にカラーリングに拘った感じのシートに包まれた、Bチームの面々が姿を現した。イナゴ怪人アマゾンも無事であり、誰一人として欠けていない。

 

「!? あの一瞬で!?」

 

「オイ、テメェ等……覚悟は出来てんだろうなぁ!」

 

「私に任せて!」

 

此処で一気に勝負に出る事を選んだ羽生子ちゃんが前に出ると、羽生子ちゃんの両目が妖しく光る。すると、羽生子ちゃんの“個性”によって体が弛緩したのか、八百万、切島、障子の三人が地面に倒れた。

 

「この隙に攻撃を!」

 

「!! 見て!」

 

絶好のチャンス到来……と言いたい所だが、そうは問屋が卸さない。現に慌てる多弾の指さす方向を見ると、そこには宙を舞う勝己とイナゴ怪人アマゾンの姿があった。

勝己の方は羽生子ちゃんの“個性”によって体が動かないようだが、イナゴ怪人アマゾンは何故か普通に動いている。

 

「弛緩する前に跳躍!?」

 

「たった三秒程度かよ……小せぇ個性だなぁ!!」

 

「馬鹿にすんな……」

 

「ケケーーーッ!!」

 

「チッ。やっぱ俺を狙うか!」

 

「ぶっ潰すッ!」

 

「舐めんなッ!」

 

「藤見、駄目よ!!」

 

「あん?」

 

襲いかかるイナゴ怪人アマゾンのチョップを受け止め、勝己と藤見が激突する直前。赤外の制止する声を疑問に思う間もなく、周囲にピンク色の煙が充満した。

 

「藤見の馬鹿ぁああああああああああああああああ!!」

 

「これは!?」

 

これが藤見の“個性”か。しかし、何だこのガス。流石に仲間が近くにいる状態で使った事を考えると、有毒ガスの類いとは考え辛いが……。

 

「コッ、コココ、コッコ!!」

 

「お! おお……!?」

 

やけにどもった声の藤見に手を引かれ、俺はひとまずその場を立ち去った。そしてガスが届いていない範囲まで走ると藤見が足を止めたので、あのガスの正体と藤見の“個性”について聞く事にした。

 

「おい、アレは何だ? お前の“個性”だって事は分かるが、どんな“個性”なんだ?」

 

「ふぇッ!? ああ……うあ、え、ひ、ふぃあ……」

 

「……ああ、うん。ゆっくりで良いから説明してくれ」

 

それから藤見のたどたどしく難解な説明を何とか租借すると、藤見の“個性”はゾンビウィルスとでも言うべきモノをガスと言う形で散布し、ガスを吸った人間をゾンビに変える事が出来るそうで、ゾンビに噛まれると同じ様にゾンビ化するとの事。

そしてゾンビになった人間は、どんなに攻撃しても全くダメージを受け付けず、攻撃力と凶暴性が増した上に、思考が停止した状態になるらしい。

 

なるほど、つまりは「空気感染する“個性”」か。それなら、あの時に赤外が藤見を止めた理由も、俺があの場に居てもゾンビ化しなかった理由も頷ける。使えば俺のような特殊装備でも無い限り、敵味方関係無く巻き込んでしまうからな。

 

正直、事前に俺に話して貰えれば俺が被っている物と同じフルフェイスマスクを、モーフィングパワーで作る事が出来たのだが、やはり藤見としては雄英生である俺の助力無しで勝ちたかったのだろう。赤外と一緒に行動していた時、こっちを物凄く睨んでたし。

そして、羽生子ちゃんと多弾の“個性”が割れた以上、もはや不意打ちが出来る“個性”持ちは藤見しかいない。つまり、俺抜きでFチームが勝利するには、あの場はああするより他に無かったと言えるだろう。

 

「それで、藤見はあのゾンビ達を操れるのか?」

 

「え!? あぁ……うぅん……ふんん……」

 

「……そうか。それなら効果範囲から察するに、全体の半数以上がお前の手駒になったって事か?」

 

「え!? あぁ……うぅん……ふんん……」

 

「……そのブレスレット、良いセンスだな」

 

「え!? あぁ……うぅん……ふんん……」

 

……イマイチ要領を得ないな。

 

そして、今ふと思った事なのだが、もしかして藤見は怪人バッタ男である俺が怖いのではなかろうか? 雄英生である事に対する敵愾心よりも、俺自身への恐怖が勝っているとすれば、俺と話す時にたどたどしい口調になるのも理解できる。

 

「……取り敢えず、ゾンビ化していない可能性のあるチームの様子を見に行くか?」

 

「え!? あぁ……うぅん……ふんん……(はわわわわ! エライこっちゃぁあああああああああ! 何とか二人っきりになれたは良いモノの、どうとでも取れる様な事言ったせいで始まってもうたで! 嘘の上に嘘を重ねる、ウソバベルの建設があああああああああああ!!)」

 

「………」

 

壊れたラジオの様に同じ事を繰り返す藤見と共に、ゾンビ化した皆が集まっている方向に向かって行くと、小高い岩山の上でゾンビ化した皆を見て戦慄しているAチームとCチームの面々が見えた。

ゾンビ達は藤見によって操る事が出来るらしいので、俺達が襲われる心配は無い。ゾンビによる包囲網が展開されるのを確認しつつ、俺と藤見は二手に分かれてAチームとCチームを挟み撃ちにする。

 

「羽生子ちゃん……」

 

「皆、どうして……」

 

「あのガスを吸った所為だ。完全にゾンビになっちゃってる……!」

 

「その通り。藤見の“個性”によってお前達以外の全員がゾンビ化し、一切の攻撃が無効となった無敵状態になっている」

 

「「「「「「「「あっちゃん/シン君/シンちゃん/呉島!?」」」」」」」」

 

「成る程、そう言う事か」

 

「うむ、げに恐るべき“個性”よ」

 

「そして、ゾンビ達は藤見の意のままに操る事が出来る。そうだろう? 藤見」

 

「(ぴゃあああああああ! もう後戻り出来ん! 上手いこと誤魔化して突っ切るかない!! あああ、でも生きた心地がせん! 全身から変な汗出るわああああああああああ!!)お、おおおおおぉう!! その通りだ! どうよ、俺の“個性”は! 雄英なんぞ大した事――「ガブッ!」オーウ、マイガァアーーーーーーッ!!」

 

「……え?」

 

盛大にどもりながらも、何とか元の口調に戻った藤見だったが、何時の間にか後ろから接近していた勝己ゾンビに襲われて呆気なく倒れてしまい、予想外の光景に俺は思わず唖然とした。

 

「かっちゃん……ゾンビになってもしつこい!」

 

「いやいや、チョット待て! アイツ、ゾンビは操れるって言ってたぞ!? 何で襲われてんだ!?」

 

「嘘だったって事なんじゃねぇのか?」

 

「ほう。王を謀るとは、見上げた根性だ……」

 

「ん? 待てよ。それが嘘だとすると……」

 

「「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」」

 

「うわああああああ!! ……あ?」

 

後ろから聞こえたゾンビの声にヤバイと思って振り返ると、そこには赤外ゾンビの胸を鷲掴みにしてしがみつく峰田ゾンビと、そんな峰田ゾンビを引き剥がそうとする赤外ゾンビの二人がいた。

 

「……フンッ!!」

 

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ッ゛ッ゛!?!?」

 

「あああ、あ~~……」

 

「え? ああ、どういたしまして?」

 

余りにも見苦しいので峰田ゾンビを赤外ゾンビから引っぺがして頭から地面に叩きつけると、赤外ゾンビは俺の手を取って頭を下げた。どうやらゾンビ化して思考が停止しても、ある程度の知性は残っているようである。

 

「あああ、あああああぁ~~」

 

「! 映画と同じだ! 噛まれたらゾンビになるんだ!」

 

しかし、問題は勝己ゾンビに噛まれた藤見がゾンビ化していた事。てっきり、本体である藤見は感染しないと思っていたのだが、どうやら普通に感染するらしい。

 

「呉島! この“個性”の解除方法は!?」

 

「分からん! 教えてくれなかった!」

 

「チッ! 使った本人がアレじゃ、“個性”を解く方法も聞き出せないな……だったら!」

 

俺の言葉を聞いた瞬間、轟が地面を走らせるように氷結を発動してゾンビ達の動きを止める。しかし、ゾンビ化によって各々の攻撃力が増している為に一時しのぎにしかならず、直ぐに氷を砕いて此方に向かってくる。

 

「映画と同じだ! 力が強くなってる!」

 

「……仕方ない。此処から逃げるぞ!」

 

ベルトの横に備えられたスイッチを押して、ベルトのタイフーンから取り込んで圧縮された空気を用いてコスチュームを吹き飛ばすと、すぐさま四本腕に変化しつつ、背中から6本の触手を生やす。

それらを使ってこの場にいるゾンビ化してない者達全員を抱えると、大きくジャンプしてゾンビの包囲網を飛び越え、大急ぎでその場から離れた。ちなみに吹き飛んだヘルメットとコンバーターラングは、俺に追従しているイナゴ怪人V3とイナゴマンが回収していた。

 

「SYAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAAA!!」

 

「! 轟君!」

 

「分かってる!」

 

そうして辿り着いたのは、洞窟のある小高い岩場。先程までいた岩場からそれなりに距離も離れているし、轟が氷結で出入り口を塞いだので、しばらくは安全だろう。ついでに今のうちにコスチュームを着直しておこう。

 

「疲れたー!」

 

「一息つける……」

 

「呉島、あのゾンビ“個性”について、何処まで知ってる?」

 

「……正直、藤見から教えて貰ったことは、お前達がゾンビ達を見て得られた情報と大体同じだ。しかも、本体も自分の“個性”の影響を受けるなんて俺は知らなかった」

 

「そうか……」

 

「だが、ある程度の予想はつく。この手の“個性”は大抵『本体が抗体を持っていてそれを投与しないと解除されない』か、『一定の時間が経つと元に戻る』のどちらかだって父さんから聞いた事がある。本体がゾンビ化した事を考えると、恐らくは後者だ」

 

「……つまり、他の連中のゾンビ化が解けるまで、ゾンビにならずに逃げ続けるしかないって事か」

 

「少なくともガスは晴れてたから、僕達がゾンビになるとすればゾンビに噛まれた時だけだけど……問題は何時まで続くかって事だよね」

 

「でも、本当に危なくなったら、先生たちが止めてくれるよね?」

 

「うんうんうん!」

 

「……どうかな? 能力的には発動系だが、ウィルスなら生物型とも考えられる。生物型は異形系に該当する“個性”だから、相澤先生の“個性”でもゾンビ化は解除出来ないかも知れん」

 

「ちょ、そーゆーフラグ立てるの止めて!!」

 

「そう言えば、デク君。ゾンビ映画の主人公は、どんなやり方でピンチを切り抜けてきたん?」

 

「それが、ゾンビ映画って大体がバッドエンドで……」

 

「ええ!? そうなん!?」

 

「まあ、大抵は世界が崩壊するってオチになるんだよな」

 

「駄目じゃん!!」

 

「後はウィルスが変異して、ゾンビから想像を絶するドエライ化物が生まれるとか……」

 

「「「だから、そーゆーフラグ立てるの止めて!!」」」

 

俺は本当の事を言っただけなんだけどなぁ……。

 

しかし、そんな会話そのものがフラグになったのか、洞窟の外から氷を砕く音が聞こえてきた。ゾンビ達は早くも俺達の居場所を嗅ぎつけてきたらしい。

 

「どうする!? このままじゃ突破されちまう!!」

 

「こうなったら、僕が一気に吹っ飛ばして……」

 

「いや、俺に良い考えがある」

 

「「「「「「「「どんな!?」」」」」」」」

 

「奴等をこの洞窟に閉じ込める」

 

作戦は至って簡単。轟がゾンビ達を氷結で食い止めつつ、俺がひたすらに洞窟を掘り進め、砕いた岩はモーフィングパワーで鋼鉄に変換して洞窟を補強。

出口まで掘り進めた所でゾンビ達を洞窟内に招き入れ、全員が脱出した所ですかさず出口をモーフィングパワーで塞ぐと、大急ぎで入り口も同様に外から塞いでゾンビ達を閉じ込める。つまり、ゾンビ映画と同様にゾンビを隔離してしまうである。

 

「良し。これで後はゾンビ化が解けるのを待つだけだ。そして目安になるのは……」

 

「ああああああ~~~」

 

「常闇のゾンビ化が解けた時だ」

 

そして、この作戦を実行するに当たって問題となったのは常闇ゾンビ。梅雨ちゃんによると常闇の“個性”である『黒影【ダークシャドウ】』は、闇が深くなれば成る程に強力且つ凶暴になるそうで、洞窟内に閉じ込めたらどうなるか分からないとの事。

そこで、常闇ゾンビだけをゾンビの群れから超強力念力で引っこ抜くように回収し、鎖で雁字搦めにして拘束したのだ。

 

「まあ、ゾンビ化が解けたら爆豪あたりが洞窟を掘り進めて脱出するだろ」

 

「ああ、これで終わりだ」

 

「良かったぁ~~」

 

「てゆーか、この場合勝利チームってどうなるんだろ?」

 

「実は、確保テープを巻かれたのはDチームとEチームだけで、俺のFチームとBチームは誰も確保テープが巻かれてない。だから、一応まだ戦闘不能状態とは言えな――」

 

「王よ、危ないッ! ギャァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「「「「「「「「「!?」」」」」」」」」

 

今後の事を考えつつ皆で話し合っている中、突然イナゴマンが俺を押しのけると、胸から一本の黒い腕が生えていた。

 

「………」

 

「お、お前は、イナゴ怪人アマゾ……グワァアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

断末魔の叫びと共に、胸を貫かれていたイナゴマンがイナゴ怪人アマゾンに吸収された。明らかに異質な事態に俺も度肝を抜いたが、それ以上に驚くべきはイナゴ怪人アマゾンの見た目だ。

その体にイナゴ怪人特有の模様が無く、体色は黒一色に染まっており、赤い複眼も不気味な紫色に変色している。

 

「どうした、イナゴ怪人アマゾン!」

 

「ターゲット……確認」

 

片言ではない、短くもハッキリとした口調で言葉を紡いだ瞬間、イナゴ怪人アマゾンは俺にハンマーのように固めた拳を振るい、急所を目がけて正確に攻撃を繰り出した。

その機械のような力強さとスピード、そして攻撃する事への迷いの無さは、明らかに従来のイナゴ怪人アマゾンと異なっている。

 

「何だ!? どうなってる!?」

 

「『静まりなさい、破滅の使いよ! 今すぐに下がるのです!』」

 

「………」

 

「!? 動物を従える口田君の“個性”が通じてない!?」

 

「皆下がって! シン君、息止めて!!」

 

かつて雄英体育祭において、俺からイナゴ怪人アマゾンの支配権を奪って意のままに操った口田が、“個性”を使ってイナゴ怪人アマゾンを抑えようとするが何故か失敗。それを見て、今度は麗日が無酸素空間の作成による酸欠で倒そうと試みるが……。

 

「………」

 

「な、何で!? 何で動けるん!? 昆虫だから!?」

 

「おかしい……何かがおかしい。どうした、イナゴ怪人アマゾンッ! 気が狂ったかッ!!」

 

「………」

 

「無視か。ならば食らえッ!! ローカストチョップッ!! グワァアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

麗日の必殺技も通用せず、俺に執拗に攻撃を加え続けるイナゴ怪人アマゾン。そんなイナゴ怪人アマゾンに背後から攻撃を仕掛けるイナゴ怪人V3だが、呆気なく攻撃を見切られ腕を掴まれると、イナゴ怪人アマゾンが腕を握り潰し、何とその握り潰した腕を取り込み始めた。それを見たイナゴ怪人V3は腕を切り離し、イナゴ怪人アマゾンから距離を取る。

 

「ぐぅうう! 今のは……! 王よ、一つ聞きたい事があるッ!」

 

「何だ、こんな時に!?」

 

「先程腕を潰された際、潰された部分だけで無く、そこから腕を構成するミュータントバッタが瞬く間に死滅していった! 体全体にそれが及ぶ前に腕を切り離したが、感覚的にバッタカビの様なモノの仕業とみえる! 何か心当たりはないか!?」

 

「バッタカビ? そう言えばコイツは勝己達と一緒にゾンビウィルスを食らっていたが、それが原因か!?」

 

「なるほど……コレは仮説だが、イナゴ怪人アマゾンに感染したゾンビウィルスが変異し、イナゴ怪人アマゾンを全く別の存在に変えてしまったのだろう。ソイツはもはやイナゴ怪人アマゾンでは無い。名付けるならば、『イナゴ怪人アマゾンシグマ』だッ!!」

 

解説サンクス。つまり、イナゴ怪人アマゾンはゾンビウィルスによって、アマゾンシグマというバケモンにグレードアップしたと言う事か。まさか、洞窟で立てたフラグを自分で回収する事になるとは、流石に俺も予想外だ。

 

「それじゃ、口田君の“個性”が通用しなかったのも、麗日さんの“個性”が効かなかったのも、ミュータントバッタが死んでるからって事!?」

 

「うむ。そして、その感染力は極めて高く、我々イナゴ怪人では対抗出来ん! 逆に奴の力が増してしまう!!」

 

「それなら俺達が! 緑谷!」

 

「うん!」

 

そして、イナゴ怪人に対して特攻と言える能力を獲得したアマゾンシグマに対抗すべく、尾白と出久が俺に加勢する。しかし、死んだミュータントバッタで肉体が構成されているせいか、攻撃しても直ぐに損傷箇所を再生されてしまい、力が衰える様子が全くない。

それどころか、アマゾンシグマは攻撃直後の隙を逃さず、尾白の尻尾を掴むとヌンチャクの様に振り回しながら出久の方に突進した。

 

「うわぁああああああああああああああああああああ!!」

 

「尾白君! うぐっ! がッ! うわああああああッ!!」

 

「………」

 

こうして、アマゾンシグマは尾白を武器として使用し、尾白を受け止めようとした出久を瞬く間に叩きのめすと、尾白を手放して俺への攻撃を再開した。あくまでも、狙いは俺と言う事か?

 

「普通に攻撃するだけじゃ駄目か……ならッ!」

 

バーニングマッスルフォームに変身し、炎を纏った腕でアマゾンシグマの胸を貫く。しかし、インパクトの直後に肉体を無数のミュータントバッタに変化させ、燃えた部分と接触した部分を切り離してダメージを最小限に抑えると、肉体を再構成して再び襲いかかる。

 

「チッ! 轟! 芦戸! 俺を巻き込んでも構わんから、チャンスと思ったら容赦なく叩き込め!」

 

「で、でもそれじゃ、呉島は!?」

 

「問題ない! このコスチュームの耐久性なら大丈夫だ!」

 

「………」

 

捨て身とも言える作戦だが、このコスチュームなら多分耐えられる。そう判断しての言葉だったのだが、次の瞬間にはアマゾンシグマは肉体の分解と再構築を何度も繰り返し、常に移動しながら俺の攻撃範囲の外、或いは防御力の薄い部分を狙って攻撃を繰り出した。

 

「ガッ!! ぐっ!! やるじゃ、ねぇかッ!! だが!!」

 

「………」

 

「よし。行くぞ、呉島ぁ!!」

 

肉体の特性を利用した擬似的な瞬間移動を駆使するアマゾンシグマに対し、俺が自分を中心にして半球体状に展開した超強力念力の不可視の壁によって逃げ場を奪うと、轟がフルパワーの炎を叩き込む。

そして、紅蓮の炎に包まれる瞬間、超強力念力を解除して俺諸共アマゾンシグマを焼き尽くそうとすると、またしてもアマゾンシグマは予想外の行動に出た。

 

「………」

 

「ガアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!」

 

「何!? うおッ!?」

 

何と、アマゾンシグマは俺を盾に使い、ある程度の質量を数回に分けて移動しつつ攻撃を叩き込んで俺を吹っ飛ばし、そのまま轟にぶつけたのだ。

 

「このぉッ!!」

 

「………」

 

「くっ!! 舐めんじゃ……がぁあああっ!!」

 

その結果、炎の放出が止んで轟の右側に移動して攻撃しようとするアマゾンシグマに、芦戸が溶解液を噴射してその頭を溶かすが、それを意に介する事無くアマゾンシグマは轟に殴りかかる。

それに対して轟は氷結を発動させて氷漬けにしようとするが、頭部を失ったアマゾンシグマの殴撃の嵐によって氷を砕かれて接近を許し、その拳が頬に深々と突き刺さる。

 

「轟! ヒィイッ!!」

 

「チィッ!」

 

「………」

 

そして轟を吹っ飛ばした後に、アマゾンシグマは頭を生やして芦戸を狙ったが、俺が超強力念力を使って芦戸の周り展開した半球体状の障壁によって、その恐るべき鉄拳が阻まれた。

拳が砕けても即座に傷が再生し、無言で芦戸を狙って何度も拳を不可視の壁に叩きつける姿は、アマゾンシグマがイナゴ怪人アマゾンとは違う存在である事を見せつけられている様でゾッとする。

 

「オラァ!!」

 

「………」

 

そして、攻撃に割って入った事で俺に矛先を変えるアマゾンシグマ。本体である俺がどれだけダメージを受けてもアマゾンシグマの肉体が崩れる様子はまるで無く、もはやコイツは俺から完全に独立した存在になっていると言って良いだろう。

元々の高い身体能力が更に強化されている上に、弱点の多くを克服していると来た日には、コイツを倒すのは至難の業と言う他ない。

 

「ど、どうしよう! みんな、やられちゃった!」

 

「むぅ。王が紫の炎を使えば一発で片付くが、その為には『溜め』が要る。その間、誰かが囮になる他ないが、アマゾンシグマの攻撃に耐えられる者など此処には……」

 

「ハーッハッハッハッハッハッ!!」

 

「!! この声は!」

 

「もう、大丈夫! 何故ってぇえええ! 私が来……ブフォエエエエエエエッ!!」

 

学習能力によるものか、それとも戦闘本能に基づくモノなのか、時間経過に伴って厄介度が上がっていくアマゾンシグマに手こずる中、この雄英で最も頼りになるヒーローの笑い声に安堵した刹那、土煙の中からトゥルーフォームのオールマイトが登場した事で空気が止まる。そして――。

 

「「「きゃあああああああああ! 知らない人がゾンビになってるぅうううう!」」」

 

「(しまったああ! ずっとマッスルフォームのままでいたから活動限界がッ!)い、いや、君達! 私はゾンビなんかでは……」

 

「!! お前等! 怪我人を連れて此処から離れろ!! 後は俺が何とかする!!」

 

「わ、分かった!!」

 

「早くぅううううううううううううううう!!」

 

「ケロ……」

 

梅雨ちゃんが不安げな顔で此方を見つつも、麗日、芦戸、葉隠、口田と共に、負傷した尾白、出久、轟の三人を連れて森の奥へと消えていった。これで誰も巻き込むこと無くバーニングマッスルフォームのフルパワーが使えるが、問題は……。

 

「オールマイト! 戦えますか!?」

 

「い、いや、その……少し休めば何分かは……」

 

「なら隠れて休んで下さい!! その間、何とか持ちこたえて――」

 

「……む? 何だ? 何が起こっている?」

 

「おっ! ヤバッ!」

 

オールマイトが戦える様になればアマゾンシグマ打倒も不可能では無いと判断し、オールマイトが戦線に復帰するまでの時間稼ぎを行う俺の耳に、ゾンビ化が解けて正気に戻った常闇の声が聞こえてきた。

その直後、岩場から一際大きな爆発が起こり、無数の小石が辺り一面に降り注ぐと、聞き慣れた怒号が響き渡る。

 

「誰だぁああああああああああ!! 俺をこんなトコに閉じ込めやがったのはよぉおおおおおおおおおッ!!」

 

予想通り、犯人はゾンビ化が解けた勝己だった。洞窟から脱出した勝己は顔面がボコボコになっている藤見を脇に抱えており、その姿はとても正義のヒーローには見えない。

しかし、この状況ではある意味好都合。体育祭の騎馬戦で巨大ローカスト・ホースに使った大技を使って貰い、一撃でアマゾンシグマを燃やし尽くして貰えば一気に片がつく。

 

しかし、その時不思議な事が起こった。

 

「………」

 

「……え?」

 

突然、アマゾンシグマが攻撃を止めたのだ。無言で猛攻を仕掛けてきた先程の勢いは何処へ行ったのか、拳を下げて直立不動の姿勢を取っている。

 

「え? 何で? どうして?」

 

「シンンンンンンッ!! テメェかぁああああああああああああああああああッ!!」

 

そして、此方の事情を全く知らない勝己が、回転しながらこちらに向かって真っすぐに突っ込んでくる。雄英体育祭の決勝で見せた『榴弾砲着弾【ハウザー・インパクト】』とか言う必殺技の発動体勢だ。

 

「止めて下さい! ゾンビ化はもう解けてる筈ですよ!!」

 

「おおおお、おっぱい、おっぱい、おっぱい、おっぱい……」

 

「いやぁああああああああああああああああああああああ!!」

 

「……ターゲット、確認」

 

そして、峰田がゾンビ化にかこつけた悪質な痴漢を行っている事が丸わかりな八百万の悲鳴が洞窟から聞こえてきたと思うと、アマゾンシグマは洞窟に向かって一直線に跳んでいった。

 

「死ねぇえええええええええええええええええええええええええええええええッ!!」

 

「ら、ライダーバリヤァーーー!!」

 

そして、超強力念力による盾を展開した瞬間に巻き起こる大爆発。その陰で峰田の断末魔の悲鳴と、肉を潰し、骨を砕くような生々しい音が洞窟内から聞こえていたのは言うまでも無い。

 

 

●●●

 

 

あの後、峰田を肉塊に変えたアマゾンシグマは、訓練が終わると嘘の様に大人しくなり、体の一部を削っても抵抗される事は無く、最後は俺の紫の炎によって完全に消滅した。

 

「しかし、今回は非常に貴重なサンプルを手に入れる事ができたな。それに従来の生物よりも“個性”によって生まれた生物の方が、ミュータントバッタを素体にした場合、変異するスピードが早いと言うのも興味深い」

 

「確かに興味深いが、俺はイナゴ怪人アマゾンが元に戻って良かったよ」

 

まあ、イナゴ怪人2号の言う事はもっともだが、俺としては勝己が現れた瞬間にアマゾンシグマが突然攻撃を止め、洞窟に向かった理由の方が気になっていた。

 

実習が終わった後で、イナゴ怪人アマゾンと同じBチームの面々に何か心当たりはないか聞いた所、どうも勝己が協力を拒んだ事で落ち込んでいたイナゴ怪人アマゾンに、八百万がフォローの意味で「私達がピンチになったら助けて下さいね?」と言ったらしく、それが原因だったのではないかと俺は思っている。

つまり、アマゾンシグマは「チームメンバーがピンチだったから助けようとしていただけ」で、逆に「チームメンバーがピンチに陥らなければ何もしない」のではないかと言う事だ。そう考えれば、ピンチを脱した勝己を見て俺に対する攻撃を止め、八百万のピンチに駆けつけたのも理解できる。

 

もっとも、コレはあくまで予測なので、本当の所はどうなのかまだ分からないし、他にも何か条件があるのかも知れない。

取り敢えず、アマゾンシグマを燃やす前に回収した、この変異したゾンビウィルスを内包するミュータントバッタを、父さんに詳しく調べて貰うとしよう。今後、似たような“個性”で似たような現象が起こらないとは限らないからだ。

 

「それじゃあ、後は頼むぞ」

 

「うむ。任されよ」

 

そして、本当は俺が持って行くべきなのだろうが、どうにも相手が俺を怖がっている様だから、イナゴ怪人2号に一つお使いを頼む事にした。

まあ、コイツも見た目は充分に化物だが、初登場の時のリアクションで口調がどもってなかった事を見る限り、俺よりはマシだろう。

 

……うん。自分で言って何だが、チョット悲しい。

 

 

〇〇〇

 

 

一方その頃、体の所々に怪我の処置を施された六人の少年少女が、夕暮れの中で対峙していた。

 

「皆さん、本当にすみませんでした」

 

「とんでもありませんわ」

 

「こちらこそ、申し訳ありませんでした! さあ、爆豪君も謝れ!」

 

「藤見も謝って!」

 

「「………」」

 

「「謝れ!/謝って!」

 

「「……ケッ!」」

 

正直な話、藤見としては勝己に負けたのは確かに気に入らないが、そんな事よりもよっぽど重要な事があった。

 

怪人バッタ男と同じチームになると言う、天が味方したかの様な幸運が舞い込んできたにも関わらず、緊張の余り禄にコミュニケーションの一つも取れず、挙げ句の果てには色々とやらかしてしまって、友好的な人間関係を築く所か、むしろ心なしか距離を取られた様な気がする。

折角、今日の為に女性に全くモテない人生を送っていた駄目男が、つけた途端に女性からティッシュをタダで貰ったり、時価12万円の素敵な絵をせびられたりすると噂の運命石ブレスレット(中古で300円)を手に入れ、肌身離さず身に付ける事で神の寵愛を一身に受けられるかと思えばこの有様。

 

ラッキー自体は起こったものの、自分の行動で全て台無しになってしまった事に、藤見は自己嫌悪に陥っていた。

 

「(何やってんだ、露召呂ォオオオオオオオオオオオオオオオッ!! もっと何かあっただろ! 小粋なジョークとか! 面白アピールとか! 何かこう上手いこと立ち回ってればそれこそ……)」

 

「羽生子ちゃん。立派なプロヒーローを目指して、お互いに頑張りましょう」

 

「ええ、絶対に!」

 

「(あんな感じで、俺と将来を誓い合う未来もあったのでは!? むしろ今日の実習で好感度下がったのでは!? ヤベェ奴って思われたのでは!? キメェ奴って思われたのでは!? どうなんだ!? どうなんだ!? どうなんだ!? うきゃぁあああああああああッッ!!!)」

 

「ほら、藤見! 行くわよ!」

 

「お、おお……」

 

「待て、そこの狼藉者」

 

人生最良と人生最悪が同時に襲来した『悪魔的午後【デモンズ・アフタヌーン】』に打ちのめされ、藤見が後ろ髪引かれる思いで雄英を去ろうとした時、彼を呼び止める声が聞こえた。イナゴ怪人だ。

 

「……受け取れ」

 

「!? これは……?」

 

「その中には、今回の実習で変異した貴様のゾンビウィルスのサンプルが入っている。貴様がソレを何に活用できるかは分からんし、そもそも貴様にくれてやる必要など無いと思うのだが、王が貴様にソレを渡すように言ったのでな……」

 

「え……?」

 

「用はこれだけだ。精々、足掻くが良い。ハザード怪人デンジャラス・ゾンビよ」

 

藤見に変異したゾンビウィルスのサンプルが入ったケースを投げ渡すと、他にやる事は無いとばかりにとっととその場を立ち去っていくイナゴ怪人。そんなイナゴ怪人の背中と、渡されたケースを藤見は交互に見つめていた。

 

「………」

 

「イナゴ怪人に感染して変異した藤見のゾンビウィルス……。確かに貴重なサンプルと言えるわね。それにしても、気前が良いと言うか何と言うか」

 

「良かったわね、藤見ちゃん……藤見ちゃん?」

 

「(あ、あんな事やらかしたのに、何て優しいんじゃ怪人バッタ男ッ! そのかつて無い優しさに俺は……俺はッ! 涙・腺・崩・壊ッッ!!!)……うおおおおおおおおおおおおお!! 俺は“ハザードヒーロー『デンジャラス・ゾンビ』”だぁあああああああああああああッ!!」

 

「え!? ヒーロー名、それで良いの!?」

 

「まあ、藤見君らしい名前だとは思うケド……」

 

他の面子の動揺を余所に、変異したゾンビウィルスと二つ名を貰った喜びの余り、あらん限りの雄叫びを上げて号泣する藤見の気分は正に、気・運・上・々!!

 

この日、新世代のヴィラン染みたヒーローと、運命石ブレスレットの新たなる広告塔が爆誕した。




キャラクタァ~紹介&解説

呉島新
 勇学園の生徒とは仲良く和気藹々とした訓練がしたかったが、藤見の視線と言動から「自分の力を借りるのを嫌がっている上に、自分の事を怖がっている」と勘違い。色々とエライ目に遭ったが、藤見のお陰でイナゴ怪人変異体と言う貴重な発見が出来たので、結果的には藤見と一緒のチームになって良かったと思っている。
 ちなみに作者はカエルとイナゴは日本で、ヘビは中国で食った事がある。カエルとイナゴは居酒屋「半兵ヱ」で売っているので、作者としては非常に助かっている。あ~昭和レトロの雰囲気が最高なんじゃ~。

万偶数羽生子
 恐らく『THE FIRST』における最後の登場となる怪人ヘビ女。大体OVAと同じ活躍をした。ちなみに、彼女を含めた洞窟に閉じ込められたゾンビ化した生徒達は、かっちゃんによる「閉鎖空間での爆破」による被害を受けているが、それ以上にアマゾンシグマが峰田に行ったバイオレンスでヤベーイ攻撃に肝を冷やしていた。

赤外可視子&多弾打弾
 概ねOVAと同じ活躍で終わった二人。下記の藤見ほど熱狂的では無いが、ありとあらゆる意味で活躍しているシンさんには一目置いている。赤外ゾンビが峰田ゾンビを引っぺがした時にシンさんを襲わなかったのはその所為。まあ、羽生子ちゃんと梅雨ちゃんの絡みを、シンさんと赤外でやって貰ったって意味もあるケド。

藤見露召呂
 ある意味もう一人の主役。この世界ではシンさんの熱狂的なファンと化して、完全にキャラ崩壊している。シンさんは勘違いしていたが、彼が睨んでいたのはシンさんと仲良さげに会話をしたり、一緒に同じ仕事をしていたりした赤外達の方である。
 OVAでは「ヒーローが使う様な“個性”か?」と言われていたが、実際は運用そのものに難があるぶっ壊れ性能なので、彼は相当に苦労していると思われる。勇学園卒業後はヒーロー事務所『暗黒結社ゴルゴム』の怪人になっているかも知れない。

イナゴ怪人アマゾンシグマ
 別名:イナゴ怪人ハザードフォーム。イナゴ怪人アマゾンが藤見のゾンビウィルスに感染した結果、ゾンビウィルスがミュータントバッタの体内で変異を起こしたイナゴ怪人変異体。ついでに日本語片言キャラから、ほぼ無言キャラになった。
 ゾンビ化による変異で幾つかの弱点を克服した上に、大幅なパワーアップまでしている「ヤベーイ!」「ハエーイ!」「ツエーイ!」の三拍子が揃った非常に厄介な存在。その行動は完全に戦闘マシーンそのもの。自動操縦型のスタンドみたいなモノで、肉体を燃やすなり溶かすなりして消滅させるしか対処方法は無いが、命令を終えると存在意義を無くして一気に大人しくなるので、そうなれば簡単に消滅させる事が出来る。
 元ネタは『アマゾンズ』に登場するシグマタイプアマゾンをベースに、イナゴ怪人の特性と戦闘マシーンである事を意識した結果、『ターミネーター:新起動』のT-3000の要素なんかも入れている。



変異した藤見のゾンビウィルス
 あくまでイナゴ怪人の体を構成するミュータントバッタにのみ極めて強い感染力を持つ為、人間には感染せず無害。つまり、藤見がコレを持っていてもあまり意味が無いのだが、「ゾンビウィルスが変異した」と言う事実は、藤見の成長に一役買うと思う。書くつもりは無いケド。



後書き

これにて今回の投稿は終了です。そして、シンさんの二次小説が全然増えない現状を見て、この際短編集みたいな感じでシンさんの小説を増やそうと思い立った結果、色々考えて読者様から「シンさんに行って欲しい世界」を募集しようと思います。

詳しくは、活動報告を御覧下さい。どうか宜しくお願いします。

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。